【書籍化】封印されし呪われ勇者、美少女配信者に偶然開放されたついでに無双して大バズり   作:恒例行事

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第十一話

「勇人さああぁぁん!! 一体どういう事ですか!?」

「おっとっと、どうしたの霞ちゃん。綺麗になったね」

「あ、ありがとうございます……じゃなくて!!」

 

 会議を終え、妙にウキウキした様子の不知火くんと共に地下で会場の耐久力だとか模造剣の強度だとかを確認していると、プリプリ怒りながら霞ちゃんが乱入して来た。

 

「どういうことですか!? なんで私まで!?」

「ああ、それね。最初は僕と不知火くんが腕試しするだけだったんだけど」

 

 会議で聞きたいことも聞いてからそれじゃあ終わりにしようか、となった頃に、模擬戦について詳細を詰めていたんだ。

 

 この修練場は探索者の戦闘能力を測る機能も備え付けられているらしく、なんでも探索者の階級試験にも使われるほどの精度らしい。そりゃ有馬くんたちも簡単に引き下がる訳だ。僕のデータをいち早く確保出来るならそうしたいだろうし、僕も早い方が嬉しい。

 

 それでデータを集めるなら実際の階級試験と同じ条件項目を測ろうという話になって、魔力量の話をしている時に毛利くんが呟いた。

 

『そもそもリッチという上位種のデータが無いのに正確な数字が測れるのでしょうか?』

『うーん……そればっかりはどうにも。僕の所感でよければ語れるけど。でもそれって重要かい?』

『重要です。スケルトンやアンデッド等の上位種である、というのは何となくわかりますが……勇人さんが特異なのかリッチという種族が恐ろしいのか、測りにくい部分があります』

『あー、なるほど』

『あら、それならちょうどいいのが居るじゃない』

『ちょうどいいの……?』

『ええ。勇人さんの影響を受けていて、なおかつ変化前のデータがある娘が』

『……雨宮四級か!』

『彼女を蘇生した際に魔力……生命力を流し込んだって言ってたわよね? そして命令権があるなら、確実に種族として影響を及ぼしてる筈。試す価値はあると思うけれど』

『賛成する、彼女も模擬戦に参加させよう』

『異議なし』

『いや待て、流石に戦力差がありすぎる。不知火とも勇人さんとも勝負にならんだろう』

『それなら勇人さんと二人で組ませるパターンと、単体で戦うパターンの2つを試せばいいのでは?』

『2パターンもやる必要はない。データとしては雨宮の方が大切だろうが、俺はこの男と正面から戦り合いたいだけだ』

『なら一戦目は僕がサポートに回るよ。そこで霞ちゃんのデータを軽く集めた後、改めて僕と戦おう』

『……乗った』

 

「──という訳で、反論できる要素が何一つ無くてねぇ」

「あ、あが…………」

 

 霞ちゃんは白目を剥いた。

 

 綺麗な顔が台無しだ。

 こりゃ配信で見せられる顔じゃあないね。

 人気商売してるんだから、ちゃんとファンとして支えてくれてる人達に報いなきゃダメだぜ?

 

「誰のせいだと思ってるの……?」

「あはは、ごめんごめん。でも、避けて通れない道だったと思うよ」

 

 僕の生命力で命を吹き返した霞ちゃんは少なくとも純粋な人間とは言い難い。

 

 ちょっとした命令に従わされる時点で普通ではないのだ。

 人の道を外れてしまった以上、能力に変化が訪れている可能性が高い。

 

 現に今日、彼女は死に掛けていたというのに──魔力が色濃く滲んでいる。

 

 僕の魔力に近い性質だ。

 やっぱり純粋な人とは呼べず、でもモンスターとも呼べない。

 彼女は人でありながらモンスターの力を扱える、特異な存在である可能性が高い。

 僕のようにモンスターに成り果てるリスクも負わず、正しく人類の新たな可能性になったかもしれないんだ。

 

「雨宮」

「はっ、はい!?」

「つまらん戦いをしたら、即行で潰す。期待しているぞ」

「ひえぇ……」

 

 フッ、と鼻を鳴らしながら不知火くんはどこかへ歩いて行った。

 多分皆が揃ってるモニタールームに行ったのかな。

 リアルタイムで分析も出来るらしく、本当に、随分と技術が進化したなぁと感嘆を溢してしまう。

 

「ど、どうしよう勇人さん……! 私今日二度死ぬ!?」

「死なない死なない。僕が守るし」

「勇人さん……!」

 

 最悪のマッチポンプをしてる気がする。

 

 嘘は何一つ言ってないからね。

 至って普通、誠実そのもの。それに僕自身、不知火くんとの戦いは楽しみにしている事だ。

 

 僕は今の一級の水準すら知らないし、どんな強さをしているのかもわからない。

 

 下層のモンスターを倒せるスケルトンを相手に『抑え込む自信がある』と御剣くんに桜庭女史が言う程度には強さに自信があり、国防やら何やらに駆り出される事もあるこの国の最終防衛ライン。

 

 そして、不知火くんはその中でもトップ……一級一位の称号を得ているそうだ。

 

 あの斬撃の鋭さと速さは素晴らしかった。

 彼なら、いざという時に僕を殺せるんじゃないかと期待している。

 

 死にたい訳じゃない。

 安心したいだけなんだ。

 僕が今あるこの世界の脅威となっても、必ず打ち倒してくれる人がいると信頼したい。

 

 ……ああ、そっか。

 

 そういう意味だと、霞ちゃんもそうなれる可能性があるのか。

 もしも彼女が僕以上にこの力を使いこなし、人を保ったままモンスターとしての力を十全に扱えるようになれば、僕に対するこれ以上ないカウンターになる。

 

 ただ、それを確認するための今回の模擬戦。

 あくまで今のは何の根拠もない妄想に過ぎない。

 霞ちゃんが本来の能力を超えるポテンシャルを見せた時、この考えは皮算用から保険に変わるだろうけど……

 

「……ま、今はまだいいや」

「?」

「それじゃあ、ちょっとだけ準備運動しようか」

 

 剣を手渡して、ほんの少し距離を取る。

 身体を動かす前に柔軟をするのは当然だけど、ぶっちゃけ、僕はそこらへん魔力でゴリ押ししてたから適当でいい。仲間にはなんでもゴリ押しするなと怒られたけど、出来るんだからしょうがない。

 

「不知火くんとの模擬戦をする前に最低限のスペック確認はしておきたい。ああ、安心してくれ。彼曰く『事前情報を持っていたら面白くない』との事で、この流れは見ないようにしてくれるらしいから」

「えっ……もしかして、私と勇人さんが戦う感じ?」

「戦うなんて大袈裟な。準備運動だって言ってるだろ?」

「……わかりました。本当に準備運動ですよね?」

「うん。僕は受け止めるから攻撃してね。勿論全力で」

 

 ここは敢えて上から言った。

 僕が格上なのは流石に察しているし、何より、彼女はこの発言に気を悪くすることも無くコクリと頷いた。

 

 そしてそのまま剣をぎゅっと握り締めながら、意識を己の内面に集中させる。

 

「────…………っ!」

 

 僅かに滲み出ていた魔力が放出される。

 

 うん、やっぱり純粋な人とは言い難い。

 僕に近く、モンスターとは遠いが同じ性質を持ってるだろう。

 

 ただ、彼女の魔力の使い方は未熟だ。

 五十年前の僕がそう言えるのだから、魔力の研究は進んでも技術自体は難しい領域にあるのかな。そこら辺も不知火くんとの戦いで調べられるといいんだけど。

 

 そのまま放出していた魔力を身に宿らせて、腰を落とし駆ける動作に移った。

 そろそろか。

 

「っ……い、いきます!」

「おいで」

 

 駆け出す。

 

 先程の不知火くんと比べれば雲泥の差だ。

 

 でも確かに、これほど動ける人は五十年前には殆ど居なかった。

 僕からすれば余裕をもって目で捉えられる速度だけど、常人が見ても捉えきれるかは微妙なライン。物体が動いてる、くらいの認識になるかもね。

 

 これくらい動ける子が増えればそりゃあ、ダンジョンが産業になってもおかしくないか。

 

 正面から薙ぎ払われた一閃を模造刀の腹で受け止める。

 威力も一般人とは比べ物にならない。

 僕が囚われていたあのダンジョンならば、下層(と思われている場所)まで十分やれるんじゃないだろうか。実戦経験はまだ浅いから不意打ちしてくるタイプやら突然モンスターが大量に湧く現象には対応出来ないので、少しずつ慣らしていく必要があるけどね。

 

 そのまま何度か霞ちゃんの剣を受け止めて、彼女の息がわずかに上がったところで止めるように言った。

 

「うん、お疲れさま。大体わかったかな」

「あ、ありがとうございます……?」

「不知火くんも手を抜くと思うし、ヤバそうな攻撃は僕が防ぐから普通に戦っていいよ」

 

 彼女が防ぎきれなさそうな攻撃は僕が受ける。

 恐らく欲しがっているデータは魔力や攻撃面だけではなく、反射神経や動体視力も含まれているだろう。不知火くんもそこら辺は調整してやってくれるはずだ。

 

 後日詳しい検査はすると思うけど、今のうちに最低限の見積もりを出せていた方が効率がいいしね。

 

「通用するかなぁ……」

「いやあ、そればっかりはどうにも。僕は現代の水準を知らないし、元の霞ちゃんの強さも知らない。でも、五十年前に霞ちゃんが居ればもう少し助けられた命は多かったと思う」

「本当ですか……!?」

「ああ、本当さ」

 

 少なくとも、地上に侵攻してきたモンスターとの戦いでかなり役立てた筈だ。

 あの九州侵攻での被害者も、もっと抑えられた。

 本当に戦力が足りてなかったんだ。

 軍隊ですら手を焼くモンスターを生身で倒せる人間なんて両手で数えるほどしかいなかったんだから。

 

「それに、今回は不知火くんを倒すのが目的じゃない。霞ちゃんの身体能力やら何やらに変化が無いかを確認するのが目的だから、倒せる倒せないは気にしなくていいよ」

「でも、不知火さんはつまらなければ潰すって」

「あはは、あれは彼なりの発破でしょ。君が四級の実力である事を理解した上で試験官を務める事を承諾してるんだし、もし本来の目的を忘れてるようなら……」

「ようなら……?」

「僕が楽しませてあげないといけないなぁ」

 

 戦いが好きな人なんて見たこと無いから一体どうなるか、想像もできない。

 

 ただ僕に出来る事は、霞ちゃんの補助をしつつ、それらが終わった後に不知火くんと戦う事。

 

 そしてその戦いは恐らく、互いを倒す事を目的としている。

 彼は手抜きで満足してくれるタイプじゃない。

 そもそも、僕の実力が現代においてどこに位置しているのかもわからないんだ。

 挑戦者は僕だ。

 現代日本最強、それが彼の一級一位という称号が意味する言葉。

 

「ロートルがどこまでやれるかわからないけど、精一杯やらせてもらうよ。胸を借りるつもりでね」

 

 修練場の入り口が開き、不知火くんが入室してくる。

 

 不敵な笑みだ。

 やる気も自信も満ち溢れている。

 でも僕の事だけを見ているわけではなく、ちゃんと霞ちゃんにも意識を向けている。

 戦いに強い興味を持っているけど、それはそれとして仕事は熟す。

 

 よくもまあ、いい人材を集めたもんだ。

 後進を育成すると言う事が如何に大切か思い知らされる。

 

 結局僕が後世に残せたものなんて何もない。

 仲間達が遺したものが今の世の礎を築いたのだ。

 それを思えば、戦う事しか出来ない自分が如何に無力なのか嘆きたくなった。

 

「準備は出来たか?」

「ああ。霞ちゃんを侮っちゃあいけないぜ。なんてったって僕の力を注いでるんだから」

「ちょっ……! ハードル上げないでよ、もう!」

「問題ない。雨宮が優秀な人材であり、将来有望だと見込まれているのは俺も知っている」

「へ?」

 

 へぇ?

 評価高いじゃないか、霞ちゃん。

 一級が一番上で、二級、三級、四級。

 上から数えて四番目だけど、僕は下限を教えてもらってない。だから彼女がどれくらいの実力に位置するのかわかってなかったが、想定してるより上澄みなのか……?

 

 っと、今はそれはいいや。

 どうせ後で確認できるし、集中するべきは目の前の事について。

 

 剣を構えた霞ちゃんと、堂々と待ち受ける不知火くん。

 実力差は歴然だけど、彼女が懸念していたような事態にはならなさそうで良かった。

 

「俺なりに手は抜くが、甘くは見ない。しっかり食らいつけ、雨宮四級」

「っ……は、はいっ!」

 

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