ジ・Oの女は恋知らず   作:エタノル

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ジークアクスいいよね。マチュにカミーユ味を感じて好きになっちゃう


まるで水曜日

海は得意ではない。というか、体を動かすことそのものが得意ではない。だからジ・Oの操作を脳波前提にしている。脊髄反射未満の速度は信用できないのだ。だからか、ビーチバレーに参加したとき、当然お荷物になった。

 

「4対3って」

 

「ふっふっふ。何せこっちには足手まといが2人もいるからね」

 

ドヤ顔の布仏さん

 

「ジ・Oに乗っていない私の弱さ、教えてあげる」

 

「自慢することかよ」

 

「一夏と選んだ水着はどう?シャルロット」

 

「なんでバレてる」

 

「私の反射神経を甘く見たな」

 

「ならその反射神経を見せてよ」

 

周囲がざわついた。デートを暴露されたからだ。それをかき消すようにシャルロットがこちらにスパイクしてきた。見事、顔面にぶつかった。

 

「え、ごめん」

 

「ひどい、こんなに弱いのに」

 

びっくりした。私は真剣に弱いのだ。ISに乗るためにできるだけのことはしているが、脳波コントロールに頼りすぎだ。

 

「審判するよ」

 

「やめとけって、また考えごとして忘れるだろ」

 

「うぐ、返す言葉もございません」

 

サイコフレームの試作を試す日だったから、確実に考え事をしてしまう日だったのだ。

 

私が抜けたあたりに、山田先生と織斑先生がバレーボールに加わったようだ。

 

「手升さん、そんなに運動ができなかったんですね、意外です」

 

「あはは滅相もない」

 

山田先生は純粋に意外だったようだ。

織斑先生と入れ替わった相川さんが話しかけてきた。

 

「けっこう筋力の増強に力入れてるんだね。ジ・Oだっけ、あの太っちょ」

 

「それもあるけど、エネルギータンク的な意味合いが強いかなぁ」

 

「ふーん。それだとセシリアよりもエネルギーがありそうだね。だからあんなに火力が?」

 

「どこみていってんの?」

 

「胸」

 

私は両手を使い胸を隠した。

 

「意外とあるよね。サイズは?」

 

「B。オジサン相手じゃこれ以上は有料だよ」

 

「だったらさ、亜の機体ってどう見えてんの?」

 

「ちょっと視界は狭いよ。その代わりセンサ類のおかげでいろいろわかる」

 

相川さんが不思議そうにした。

 

「けっこう答えてくれるのに、なんで公開されないの?文書でも出してないでしょ」

 

「開発が私だから、手が回らんのよ」

 

「キモ」

 

キモ?キモいってことか。なんて意味だっけ。

相川さんの反応が反響する。ショックすぎた。

 

「私ってキモい?」

 

「いやそうでしょ。普通どれか一つでしょ。神が何個も与えちゃってる」

 

「天賦の才だからね」

 

転生特典の力と開発の喜びが私をこうしたのだ。断じてキモくない。

 

そうだ、きっとこれは”かわいい”とか”ヤバい”みたいな女子高生の常用語句の一種なのだ。いやはや忘れていた。万能形容詞のの一種なのだ。だから嫌われたわけじゃないはずだ。

 

くそう。こんなところで女学生の友人が一夏ハーレム包囲網にしかなかったのが聞いてきた。セミオートマ制御と同じ、サンプルの偏りによるミステイクがあったに違いない!

 

「手升さんって、天才を自負するわりに弱気だよね」

 

「そうかな」

 

「否定されるとすぐフリーズする。かわいいやつめ」

 

「やめて、髪がみだれる」

 

相川さんが頭をわしゃわしゃしてきた。この子はこういうじゃれあいをする子なんだ。そういうのは初めてで、反応がわからない

 

「ここは海だぞ~」

 

わしゃわしゃが加速した。私のカリスマ性が髪に乱れる。

 

「織斑先生チームに1ポイント」

 

相川さんに押し倒されたあたりで、ビーチバレーの決着がついたようだった。助かった。

 

旅館に戻り、晩御飯だった。みんな浴衣に着替えている。

 

シャルロットがワサビに悶え、セシリアが正座に苦しんでいる。私も箒も離れている。

 

「明日、誕生日だね」

 

「ああ、覚えていてくれたか」

 

箒の隣をとるのは容易で、そこに座ることにした。

 

「いろいろ考えたからね、楽しみにしといて」

 

「ああ」

 

蘭ちゃんがかわいいと言ってくれたプレゼントだ。きっと喜んでくれるはずだ。

 

「多分一夏も覚えてるよ」

 

「そうだといいが、」

 

「あいつはジゴロだけど、こういうのは覚えてる方だって。だから待っとこうよ」

 

「そうか」

 

ご機嫌取りは容易だった。何より、水着を買いに行ったときの一人行動は怪しすぎる。シャルロットがデートに一人行動を入れるわけがないし、あの場所はトイレから遠かった。

 

自由時間、一夏の部屋に向かった。ちょっとマッサージをしてもらいたかったからだ。あの運動から時間がたったせいで、全身の筋肉の悲痛な叫びが聞こえだしている。

 

部屋の前に人がいた。一夏に好意を寄せている5人だった。ハーレム包囲網の面々だ。

 

「なにっ」

 

5つの手が、一瞬のうちに私の口を塞いだ。勢いのせいで、疲労困憊の私は押し倒された。

 

「貴様ら」

 

呆れた織斑先生の声からの、鬼教官の横暴がすさまじかった。

 

セシリアへのマッサージを一夏にさせ、ついでに下着をのぞき見て、一夏に飲み物を買いに行かせた。横暴な方便でも、カリスマで許されている。

 

織斑先生の顔を捨てた千冬さんが酒をあおる。

 

「あいつのどこがいい?」

 

「ジゴロなとこで~す」

 

手をあげ私はそう言った。筋肉痛があったので、すぐ手をひっこめた。

 

「この中だと貴様はそうか。だがどうだ、ほしくはないか?」

 

恋人にするのか。そういえば考えたこともなかった。考えないようにしていた。

 

「どうかな」

 

「貴様らもどうだ?」

 

私まで恋愛をすれば収集がつかなくなる。単純接触効果を否定できないほどかかわっているし、恋愛相談は受けても恋愛はしてこなかった。私が他人に恋愛感情を向けることはなかった。一番の問題はそこだ。15年の若い時間が、私が元男であることを問題にしなかった。最大の敵は、自分の恋愛経験の浅さで、自分の若さだった。

 

結局マッサージは受けられなかった。仕方がないのでストレッチで痛みを軽減した。バキバキと音が鳴った。そこでクラスメイトたちに話しかけられた。

 

「手升さんって、織斑君と仲いいよね」

 

「幼馴染だからね」

 

「好きじゃないの?」

 

覚悟はしていたが、織斑先生が来るまでの間の恋バナだった。

 

「友達としては好きだけど」

 

「それって恋の種だよ」

 

「そういうものかな」

 

「モテたの?」

 

「あきれるほど」

 

嫌味みたいになってしまった。

 

「よかった」

 

安心?ああ、一夏の反応か。私がビンタ屋をしていても心配こそすれども不安に思うようではなかった。

 

「みんなも大変だね、ジゴロ相手じゃ」

 

「手升さんもね」

 

どうやら疲れのおかげで眠れていたようだった。集合のため廊下を出ると、人参型のロケットが自慢に落ちてきてところだった。箒の姉だった。去っていったところだった。鬱陶しいのが去って安心した。

 

「一夏、付き合ってくんない?」

 

私が恋をしているか試したかった。

 

「付き合っ」

 

「いいぞ、次の休みでいいか?」

 

「うん、それでお願い。2人でね」

 

「?わかった」

 

「2人で?それって」セシリアは唖然としていた。

 

「それじゃデートとしゃれこもう」

 

「そんなんじゃないだろ」

 

これが女の性欲ならば、デートでもすればわかるだろう。何よりジゴロ相手だとカップル向けのクーポンを使える。これほどうれしいことはない。

 

「どうしたんだ?セシリア」

 

「なんでもありませんわ」

 

5人に付けられることは想像に難くない。それは面白くない。自分の性別に決着をつけるために邪魔になる恐れがあるからだ。

 

いつメンがそろっていた。専用機乗りと箒だ。専用機乗りが集められたそうだ。

 

不愉快な人間が来た。箒の姉だ。箒が頭を抱えている。

 

「しーちゃんじゃん。サイコフレームは順調?」

 

「まったく頓挫して困りますね。帰ってくれないですか?」

 

「うそつき~」

 

探られていた。やはりハッキングなりして探してきたのだろう。私のPCにそう言ったことのできるのは箒の姉くらいだ。

 

「自己紹介しろ、束」

 

「束さんですハロー」

 

織斑先生の怒りの混じった呆れ声への反応は一瞬だった。しかし名前のインパクトに、私たち以外は唖然としていた。こんな崖を選んだのは、うるさ鬱陶しいこの箒の姉を秘匿する必要があるかららしい。

 

箒の専用ISを召喚し、データの初期セッティングを行った。第4世代IS紅椿。

 

箒の姉で情報を渡しながら、軽い試験を行った。まだミノフスキー粒子が有効そうでよかった。電気通信に頼っている。箒の姉だと、ミノフスキー粒子が効かない通信手段を用意してくる恐れがあったが、さすがに無理だったようだ。

 

山田先生がトラブルの連絡を持ってきた。イスラエルとアメリカの共同開発のというISが暴走しているようだった。正真正銘、兵器の暴走だった。ラケットじゃない。そのISは厄介で、一撃必殺で勝たねばならなかった。必然的に一夏に指名が入った。

 

「紅椿を提案しま~す」

 

全身展開装甲の素早い機体。7分で調整できるそうだった。セシリアのブルーティアーズは高機動パッケージがあるが、量子化されていなかったのですぐには使えない。

 

「手升、ジ・Oはどうだ?」

 

「あれはまだリスキーです。調整しきれていない」

 

「そうか」

 

「はにゃにゃ、マジだったんだ」

 

サイコフレーム使用時に、過剰なプレッシャーを放出してしまう弱点があった。これでは箒も一夏も動けなくなる。一夏には申し訳ないが、慣れない箒と行ってもらう他ない。

 

2人が飛び立った。紅椿の性能はすさまじかった。最高推力だけならばジ・Oにも勝る。戦えば私が勝つが、私の転生特典にも限界が見えていた。そうすればたちまち追い越される。

 

2人の戦いは、密漁船の登場で調子を崩した。一夏が密漁船をかばい、箒もそれに続いた形だ。銀の福音は停止した。ようやく福音として機能してくれたらしい。

 

一夏が密漁船をかばったとき、プライベートチャンネルでもないのに会話を行っていたようだった。一夏は箒によって救出され、私たちは待機命令を出された。

 

「束さん」

 

箒の姉を問いたださねばならない。

 

「やられちゃったねぇ」

 

「あれはニュータイプの感応だった。なのに明らかにISによって誘発されていた」

 

「ぐーぜんだね」

 

「答えろ!紅椿にあれを入れたのか?安易に手を出してはいけないことが、なぜわからない」

 

私は箒の姉の胸ぐらをつかみ怒った。

 

「なんのことかわかんないや」

 

こいつはこういう性格だった。だからサイコフレームのことを聞いてきたのか。

 

「結果的にはいい。あの感応が、一夏のISを進化させる可能性があるからな!だがどうだ!感応が集まりすぎた場合のことは?肉体を失う可能性だってあるんだぞ」

 

「しーちゃんこわーい。第一、あの程度じゃ起きないよ」

 

箒の姉に軽くいなされた。フィジカルでは私が負ける。私は手を放し、箒の姉を解放した。

 

「リスクの問題じゃ」

 

「手升、何を知っている。話せ」

 

私の声を聞いてか、織斑先生がやってきた。箒の姉は消えた。

 

「ご存じでしょう。千冬さんなら」

 

「生体再生か?」

 

「恐らくは。ISの持つ、精神性のようなものの成長を促進するものですから、一夏の成長速度とあの感応を考えれば起きる可能性は高い。何より白式ですから」

 

「そうか。肉体を失うというのは?」

 

「あくまでリスクの話です。旧来のバイオセンサでさえ、性格が変わってしまう。それを倫理のない人間が扱えば、想像に難くない」

 

「どうしてそれがわかる」

 

ため息交じりの声が私をつんざく。

 

「精神体への昇華は、あれの進化の果てにあるものですから」




読んでいただいて感激です。
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