ようこそ騎士王がいる教室へ   作:笹杭L

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気が付けば半年ぶりですか。

FGOのイベントが楽しすぎて、全く筆が進みません(言い訳)

これからもぼちぼち投稿していこうかと思います。


第7話 図書室ではお静かに

 

 

 テストまで残り1週間となりました。

 

 あの夜の一件以降、何かしらのイベントが起こることはなく、非常に平和な時間を送れていました。

 あの日の出来事は、全部龍園くんに共有しています。

 それにしてもイベントだらけで異常でしたよね。

 

 まぁ、それはいいんですよ。既に終わったことなので、今いちばん大事なのはお勉強です!

 

 基礎の基礎すら(まま)ならなかった私が、小学生の範囲に終わりが見えるところまで来ました。この調子で行けば2学期が終わるタイミングくらいには、授業に追いつくことが出来ると思います。

 

 ひよりの指導力と私の吸収力、二つのコンビネーションによる賜物です!

 ふはははははははは。

 

 ん? どこで勉強しているのか、ですか?

 最初は私の部屋で、と思っていたのですが、勉強向きのいい場所があるとひよりが言ったのでついてきた形です。まぁ、ひよりがそう言うってことは十中八九あの場所でしょうと確信もありましたが。

 

 ともあれ、私はいま図書室で静かに勉強しています。

 私一人ではありませんけどね。

 

 ひよりは当然として、幾人かの生徒を受け持っています。コレは龍園くんの指示ですね。

 

 帆波との対策会議を龍園くんに共有し、彼女の策が動いたタイミングでクラスにBへの嫌がらせを止めるように指示しています。

 

 クラスとしても、それに意識を割かなくて良くなった分、テストに集中する時間が出来ます。

 

 龍園くんは今年1年を基礎能力の向上に努めると言っていましたので、まずは学力から……ということなのでしょう。

 

 グループ分けをして、それぞれに頭のいい人を割り振る。クラス全員に勉強する時間を強制し、サボタージュする人をなくす。合理的な判断だと思います。

 そして、グループ毎にちょっとした特色といいますか、傾向があります。

 

 私の班を例に出しますと、少し血の気が多いメンツで山脇くんや石崎くんを始めとした人種です。

 そういう人らを私とひよりで抑える意図でこういった班になったと思います。

 私は言わずもがな、ひよりもその毒気が抜けるようなふんわりポワポワした独特な雰囲気で。

 

 そのおかげという訳でもないのですが、彼らはこの一週間、真面目に勉強に取り組んでいます。

 

 私も集中して、ひよりの講義?を受けれてるので助かっています。

 しかし、テスト一週間前というある意味で節目の時、イベントというものは発生するのです。今回のように。

 

 

 ■ □ ■

 

 

 私たちがいつものように図書室で勉強を続けていると、隣の集団が騒がしくなりました。

 少しの間であれば、あまり気にせずそのまま放置するのですが、今回に限ってはそれが途切れることはなく、延々と垂れ流されていきます。

 

 私自身は煩かろうと、そこまで関係ありませんが同席している彼らは違います。

 血の気の多い、言ってしまえば短気。

 

 そのうちの一人は、騒がしさに耐えかねて自身の集中が崩れてしまった原因である隣グループに注意を飛ばしました。

 

「おい、ちょっとは静かにしろよ。ギャーギャーうるせぇな」

 

 乱暴な口調ですね。

 言ってることは正しいですが。

 

 彼──山脇くんの発言に騒がしくしていた隣の面々はこちらを向きました。

 …………おや? 会長の妹さんもいらっしゃいますね。

 ということは、Dクラスの方ですか。

 確かに、幾人か見覚えがありますね。

 5月頭以降、他クラスとの交流が減っていたので忘れていました。

 

「悪い悪い、ちょっと騒ぎ過ぎた。問題が解けて嬉しくってさ〜。帰納法を考えた人は、フランシス・ベーコンだぜ? 覚えておいて損はないからな〜」 

 

 …………池くん、でしたっけ?

 自覚があるにしては、軽すぎる謝罪ですね。

 これは血の気の多いうち(Cクラス)の生徒じゃ、怒るでしょうね。

 

「あ?…………お前ら、ひょっとしてDクラスの生徒か」

 

 おっと、想定外の反応が出てきましたね。

 私としては『んだぁテメェ舐めてんのか?』を予想してしましたが…………なるほど、相手が自分より下か上を最初に判断するタイプのようですね。

 まだまだ、同輩である彼らの性質を掴みきれていませんでした。精進。

 

 山脇くんは騒がしくしていた人たちを見回し、ついで言葉こそ出ていませんが明らかに嘲笑が顔に写っています。

 

 それが癪に障ったのか、Dクラスの赤髪の人が訝しむように山脇くんへ返しています。

 

「なんだお前、俺たちがDクラスだからなんだってんだよ。文句あんのか?」 

  

「いやいや、別に文句はねぇよ。俺はCクラスの山脇だ、よろしくな」

 

 ニヤニヤとした表情を隠すことなく、山脇くんは名乗りました。

 あー、ちょっと面倒くさいことになりそうですね。

 

「ただなんつーか、この学校が実力でクラス分けしてくれてよかったぜ。お前らみたいな底辺と一緒に勉強なんてしてたらたまったもんじゃねぇーだろうしな」

 

「なんだと!」

 

 あー、ライン超えちゃったかな?

 

 図書室で普通に喋る(煩い)     OUT

 他人を馬鹿にする(五十歩百歩)   OUT

 コチラに不利益を招きかねない(勘) OUT

 

 スリーアウト! チェンジっ!

 少しお灸を据えないといけないですね。

 全く、困ったものです。それにほら、向こうで勉強していたBクラスがこっちを見てますよ。

 帆波も居ます。というより、今にでも仲介に動き出しそうな感じですね。

 

 あ、目が合いました。

 大丈夫ですよ帆波、こっちでやりますので。

 

 改めて耳を傾けると、意外にも山脇くんが押されていますね。というより、妹さんが舌戦に介入しているようです。まあ、山脇くん程度では勝てないでしょうね。

 

 私も始めましょうか。

 

 さーてと!

 王室の友人にお墨付きを貰った必殺!

 

 

 王様モード!! スイッチオン。

 

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 Side 綾小路

 

 

 

 須藤とCクラスの山脇の言い争いは堀北が介入したことで、いつ手が出てもおかしくないほどにヒートアップしていた。

 

「────れたことで不愉快に感じたわ」

 

「っ!」

 

 堀北の言い分に苛立ったのか、山脇は机を叩き、立ち上がった。

 

「今度のテスト、赤点取ったら退学ってのは知ってるな? お前らから何人退学者が出るか楽しみだぜ」

 

「残念だけどDクラスからは退学者は出ないわ。まずは自分たちの心配をしたらどうかしら? 奢っていると足元を掬われるわよ」

 

「くくっ足元を掬われる? 冗談は頭の中だけにしろよ」

 

 堀北の返しに何やらツボに入ったのか、山脇はさっきまでの苛立ちをよそに、くつくつと笑っている。

 

「俺たちは赤点を取らないために勉強してんじゃねぇ、より良い点を取るために勉強してんだよ。お前たちと一緒にするな」

 

 呼吸を落ち着かせたのか一息ついた山脇は、まだ何か言うつもりなのか、オレたちを見回し口を開いた。

 

「大体、お前ら正気か? テスト範「山脇くん」っ!?」

 

 たった一言、山脇の声を遮る声にゾクリと鋭い悪寒が全身を貫いた。

 この感覚を覚えているのはオレだけじゃない。

 身体能力が高く野生の勘に優れた須藤は当然のこと、そういったのには鈍そうな池や山内、堀北。

 隠してこそいるが、櫛田。そして、Cクラスの男子生徒たち含めたこの場にいるほとんどが、支配者の気に当てられている。

 

 そして、声の主を確認して気づいた。

 一週間ほど前、偶然見つけた堀北の行動が気になり隠れてついて行ったあの夜。堀北と生徒会長の間に乱入していった女子生徒。オレが感じ取れないほどの気配遮断術を持つ存在。生徒会長が紹介していた名前は…………確か………。

 

「……っ…………アルトリア…………ペンドラゴン」

 

 隣の堀北が睨みつけるような眼で、か細く相手の名前を呼んだ。

 そう、アルトリア・ペンドラゴン。

 あの後、二人とも()()()()()()()した為こっそりと部屋へ戻り、彼女について調べた。

 そしたら多く出てきた予想以上の実績の数々。

 

 数年にわたる総合格闘技の君臨者。

 甲冑競技の王者。

 馬上槍における覇者。

 何と言っても、その功を讃えられイギリス女王から直々に【騎士王】の号を賜った天才。

 

 むしろ、何故この学校にいるんだと言わんばかりの人物。海外の出来事のため、得られた情報は大半が英文によるもので、加えて格闘技以外はマイナーな競技というのもあってか、日本ではあまり知られていない異端児。

 

 そんな理外の存在は圧倒的な王威を纏わせ、オレたちの諍いに介入してきた。

 

「山脇くん……いつまで続けるつもりですか?」

 

 どうやら彼女は、自クラスの生徒からいくようだ。

 以前とは雰囲気がまるで違う。

 

「あ、いや、ですけど…………こいつらが!」

 

「ええ、確かにDクラスの面々は非常に耳障りだったのは認めましょう。私としても煩わしかった」

 

 チラリとこちらを一瞥する。

 たったそれだけで須藤なんかは動くことすらままならなそうだ。

 

「しかし、貴方はそんな彼らと同列になっている。自らが下と決めつけた相手の土俵に立っている」

 

「そ、それは…………」

 

「周りを見なさい、下らない言い争いが図書室中に広がりました」

 

 その言葉に山脇だけでなくオレたちもぐるりと首を動かし図書館全体を見た。

 

 試験前ということもあり、多くの学生が集まっている図書館。今日も当然、設置されている机の大半に学習用の教科書が置かれ、席には生徒が座っている。

 

 そんな彼らの多くと目が合った。

 

 全員とまではいかないがほとんどの生徒がこちらに目を向けている。

 籠っている感情は様々。煩わしさを隠そうともしない苛立ちの視線、迷惑そうな眼、今にも仲裁せんと立ち上がろうとする人。

 

 …………悪い意味で注目の的だな。

 

「注意するのは構いません。貴方が苛立ちを感じたということは、同じように感じている人は他にもいたでしょうから。先陣を切る、一番槍を抜く。ええ、大いに結構です…………節度さえ守れば。いいですね?」

 

「は、はい……っ」

 

 そんな注目を集めたまま始まった彼女の説教は、先程までこちらに対して横柄な態度だった山脇を委縮させ、反論を許さない。

 彼への話が終わったのか、『さて』と言葉を挟み、今度か俺たちに方へと視線を向ける。

 

 たったそれだけでゾワリとした感覚が全身を貫いていくのが分かる。

 

「Dクラスの皆さんも、ここは図書館。貴方たちの教室ではありません。まして、乱暴な口調だったとはいえ、他者の注意に対しての戯けた返事、論外です。私たちでなくとも腹が立つというもの」

 

 からり。

 言いたいことを言い切ったのか、彼女は紡いだ口を閉ざす。すると何かが切り替わったかのような錯覚を肌で感じる。

 目の前の少女と、いままで話していた彼女。全く同じ同形であるにも関わらず、脳が同一人物と認識してくれない。

 

「とまぁ、他クラスの私が言っても頭に残らないでしょうし、これ以上は言いません。お互いに気を付けていきましょう」

 

 まるで違う。

 王然としていた雰囲気など全くなく、そこにはただの少女がいた。いや、それでもなお、支配者としての貫禄というものは見え隠れしているが。

 

「さて、このようなことがあった以上、私たちは離れた方がいいでしょう。これ以降もお互いの精神衛生上、近づかない方が建設的ですかね」

 

 そういうと、同じ机に座っていた他のCクラスの面々へ図書館からの移動を命じていた。あちらが離れていくようだ。

 

「頑張りましょうね、中間テスト」

 

 こちらの開いている教科書を一瞥し、含みを持たせた発言をした後、彼女は元々勉強していた机ではなく、他の他クラスが座っている机へと足を向けていった。

 

 最後まで、こちらが話す機会がなかった。あの堀北ですら、口を噤んで何も言っていない。

 

 あれは本当に…………。

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 いやー、楽しかった。

 あの状態になると言いたいこと全部言っちゃうので、すっきりするんですよね。たまにやらかしてしまいますけど。

 

 さて、私たちの班はもう図書館から撤退しているようですね。こんなことがあった以上、今回のテストでは使わないと判断した方が良さそうです。

 これからは教室でするとしましょうか。

 

「すみません、帆波。少し騒がしくしてしまいましたね」

 

「大丈夫だよ! それにしても、さっきのあれ。どうしたの? 人が変わったみたいでビックリしちゃった!」

 

「ふふ、驚かせてしまいましたか? イギリスにいるときに、集団を率いる必要がありまして、そこで身に着けたモノですよ」

 

 先程の、私が王様モードと呼んでいるアレ。

 以前、甲冑競技の国際大会で40か国以上が参戦して、バトロワの如く戦う大規模合戦があったんですよ*1

 その際に、50人ほどの騎士(選手)を束ねて三日間戦い抜く必要があったので、自然と身につきました。

 

 本物からお墨付きを頂くほどの出来栄えです!

 えっへん。

 

「ええ~、どんな状況すぎるよ~」

 

「まぁ、それはさておき、あれからどうですか帆波?」

 

「あれ? ああっ! うん、上手くいったよ! アルトリアさんのおかげだよ」

 

「それは良かった。私としても大切な友人が苦しそうな顔をしているのは、忍びないですから」

 

 ちらりと彼女と同じ机で勉強していたであろう女子生徒が目に入る。その人物が向ける視線が何やらおかしい。

 

 帆波と親しく話せば話すほど、私に強い感情が籠った視線を向けてくる。それは先程のような煩さに対してではない。帆波に関わる私そのものに対しての眼だ。

 

 なるほど。

 これはこれは、そういうことですか

 

 …………使えますね。

 もう少し、帆波と話しておきましょう。

 

 全く、この短時間で細かな策略のオンパレードですね。

 

 他の生徒の迷惑にならないように、小声で帆波と親しく話す裏側で私は思考を張り巡らせる。

 

 

 山脇くんは、危なかった。もう少しで面白いことが見れなくなるところでした。彼らの陥っている状況に気が付いてほしいものです。

 

 池くんが呟いたフランシス・ベーコン。

 これは()()()()()()です。

 

 少し気になることがあったので、山脇くんが馬鹿にする目的で言及しようとしたそれを防ぎました。

 その後に、Dクラスに近づき教科書の開いているページを確認しました。

 

 どの教科も全て()()()()()()()テスト範囲。

 

 

 彼らの担任は、想像以上に面白い先生のようですね?

 

 

 また、この愉快な状況を長引かせる為に、一番お節介しそうな帆波へと話し掛け、未然に防ぎます。

 

 帆波も何かしらのアクション──今回でいえば騒ぎ──がなければ、テスト前という場面で他クラスの生徒に積極的に話しかけることないでしょうし。

 

 まぁ、帆波と話す段階で、何なら愉快になりそうな土を見つけたので、種だけは蒔きましたが。

 

「さて、これ以上は帆波にも迷惑をかけてしまうことになるので、私はこのあたりで失礼しますね。帆波、何か困ったことがあったら私を頼ってくれて良いですからね?」

 

「にゃはは! もしそうなったら頼らせてもらおうかな? それと迷惑とか気にしなくて大丈夫だよ。また、時間があったら話そっ!」

 

「ええ、そうしましょう」

 

 そうして私は荷物をまとめて図書館を出ました。

 

 端末からメールを飛ばし、班員に今日の勉強会は終了である旨を伝えます。

 

 もう一つ、龍園くんにDクラスが陥っている状況の報告もしておきましょうか。

 

 しかし、そうなってくると……中間テスト後に行う予定だった、例の学校の動きを確認する計画にズレが生じるかも知れませんね。

 

 一計、龍園くんと考えておきますか。

 

 ……ふふっ。

 

 おっと、失礼。何も無いところで笑う危ない人になるところでした。ですが、本当にこの学校に来て良かった。

 

 

 これから先、一体この学校が何を見せてくれるのか。

 

 非常に楽しみになってきましたよ。

 

 

*1
詳しく知りたい方は『バトル・オブ・ザ・ネイションズ』で検索





テスト範囲流出事件
原作では山脇が漏らしたことで、茶柱に確認を取りに行くという行動が発生しDクラスは知ることが出来た。

Question それを防がれたら?
Answer Dクラス終了のお知らせ


読んでくれてありがとう。
感想助かる。

策略の詳細

  • 事前に知っておきたい
  • 重要なシーンで「一体何が⋯」とともに回想
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