色々調べながら、プレイしながらやっていきますのでよろしくお願いします。
深灰と赤紫の邂逅
「……姉さん」
部屋の扉を開けて中にはいる。
扉を開けた先には暗い部屋の中、パソコンと向き合う姉さんが音源ソフトを操っている。何かまた曲を作っているだろう。なら、邪魔してはいけない。
スケッチブックのページを一枚だけ千切って朝ごはんとお昼ご飯の所在を伝える手紙を書いて、持ってきた食事の下に挟んで置く。
今日は学校に行かないと留年してしまうから。
食事を届けたあと、玄関の戸を開けて外へ出る。相変わらず外の世界は眩しくて、立っているのがやっとだ。日差しというのは気持ちいいが、目に入ればただの毒。辛いだけ。
最低限の荷物だけを詰めた鞄を背負い直してマスクで口元を隠して学校へ向かう。
別に学校という存在に忌避感はあまりない。ただただめんどくさくて行きたくないだけ。
教室に入り、予習して終わった内容の授業を聞き、一人でお昼を食べて、また終わった授業を聞く。何の身にもならない。授業の内容を右から左に流しながらスケッチブックに今思いつく詩を形としてとどめて置くために書き連ねる。書いたものは時間ができたら剪定しよう。今は、泡のように浮かび上がって消えていくイメージたちに形を与えることが大事だ。
詩のパーツの書き留めを終えたら、イメージをラフ画にしていく。
今は明確なものが書けなくてもいい。私には書けないけど、この筆が覚えている情景を描いてくれる。
「────宵崎! 聞いてるのか!」
「……!? …………?」コテッ?
「……よし、聞いてなかったんだな。……他のやつ。読めるやつはいるか?」
何かで呼ばれた。そして、そのまま他に指名が行った。用がないならあまり呼ばないでほしい。
「……はあ。これだからウチの天才はマイペースで、困るんだ」
何か聞こえたが、スルーでいいだろう。気にする必要などない。ちゃんとテストで点数は取ってるし、授業中に誰かの邪魔をした覚えなどない。
……ラフを描き終えた。さっと書くだけだったから対しては時間はかかっていない。あとはやることがないから残りの時間は授業を受けよう。
「ん? なんだ。作業はおしまいか? じゃあ、この問いの──「X=3−8」……正解だ」
簡単な計算問題だった。数学担当の教員は別の人を指名して授業は少しだけ続く。
授業に復帰して10分ほどで最後の授業は終わった。
授業が終わればあとは帰りのホームルームさえ終われば帰れるのだ。
「ああ、宵崎。お前は後で職員室に来い」
「……」
「そんな不服そうにしてもダメだ。とにかく来い」
お呼び出しをくらった。何か問題でも起こしたのだろうか。思い当たる節はない。
……無視してもいいだろうか? どうせ今日これば明日は明後日は休んでも問題ない。
……やっぱり行っておこう。後々家まで来られても困る。
早足で職員室に向かい、担任の先生のもとへいく。
「来たか、宵崎。聞いたぞ、また文学賞取ったんだって? 凄いじゃないか」
「……」
「担任としても文芸部の顧問としても鼻が高いよ。だが、できるだけ学校には来てほしいんだ。テスト期間に来て点数を取っていくのはいいが、出席日数が足りなかったら留年なんだぞ?」
「……」
「…………まあ、いいから学校には来てくれ。評価のつけようがないんだよ」
「…………」
「あと、文芸部の交文祭に参加するならそれ用の作品を一つ以上作ってきてくれ。話は以上だ。帰っていいぞ」
「……」
少しのお叱りと最近取ったネット主体の詩かなんかのコンテストの話だった。そうか、私、受賞してたんだ……。後で賞金の確認とかをしておこう。
話がすぐ終わってくれて助かった。担任の話を聞きながらアイディアが浮かんできていたんだ。
教室に戻って席に戻ってスケッチブックを開く。
思い浮かんだフレーズは『割れた鏡』、『落葉』、『日々の疲れ』、『鏡の中の私』、『醒めない現実』──ガタッ
……ん?
「……あ、ごめん。邪魔しちゃった?」
「……」フルフル
「ならいいんだけど」
どうやら、忘れ物か何かをしたクラスメイトが来ていたらしい。ゆるく巻いたピンク色の髪。サイドテール…………いい。
「……名前、なに?」
「え? ボク? ボクは暁山瑞希だよ。よろしくね、宵崎さん」
「今から、時間ある?」
「うん。あるけど、どうしたの?」
少し困惑した様子の暁山瑞希の手を取り、窓際の席まで誘導して座らせる。「え? え?」とか困惑している声が聞こえるが無視だ。それよりも、今のこのイメージを絵にしたい。
「……手で拳を作る。机に肘をつく、視線は外。角度は──」
「わ、わかったから。わかったから……こんな感じ?」
「……」コクコク
いいセンスだ。夕焼けの燈色とピンク色の髪。そこにできた影がいい感じだ。いいタイミングで来てくれた。
ポージングも完璧だ。でも──
「……空いた手は、机の上でこう。…………? ……。うん。これでいい」
「そうなの?」
「……ん。そのまま少し動かないで」
「わかった」
スケッチブックにラフ画を描いて、色配置を当て嵌めながらあーでもないこーでもないと配色のバランスをラフ画の上にメモ。
「……」
「……」
「……」
「……まだ終わらない感じ?」
「……」
「……聞こえてる? 宵崎さん?」
「……?」コテッ?
「ああ、聞いてなかったんだね。まだこの体制続けた方がいい?」
「……出来れば、もう少し、お願い。お礼、するから」
今すごくいいところなんだ。
………………よし。一つめ完成。
「……暁山瑞希。ありがとう。次は」
「次もあるの!?」
「……?」コテッ?
「そんな、当たり前ですけどって感じを出されても困るんだけど……」
「……あと三枚」
「今日じゃなきゃダメ?」
「…………ダメ、ではない。……! 暁山瑞希。明日、空いてる?」
「……え、空いてはいるけど」
「………………学校は?」
「あんまり来ないし、今日来たのは出席日数のためだし」
「…………明日、朝から。時間ある?」
「ないことはないけど」
「……なら、朝から。付き合ってほしい」
スケッチブックの端に連絡先と個人用のチャットルームのIDを書いて渡す。
「朝、10時。高校近く、駅前に来て」
「来なきゃダメ?」
「…………来ないの?」
「そんなカワイイ雰囲気出されたら断れないよ」
来てくれるらしい。
スケッチブックに案の構成をメモして鞄にしまう。
お礼は後日、明日にすることにして解散した。
いい人材を見つけた。いい素材を見つけた。暁山瑞希。覚えたから、もう忘れない。
「……ただいま」
「……おかえり、玲音。今日は遅かったね」
「ん。良い素材を見つけた。良い絵が描けると思う」
「……そう。よかったね、玲音」
姉さんのいる家に帰って一緒に食事の準備をした。
今日は全体的に良い日だ。明日も、良い日になると良いな。
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