ジ・Oの女は恋知らず   作:エタノル

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タイトルはリズム優先ですが、ポエミーになってます。


軍人は空

アリーナに来てみると、ラウラがリンちゃんとセシリアをいたぶっていた。スポーツとはいえ、彼女の執着は、暴走に値するものだったようだ。

 

「ジ・O、発進」

 

あんなことで私の研究が邪魔されるのは面白くない。何よりよく興奮していて、相手するのが楽しそうだ。白式の起動をして一夏をオープンチャンネルで制する。

 

「ピットから出ろ、一夏。それまでは私がやる」

 

「あ、ああ、任せた」

 

一夏とシャルルはISでピットに向かった。

 

「やろうか、軍人」

 

「アスリートか」

 

ワイヤーブレードを打ち抜いて、2人を解放した。無人機に相殺されたビームは改良済みだ。今、あの無人機が来たとしてもビームごと打ち抜ける。

 

「2人とも、撤退しろ」

 

「まだやれるわよ」「撤退しなさい、鈴さん」

 

セシリアがリンちゃんを連れて撤退してくれた。彼女はこのプレッシャーの正体を知っているからだ。

 

「そのプレッシャーは。日本の秘密兵器か」

 

「私のだ」

 

ジ・Oのビームライフルを散弾として打ち出した。ある程度連射した後で、ライフルを投げつけた。いくつかのワイヤーブレードをひるませた後、4本のビームサーベルを展開し、接近した。

 

「尻尾を巻いて逃げたあいつらと同じ、学ばん奴だ。停止結界にはいるとは」

 

私は停止した。しかし

 

「尻尾を巻かせたんだ。それにセシリアにやられたのを忘れたか」

 

投げたライフルからの光線が、ラウラを背後から打ち抜いた。今のジ・Oは肉体的動作のすべてを脳波コントロールに依存している。それは引き金すら例外ではない。

 

「やるな」

 

「そんなもので、このジ・Oが倒せるか」

 

厄介だな。しかし停止結界とは言え、エネルギー攻撃は受けるようだ。

 

バイオセンサの出力を上げ、大量に来るワイヤーブレードを避ける

 

「堕ちろ、第一世代」

 

彼女の感応波が私を襲う。だからわかったことがある。彼女が子宮のぬくもりを知らないタイプの人種だったのだ。

 

「人間もどきか?」

 

だめだ。悪感情が抑えられない。彼女は悪いやつではない。それはわかっている。悪意に動く人間ではない。しかし気に食わなかった。私はどこかで、禁忌に触れた兵器に

 

「なぜそれを」

 

ビームサーベルを投げ、そこにライフルを打ち抜く。拡散したビームがワイヤをすべて停止させた。

 

「そんな曲芸で!」

 

ラウラの攻撃は当たらない。これでは楽しくない。生の感情をむき出しにしているオールドタイプは、ジ・Oの恰好の餌食だった。

 

「引け。決着はクラス対抗戦だ。理由は教えてやる。自分の執着を解決してからだ」

 

「こんなことで引けるか」

 

「その程度で粋がるな」

 

「このプレッシャーはなんだ、何が起きている」

 

「そんなことでは片目を失った甲斐がないな」

 

「どこまで知っている!」

 

「なにもしらんよ。貴様ごときに教えることなど」

 

 

彼女の機体が暴走しそうになっている。どうも、ドイツの噂は事実らしかった。

用済みだった。ならばと最大出力のビームを打ち抜き、彼女の機体を停止させようとした。

 

「つまらん鉄くずごときが」

 

私はいまだライフルを構えている。

 

「殺す気か、城子」

 

一夏が飛び出してきた。そこで自分の所業を客観視できた。

 

そうか!

 

この今までアドレナリン・ブーストの影響だと感じていたが、このバイオセンサ自体にも問題があったことに気が付いた。このサイコミュの事態が、私のエゴを強化しすぎていたのだった。

 

「引け、ラウラ。決着はトーナメントだ」

 

「その時はこの雪辱ごと、貴様を倒す」

 

ラウラは去った。まずいな。このままサイコミュで強化したエゴでいれば、政治をやるにしても、人間をやるにしても邪魔になりすぎる。対策は必須になる。

 

「ごめん、助かった」

 

バイオセンサはとっくの昔に暴走していた。無意識のうちに、自分の能力を過小評価していたらしい。

 

「城子だよな」

 

「エゴが強くなりすぎた。このバイオセンサが強すぎたの」

 

サイコフレームが必要になる。今のバイオセンサでは、表面積が確保できず、冷却システムが機能しなくなる。だから機械として機能しなくなる。冷却用素材や冷却液にも限界は見えている。熱源を何とかしないといけない。

 

クラス対抗戦当日となった。サイコミュの改善がまだ完全ではなかった。サイコフレームはシロッコの没後の技術だったから、作れるかどうかは不明だった。しかしこの世界はガンダムの世界よりもナノマシンの基礎研究が進んでいる可能性があったため、完成できる見込みがあった。

 

私の実力不足もあって自信を外付けに頼らなければ、ジ・O本来の力を発揮させられないとも感じていた。何よりそれを言い訳にジ・Oを強化することで技術屋として喜びを味わおうとしていたのかもしれない。

 

「聞いたよしろぴー、簪ちゃんと組んだって」

 

「まあね、友達だったの?」

 

「まあね」

 

この子は本当にすごいな。マイペースで、それで話しやすい。

 

「簪ちゃんって、ああなの?ISの件」

 

「あれはね~お姉ちゃんがいるから」

 

本人と同じ答えだ。2人の共通理解なのだろう。

 

「コンプレックスが原因か。できれば私も手伝いたいけど、お姉ちゃんを解決しないと無理そうだね」

 

「むむむ、それがムズイんだよね」

 

一戦目はラウラ箒vs一夏シャルルだった。面白くない。決勝の相手が最初に決まっては楽しみがなくなる。一夏シャルルが勝てばデータのとりようがある。

 

やはりというべきか、コンビネーションが発揮されずあっさりと決着がついた。

 

未熟なコンビネーションに勝ったとて、それは実力を示すものではない。

 

なにより、女という猛獣に狙われ続ける苦しみを分かち合った仲だ。強い絆があるに違いない。

 

ラウラの機体からヘドロが流れた。ヘドロが固まり、のっぺらぼうの織斑千冬になった。ファイトスタイルをトレースしたオートマ制御だ。VTシステムか。ナチス産の怨霊だ。ハンムラビをドイツに売り込むべきではないと悟った。かの国は背中を任せる相手ではない。

 

シャルルが一夏のISにプラグをさした。エネルギー切れの状況の一夏に託すというのか。

 

周囲の部隊が待機した。

 

織斑先生か!粋なことをする。

 

零落白夜がヘドロを切り裂き、ラウラが出てきた。彼女は気絶していた。

 

彼女はあんなものを持たされていたのか。軍属の哀れな性だ。しかし大っぴらにはしてはならない。

結果的に一回戦だけ行うことが分かった。量産機相手とは言え、いいデータが取れた。せめて専用機乗りのデータが欲しかったが、それは演習にでもやればいい。

 

朝のショートホームルームの時間。山田先生が転校生の連絡をした。今週3人目だが、それがシャルルくんだった。つまり彼は彼女だったようで、混浴まで済ませたのだった。

 

リンちゃんが怒り形相で飛び込んできた。

 

マジまずい、一夏刺される。間に合わん

 

途端、黒い影が割り込んだ。ラウラだった。

彼女はリンちゃんの攻撃を静止させ、一夏の唇を奪った。

一夏を覆う恋愛包囲網は、国際色豊かになった。なるべく彼がブッ殺されないようにしないといけない。世界最初の男性IS乗りが痴情のもつれで死んだとあれば笑えない。

 

しかしあの執着が解決したのか。恋は強し。

 

休日、臨海学校に行くことになった。その流れで水着や服を買わないといけないことになった。弾と蘭ちゃん会った。

 

「お、城子」

 

「え、手升さん?」

 

「ちょうどよかった。臨海学校があってさ」

 

「お、弾」

 

ちょうど3人であった。偶然もあるもんだ。よく考えれば今生の別れになることはなかったかもしれない。当時はもっと忙しくする予定だったが、想像以上にジ・Oの進化が早かった。

 

「恋人にプレゼント?色男め」

 

本当に刺されないか心配になる。

 

「そんなんじゃないよ」

 

「よかった」

 

蘭ちゃんが胸をなでおろした瞬間に一夏は消えた。一瞬見えた黄色の閃光から、フランス流のミスディレクションだと分かった。蘭ちゃんが使われるとは。

 

「あれ、一夏は?」

 

「消えたよ。弾と違ってモテるからね」

 

「うっさい決めつけんな」

 

「おにいがモテるわけないじゃん」

 

「ぐぬぬ」

 

弾は家では大変だろう。家庭内ヒエラルキーが低いに違いない。

 

「そういえば臨海学校って」

 

「そうそう。それで水着と服を買いに来たんだよね」

 

「学園の人達はどうなんですか?」

 

「ラブコメ主人公とデートか尾行かだね」

 

「お前も大変だな。よーし、俺が水着を選んでやるぜ」

 

弾がスケベ心をもって話してきた。もし弾が同室だったらパパは気絶するだろう。破廉恥がよく見える。男友達としてはいいが恋人には見れない。

 

「蘭ちゃん、2人でデートだね」

 

「そうですね。ささ、おにい荷物を全部持って帰って」

 

哀れになるほど弾が悲しそうにしている。

 

「せめて役得を、役得をお恵みください」

 

「お色気は恋人にでも頼むんだね」

 

「そんなぁ」

 

私は蘭ちゃんの趣味を甘く見ていた。普段着が派手で気軽でカジュアルで、勝負物が白レースのワンピースだった。そこが可愛らしいが、私が着るには恥ずかしい。

 

しかしこの場合は着せ替え人形に準ずるに限る。笑顔が見れるし、何より楽だ。これは15年余りの女としての知見だった。

 

「この水着、セクシー過ぎない?」

 

「セクシーすぎるくらいがちょうどいいんです」

 

紐!ビキニ!前世紀の始まりなら痴女扱いだぞ。

 

「同級生に変に思われなきゃそれでいいんだよ?」

 

「思われませんよ。似合ってますよ」

 

「せめてパーカーとか」

 

「海ですよ。観念してください」

 

「そうだ、いったんクレープ入れよう」

 

「さっき食べたじゃないですか」

 

結果的に大量の服を買った。服屋の紙袋でいっぱいになった。

私は、妹のように思っている彼女からの要求には弱かった。

 

「今日はありがとう」

 

「わたしこそ。いっぱいおごってもらって」

 

「いいよ」

 

夕陽が見えていた。着せ替え人形の苦しみから逃れるために、クレープやコーヒーを使ったおかげで着せ替え人形期間は2時間もなかった。優れた統率者には撤退の技術がいるのだ。今回はうまくいったはずだ。




ビームコンフューズです。カミーユの技でしたが、シロッコではなかったので使わせました。
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