深灰と赤紫の糸   作:空白零無

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誤字報告助かってます。ありがとうございます。


君が命を

 

 

『……⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(マスター)。どこに行くんだい?』

「……鹿野ちゃん、のところ。知ってる、でしょ」

『本当に行くのかい?』

 

 行く。この日は、この日だけは外してはいけない。

 

『それに、精神的に大丈夫なのかい?』

「……花、置いてくるだけだから」

『なんともないといいね』

 

 駅に入ってコンビニによる。40分ぐらい電車に乗ることになるので、飲み水とミント系の飴を買っておこう。

 

「玲音。やっほー」

「……瑞希。珍しい」

「玲音も駅にいるなんて珍しいね。少し遠出するの?」

「…………友達のところ」

「へー。遠くに友達が。ネッ友?」

「……違う。……中学の友達。一緒、くる?」

 

 鹿野ちゃんに花を供えに行くだけだ。別に特別なことではないし、死人に口はない。嫌がるなんてこともないだろう。

 

「えーいいよ。遊びに行くんでしょ?」

「…………違う。もう、遊べないから」

「それって、どういう」

「…………見た方が早い」

「わ、あっ。ちょっと」

 

 暁山瑞希の腕を掴んで引き、飴と飲み物を購入。そのまま、二人分の切符を買って半ば無理やり連れて行く。

 今の私に、話す事はできないから。

 

 

 

 

 

「はあ。ボクの意見は無視かー」

「……ごめん」

 

 電車の中で肩を落とす暁山瑞希。説明して私の精神状態を悪くするより、直接きて見てもらった方が早い。

 それに、いざとなったときは近くに人がいた方が助かる。

 

「いいけどさ。今日、特に用事ないし。今後はやめてよね」

「……やる予定はない」

「気をつけてね」

「………………ん」

 

 少し怒っているようだ。

 

『ごめんね? ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(マスター)の友達さん。ミク(ボク)には止められないんだ。付き合ってやってくれ』

「そうはいうけど。ボク部外者だよ? いいの?」

『大丈夫だよ。友達さんが想像していることは起こらないから。それに、信頼されてるんだねえ。まさか、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(マスター)が人を一緒に連れて行こうとするなんて。どんな風の吹き回しだい?』

「…………説明するより、見た方が早い」

『だって。すまないけど、付き合ってあげてくれ。面倒な子でごめんね?』

 

 ミク(⬛︎⬛︎)が暁山瑞希にたいして謝罪している。私もこれに関してはすまないと思うが、口頭で説明はしきれない。

 

「それで、どこまで行くの?」

「……あと15分移動。そこからバスで30分移動」

「あまり遠くはない感じかな」

「……ん。遠出は姉さんと。あと、誰かと。じゃないと迷う」

「方向音痴なんだっけ?」

「……ん」

 

 まあ、年に最低4回は行く場所だから迷子になることはないけど。

 

「そういえば、今日は髪の毛結んでるんだね。前髪も退けてあるし」

「…………お世話に、なってるから」

 

 なんなら菓子折りも持っている。持って行く度に要らないと断られるけど、その度に持って行ってる。

 いつもは面倒だから髪の毛なんて態々とかさないし、髪を結ぶこともない。口元は寒いから隠したままだけど、会うときはちゃんと顔を見せる。

 

「なら、ボクも挨拶した方がいいかな。玲音がお世話になってますって」

「……好きに、して」

 

 それから、移動時間は瑞希と話ながら向かった。

 電車に揺られて移動し、そこからバスに乗り換えて移動する。

 

「田舎っぽくなってきたね」

「……町から、少し外れるから、ね」

 

 バスから降りて、近くの花屋に寄って菊の花を買って目的地まで少し歩いて向かう。

 

「意外と歩くんだね」

「……これでも、あまり歩かないルート」

「……もしかしてだけどさ。その友達って」

「…………ん」

 

 見えてきた古民家のインターホンを押して、中から出てくる人を待つ。

 

「はーい、どなた。まあ、玲音くんじゃない。そろそろ来るんじゃないかと思ってたわぁ。お友達?」

 

 白髪混じりのおばあさんが古民家の戸を開けて顔を出す。

 

「……はい。付き添いです」

「あらまあ。ということは、やっぱり……」

「……はい。まだ、……」

「そうだったの。辛いなら、無理に来なくてもいいのよぉ?」

「…………向き合うことは大切だ。と、主治医から言われてますので」

「そう、大変なのねぇ。お外寒いでしょお。さあ、さあ。中入って。あの人も中に居るから。お友達もどぞぉ」

「……おじゃまします」

「おじゃまします」

 

 暁山瑞希の手を引いて中に入る。

 中は古めかしく、歩けばギシギシと床が鳴る。

 

「広いお家だね」

「…………地主さん。だから、ね」

 

 鹿野ちゃんの祖父母の家は元々駅の近くの地主で、土地貸しで生計を立てている。それは今も変わらずだそう。

 

 客間まで行くと、鹿野ちゃんの祖父が待っていた。

 

「やあ、玲音くん。君は、どなたかな?」

「はじめまして、暁山瑞希です。今日は玲音の付き添いで来ました」

「そうか。暁山瑞希と言うのかい。覚えたよ」

「どうぞ、お茶です」

「ありがとうございます」

「……ありがとうございます。これ、どうぞ」

「態々ありがとうねぇ。持ってこなくてもいいのに」

「……そうも、行きませんからね」

 

 菓子折りを渡してお茶をいただく。取り繕ってはいるが、暁山瑞希も緊張しているのか。対人は強いと思っていたが、初対面ならそうでもないのかもしれない。

 

「あまり、精神状態は良くないんだってね。大丈夫なのかい」

「……薬で安定はしています」

「そうかい。……ワシに玲音くんの苦しみは理解してあげられない。だが、一つ言えることがある。……人を亡くした苦しみは、時間が解決する。いつか、ちゃんと向き合えるから。あまり悲観しすぎてはいけないよ」

「……はい」

「あの子も誕生日だ。会ってくるといい」

「……瑞希も来る?」

「ボクがあってもいいのかな……」

「暁山さんも会ってあげて。玲音くんにお友達がいるってわかれば、あの子も安心できると思うの」

「……こっち」

 

 私は決まった時期にここへ来る。2月14日、6月12日、8月の半ば。そして、今日。11月22日には絶対に来ている。

 

 暁山瑞希の手を引いて裏に周る。家の裏には墓が建てられていて、三つの墓石が建てられている。先祖のものと、親戚のモノ。そして、新ものにはまだ名前が一つしか記されていない。

 その墓の前しゃがみ、新しい方に刻まれた名前を確かめて菊の花を供えて、鹿野ちゃんが好きだったアーティストのCDの新曲を持ってきた。

 

「……来たよ。鹿野ちゃん」

 

 刻まれた名前は、柊彩ただ一人。母親の方は隣の墓に入れられていて、鹿野ちゃんは一人この墓の中にいる。

 墓石に触れても硬くて冷たいだけで、人肌のような柔らかさや温かさはない。

 

 ──―玲音は湯たんぽみたいに暖かいし。くっついていれば、玲音も暖かいよね。

 ──―二人だと、暖かいね。玲音。

 

「…………一人で、死んでったくせに」

「……玲音、大丈夫?」

「……帰ろう。長居は、あまり良くないから」

「え、あっ。ちょっと」

 

 長居は私の精神的によろしくない。誕生日の贈り物と花は供えた。

 鹿野ちゃんの祖父母には、帰りの挨拶をして帰る。「また来ます」とだけ伝えて。

 

 帰路に着く中。私も暁山瑞希も特に会話はなかった。私も会話する気分にはならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 Amia「ねえ、K」

 

 K「なに?」

 

 Amia「柊彩ってどんな人だったの?」

 

 K「……調べたの?」

 

 Amia「違うよ。……今日、一緒に会いに行ったからさ。どんな人だったんだろうって」

 

 K「……わたしに聞くより、空亡に聞いた方がいいと思う。わたしはあまり柊さんと関わったことないから」

 

 Amia「そうなんだ」

 

 K「……空亡の様子はどうだった?」

 

 Amia「様子? んーいつも通りと言うか、少し気を張ってたと言うか。あー、後病院がどうとか言ってたっけ」

 

 K「……そう。おかしな様子はなかった? 息苦しそうにしたり、その場でうずくまることとかなかった?」

 

 Amia「なかったよ。ただ、乗り物酔いで気分は悪そうだったかな」

 

 えななん「お待たせー。ごめんなさい。遅れちゃって」

 

 雪「ごめん。私も遅れた」

 

 K 「……わたしたちが早かっただけで、二人はいつもの時間には来てる」

 

 Amia「ボクがKにちょっと話があっただけだから、二人とも遅れてないよ」

 

 えななん「二人がもういるから、今日は早めに集まる予定かと思ったじゃない」

 

 Amia「いつもの時間だよ。この時間からズレることなんて基本ないし」

 

 雪「……K。今日は配信しながらなんでしょ? 始めよう」

今後の投稿について

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  • クオリティはある程度保証される偶数日更新
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