深灰と赤紫の糸   作:空白零無

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 どうも、先日日刊総合で27位だったことに驚いていた作者です。
 お気に入りが300。UAが35000を突破しました。読者の皆様ありがとうございます。
 過去編は長くなると思いますが、どうぞお付き合いください。






聡明なんかじゃ

 

 

 

 

 

「玲音くんは合同練習に参加しなくて良いの?」

「まあ、バスケ部が頑張るだろうし。僕が頑張らなくても代わりに頑張ってくれるでしょ」

 

 学校の体育館で弾むバスケットボールとそれを操る同学年生の姿を見てるのも練習になるし、見て覚えれば後は自分に合わせた動作に置き換えるだけだ。

 

 姉さんは校庭でドッジボールの練習をしていることだろう。柊彩さんは女子の部のバスケだし、体育館半面でネットで遮られてはいるけどすぐ隣の席に座っている。

 

「玲音くんって運動苦手だっけ?」

「平均以上は出来るけど、最低限でいいかな。特出するとめんどくさいし」

 

 あれは小学生の頃。

 全国体力調査で上位を取った時のこと。注目の的になって非常に面倒くさかった。創作の障害になるし、みんなが僕が絵を描いたり、折り紙を折ったり、粘土で像を作るのを邪魔してくるようになった。非常に苦い思い出だ。

 

「……なんか、クールと言うか。なんでそんなに嫌そうなのかはわからないけど、色々あったんだね」

「色々あったんだよ」

 

 本当に、色々あったんだよ。

 

「玲音くんが動いてるところ見たかったなー」

「面白いとは思うよ。実戦向きじゃないけど」

 

 見たものは大体真似できるし、再現できる。でも、実践で使えるかと言われると微妙だし。真剣にやってる中で魅せプレイ(芸術)を行うのは場違いだと思う。

 

「へえ? 何が面白いの?」

「NBAでのスーパープレイの再現ならいくらでも出来るから、スポーツとしてじゃなくて。一つの芸術として見るなら面白いんじゃないかな」

「えー、本当にできるの?」

「出来るけど場違いだからやらないし、目立ちたくないからやりたくない」

 

 やれば目立つし、間違いなくまた視線を集めてしまうからやりたくはない。

 

「やってくれないならいいや。あーあ、期待したのに」

「ごめんね。見せれなくて」

「じゃあ、2人の時なら見せてくれる?」

「……まあ、2人の時ならいいよ」

 

 魅せるだけの動きだし、別に構わない。ただ、2人きりでバスケをするシュチュエーションなんてないだろうから、見せることもないんだろうけど。

 

「よっす、宵崎と柊さん」

「大島。よっすー」

「? どうかした?」

 

 誰だっけか。黒髪に茶色の目。特徴的な顔ではない男子生徒。だけど顔に見覚えはあるから、同じ学級の人間だとは思うんだけど……誰だっけ。

 

「いや、宵崎と柊さんがずっと話してるから仲良いよなって」

「まあ、席替えしても席隣だし。仲は良くなるよね。ねー」

「ねー」

「うわー、棒読み」

「やっぱり仲良くない?」

「そんなことはないよ」

 

 仲はいいと思うよ。多分。大島さんは一体どうしたんだろうか。

 

「で、何かようかい?」

「いや、あんまり仲良いから付き合ってんのかなって」

 

 もしかして、わざわざそれ聞くためだけに来たのか? 暇なのかな? 

 

「いや、私と玲音くんは付き合ってないよ」

「ん。ただの友達」

「そうか。でも、柊さんは宵崎のこと名前で呼ぶんだな」

「奏さんと一緒の時に話してたら、こんがらがっちゃってねー。二人とも宵崎だから」

「ああ、それで宵崎を名前で呼ぶのか」

「そう」

 

 そんなわけで、柊彩さんは僕と姉さんのことを名前で呼ぶ。でも、僕も姉さんも柊彩さんと誰かを混同することはないから、『柊さん』と呼ぶ。

 僕は名前で呼ばれようと名字で呼ばれようと別に気にしないし、気にならない。大島さんも好きなように呼んでも構わない。言わないけど。

 

「まあ、うん。聞きたかったのはそれだけだから」

「お? 大島くん、私のこと好きなの?」

「ちげーよ」

「なら、玲音くんか。男の子だけど可愛いもんねー」

「ちげーから。……まあ、じゃあな」

「はーい。バイバーイ」

 

 大島さんは一緒に練習していた人たちのところへ戻っていった。……色恋ねぇ。

 基本ぼっちの僕には縁遠い話だろう。

 

 それに、僕の顔は『可愛い』とか、『綺麗』とかに分類される。イケてるわけではないし、そう言った行動も基本しない。顔に寄ってくる物好きな人はこれまでにもそこそこ居たけど、顔で寄ってくる人に碌な人はいないことはなんとなく知っている。

 そう言う人とはあまりお近づきになりたくないから、お断りだ。

 

「何がしたかったんだろうね」

「え?」

「ん?」

「……分からなかったの? わかりやすかったのに?」

「?」コテッ? 

「……玲音くんは、鈍感だって言われたりしない? かわいそうだよ」

「???」コテッ⁇

 

 え? 何が? 

 

「……本当にわからないんだね。まあ、純粋と言うか、鈍ちんというか。大島くんドンマイ」

 

 大島さんがどうかしたんだろうか。

 まあでも、僕にはどうでもいいことだ。大島さんに何があっても関係ないし。

 

「玲音くん。人の感情とか、視線には敏感になった方がいいと思うよ。いつか後ろから襲われないか私は心配だよ」

「そう? ……これでも、気を向けてるつもりなんだけどね」

「ぜんっぜん向いてないから」

「そうなんだ」

 

 そうか。……。

 

「……柊さんも、何か僕に向けてる感情ってあるの?」

「勿論あるよ。尊敬とか、信頼とかね。と言うか、感情自体は誰にでも向くモノだよ」

「そうなんだ」

 

 そうなんだ。柊彩さんも僕に向けて何かしらの感情があるのか。

 ……僕は、ないなかな。姉さんとか、父さんには家族愛とか、尊敬とかが向いてるけど。柊彩さんにも何かしら向けている感情があるのかな。

 

「まあ、さっき上げたのとは別に。玲音くんには安心感とかもあるかな」

「? なんで?」

「だって、玲音くんは私の身体じゃなくて、私を見てるから」

 

 それって違いがあるの? 

 

「何が違うの?」

「えーっと。……自分で言うのもアレだけどさ。私っておっぱい大きいのね」

「そうだね」

「そうなの。……まあ、それで男の子たちからはそこそこ人気だったし、顔も良いからね」

「そうだね。僕が大好きな顔面の作りをしてる」

 

 切の長い目に埋まる赤い瞳。艶やかな黒髪に、少し小ぶりな鼻。作り物めいているが、とても良い顔を持っていると思うよ。

 

「褒め言葉として受け取っておくよ。……褒めてるんだよね?」

「うん。僕史上4番目ぐらいの賛辞」

「私より上は誰に対するものなのさ」

 

 勿論、父さんと母さんと姉さんですが。

 

「僕の顔の素体になった両親と、同じ素体を持つ姉さん」

「君は家族が好きだねぇ」

「僕の自慢だからね」

 

 家族のことは大好きだよ。だから、邪魔にならないように。姉さんと父さんが好きなことをしている、あの背中が。あの姿が好きだから。もっと眺めていたいから家事をやってるんだし。

 

「話が逸れたから戻すよ。玲音くんは、私の外見じゃなくて基本的に中身を見て接してくれるじゃん? おっぱいに視線が行くわけでもないし、色目を使ってこない。だから、一緒にいると安心するんだよね」

「……なるほど。僕は、ある意味安全地帯だと」

「そう言うこと」

 

 まあうん。納得した。……気にしたことはあまりないけど、確かに柊彩さんの胸は大きい。……。わからない。少なくとも、姉さんより遥かに育っていることはわかる。

 うーむ。……まあ、確かに大きい。同学年の女子なら一番のサイズなんじゃないだろうか。

 

「そんなにジロジロ見ながら考え事されても困るんだけど」

「……比較対象が少なすぎてなんとも言えない」

「……まあ、玲音くんならそうだよね。基本、誰にも興味ないでしょ」

「うん。……余計なこととか、全部覚えちゃうから。気にしないようにしてるし」

 

 見たものは忘れない、忘れられない。父さんや母さんは、天性の才能だと言う〝超記憶〟と呼ばれる力。

 ただ、記憶しておけると言うことは、僕も疲れるんだ。思い出そうとすると頭の中がよくとっ散らかっちゃうし、便利なようでそこそこ不便な才能。

 でも、僕が創作や自分の芸術を突き詰める上でかなり助けられてもいるから悪いとは言えない。

 

「記憶力が良いってのも大変なんだね」

「……まあ、うん。忘れられないからね」

 

 でも別にそれは良いんだ。

 

 とにかく、柊彩さんの胸は発育がいい。だから、良く男子からジロジロ見られて嫌だと言うのはわかってし。

 

「……そろそろ見るのやめない? 下心がないのはわかってても流石に。……そうだ! 玲音くん、そんなに私のおっぱいが気になるなら揉んでみる? まだ芯があって硬いかもしれないけど、柔らかいよ」

「? でも脂肪でしょ? いいよ」

「その遠慮のされ方は傷つくんだけど。私が肥ってるって言いたいの」

「発育が良いとは思う」

 

 太ってるとは思わない。意識して見た今なら年齢に合わない体格をしているとは思ったけど、それでも標準ぐらいだろう。

 

「はーい。私は傷つきましたー。慰めてくださーい」

「はいはい。ごめんね、勘違いさせること言って」

 

 柊彩さんの頭に手をやって撫でた。

 頭に手をやる一瞬、体を震わせていたけど肩の力が抜けて大人しく頭を撫でられた。

 

「……もっと撫でて」

「はいはい」

「……はい、は一回でいいの」

「はい」

 

 しばらく頭を撫でれば機嫌を直してくれた。

 

 

 それから、僕と柊彩さんは合同練習が終わるまで2人で喋っていた。

 

 

 

 

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