深灰と赤紫の糸   作:空白零無

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みなさま、アンケートのご回答ありがとうございました。アンケートの結果、偶数日更新となりました。

ということで、次回の投稿は6月22日となっております。


私ってなんだっけ(3)

 

 

 高文祭用の短編小説も描き終わり、学校が終わるまで部室で時間を過ごした。

 

 これからやることもないし、買い出しでもして帰ろうかな。

 

 ──ピピピッ! ピピピッ! 

 

 ? 電話だ。誰から……暁山瑞希からか

 

「……もしもし。宵崎玲音、です」

『もしもし玲音? 今どこにいるの?』

 

 電話に出て聞こえたのは少し焦っているような声音の暁山瑞希だ。どうかしたんだろうか。

 

「…………学校」

『そっか。ちょっと協力して欲しくて』

「……緊急?」

『結構緊急。実は、まふゆと連絡がつかなくて、心配だから今みんなで探してるんだ』

 

 サークルメンバーで朝比奈まふゆを探しているらしい。私に電話をしてきたのは人手が欲しいと言うことか。わかった。

 

「……わかった。私も探す」

『助かるよ。ボクと絵名は駅周辺を探してるから、玲音は──』

「……大丈夫。少し、あてがある」

『そうなの?』

「……ん」

 

 あてと言うか、スマホを持っているならだけど

 

「……ミク(⬛︎⬛︎)

『はいはい、どうしたの?』

「……朝比奈まふゆの位置情報」

『りょーかい。えーっとねー。……よし、見つけた。ここからだと、そこそこ離れてるね』

「……共有は?」

『そんな器用なこと、出来たらもうとっくにやってるよ。案内はするから、歩いて欲しいな』

 

『……玲音、まふゆに何かしたの?』

 

 おっと、通話を切るのを忘れていた。電話の向こうから怪しむような暁山瑞希の声が聞こえる。

 

「……特には、なにも」

 

 やったのは私ではない。ミク(⬛︎⬛︎)だ。それよりも発見が先だろう。

 

「……朝比奈まふゆを探す。……見つけたら、連絡する」

『いろいろ聞きたいことはあるけど、今はいいや。まふゆをよろしくね』

「……ん」

 

 通話を切って、胸ポケットにしまう。落とさないように気をつけないと……

 

「……ミク(⬛︎⬛︎)。最短ルートで、よろしく」

『はーい。んーっと、ここをまっすぐ行って』

「……ん。わかった」

 

 距離が空いて、補足できなくなったら面倒だから走って向かおう。マスクを外し、一度深呼吸をして走り出す。

 人にぶつからないように人の少ない場所は……ないな。裏路地に入ろう。

 

「……ミク(⬛︎⬛︎)

『大丈夫。そこから行っても誤差だよ。疲れるルートにはなるけど、行けそう?』

「……可」

『はーい。じゃあちょっと裏路地を駆け抜けようか』

 

 室外機を避け、場合によっては室外機やダクトを蹴って飛び越えたり、狭い道にある障害物(ゴミ箱やゴミ袋)を走って飛び越える。

 

『裏路地から出て、右側』

「……ん」

 

 このまま走って右に、っと。犬、しかもリード付きが表通りに繋がる道に見える。ぶつかりそうだから、

 

 壁に向かって飛んで、そのまま蹴って表通りに飛び出る。足から降り、そのまま転がって受け身を取る。

 

「ちょ、大丈──「失礼。急いでる、じゃ」ちょっと!」

 

 犬の飼い主であろう人に心配されたが、別に怪我はない。体制を立て直して目的地へ走る。

 

『このまま、まっすぐ行ったところにある小さい公園付近に反応が──』

「……ん」

 

 意外ともう近くにいるようだ。そのまま人を避けながら小さな公園に向かって走り続ける。

 

 紫色のポニーテールに宮益坂女子学園の制服。そして、|今にも消えてしまいそうな不安定さを感じる雰囲気《鹿野ちゃんや私と似た同族の雰囲気》。

 見つけた。

 

「……私は」

「…………朝比奈まふゆ」

 

 思い悩む様子の彼女に声をかけた。別人の可能性もミク(⬛︎⬛︎)バイブレーション(分体との共鳴)により否定されている。

 

 少し驚いたような朝比奈まふゆは、私を見るや否や驚くような眼差しを向ける。

 

「…………玲音。どうしてここに」

「……秘密。……姉さん、瑞希、東雲絵名が探している。だから、私も手伝い」

 

 流石にスマホにウイルス擬き(⬛︎⬛︎の分体)を送り込んであるから、そのおかげで場所を探知したなんて言えない。

 

「……みんなが、私を探してるの?」

「……ん。心配してる、みたい」

 

 みんなが心配している。朝比奈まふゆを必要としている。姉さんが気にかけている。

 

「…………」

 

 表情が暗い。……この様子だと、家に帰りたくなかったり。状況が悪ければ……

 

「…………朝比奈まふゆ。姉さんたちは、あなたを必要としている。あなたが大切だから。……だから、頼ってあげてほしい」

「……玲音」

「……どんなあなたも、私は否定しない。あなたの選択を私は否定しない。それは、姉さんたちもそう。…………だから、あなたが大切にする自分を。守ってほしい」

 

 でないと、私の様(バケモノ)になってしまうから。

 

『朝比奈まふゆ。ミク(ボク)からも言わせてほしい。困ったら、「虚白ちゃん」ってミク(ボク)を呼んでよ。不思議な道具で助けるからさ』

 

 ミク(⬛︎⬛︎)は一体何をするつもりなんだろうか。不思議な道具とは一体……。

 

「…………姉さんたち。ここに呼ぶこともできる。どうする?」

「……大丈夫」

「………………そう」

 

 姉さんたちと会うと言う選択肢はないらしい。

 

「……お母さんと話してみる」

「…………光は、ある?」

 

 あなた(朝比奈まふゆ)が、今苦しいのはその母親のせいだとしてもか? 

 

「……わからない。それでも、……ぶつかってみる」

「…………そう」

 

 立ち向かうと決めたなら、私が口出しすることなんてない。

 

「…………逃げ場所には、なる。……朝比奈まふゆ、幸運を」

「……」

 

 覚悟を決めた様な顔をしている。不安や心配と言った表情も見え隠れしている。けれど、目の前にあるのは暗闇で足元は崖かもしれないし、もしかしたら見えないだけで道が繋がっているのかもしれない。

 今からそんな場所に足を踏み入れて進み始めるんだ。不安がないなんてことの方がありえないことだろう。

 

 そんな道を歩く人の休憩所に慣れればそれでいい。

 

 

 

 スマホを取り出して暁山瑞希に電話をかける。

 

「…………瑞希。朝比奈まふゆと会えたよ。……ん。……ん。心配、なのはわかる。…………でも、朝比奈まふゆは、立ち向かいに行った。私たちは、それを見守って、傷を癒すことしかできない。…………万が一、保険はかけてある。…………最悪は避けられるよ」

 

 現状、私に出来るのはここまでだ。だいぶ首を突っ込んだと思う。……背中は押した。私がきっかけではないんだろうけど、私はやれることはやった。保険もかけた。…………あなたは、人間のままでいてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰って夕食を作る。今日の夕食は親子丼だ。近所のスーパーで卵と玉ねぎ、安くなっていた鶏ももを買って来た。ネギは家に刻んで冷凍保存していた物があったので、味噌汁を作るときに余った分を親子丼に入れてみた。玉ねぎだって入れてあるし、問題ないだろう多分。

 

「……ん。大丈夫」

 

 味は問題ない。普通の親子丼だ。……あとは火を止めて蒸らせば完成。……早めにお風呂に入ろうかな。外で雨が降っているせいで頭も傷痕も痛いし、今日は早いところ寝よう。

 

「…………ミク(⬛︎⬛︎)。朝比奈まふゆ、大丈夫かな」

『大丈夫だとは思うよ。あっちのスマホには、あっちのミクや他のVOCALOIDがついてたし、ミク(ボク)なんかよりも立派な人達だ。ちゃんと導いていくだろうさ』

「……ミク(⬛︎⬛︎)は、導き手になれないの?」

ミク(ボク)は特殊だからね。得意じゃないんだ』

「…………ミク(⬛︎⬛︎)は大変だ、ね」

 

 得意じゃない。そういう割には、私はよくミク(⬛︎⬛︎)に助けられている。代わりに話してもらったり、私の話を聞いてくれたり。……病んで切り傷が増えた私の手を何も言わずに手当してくれたり。

 

「…………ミク(⬛︎⬛︎)は、私の助言者。困った時、に。話を聞いてくれる人」

『嬉しいこと言ってくれるじゃないか。……そうか。ミク(ボク)は、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(マスター)の助けになれてるんだね』

「……ん」

 

 助けになっている。それでも前を向いて歩けないのは私が弱いからだ。ミク(⬛︎⬛︎)のせいではない。

 

 不意にバタンッ! と姉さんの部屋の扉が開き、姉さんが飛び出してきた。

 

「まふゆが、近くに居るから」

 

 そうは言うが、外は雨だ。せめて傘を。……行ってしまった。

 

『! 本当だ。近くから反応があるね』

「……わかった。私も、探しに行く」

 

 外は雨だ。体を冷やして風邪でもひいたら大変だし、姉さんも雨に濡れて風邪をひいてしまう。

 

 とりあえず、夕食の準備とかは置いておいて、バスタオルをお風呂場から二、三枚持って来て玄関付近に置き、姉さんと朝比奈まふゆの分の傘を持って姉さんの後を追う。姉さん曰く、近くに朝比奈まふゆが居るらしく、ミク(⬛︎⬛︎)も分体の気配がするらしい。

 

 ざあざあと雨が降り、姉さんと朝比奈まふゆを探してあたりを見回す。

 

 少し離れた場所に人影が見える。見たところ朝比奈まふゆが姉さんに抱きついて泣いている様で、何かしら言っているが雨の音でよく聞こえない。

 

「……姉さん」

「玲音……」

「……玲音。私、……」

 

 朝比奈まふゆが私を見て何かいいたげにしているが、とりあえず傘を開いて二人を雨から守る。

 

「…………朝比奈まふゆ。頑張った。……今は、何も言わなくていい。………………姉さん、朝比奈まふゆを、休ませて」

「……わかった。まふゆ、行こう」

「……」

 

 朝比奈まふゆは母親にぶつかって来て。戦ったけどわかってもらえなかったり、否定されて来たんだろう。頑張った。よく立ち向かったと思う。私には、現実に立ち向かう勇気はないから。

 

「……お風呂。準備するから、玄関で体軽く拭いて。二人とも、濡れてるから」

 

 休ませなければいけない。ここまで疲れているだろうから。

 

 それに、朝比奈まふゆは頑張ったんだ。ご褒美に簡単なモノになるけど、デザートも用意しないとね。







朝比奈まふゆが宵崎家に家出しに参りましたね。まあ、自分で呼んでましたし、ちゃんと面倒は見ることでしょう。それも結構大切に。
ゆっくり休めるといいね。朝比奈まふゆさん。


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