ジ・Oの女は恋知らず   作:エタノル

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月に誓わぬ恋ならば

簪ちゃんが色気づいてる。タッグトーナメントの相手が一夏に決まったようだった。

 

行き遅れになった。私以外はすでにメンバーが決まっていたようだった。

 

私は一人でもいいか。

 

タッグトーナメント当日、あふれた私がシード枠になった。

 

無人機がきていた。

 

絶対防御が無効化されていた。敵ISの能力だ。そもそもの装甲が固いジ・Oにとっては対したいした痛みもない。何よりも無人機ならば、出力の制限の必要もない。

 

「援護しますわ」

 

セシリアの変則射撃に合わせ、リンちゃんが接近する。

 

「こっちは私だけで充分」

 

強化された無人機とはいえど、所詮は機械。

 

「僕らの戦いが学習されてる!」

 

「その程度のマシーンでは、私は倒せん」

 

私の流れ弾がラウラ達の戦うISにあたった。

 

2機がこちらを向いたので、一機を隠し腕で投げた。もはや曲芸などに頼る意味もない。周囲に仲間がいる。周囲の人間の意志が入り込み、感応波が増幅していく。それを理性の衣で包んでいった。

 

「目障りだ」

 

無人機同士で武装を当てあい、お互いに絶対防御を無効化させた。

 

「もらった」

 

ビームライフルで打ち抜き、2機の無人機を撃破した。

 

「すごい」

 

最後の一機は、5人でタコ殴りにした。

 

撃破後、一夏たちの方へ向かったが、すでに勝利していたようだった。

 

結果的にタッグマッチっで得られたものは、潜在的恋敵の顕在化だった。あのジゴロ男には困る。

 

 

「女の子って案外重いでしょ」

 

「急に何すんだよ……」

 

「私だけお色気が足りてなかった反省があるからね」

 

「お色気って」

 

無人機との戦いの後、私は彼の膝に座っていた。織斑一夏強化計画と称して、一夏に恋している子たちが1対1で特訓をする計画だった。会長の計画だ。本人には悟られていないが、女たちのセックスアピールのチャンスとしてなのは言うまでもない。私は5番目の特訓者として、一夏と2人きりになっていた。

 

「特訓でしょ?もっと強くなるためのもの」

 

「どう聞いていたけど」

 

「ならこれでいいの。エスパー的な感応波を感じることができるし」

 

彼の意気や鼓動を感じている。結局は肉体なのだ。人が人であるための絶対条件の一つだ。

 

「これをする理由は2つ。感応波を高めて、白式の性能を極大化できる」

 

「もう一つは?」

 

「私がしたいから。恋人にしたい人に何をしたいのか、まだ図りかねてるの」

 

「そうはいっても、まだ飲み込みきれてない」

 

「それでもいいのよ」

 

私は一夏を押し倒した。ドアの向こうには殺気は感じない。もっとできそうだった。

 

「感じてよ。胸の柔らかさを、髪の流れを、骨の硬さを……私の肉体を。」

 

押し殺しきれないほどの恥が襲ってきた。体を動かし仰向けになった。

 

「急にどうしたんだ?」

 

「恥ずかしすぎる」

 

顔をそらした。

 

「城子って、案外かしこくないよな」

 

「それって?」

 

私はニュータイプだった。天才になっていた。だからたいていの物事は理解できたはずだった。

 

「例えばさ、プレゼントのセンスが悪い。重い」

 

「うぐぐ」

 

反省はしている。

 

「それに、いい女を気取ろうとしすぎてる。たまに考え事で意識がなくなることがあって、箒や鈴に介護されてるのに、いい女を気取るのは無理だ.頼りにはなるけどな」

 

引っかかるところはあった。

 

「君のような人間が、この先の未来を創ると信じている」

 

告白の勇気が出なかったので、サイコセンサーを起動してて話そうとした。

 

「すぐ機械に頼る」

 

どうしようもない欠点だ。技術が直線状に進化することを疑えない技術屋の性だ。

 

「それもそうだね。なら…」

 

声が出なかった。勇気も外付けにできない。

 

「一生のお願いを賭けて、全力で戦おう」

 

「わかった」

 

いいんだ。よかった。

 

結局は決闘だった。最もシンプルで確実なルール。男をやってくれる一夏を納得させるためには、決闘が一番有用だった。

 

「ごめんね」

 

直接的な性欲を、友人にぶつけすぎた。嫌われたかもしれない。急を急ぎすぎたかもしれない。

 

「そういうのは俺が勝ってから聞くよ」

 

彼の姿は落ち着いていた。その姿は、覚悟ともあきらめとも思えた。

 

「そういえば一騎討ちはあの頃ぶりだね」

 

「あの時は俺の瞬殺だったな」「もう瞬殺はないよ」

 

ジ・Oで向かった。プレッシャーを放った。

 

「相変わらずすごいプレッシャーだ」

 

それに対して一夏は荷電粒子砲を連射した。本来できない技だった。しかしそれをすべて避けた。

 

「やっぱ強い」

 

「よく成長している」

 

「零落白夜!」

 

「甘い!」

 

サブアームで白式を投げた。

 

「私とつがえ、一夏」「急ぎすぎだ、城子」

 

ビームの雨を降らす。

 

「ジ・Oのライフルも防げるのか!」

 

進化した白式のビーム吸収能力は、想定よりも万能なようだった。一夏は瞬時加速でこちらに向かう。

 

「もらった!」

 

「そんなもので」

 

2重の瞬時加速を行った白式の零落白夜によってライフルは切り裂かれる。ジ・Oで一夏を蹴った。

 

「やるな」

 

「そっちこそ」

 

今、ジオの装備はビームサーベル4本のみ。ビームサーベルは単機能のもののみで、煙幕のような非殺傷の武装もない。限界まで効率化させた、究極のジ・Oだった。

 

「これで決める」「決まらんよ」

 

一夏は太陽を背にし、剣を構えた。私は4本のビームサーベルを構える。

 

急降下

 

一夏の全速力に対して、4本の腕で受け止めた。ビームサーベルのIフィールドの範囲を下げ、ビームサーベルの出力を限界まで上げた。

 

力場が輝いた。感応が交じり合い、お互いに地面に降りた。それはサイコフレームによるものだったかもしれないし、ISのコアによるかもしれなかった。

 

「今のは」

 

「そうだよ」

 

サブアームのサーベルが焼け焦げている。零落白夜。なめていたわけではないが、すさまじいバワーだ。一夏の武器は確実にエネルギー不足だ。このまま逃げれば勝てるだろう。しかしそれでは納得ができない。逃げて人を操るなど、やってはいけないことだ。

 

故に最後に陸地で、一撃に賭けた。

 

「エネルギーゲインだ」

 

「ジ・O、動け!なぜ動かんッ」

 

一夏から放たれるプレッシャーが強烈になり、ジ・Oの動作が鈍くなる。

白式のエネルギーも回復していた。私の横なぎに白式で上昇し上段内を放ってきた。

 

「いや、私の感応が震えているのか!」

 

「いくぞ!雪片弐型でぇ!」

 

 

 

結局負けた。今回はジ・Oに使いこなした上で負けた。しかしあの感応波の交わりは、お互いの感情をわかりすぎるほど理解させた。それは心地の良い感覚で、しかしどこかがひずんでいた。

 

「やりすぎだ、馬鹿者」

 

「はは、熱くなっちゃって」

 

私は、保健室で倒れていた。大変な時に、大人気もなくやってしまった。しかし今は子供だ。

 

「織斑先生。一つ、わかったことがあります」

 

「なんだ」

 

「恋人になりたいってことをです」

 

「だそうだ、一夏」

 

一夏が隣で寝ていた。織斑先生は教室へ向かった。午後の授業があるからだ。

 

「おはよう」

 

「もうお昼よ」

 

「体は大丈夫か?」

 

「今日は寝てる」

 

「やりすぎたな」

 

「だね」

 

丸一日寝ていたせいで、もう授業中だった。静かな保健室が気まずさを加速させた。

 

「一夏の勝ちだよ。好きなお願いをするんだね」

 

「ああ」

 

相槌が痛い。口が回る。

 

「お金でも権力でも何でもいいよ。オムレツを作るには卵を割らないといけない。それが人生でしょ。なんとかするよ」

 

自暴自棄にも思える言葉の濁流を止めるすべがなかった。

 

「でも一生顔を見せるなっていうのはやめてほしいな。言われたらやるけど、幼馴染がいなくなるのがさみしいもんだから」

 

声がどもり、かすれ、出すにに苦しくなった。秘境でも負けてはならない勝負だった。

 

「確かに俺は女の子がわからない。みんなにもよく、そのことで怒られる」

 

一夏は続けた。

 

「それでも。あの中で、わからないほどウブじゃない」

 

「それって」

 

「俺は男だ、俺から言うよ。恋人になってほしい」

 

私は舞い上がった。

 

「よろこんで」

 

それが祝福であるかのように外は土砂降りだった。雨音は拍手だ。わたしは起き上がり、彼の頬に触れていた。全身が痛みを訴えたが、キスの前には無意味だった。

 

「ん、デートはどこに行こう?」

 

「前みたいのは勘弁だな」

 

「おうちデートにしよう。アイスクリームを食べながら、一緒に映画を観よう」

 

次の日、抜け駆けを行った私への攻撃は苛烈だった。

 

しかし幸せオーラに食らったために、大抵は怒りを収めた。これからIS学園は、恋愛リソースの消費を外部に委託する必要に迫られることになる。

 

幼馴染の2人には申し訳ない気持ちだが、そういうことは覚悟していた。

 

ほかの専用機乗りのたちも覚悟はしていたようだったけど、受け入れるのには時間がかかりそうだった。私に初めて”月がきれいですね”といった男と同じように、いづれは立ち直り、別の恋ができるようになるだろう。

 

「どうも、私は人を操る才能がないみたい」

 

「そりゃそうだろ」

 

ふふふと笑いながら、一夏の口へポップコーンを放り込む。

 

一夏は笑っていた。モニターに映るフランス人の男は、「勝手にしやがれ」と言った。

 

結局、転生特典の下駄を与えられ、SFの中で得られた最も得難いものは、権力でも、お金でも、暴力でもなかった。愛だ。

 

10年後、社会問題は人口増加と環境問題くらいになっていた。以前IS学園に来たテロリストは滅びていた。ティムさん主導の技術者同盟の力があったからだ。人口増加は今週末に打ち上げられるスペースコロニーによって解決する見込みだ。かつてモンド・グロッソと呼ばれていた世界大会は、名前をISファイトに変え、すべての戦争を代用した。

 

ISは進化した。私のジ・Oはウェディングドレスを模したタイタニアに改修した。一夏の白式は、さらなる進化を遂げた。

 

「行くぞ雪片絶対無敵型<ハイパーモード>」

 

「迎え撃てタイタニア」

 

愛にくべる熱量は感応波だけで十分だった。子供が5人できた。子育ては大変だけど、楽しくやれていた。

私たちの青春期は終わった。それを夢に見ることはなかった。決勝の後、ある記者が聞いた。

 

「今回のISファイトの機体の弱点が多く露呈したと思います。その欠点をどう改善する予定でしょうか?」

 

「ゆっくり改善します。誰にでも欠点はありますから」

 

おわり

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