深灰と赤紫の糸   作:空白零無

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今作の彼は、諸事情(作者の無知)により早めに転校してきています。





野生の元クラスメイトが現れた

 

 

 学校に到着して朝のHRまで大人しく席でぼーっとしていると、

 

「おはよう、宵崎。学校来るなんて珍しいな」

「……」

 

 お前is誰? 

 誰だ? クラスメイトなのは来るたびに同じ教室にいるからわかるが、それ以外の情報がない。……と言うことは、別に創作意欲を掻き立てる存在ではないな。

 

「……」

「あのー、宵崎? おーい」

「……」

「宵崎? 聞こえてる? 宵崎ー」

 

 うるさいな、この男。

 無視でいいや。放っておけば勝手に諦めていなくなるだろう。眠たい。

 机に突っ伏して少し寝てしまおうか。それとも、頑張って起き続けるかだが、……うるさいし寝てしまおう。

 

 机に顔を伏せて眠る体制になって、目を閉じる。相変わらずうるさい声だ。もう少し静かに出来ないものだろうか。

 

「ちょっとごめんね……。玲音、おはよう。玲音」

「……」

「……あれ? 寝てる?」

「……瑞希?」

「そうだよ〜。おはよう、玲音」

「…………おはよう」

「あれ、俺は無視するの?」

 

 もう少し遅く来ても良かったかもしれない。ここまでしつこい奴は久しぶりだ。

 

「メッセージ読んでくれたの?」

「……ん。だから来た」

「そうだったんだ〜。じゃあ、HR終わったら来てね」

「……」

 

 一体どこへ来い言うのか。……ん? スマホのバイブが……

 

 瑞希『HR終わったら屋上に来てね。待ってるよ〜』

 

 暁山瑞希からだ。

 HRが終わった後に屋上に来いと……。やっぱり違和感を感じる。本当に致命的なミスを犯しているような……待てよ? 

 

 スマホで芸術系の投稿サイト開いて裏垢、空亡にアクセスする。基本的に空亡のアカウントは作品の捨て置き場。作り終わった作品を気分で上げているだけの場所だ。何やら最近よく閲覧されているようで、よくDM、チャット機能を開くと未返信のメッセージがずらりと並んでいる。しかし、一つだけ。ただ一つだけ返信済みのものが一つだけ見つけた。

 

 

 

 Amia『ヤッホー。まだ起きてる?』

 Amia『明日学校来るなら、ちょっときてほしいところがあるんだけど』

 

 空亡『絵を描いてた。起きてる』

 空亡『行く理由は無かった。けど、瑞希が望むなら』空亡『行こう』

 Amia『じゃあ、明日。登校したら授業始まる前に屋上まで来てよ。待ってるね』

 空亡『ん。了解』

 

 ………………やってるねぇ。やっちまってるねぇ。

 弁明の余地なくやってしまった。ミク(⬛︎⬛︎)がスマホ越しにセカイから笑って見てるような気がする。知ってて誘導したんだろうけど、これは恐ろしいことをした。

 学校の始業のチャイムが鳴り、担任の教師が教室へ入ってきた。

 

「出席取るぞー、席付けー」

 

 暁山瑞希にはおそらくバレた。面倒なファンだったらどうしようか。私を神と崇めるタイプの面倒なファンには出来れば関わり合いになりたくない。そうなると、私は暁山瑞希を手放さなければならないだろう。

 

 …………最悪でないことを願おう。

 

「宵崎玲音ー、居るかー?」

「……」スッ

「お、珍しく出席か」

 

 出席確認とHRが終わり、カバンを持って学校の屋上へ向かう。

 

 この学校に入学して一年以上在籍しているが、屋上には初めて立ち入る。そもそも施錠されていなかっただろうか? 

 

 屋上への戸を開く。扉の向こうにはピンクのサイドテールを風に靡かせる暁山瑞希ともう1人、見知った顔の男子生徒がいた。紫色の少々長めの外ハネヘアーで若干前髪テールのようになっており、二ヶ所のみ水色のメッシュが入った特徴的な髪型をした男子生徒。

 

「やあ、玲音。来たね」

「……」コクコク

「久しぶりだね。宵崎さん」

「…………神代類」

「おや、僕のことを覚えていたのかい?」

「…………覚えてる、だけ」

「なになに? 玲音と類って知り合いなの?」

 

 瑞希の以外と言いたげな反応も無理はない。と言うか、私と神代類に特に大きな接点はない。強いて言うなら──

 

「ああ。彼、宵崎さんは去年同じクラスだったんだ」

「……元クラスメイト」

「ええ! そうだったの?」

 

 そう。一つ上の学年である神代類と私は元クラスメイトである。まあ、神代類が転校してきたのは2月ぐらいだったから、たかだか1ヶ月ちょっとではあるが。

 しかし、なぜ私が1年生なのに、神代類が2年なのかって? それは至って簡単なことだ。

 

「…………私、留年してる」

「学校に来なさすぎて、宵崎さんは留年してしまったみたいでね」

「え、でも。留年生は出席で最後に……あ」

 

 そう。この学校の出席順は苗字の頭文字の五十音順で並んでいる。

 私の苗字は宵崎なので、ほぼ確実に後半になる。そして、今回のクラスには私よりも後ろの頭文字を持つ苗字の人間がいない。よって、私は留年生だとしても特に違和感のない席順になっている。

 

「ってことは、玲音は本当なら玲音先輩だったかもしれないってこと?」

「そうなる」

「……」コクコク

 

 まあ、そうだとしても後輩に慕われるようなことはないだろう。そんな良い先輩が出来るとは思っていない。

 

「…………神代類。何故?」

「何故僕がここにいるか。について問うているのかな? フフ、それは──」

 

 スケッチブックのとある1ページを私に向かって突き出す。……なになに。

 

 

『人はいずれ何処へゆく

 赤き血携何処へゆく

 廻が定めなら

 死は何処へ誘うのか』

 

 ……これ、私が書いたやつだ。でも、何故神代類が……。まさか暁山瑞希が、

 

「瑞希がこのスケッチブックを落としたのを見かけてね。その時に開かれてた場所がここだったんだ。僕はこの詩に心を打たれた。なんて良い詩なのかと。人の軌跡を描き、人の終わりを死で終わらせず、また巡り会う奇跡。僕はこの詩から得たインスピレーションを元にしたショーがしたいんだ」

「……」

 

 暁山瑞希が横流ししたわけではないらしい。布教まがいのことをしたんじゃないかと思ったが、そうでもないようだ。話を聞けば、神代類は自分の創作への意欲をこの詩に刺激され、私と話がしたくて暁山瑞希を介して接触を図ってきたと。

 なるほど、理解できる。神代類は私と同類のようだ。好きなものが好きで、好きだから突き詰めたい、好きだから表現したい。そう言う人種。

 本来なら、別に許可も取るどころか好きにしろと言いたいけど……付き合っても良いかもしれない。というか、なんでその詩なんだ。もうちょっと別のものがあっただろうに。なんでそれだったんだ。

 

「類、玲音が若干引いてるよ。加減を……」

「フフ、瑞希にはそう見えるのかい? 彼は僕と同類の人間だと思っている。好きなものが好きで、好きだから突き詰めたい。好きだから表現したい。彼、宵崎玲音もそう言う人物さ」

「……」コクコク

「そうでないと。作品のために学校に来ない。なんてことはしないだろうね」

「……」コクコク

 

 いや、留年は流石に姉さんに怒られたけどね。せっかくちゃんと入ったんだから、しっかり行った方がいいって。

 

「宵崎さん。どうか、少しだけ僕のショーに手を貸してくれないか?」

「……別に構わない。今日は、気分がいい。から」

「それは良かった。じゃあ、少しミーティングをしよう」

 

 別に手を貸すのは構わない。私の詩を気にいる人は一定数いるし、私が知らないだけで引用されていることもあるみたいだし、二次創作とかができるなら好きにしてほしい。

 それに、手を貸すことで、その先にある風景。ショーからの視点で何か良いものが見えるかもしれない。

 

「そう言えば、玲音」

「…………?」

「玲音の書いてた絵って、空亡の絵と一緒だよね」

「……気のせい」

「……そっか。じゃあ、ボクと玲音の秘密だよ?」

「……助かる」

「なんの話をしているんだい?」

「んー、玲音の秘密の話?」

「…………」コクコク

「フフ、そうか。とりあえず、軽いミーティングを始めよう。まず、やる場所なんだけど──」

 

 合作か。久しぶりにやる行為だ。今回はどんな作品ができるだろうか。ショーが見せる輝かしい世界(景色)に、私は何を感じるだろうか。

 今から想像するだけでも胸が躍る。ショーの終わりと、その切なさが私にどんなインスピレーションをくれるんだろうか。

 

「…………ふっ」

「────と言う感じのショーを考えてるんだけど、どうだろうか?」

「……ふふ」

「話は聞いてくれると嬉しいんだけど」

「……! ……?」コテッ? 

「じゃあ、初めから話すよ。次は聞いてほしい」

「……」コクコク

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