UA7000突破しました。ありがとうございます。
誤字報告も最近増え、報告してくれる読者の皆様。ありがとうございます。どうしても確認漏れがありますので、助かってます。
寒い季節がやってきた。
11月ともなればもう私は凍えている。モッズコートの下に長袖のシャツを着込み、暁山瑞希らと買いに行った裏起毛のフレアスカートにタイツを履いている。
今日は外でスケッチでもしようと出てきたが、寒い。ものすごく寒い。気温が10°を下回り始めて外に出たことを後悔している。
────!
──!!
「……?」
何やら嘆く様な声が聞こえる。……ああ、パチンコ店か。一般会社員らしい人間が膝をつき、項垂れている。
なんて哀愁漂う人物なんだろう。その横では項垂れる人物の背をさすりながら憐れむ人がいる。
「────だから、あの台はやめとけって言ったんだ」
「──でもよお! 昨日、二十万突っ込んだんだから帰ってくるはずだったんだよお! 俺の二十万!」
どうやらパチンコ店で使った分の金額を取り戻そうとして、全て飲み込まれたらしい。それにしても、あの体勢に雰囲気…………いいな。
描きたい。絵にしたい…………バレなきゃいいか。
すぐ逃げられる様に逃げ切りやすい場所に移動して、呼吸を整えて少しずつ浅くし、意識を分散しつつ完全に離散してしまわない様に制御。スケッチブックを構えて鉛筆を走らせる。
ここまで見事な項垂れと哀愁を漂わせるギャンブラーはあまり見ない。そもそもこの辺りにあまり来ないのが原因だろうとは思うが、一期一会というやつだ。次はいつこんな光景が見られるかわからない。すこし、気配を隠しながら
……頭の角度は……。首の力の入り具合は……遠くて見えないな。
「──! 見せ物じゃねえぞ!」
「……」
あ、バレた。よし、撤収。
速やかに裏路地に入って人の多い場所へ行き、人混みに紛れる。あの姿勢からなら追ってくるのは時間がかかるだろうし、慰めてた方は追ってこないだろう。だとしても、少し様子をみよう。
近場にあったファミレスに入ってコートを脱ぎ、前髪をヘアピンで横に留める。メニュー表で顔を少し隠しながら店員にドリンクバーとフライドポテトを頼む。あまり長居をするつもりはないし、ポテト食べて一息ついたら出よう。
席を立ってドリンクバーでキャロットジュースをコップに注ぎ、席に戻る。
スケッチブックを広げて、さっきの光景を思い出しながら続きを描こう。確か、手の位置は──「玲音?」……?
「……姉さん?」
「何してるの?」
「……」
何をしてると言えばいいんだろう。スケッチブックを広げたばかりだから絵を描いてるわけでもないし、ドリンクは取りに行ったけど手をつけていない。ポテトもまだ来ていないし…………。
「……?」コテッ
「あ、玲音だ。やっほー」
「玲音じゃない。って、暑くないの。その格好」
「…………瑞希。と、東雲絵名」
なぜこの二人もここに……。
「……三人の知り合い?」
「うん。クラスメイトだよ」
「ちょっと瑞希と服選んだ時にね。奏も玲音と知り合いなの? ……まって、もしかして」
「……わたしの弟」
「……こんにちは。姉さんがお世話になってます」
「ってことは、空亡って」
「………………………………私」
「あんただっムグッ!」
東雲絵名の声で注目を集める前に席を立って口を塞ぐ。
「…………静かに、ね?」
「……悪かったわよ」
「玲音、座ってもいい?」
「……どうぞ」
暁山瑞希が私を奥にやる様に隣に座り、立っている全員に座る様に言う。そして、私の席は『25時、ナイトコードで』のメンバーが加えられた。
「まさか、本当に姉弟だったとはね……」
「え? 気づいてたの?」
「まあ、苗字一緒だし。でも、もしかしたら違うのかもーって考えもあったわ」
「奏と玲音って似てると思うんだけどなー」
似てるとはあまり言われない。双子だが、私と姉さんは二卵性双生児。見た目の違いに関は一卵性ではないので物凄く似ているとかはない。
もちろん、私が姉さんに似せにいけば似る。笑い方とか、話し方とか、表情とか。
「玲音と奏が何かに集中してる時の顔とかそっくりだよ」
「……初めて言われた」
「……」コクコク
「……この中だと、それぞれ見たことあるのは瑞希だけだろうし」
大体言われるのは、髪色が似ているぐらいだ。ただ、おそらく大半の人間は髪色が似る。取ってつけた様な家族要素だ。
「わたしも玲音も髪色が似てるとしか言われないし」
「…………基本的、に。私、姉さんに似てない。としか言われない」
「髪色って。玲音はダークシルバーアッシュで、奏はシルバーアッシュでしょ?」
「……髪色、違うのに。ね」
同じく銀色をベースにした色ではあるが、私は暗めの銀色で姉さんは明るめの銀色だ。私の髪は面倒だから整えていないし、それこそ最低限だ。姉さんの髪はお風呂上がりに私がブラッシングしたり、ヘアオイル使ってみたり、ドライヤーで乾かしたり。自分の髪よりも気を遣っている。
別に姉さんがズボラだとかそういうことはない。単純に私が姉さんの髪を触ってるのが好きだから、私からお願いしてさせてもらっている。
「あー、玲音に奏の話題はあまり降らない方がいいよ」
「? なんでよ」
「止まらなくなるから」
「……わたしが恥ずかしい」
そもそも、私の髪と姉さんの髪が似てるなどありえない。目が腐ってるんじゃないだろうか。眼科に行くよう勧めたいところだ。
『──
「……」
それもそうか。……? 朝比奈まふゆと目があった。表情のない顔。整っている容姿もあって、人形の様な雰囲気もある。それに、纏う空気をどこかで……
──でもね。今日でさよならなんだ。
「……失礼」
「? ……なに」
届いた料理に手を伸ばす朝比奈まふゆの手首を軽く掴み、手で感覚を確かめる。………………特に違和感は感じない。血の匂い香ってくるわけでもない……よかった。
「……」
「どうしたの?」
「……なんでもない。気のせい、ごめん、ね」
「……別にいい。宵崎さん」
「……朝比奈まふゆ。玲音、でいい。宵崎、二人いるから」
「……そう。聞いてもいい?」
「……構わない」
さっきの行動で気になることでもあったのかな。単純に確かめたかっただけだ。深い意味はない。
「私たち以外に、この席に誰か居る? 初音ミクとか」
「……」
「ちょっ、まふゆ」
なんだ、違うのか。あの行為に対しての疑問なら答えにくいけど、
「居るよ。コレ、の中に」
朝比奈まふゆにはさっきの
『あちゃー。まさか、
「この声、美術館で聞いたあの声」
「たまに聞こえる声だ」
「…………」
『……そう非難する様な目を向けないでくれよ。
「気のせいかと思って聞き逃してたけど、気のせいじゃなかったんだね」
「…………意外と聞かれてる。みたいだけど?」
『……わー。よかったね。友達になれるんじゃない?』
類は友を呼ぶと言うやつだろうか。セカイに共鳴する人がこんなに近くにいるとは……。
「……ミクが居るということは、玲音にもセカイが」
「…………ん」コクコク
私のセカイは人を招ける様な場所ではない。
長居をする予定はなかったけど、結構居る様な気がする。会計を済ませて帰ろう。もう近くにはいないだろうし。
「…………退いてくれると助かる」
「あれー? なんで?」
「…………ドリンクバー」
「絵名、玲音の飲み物とってきてくれない?」
「なんで私が、……ああ、わかった。何飲む?」
「……」
「帰ろうとしたんでしょ? 会計済ませて」
「……」
「ダメだよ。まだ帰さないよ」
「瑞希」
「このまま行かせると勝手にボク達の分まで払って帰るよ」
「…………玲音。だめ」
「……はい」
席が一緒なんだから一緒に払うしかないんだよ……。現金の持ち合わせないんだけどな……。
それから姉さん達と混ざって話をしていた。
最近増えた新メニューの味がどうとか、作り終えた曲の伸びがどうとか。私は外部の人間だからあまり話に入ってはいないけど、姉さんの仲間が見れたのでよかった。
会計は一括で払って、自分の食べた分は現金を手渡されたが、私は財布を持ち歩いていないし、持っていないので、結局姉さんのほうに入っている。
表面は楽しそうだけど。みんな、私と同じなのかな。何かに囚われた人たち。姉さんは私と父さんに。私は過去に。辛くて、消えたくて、でも生きている。
「……姉さん」
「なに?」
「……楽しい?」
「……楽しいよ」
……そうか。姉さんは、それでも楽しいことがあるのか。……そう、か。
タグに曇らせを追加しましたが、曇っていくと言うよりは、元々曇っている感じです
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