ジ・Oの女は恋知らず   作:エタノル

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バカプレゼントを考えるのが楽しい


バース・デイ・プレゼンツ

もうすぐ一夏の誕生日だった。また買い物に行く必要がある。

 

リンちゃんの部屋にいって彼女を誘った。こういう時のセンスはリンちゃんの方が経験上箒よりもよかった。

 

「リンちゃん、一夏の誕生日プレゼント買いに行くんだけど、一緒に行かない?」

 

「あんたが誘うなんて珍しい。でもそのことなんだけど…」

 

「織斑一夏にサービス対決!?」

 

わけのわからん対決だった。どうも織斑先生の企画らしかった。

 

あのブラコン鬼教官!なるほど、そういえば恋愛相談論外の人間にカテゴライズしていたせいで、恋する乙女にカウントされていなかったようだった。

 

「みんなはどんなの企画してんの?」

 

「動物系」

 

「動物系?コスプレ?えっちなの?」

 

「ちょっとあんた声が大きい」

 

そういえば私も買っていた。この前の一夏とのデートの際に買っていたものだ。古着に出すしかないと思っていたのが、存外役に立った。

 

「ラウラの案だって」

 

「あいつか」

 

ラウラの上官の変態性には舌を巻くものがある。

 

「私のはあるから大丈夫。このまえ、バカみたいなエロ水着を買わされちゃって」

 

「たまにあんたの金銭感覚が心配になるわ」

 

「ふふん、これが問題ないのよ。しっかり稼いでるし。それにクーポンはちゃんつかってるからね」

 

「そういう問題じゃないのよ」

 

あきれさせたようだ。

 

「ああそうだリンちゃん、会長には気を付けてよね」

 

「なにがあるのよ」

 

「愉快犯」

 

「知ってるわよ」

 

話が早い。さてはニュータイプか?ガンダムでは、ニュータイプに触れた人がニュータイプになることがある。ZZガンダムの主人公のジュドーがそうだ。前作主人公に出会い、ニュータイプとして覚醒していく。

 

「まさか、エスパー?」

 

「そんなんじゃないわよ。普通わかるでしょ」

 

「そんなもんか」

 

「そんなもんよ」

 

どうもそんなもんらしい。さすがリンちゃん、さすリン。彼女はツンデレで、小動物的で、でも友達が多いのだ。このまえ一緒に遊んだ時も、2組の子に話しかけられていた。私は扇動がうまくいくことがあるが、多くの友人関係を築くのが難しかった。単純に時間がないのと、興味を持ちきれないからだ。私のニュータイプ能力による察し力は、少数に充てられる程度になっている。

 

 

誕生日会当日、私は一番手に披露することになった。ジ・Oを使った。サイコミュの性能をフルに使えば、じゃんけんで勝つことなど容易だった。

 

「じゃーん。ねこみみビキニ」

 

2人で正座し、向かい合っている。完璧に一夏を喜ばせるプランが私にはあった。

 

考えはこうだ。この後の誕生日会では食事がある。食べ物系はなしで、その上アトラクション系だとほかの子に負ける。なぜなら友達といるとき以外は基本機械いじりだから。

 

「お、おう」

 

白式の強化武装の提案はあふれてる。であれば一夏を喜ばせる方法は唯一シンプルだ。

 

「これ、あげる」

 

「城子。こういうのはあんまりよくない」

 

バカな!

 

私が差し出したのは、私の会社の株の譲渡する契約書だった。割合は15%。山田先生に立会人になってもらうことで、捏造の心配もなく確実に一夏の資産にできるもののはずだった。

 

私の立場は私のISを作るための会社の社長だ。この会社の株は親会社倉持技研のが35%、私が32%、ティムさんが33%の割合で持っている。

つまりこれを渡せば私の頑張りで一夏の生活が楽になる仕組みができる。FIREだって目指せる仕組みだ。完璧なプラント言えたはずだった。

 

「会社の株って15%もプレゼントでポンと渡していいもんじゃないだろ」

 

至極まっとうな意見だった。しかし盲点だった。

 

「どうしたんだ?」

 

虚無モルモットTシャツはリンちゃんにダメだしされた。株は一夏に否定された。もはやプランがなかった。

 

ここで閃きがあった。ニューロンが発火した。この頭脳も捨てたもんじゃない。これまで数々の不可能と思われた技術的問題を解決してきたではないか。ここで開示すれば一夏を喜ばせることができる情報があった。

 

「一夏、真剣な話がある」

 

「なんだ?」

 

表情を引き締める一夏。

 

「シャルロットの件、解決できそう」

 

「ほんとか?」

 

「うん。量産型の第3世代ISの開発をデュノア社と一緒にすることになりそうで、今はデータ取りのためにシャルロットを使うように交渉してるとこ。そのまま行けばIS学園にいられるし、会社の問題とはおさらばできる」

 

「ありがとう!城子は本当に頼りになるな」

 

「ひゃ。喜んでもらってよかった」

 

急に両手をつかまれ、強く握手された。

 

情けない声が出た。顔は赤くなった。目をそらしてしまった。なにより私は弱かった。

 

転生特典の下駄であることなど、もはやどうでもよかった。一夏の好感度を上げるためには、どんな空中戦もしてしまえた。つまり、私は初恋に舞い上がっていた。

 

 

「手升君、焦りすぎだ」

 

ほかの子たちの出番の間、私がティムさんから電話をもらっていた。

 

「あれではこちらの旨味を減らしすぎる」

 

「でもラファールの実弾を得ればハンムラビは完成するんです」

 

「設計段階が完了しておきながら技術提供の必要がありますといって、はいそうですかと頷く会社はない」

 

「なら」

 

私は息を吐いた。感情に支配されすぎていた。

 

「どうしましょう、ティムさん。変形にラファールの安定性が必要なのは事実です。打鉄の防御力が不要なのもそうです」

 

「それはわかっている。だがそれでは、倉持技研を納得させられんということだ。本命はシャルロットだろう」

 

「それは、ええ」

 

「ならば技術提供の形にすればいい。ガブスレイをバイオセンサを利用した第三世代ISの量産機として提案すればいい。あれなら倉持技研も妥当性を認めるだろう。君の青春も色あせることも避けられるしね」

 

「量産用の変形機構に調整します」

 

「期待してるよ」

 

わははと笑ってティムさんは電話を切った。ガブスレイはハンムラビよりも弱いが、あれは十二分に戦える。同じパイロットが乗った想定ならば、ほかの量産機を圧倒できる。

 

「城子」

 

シャルロットが立っていた。

 

「どうも私は恋愛が苦手らしい。すきな男のために、恋敵に塩を送る真似をした」

 

抱きつかれた。胸の柔らかさと動物水着の毛が私を襲う。それは現世では肉欲を刺激しないものだった。

 

「ありがと」

 

シャルロットに一夏との便宜を図ってくれるように頼むこともできたが、それができるように人間性がなかった。

 

「化粧、崩れてんよ。貸したげる」

 

シャルロットは化粧室に消えた。友達のために行動したかったのは事実で、恋愛感情で動いているのも確かだ。私は唇を撫でた。愛に性別も関係ないといったあの映画は、時代の倫理を嫌った映画だった。私はフラッパーだった。下品な女だった。

 

一夏へのプレゼントが出そろったようだった。もてなしの優勝者は千冬さんだった。いまだに家族への愛情に勝ることのできないのは、やはりショックだった。ウォッカでもあおりたいが未成年だ。

 

「ラウラ!」

 

ビット付きが来ていたので、ジ・Oで迎撃した。

 

「このジ・Oで迎撃する」

 

下はアリーナではない。下に攻撃が行くような真似は防ぎたい。ビットが邪魔だ。一時的に通信が聞かなくなるリスクがあったが致し方あるまい。

 

「ミノフスキー粒子を使う」

 

「わかった。一夏、ほかの候補生を呼ぶぞ」

 

「あ、ああわかった」

 

こういう時軍人なおかげでいい。

 

「センサーの動きが鈍い!、だがライフルは使えんだろう」

 

「その程度の気概で、このジ・Oが倒せるか!」

 

「機械屋ごときに、この私の精神は理解できまい!」

 

「サイコミュジャックだと」

 

危惧していた問題が発生した。サイコミュジャックはジ・Oのウィークポイントだった。

 

「逃げられた」

 

サイコミュジャックは、大至急取り掛からなければいけない課題だった。誰もできないと思っていたから、想定外の課題だった。織斑先生に連絡し、少しの休暇を取った。

 

「簪ちゃん、わかりそう?」

 

「ん~どうだろう。ほかの第3世代じゃ起きないんでしょ?」

 

そうだ。なぜそれを気づかなかったのか。強化人間の疑いはあったが、ニュータイプの想定ではないのだ。つまり、ナノマシンによって増幅しているのは一般的な脳波だけで、テレパシー的な感応ではないということだ。

 

「そうだよそうだよナイスだよ。オールドタイプにも反応するようになっちゃってたんだ」

 

「役に立ったならよかった」

 

肩をつかんで喜んだ私に、簪ちゃんは両手で制した。Zガンダムの主人公、カミーユ・ビダンでなければどうにもならないほどのサイコミュだったのに、強化人間1匹ごときに敗れる訳がない。

 

「なにか課題はない?お礼に手伝うよ」

 

「そんなたいそうなことをしてるわけじゃ……それにこれは私が一人でやりたいの」

 

「人材を使うのも力の内だよ。暴力金力権力。暴力のために権力をつけるのも本人の資質だよ」

 

「そう」

 

「それに、友達でしょ?」




石破ラブラブ天驚拳のような恋を言い訳にしたバカみたいな展開は大好きです。だから雑にシャルを救う展開になりました
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