深灰と赤紫の糸   作:空白零無

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気がつけばUAが600になっておりました。意外と読んでくれる方々がいて驚いている作者でございます。


水鏡に写るのは

 

 

 Amia『ヤッホー。まだ起きてる?』

 Amia『明日学校来るなら、ちょっと来てほしいところがあるんだけど』

 

 ……

 

「メッセージ来てるよ。読まないのかい?」

「……代わりに読んで」

「まったく、⬛︎⬛︎(ヒト)使いの荒い⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(マスター)だよ。えーと、Amiaって人からメッセージが来てて。……なになに? ……ふむふむ。明日学校に来るなら来て欲しいところがあるらしいよ?」

「……Amia。……誰?」

「いや。ミク(ボク)に聞かれても︎困るんだけど」

 

 それもそうか。

 ……Amiaねえ。学校、学校……。最近の知り合い……。ああ、暁山瑞希のことか。

 

『絵を描いてた。起きてる』

『行く理由は無かった。けど、瑞希が望むなら』

『行こう』

 Amia『じゃあ、明日。登校したら授業始まる前までにはちゃんと来てよ。待ってるね』

『ん。了解』

 

「……」

「帰るのかい?」

「……明日。学校行くから」

「そっか。じゃあ、朝から行ける様に早めに寝なきゃね」

「……じゃあね、ミク(⬛︎⬛︎)

「うん。おやすみ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(マスター)

 

 セカイから出て、現実へ帰り。デスクの鍵付きの引き出しにしまってある睡眠導入剤を飲んでの眠りにつく。2年前に比べれば、メンタルも安定してきた。

 だけど……暁山瑞希と出会ってから、鹿野ちゃんのことを思い出すことが増えた。赤く染まっていく鹿野ちゃんを抱きめたあの日。あの情景を思い出すことが増えてきた。

 

「……薬、増やさなきゃ……な……」

 

 どうか、夢を見ませんように。もう、(希望)なんみなくてすみますように…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────。ん、んん。

 

「……あさ、か。…………曇り」

 

 朝起きてカーテンの外を見ると曇り空だ。個人的には快適なので好きだが、雨が降るかもしれないと考えると洗濯物を干して行ってもいいものか考えさせられる。

 

 時計を見ると、時間はまだ朝の6時。学校へ向かうのは8時30分前には出ればいいのでまだ時間はある。

 顔を洗って歯を磨き、姉さんの朝と昼の食事とおやつのケーキを用意している間に考えよう。

 

 朝は……パンケーキで良いか。粉余ってるし、牛乳とかもそろそろ期限だし、消費できるなら良いだろう。

 

 材料をボールに入れて混ぜ合わせる。薬が残っているのかまだ少し眠たいが、変に分量を間違えるほど目が醒めていないわけではない。……砂糖を少しほど入れ過ぎてしまった。まあ、誤差の範囲だろう。多分。

 

「……今日、はあの日。か」

 

 この前、姉さんが倒れた。

 栄養管理はある程度やってたつもりだったけど、寝不足と自律神経の乱れで倒れてしまった。

 目の前で倒れたのでフラッシュバックでパニックになって動けない私の代わりに、お婆ちゃんが頼んでいたという家事代行の人が代わりに色々やってくれた。

 見苦しいものを見せたと思うが、特に追及はなく。

 姉さんも無事に退院して、ちゃんと睡眠は取るようになっている。

 

 今日はその家事代行の人が来る日だ。

 多少遅くなっても連絡さえ入れておけば代わりに姉さんの夕食を作ってくれる。今日は喫茶店に寄ってから帰ろう。

 

「…………」

「……おはよう。玲音」

「……姉さん、おはよう。……早い、ね」

「昨日はちゃんと寝たから。……学校、行くの? 珍しいね」

「……呼び出し? お願い、来たから」

「……そう。気をつけてね」

 

 姉さんが部屋から出てきた。今日は夜にちゃんと寝たようで、匂いに釣られて起きてきたそうだ。

 焼けたものを皿に移して姉さんに渡す。先に食べていてほしい。

 

「……玲音は、一緒に食べないの?」

「食べる」

 

 そう言われたら仕方ない。姉さんの頼みだもの。聞かないわけがないじゃないか。今日はいい日になりそうだ。

 

「……? 玲音、何かいいことあったの?」

 

 現在進行系で良いことが起こっているよ、姉さん。

 

「うん。姉さんとご飯食べられるから」

「? そう」

 

 ♪ 〜。朝から姉さんとご飯食べられるなんて〜。今日は朝からいい日だね〜。

 

 新しい生地をフライパンに入れて、火は弱火にして蓋をする。これで焦げない。タイマーも一旦、4分ぐらいで設定しておいて。よし。

 

 姉さんの座って待つテーブルに自分の分を置き、フォークを渡して蜂蜜とメープルシロップもテーブルに並べておく。

 

「「いただきます」」

 

 食事中に話すことは特にない。

 姉さんも自分の活動についてあまり話すことはしないし、私も姉さんに自分の活動を話すことはあまりない。あったとしても、姉さんに作品を投稿したとかそれぐらいだろう。

 

「……玲音。この前の絵、綺麗だったよ」

「? なんの絵?」

「……夕焼けの絵。少し儚げで、暗い顔をしていた。夜の訪れを感じる絵」

「……ああ。あの絵、はね。モデルがいる。たまたま出会って、モデルになってもらった」

「学校の友達?」

「……まだ、友達ではないよ」

「よかったね。モデルになってもらえて」

「うん」

 

 暁山瑞希をモデルにした絵は、姉さんから評価が良かったようだ。やったね。また今度、暁山瑞希にはモデルをやってもらおう。

 

 食事が終われば、姉さんは部屋に戻っていく。はずなんだけど……。

 

「……部屋、戻らないの?」

「……玲音の見送りしようかなって」

 

 可愛いかよ。私の姉。可愛いし優しい。ああ、穴だらけの私の心に染み渡る……。

 お昼はカップ麺を食べるらしいので、用意はしていないが、おやつはホットケーキの残りを食べるとのこと。それで良いなら私は構わないけど……本当にそれで良いのか? 

 

「……行ってきます。姉さん」

「うん。いってらっしゃい、玲音」

 

「……♪ 〜」

 

 家の外に出れば、曇り空だ。しかし、少し雨が降った後ようで道には小さな水溜りができている。

 そこに写る私は、いつも通りだ。長い前髪も、長い後ろ髪もいつも通りの私だ。

 

 …………そういえば、いつもなら暁山瑞希のメッセージは、瑞希で表記されていたはずだ……。

 

 

 …………何かやらかしているような気がする。何か、私が致命的なミスをしているような気がしている。……………………気のせいだと良いな。

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