深灰と赤紫の糸   作:空白零無

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1日ぐらい遅くなりました。申し訳ございません。


朝比奈まふゆ(ニーゴ)のイベント、『仮面の私にさよならを』は今回の話で完結です。





私ってなんだっけ(4)

 

 

 …………。

 

「……完成」

 

 完成した。早目に起きてちまちまと作業した甲斐があると言うモノだ。

 これで、朝比奈まふゆも何かしら感じることは出来るだろう。創作には良い刺激も、悪い刺激も必要だ。

 

 しかし、初めて作ってみたが楽しいな。時間が経つことを前提に作らなければいけないから、冷えても大丈夫な様にしなければならないし、形が崩れないように敷き詰めなければいけない。

 そして、暖かい時期の今。いたんだりしてダメにならない様、注意しなければ創作どころではなくなる。

 

 ──ガチャリッ

 姉さんの部屋の扉が開き、私の部屋着に姉さんのジャージを着た紫色の髪の少女。朝比奈まふゆが出てきた。

 

「……おはよう」

「……おはよう。朝早くからどうしたの?」

「……これ、作ってた」

 

 私の目の前には白米に海苔貼ってイラストを作り、目で見て楽しめるように所々飾り切りの入ったおかずが詰められたお弁当箱が三つ、それぞれ入れているものに多少の違いはあれど、全て夜中仕込んで早朝から作ったものだ。

 

「……お弁当? なんで三つも」

「……私と、姉さんと、朝比奈まふゆの分」

「……私は別に」

 

「必要ない」。必要ないとは言うが、コンビニで惣菜パンを買ったり、学校の購買で何かしら買っていたりするんだろう。昼食を個人的に抜くのは構わない。だが、まだまだ成長期だ。食べれるだけ食べて、元気でいてほしい。

 それに、食事は精神的にも良い。元の自分。精神的に安定している自分に戻りたいと言うのなら、食事を通して刺激を得て行けばいい。なにも、元凶である親から離れることだけが解決策と言うわけでもない。

 

「……別に食べなくても良い。残しても構わない。……食事は、精神的にも効果がある。満腹は安心感を得られるもの。食べるという行為に意味がある。……好きなの、選んで」

「……じゃあ、これにする」

 

 朝比奈まふゆが選んだのはハンバーグ入りの弁当。アイスが食べたくて夜中もやっているスーパーに赴いたとき、なんとなく店内を彷徨いている時に見つけた。売り出しがかかっていたらしい合い挽きが安かったのでそのままハンバーグにした。味見はしてあるので、味は保証する。

 

「……包みはどうする?」

「……なんでも良い」

 

 なんでも良い、ね。……そう言えば、前作った藍染めしに行って作ったやつがあったな。私の部屋に入れっぱなしだし、あれ使うか。

 

「……姉さんは?」

「……奏ならまだ寝てる。遅くまで作業してたから」

「……そう」

 

 なら、起こすのも悪いし手紙を添えておこう。今日は学校に行かないといけないし、帰りが少し遅くなるだろうから、夕食の準備もしておかないと。

 

 ……ん? 何故席についた。

 

「……勉強しても良い?」

「……構わない。でも、少しうるさい、かも」

 

 夕食の準備をするから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校の昼休み。屋上の一角で一人食事中。うん。美味い。少し手間だったが、朝比奈まふゆは食べられているだろうか。

 味を感じられない、味がわからないと言っていたし、とりあえず目に見えて楽しめるように作った。ひよこサブレが可愛くて食べられないと言うタイプの人間ではないだろうし、特に何も気にせずに食べてもらえるとありがたい。

 

「あ、いたいた。やっほー」

「……瑞希。久しぶり」

 

 ピンクのサイドテールを揺らしながら、暁山瑞希が私の弁当箱の中を覗き見る。私の弁当はしゃけ弁当。しゃけの塩焼き、ほうれん草とコーンのバター炒め、ミートボール、ハートの卵焼きが入っている。

 

「へえ。カワイイね。自分で作ったの?」

「……ん」

「珍しいね。玲音がお弁当持ってくるなんて」

「……朝比奈まふゆの弁当。作るついでに、ね」

「まふゆにお弁当持たせてるの? しかも自作の」

「……ん」

 

 朝比奈まふゆのお弁当を三つ作って、朝比奈まふゆに選ばれなかった二つは私と姉さんの分に回した。

 姉さんはあと一、二時間後に起きて食べるだろう。ちなみに、姉さんのお弁当の中身は目玉焼き、卵焼き、きんぴらごぼう、ミートボールだ。喜んでくれると嬉しい。

 

「本当に器用だよねー。料理好きなの?」

「……わからない。でも、喜んでくれるから。好き」

 

 多分ね。作れば姉さんは喜んでくれるし、食べてもくれる。喜んでもらえるから、私は料理を作るし、見た目や美味しくなるように努力する。それで、笑みが増えるならいいことだと思う。

 そして、料理も芸術的なものだ。盛り付けや味付けも計算し、食べた者にどう刺激を与えるのか。それを考えるのは楽しいと思える。

 朝比奈まふゆがうちにいる間は作り続けるとよう。

 

「…………瑞希も、作る?」

「ボクの分はいいよ。悪いし」

「……」

「でも、どうしてもっていうなら。作ってもらおうかな」

「…………ん。瑞希の弁当。私に作らせて」

「んー。じゃあ、お願いしようかな。補講の時に作ってきてよ」

「……ん」

 

 何を入れようか。カレーとフライドポテトが好きだが、きのこ類は苦手。カレーはお弁当には不向きだし、フライドポテトは味が抜ける。

 好きなものを詰め込むには……そうだな。ライスの下にカレーならいけるか? 少しドッキリ感もあって面白いかもしれない。

 ただ、やるなら気温があまり高くない日を狙って……

 

「……玲音、聞いてる?」

「……! ……?」コテッ? 

「ああ、やっぱり聞いてなかった。まふゆとは上手くやれてるの? まふゆと奏から話を聞いてる感じだと、問題はなさそうだけどさ。玲音はどうなのさ」

「……問題なし」

 

 問題はないと思う。私はいつも通り動いて、姉さんの為に家事をしているだけだ。朝比奈まふゆの事をするのは、少しでも自分を見つけられるようにきっかけを与えたり、休む時間を作る為に動いているだけだ。

 ……あるとすれば、世話を焼きすぎてうざがられたりするぐらいだな。

 

「…………朝比奈まふゆは、瑞希と、姉さん。東雲絵名の大切な人。なら、私にとっても大切な人」

「玲音を主体に考えると、まふゆはどうでもいい人なの?」

「……」

 

 姉さんたちを抜きにした朝比奈まふゆか。……どうなんだろうか。まず、嫌いではない。ビジュアルも好みなので絵のモデルになってくれると嬉しい。しかし、暁山瑞希ほど近くなれる気はしない。

 なら、東雲絵名のようにたまに絵を描かせてもらう関係なら……いや。それもないな。東雲絵名は私の中でもかなり特殊な人間だ。嫌いでも好きでもない。ただ近しい趣味を持ち、たまに暁山瑞希と一緒に服を見にいく人物。……友達の友達というやつだろう。本来なら興味の対象にもならない人。しかし、何か私の中でも惹かれるものがあるのは事実。東雲絵名の絵は好きだしね。

 

 …………朝比奈まふゆは、私にとって

 

「……………………わからない。どうでもいいわけではない。…………もどかしい、な」

 

 わからない(処理不可能)

 朝比奈まふゆは、私にとっては興味の範疇には居ても手を伸ばさない存在だ。触れると壊れてしまいそうで、壊してしまいそうで、そして私も共に壊れてしまう。とてもじゃないが触れられない存在。

 

 ならしかしなぜ、私は朝比奈まふゆの世話を主体的にする? 姉さんがいなくても、朝比奈まふゆから私に近寄ってこれば私は間違いなく、色々と世話を焼き始めるだろう。

 庇護欲とも違う。ましてや恋愛感情などでもない。

 

 ……なら、何故? 

 

「玲音も迷うことってあるんだ」

「…………私も、生物学上人間。考えが纏まらないことぐらいある」

「意外だなー。気分で色々すっぱり行くもんだと思ってたけど」

「……私も、久しぶりだから悩んでる」

 

 私にとっての朝比奈まふゆ。遠く、そして近い存在。

 ……………………ダメだ。考えが纏まらない。

 

 

「…………瑞希、時間。ある?」

「? 放課後のこと? それとも、今から?」

「……どっちでもいい」

「放課後はバイトがあるけど、今なら時間はあるよ」

「…………モデル、してほしい」

 

 考えが纏まらない時に考えたって、堂々巡りをするだけだ。頭が疲れて働かなくなってしまう。

 

「いいよ。どこで描くの?」

「…………文芸部の部室。あそこから、ここより涼しい、し」

「りょーかい。じゃあ、行こうか」

「……ん」

 

 絵を描きながら考えよう。何か作業しているほうが、私はリラックスして考えられるし、話しやすい。

 

 何より、久しぶりに暁山瑞希の絵を描きたい。そして、──何故そんなに悩むような顔をしているのかを知りたい。可能なら、私は助けになりたいから。







後日談のようなものでした。
宵崎玲音にとって、朝比奈まふゆはどういう存在なのか。その答えは出るのか。
⬛︎⬛︎は、答えを知っているようで微笑ましく見ていることでしょうけど


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