深灰と赤紫の糸   作:空白零無

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白石杏の話し方がよくわかっていないため、セリフや会話には自信が皆無な作者でございます。






文化祭の季節(2)

 

 

「どう?」

「…………美味しい」

「でしょー。淹れるのは自信あるんだよね」

「………………後はダメ。蒸らさなさすぎ、熱すぎ、温度が足りない」

「時間通りやってるんだけど」

「……ダメ。やり直し」

 

 なんで私は紅茶とコーヒーの批評をしなきゃいけないんだ。カフェイン絶ってたのに……

 

「ごめんね。ちゃんと淹れれる人が思ったより少ないし、コーヒー飲める人が少なかったんだよ」

「…………コレ飲む。より、市販品のがマシ」

「市販品美味しいでしょ!」

「何がいけないってのよ」

「……全部」

 

 市販品が美味しいのは当たり前だ。企業がその分努力したんだから。私はあまり好みではないけど。

 

「……自分たち、で淹れたい。なら、もっと磨くべき」

「自分はやらないくせに何を偉そうに」

「…………」

 

 努力する気がないなら市販品でも買って出せば良いのに。市販品に劣るなら、他のクラスで市販の物を買って終わりだ。このクラスでわざわざ飲まなくても良い。

 それに、私は紅茶もコーヒーも自分で淹れられるし。コーヒーに関しては豆を挽いて淹れている。淹れれないわけじゃないし、日守康作のところで淹れれるぐらいの実力はある。淹れれるようになるまで、日守康作からすごくダメ出しされたけど。それに、紅茶はたまにだがまだダメ出しされている。

 

「…………変わって」

 

 市販の豆だ。品種はブルーマウンテン。なんでわざわざ高いものを……。まあ、良いか。

 電気ケトルは熱めでいいか。酸味強いし。

 フィルターをドリッパーにセットして、粉を入れて平し、サーバーにセット。粉の中心から描くように全体にそっとお湯をのせていく。

 コーヒーの粉全体にお湯が染みわたり、サーバーに数滴コーヒーが落ちてきたら手を止め、60秒ほど蒸らす。

 蒸らしたら粉の中心から小さな円を描くように、そっとお湯を注ぐ。

 ドリッパー内のお湯が3分の1ほどサーバーに落ちたら、次のお湯を注ぐ。そして、お湯が少し落ちたら、残りのお湯をすべて注ぐ。

 

 あとは、コーヒーカップに移して白石杏に渡す。

 

「……ブルーマウンテンです。まずはブラックでお試しください。当品種はバランスの取れた味わいが特徴的で、絶妙な苦味、酸味、コクをそのまま楽しむことができるかと思います。もちろん、砂糖やミルクを混ぜても美味しくいただけるので、胃が弱い場合は混ぜてお飲みください」

「え、私?」

「…………味、わかる。でしょ?」

「わかるけど。じゃあ、いただきます……美味しい」

「……」

 

 美味しく淹れたんだから、美味しくないと困る。

 

「豆の知識もそうだけど、何処かでバイトしてるの?」

「…………してない。ただの、常連」

「にしてはかなり上手ね。何処の喫茶店に?」

「……archaic(アルカイック)

「へえ。あそこの常連なんだ。ってことは、日守さんは知ってるよね? 元気?」

「…………元気」

 

 元気だろう。この前釣りに行ってたし。

 

「知ってる味だと思ったんだよ。日守さんから教えてもらったんでしょ? あの酸味を抑える淹れ方」

「…………ん」

「たまにあのお店行くんだけど、まだあの味に近づかなくってね。いや、私のところは私のところの味があるんだけど」

 

 白石杏曰く。日守康作は、白石杏の父親にコーヒーの淹れ方を教えた人らしい。今年は、意外な人と人のつながりに驚くことが多いな。

 

「…………日守康作。コーヒーだけ、合格もらった」

「へー、すごいじゃん。紅茶は?」

「………………たまに、ダメ出しされる」

「ってことは、結構な腕前ってわけね」

 

 あまり自分で紅茶淹れることないし。成長はない。模倣も万能ではない。技術の完全な模倣はできたことがないので、本当に経験の差だ。動きだけなら日守康作の動きはできる。でも、あの味までは持っていけない。

 

「まあ、でも。日守さんに淹れ方を教わってて合格貰えてるなら良い腕よ。豆の知識も納得」

「……」

「手が空いたら厨房もお願いして良い? コーヒーと紅茶の補充」

「…………構わない」

 

 構わないんだけど、私が休む時間ある? 

 

「じゃあ、私たちはどうしたら良いの?」

「そうだね。私と宵崎さんで淹れたコーヒーとか紅茶を出す感じになるかな。ジュースとかは市販品でも良いとして──」

 

 仕切るのが上手な人だな。私は話しすぎて少し喉が疲れた。しばらくは言葉を発したくない。

 

「──私と宵崎さんが時間交代で入ることになると思うから」

 

 まって、やはりそれって私は休めないと言うことでは? 

 

「宵崎さん。何処か回る予定とかある?」

「……」フルフル

「ちょっと私、校外から相棒が来る予定があって一緒に回ろうかと思ってるんだけど」

「………………………………仕方ない」

 

 友人との時間は大切だ。その時間を噛み締めると良い。

 

「ごめんね?」

「…………別にいい」

 

 回るほど親しい人物は居ないし、暁山瑞希も来ないのであれば私が回る理由もない。

 特に創作意欲を刺激されるわけでもない。人混みでごった返す中、外へ放り出されるよりは遥かにマシだろう。

 この際、ずっと教室にいても良いかもしれない。困ったら文芸部の部室に行けば良いし。

 

「──ってことだから、当日はよろしくね」

「……」

 

 途中から話を聞いていなかったが、まあ良いか。困るほどの内容なら確認するだろうし。

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