深灰と赤紫の糸   作:空白零無

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温もりの奥に

 

 

 

「二人で居るのって久しぶりな気がするよ」

「……クラス、違うからね」

 

 少し大きめのショッピングモール。

 文化祭が近く、飲食を出店するため。その材料の買い出しで来ていた。

 

「……瑞希のクラスは、何するの?」

「ボクのクラスは謎解きだよ。玲音のクラスは?」

「……喫茶店」

 

 私は飲食店。特に喫茶店に縁がある様で、去年も軽飲食の販売していた記憶がある。

 

「へえー。どんなの出すの?」

「……ホットケーキとアイスと、飲み物」

「そうなんだ。大変そうだね」

「……ん」

 

 私のクラスがやるのは喫茶店は喫茶店でもメイド喫茶だ。メイド服を来て接客をするらしいので、私はキッチンの方に籠る予定。

 

 私は飾り付けと食材の買い出しで来ているが、暁山瑞希は何でここに? 

 

「いやー。買い出しは冬弥くんと来てたんだけど、ちょっとはぐれちゃってさ」

 

 暁山瑞希は青柳冬弥と共に来ていたが、はぐれてしまったらしい。実際、私も似た感じだ。一応、クラスメイト。羽水祐介と買い出しに来ていたのだが、いつのまにか逸れてしまった。面倒くさがっていたし、帰ったんだろう。

 

「玲音。学校楽しい?」

「……?」

 

 何を突然。

 

「……学校は。楽しい?」

「なんで疑問系なのさ」

 

 わからないから。

 学校が楽しいか。そう問われれば、きっと楽しくないんだと思う。楽しければ毎日でも来るはずだ。しかし、現状としてはたまに顔を出しているだけ。来ても文芸部の部室か、屋上にいるだけだ。

 

「……学校は楽しくないんだと思う。でも」

「でも?」

「……瑞希とか、類。司とか、夜凪百合子と一緒にいるのは楽しい」

 

 だから、今年は。楽しみを知った今年は去年や一昨年以上に学校に来ているんだと思う。こうやって、文化祭準備を手伝ったりするぐらいには。

 

「玲音にもボクと類たち意外にも友達が出来たの。ボクは嬉しいよ」

「……? ともだち?」

「そうでしょ。奏から色々聴いてるけど、まふゆとも最近仲いいんでしょ?」

 

 朝比奈まふゆと私が仲良い? 朝比奈まふゆと私は仲が良いのか? 

 

「……なぜ?」

「それをボクに聞かれても困るんだけど。うーん。最近まふゆとよく話してるって聞くよ」

「……それは、まふゆの勉強。手伝ってるだけ」

 

 一問一答の手伝いだ。

 私が出題して、まふゆが答える。それを繰り返しているだけ。仲がいいわけではない。

 

「まふゆの絵を描いたりしてるんじゃなかったっけ?」

「……朝比奈まふゆは、女性らしい身体付きをしているから」

 

 以前。「……玲音がどう考えてるかはわからない。でも、私はここに居候している身。普段の食事の恩返しとして何かしたい」と、本人から相談があったので、絵のモデルになってもらっているだけ。朝比奈まふゆの身体は女性らしい丸みを帯びた体型をしているし、ルックスもいい。描いていて暁山瑞希とは違った美しさ、楽しさがある。勉強している姿だったり、食事中の姿を描いたりしていることが多い。

 

「つまり、まふゆの体を眺めていると」

「……語弊があるけど、大体そう」

 

 まあ、絵のモデルに関しては望月穂波や姉さん。神代類や天馬司にもやってもらってるけどね。神代類はあまり描かせてくれないけど。

 

「玲音は、まふゆと仲良くないと思ってるの?」

「……仲は悪くない。でも、好かれているわけではない。と思う」

「なんで?」

「……好かれるようなこと、した覚えないし」

 

 別に好かれる様なことをしていない。

 最近何か気になることがあるのか、ミク(⬛︎⬛︎)について聞かれることの方が多い。私は興味の対象ではないんだろう。

 

「……でも、嫌われてはいない。と思う」

 

 お互い無干渉ではないし、こっちから干渉することもあれば、朝比奈まふゆの方から私に干渉してくることもある。

 仲は悪くないが、好かれたりしていることもない。

 

「そうなんだ。でも、まふゆも玲音のことを話すから仲は良いんだとボクは思うよ」

「……そう」

 

 仲良いのか。そうか。

 暁山瑞希から見れば。姉さんや東雲絵名から見ても私とまふゆは仲が良いんだろうか。

 

「暁山、探したぞ。連絡しても出ないから心配した」

「あ、冬弥くん。ごめんごめん。連絡くれてたの気がつかなかったよ」

 

 買い物袋を持った青柳冬弥がこちらにやってくる。再開できてよかったね。

 

「宵崎も買い出しに来ていたのか」

「……ん。飲食だから」

 

 練習用の材料とか、学級の費用として出てくる様なので一部の女子生徒曰く、でかいのを作りたいじゃない。とのことだ。

 それ用の練習があるのだとか。まあ、経営のことを考えないなら材料はいくらあってもいいしね。

 青柳冬弥が辺りをキョロキョロしている。どうしたんだろうか。また人を探しているのかな? 

 

「宵崎。買い出しは一人なのか?」

「……多分、帰った」

「二人だったけど、もう一人は帰宅した。ということか?」

「……ん」

 

 まあ、確かめてないからわからないけど。……ん? 知らない人からメッセージが……『ダルイから先帰る。あとは任せた』……ああ、羽水祐介か。本当に帰っているらしい。

 

「……帰った。みたい」

「一人で大丈夫か?」

「……ん。多分、ね」

 

 そこまで沢山買って帰るわけじゃない。牛乳と卵とホットケーキミックスを買って帰るだけだ。量はかなり買わなきゃいけないみたいだし、頼まれた飲み物も買っていかなきゃいけないけど。……待て、これ本当に私一人で持って帰るのか? 

 

「…………撤回。難しい」

「そうか。俺で良ければ手伝おうか」

「……」

 

 しかし、青柳冬弥も買い出しに来ているんじゃないのか。

 

「俺たちの買い物はそこまで量はない。あっても袋一つで足りるだろう」

「一人で難しいならボクたちも手伝うよ」

「…………お礼」

「?」

「……お礼、させてくれるなら。お願いしても、いい?」

 

 量多いし、持っていくまでが大変だろうから英気を養ってもらいたい。

 

「礼はいらないんだが……」

「冬弥くん。お礼をもらえるなら貰っておこうよ」

「……貰ってくれるとありがたい」

 

 主に私の心に。

 

「なら、お礼は受け取ろう。俺たちの買い物は先に済ませておいた。宵崎のクラスの買い物に行こう」

「……先に、お礼。大変だから」

 

 先にお礼しておかないと気が滅入るだろう。二人には軽く食べ歩きに付き合ってもらおう。

 

 

 

 

 

 

 

「……宵崎。いじめられているのか?」

「……否」

「玲音、この量を一人は流石に無理なんじゃないかな」

「……私もそう思う」

 

 卵、五パック。牛乳、六本。ホットケーキミックス、十袋。飲み物(クラスメイトからのお使い)、大ボトルやパック系込み、缶類の飲み物。計二十二本。

 改めてすごい量だ。二人でもギリギリじゃないだろうか。

 

「……助っ人、呼ぼう。かな」

「助っ人は呼べるのか?」

「……多分、呼べば来る」

 

 滝沢秀昭が。メッセージに『たすけて』の四文字を送りつければ駆けつけてくれることだろう。

 そして、状況を知って呆れながらも助けてはくれるだろう。お小言を言われるだろうけど。

 

「それって滝沢先生のこと?」

「……ん」

「滝沢先生と仲がいいのか」

「仲がいいと言うか。滝沢先生が玲音を結構気にかけていると言うか」

「……滝沢秀昭とは何かと縁がある」

 

 元々私のリスナーだったり、趣味があったり。出先で会うことも結構ある。特に、画材の買い出しとか。ライブハウスに行ったりした時に会ったりもする。

 何かとライブハウスのバンドをおすすめしあったりもするしね。

 

「そうなのか。それで仲が良いのか?」

「……2年前からの付き合い」

 

 2年も趣味の話をしたりしてるから、仲は悪くないはずだ。

 

「呼ぶの?」

「……やめておく」

 

 まあ、暁山瑞希と青柳冬弥の二人に手伝ってもらえれば問題なく運べるだろう。

 

「……大変だと思う。けど、お願い」

 

 後日追加でお礼をさせてもらおう。

 今日は朝比奈まふゆの塾の迎えがあるから、遅くまでは残れないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 塾の前、時刻にして22時。

 秋になり、暗くなるのが早くなり。そして、夜は冷える日も増えた。

 

 元々は歩いて迎えに行ったりすることもあったが、今夜は冷えるらしく、朝比奈まふゆがどうかは知らないが私が耐えられない。

 と言うことで、今日はアレに乗って迎えに来た。

 

 塾の授業が終わったらしく、塾所属の生徒達が帰宅のために外へ出てきた。

 

「……玲音。バイク乗れるんだね」

「……ん」

 

 普通二輪は2年前に取得している。2年前はそこそこ乗っていたし、元々は日守康作にツーリングを誘われて免許を取ったのだ。今でも時間が合えば二人で出かけることもあるから運転は問題ない。

 

「……意外。家の駐輪場にないから、乗ってないものだと」

「……ん。いつもは倉庫にあるから。ね」

 

 このバイクは基本的に倉庫にしまってある。乗る時意外取り出さないし、気分が乗らないと乗らない。そして、私じゃ上手くメンテナンスが出来ないので日守康作の所に預けてあることが多い。

 

 今回はメンテナンスをしてもらったものを取って、朝比奈まふゆを迎えに来た。

 

「……玲音が運転するの想像できないんだけど」

「……そう言われても、運転出来るから」

 

 機械は苦手だが、運転自体は問題ない。暗記とか動きの再現は得意だからね。

 朝比奈まふゆ用に持ってきたヘルメットを手渡す。

 

「……とにかく乗って。寒い」

「……乗り方教えて」

「……ん。まず、──」

 

 後部座席への乗り方がわからないとのことなので、とりあえず乗り方を教えて、合図があるまで出来るだけ動かない。重心の移動を控えてほしい旨を伝えてバイクを動かす。

 

 ……風が冷たい。

 別に夜風は嫌いじゃない。こうやってバイクで走る時の全身で感じる風は嫌いではない。けど、けどだ。いかんせん寒い。

 

「……風が気持ちいいね」

「……そう。それは良かった」

 

 ……朝比奈まふゆがいいならいいか。

 風が冷たくて寒いけど、人肌は少し温かい。

 ……人を乗せるのなんて久しぶりだ。確か、去年の夏に東雲慎英と日守康作と共に美味しいらしいパンケーキを食べに行った時以来か。

 その時は気にならなかったけど……。肌って、温かいんだね。

 

 ──さようなら、玲音。

 

 ……でも、血のおかげ。なのかな。

 

「……? どうしたの」

「……なんでもない」

 

 今は運転に集中しないと。事故って朝比奈まふゆに怪我をさせるわけにはいかないからね。

 

「……もう少し、強めに捕まって。振り落とされるよ」

「……わかった」

 

 密着する体。締め付けられる私の腹。朝比奈まふゆの力が思ったより強くて少し苦しいけど、しっかり捕まってくれてるなら振り落とされることもない。

 

「……玲音。少し、コンビニに寄って欲しい」

「……わかった。欲しいものあるの?」

「……うん。奏が飲んでるエナジードリンクに新しい味が出たみたいだから、買って帰ろうと思って」

 

 姉さんと私が最近飲んでるエナジードリンク。〝ホワイトレッサー〟。

 頻繁に新しいフレーバーが出るから味に飽きがこないけど、ネタが尽きたりしないのか不思議だ。

 

「……今度はトロピカルトマト味なんだって」

「……それ、美味しいの?」

「……わからないけど、飲んでみたいんだって」

 

 ……もしかして、姉さんちゃんと寝てないのかな。だから思考能力が落ちてるのかもしれない。

 

「……買うのはいいけど、明日飲んでもらおう」

「……わかってる。作業があるとはいえ、夜中に飲むのは体に良くない」

 

 朝比奈まふゆが居るから、姉さんの様子を見に行くことは減ったけど……ちゃんと寝ていないようなら、また⬛︎⬛︎(ミク)︎にお願いして少し見張ってもらったほうがいいのかもしれない。

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