深灰と赤紫の糸   作:空白零無

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天馬司のセリフを一部変更しました。






穿つ醜い透明

 

 

 ガヤガヤと賑わいを見せる野外舞台の観客席。

 その後方から私はワンダーランズ×ショウタイムのショーを見ていた。

 派手な演出に、クオリティが高めの曲芸。見ている観客達も笑い。何より、演者である彼らが笑っている。

 とても楽しそうなショー。本来であれば、暁山瑞希も来る予定だったんだが、バイトのシフト的に無理だったそうだ。代わりに姉さんを誘っては見たものの、どう見ても寝不足そうだったので寝かせてきた。

 個人的には昼夜逆転は構わない。しかし、しかしだ。いくら作曲にのめり込んだとしても、アイディアが湧いて溢れてくるものだとしても、寝不足はよろしくない。頭が疲れたままでは、良い作品は生まれないし、スランプの原因だ。そして、そのスランプに悩まされて長くスランプが続く。一度経験がある身としては、しんどいのでもうなりたくない。

 うまく眠れないからというのもあるが、睡眠導入剤を飲むのはそういった原因もある。どうせ作れないなら休めばいい。切り替えは大切だ。

 そういうわけで、私は一人で見にきた。願うことなら、このショーを姉さんや暁山瑞希に見せたかったな。

 

 観客席には笑顔が溢れる。なんともいい光景だろうか。……チクチクと過去を刺激されるが、まだ大丈夫だ。何せ、夜に姉さんの抱擁のおかげでメンタルはすこぶるいい調子だ。スキンシップが精神的に良いというのは聞いたことがあったが、本当に効果があるとは……。

 姉さんに定期的に抱きつくのは迷惑になりかねないので、暁山瑞希で試してみよう。効果があるなら姉さんの代わりに定期的に抱きつかれて欲しい。

 

 

 

 

 

 

 ショーが終わり、楽しかった余韻が会場に満ちる。楽しかった。良いものを見た。私の描いた背景もうまいこと使ってもらえた。これなら、私の描いた作品を預けてもいいだろう。煮るなり焼くなり、売って金に変えるなり好きにするといい。ネットでなら、空亡の作品だと言えばそこそこの値段で売れるだろうし。売りに出された時点で熱狂的な人達が金を積んで回収しようとするだろうから。

 

 舞台の裏側に回って、全員に声をかけてから帰ろう。何も言わずに去ってもいいが、せっかく良いものが見れたんだ。例の一つ行った方がいいだろう。

 

「あっ、……」

「……?」

 

 草薙寧々。物静かだけど、舞台での実力は確かで。歌も踊りも演技もできる。そして、あのネネロボを操るロボット操縦者でもある人物。

 

「……草薙寧々」

「な、なによ」

「……お疲れ様。良いものを見た」

「……そう」

「お、宵崎じゃないか!」

「やっほー」

 

 天馬司と鳳えむ。神代類以外の全員がいる。

 楽しい、良いショーを観させてもらったことを伝えて合作の申し出に感謝を伝えた。久しぶりの合作は楽しかったよ。

 

「……座長、天馬司。あの背景、は。好きにしていい。売れば、そこのその値には、なる。と思う」

「そんなことするわけないだろ!! あれは、オレたちと宵崎が一緒に作ったショーの一部だ。そう易々と手放す気はない!」

「……そ」

 

 声量が大きいから頭に響く。

 ……眩しいな。神代類は、良い仲間を見つけた。……羨ましいよ。

 

「……神代類、は?」

「類なら、撮った映像の確認をしてると思う」

「……わかった。改めて、合作。ありがとう。楽しかった」

「おう! またやろうぜ!」

「……ん」

 

 考えておくよ。

 

 あとは、神代類に挨拶をするだけだ。草薙寧々から教えてもらった場所へ向かうと、言っていた通り。ドローンで撮っていたらしい映像の確認をしていた。

 

「…………神代類」

「ん? ああ、宵崎さん。どうしたんだい?」

「……お疲れ様。言いに来た」

「そうか。宵崎さんもお疲れ様。どうだい、僕の仲間達は」

「…………」

 

 どうだ、ね。……正直に言うと

 

「……羨ましい、よ。明るくて、前に進もうとしてる」

「フフ、そうか」

「……私は、怖い。から、誰かとは、無理」

 

 だけど、羨ましいと思った。一緒に作品を作れる仲間がいて、その作品を作りながら自分を成長させられる友がいる。今の私にはとても眩しいけど、嫌にはなれなかった。

 

「良ければ、君も一緒にショーを作るかい? 以前、司くんからも誘われていたけど、どうだろう」

「……」フルフル

「そうか。でも、また。一緒に作品を作ろう。僕も宵崎さんと楽しいショーが出来て良かったよ」

「……また、ね」

 

 またいつか、ね。それに、羨ましいとは言ったが、この燻る感情がどんな意味を持つのかなんて、もうわからない。区別がつかない。だけど、これはおそらく羨ましいんだろう。

 

 ……いい物を見たあとは、たくさんのインスピレーションが湧いてくる。少し日守康作のところで少し絵を描いて帰ろうかな。

 

「ああ、あとこれを。ショーの映像だよ。視点は少し遠いけど、思い出として持っておくには充分なものだと思うよ」

「……ありがとう」

「これぐらいならお安い御用さ」

 

 それから少し話をして喫茶店へ向かった。今日はとてもいい日だ。

 

 

 

 

 

 ──と思っていた。喫茶店は休みだった。closeの札がかかっていて、メニューボードに貼り紙がされていた。

 

『◯月×日

 久方ぶりに出会った友人に誘われて釣りに行っております。snsでの通知はしていましたが、来られてしまった方々へは、お詫びを申し上げます。

 ◯月××日には開いておりますので、その日にまたのご来店をよろしくお願いします。

 

 

 店主 日守康作』

 

 ……日守康作は出かけているらしい。確か、そんな感じの話をしていたような気がしなくもないが……うん。話を聞いていない私が悪いな。仕方がない。出直すとしよう。

 

 たまには、姉さんにお土産を買って帰ろう。ケーキでいいだろうか? この辺りに新しく出来たらしいケーキ屋のアップルパイが美味しいらしいし、そこで何かしら買っていってもいいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 噂のケーキ屋に行ったが、アップルパイは売り切れていた。仕方がないのでショートケーキとチーズケーキ辺りを適当に買って帰った。

 今日はあまり良くない日だ。









突然ですけど、質問箱的なものって必要ですか?


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