ジ・Oの女は恋知らず   作:エタノル

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べたなデート回です。昭和喫茶的なデカいパフェっていいですよね。一緒に行く友達がいれば食べたい。


ジ・Oの女は恋を知る

「よく眠れた?」

 

「最近ラウラが入り込んでくるんだ。なんかクラリッサって人の影響らしくて」

 

「もてる男は大変だね」

 

夏休み、セシリアが帰国したタイミングでデートに出かけた。

 

「そういえばどこ行く予定?」

 

「これ」

 

ドヤった。カップル割クーポンだ。

 

「げ、やっぱり」

 

「いいでしょ?3割引き。奢るぜ」

 

昔から時折一夏に頼んでいたのだ。弾だと本気にしかねないから危険だったし、男女じゃないと説得力がない。

 

「そりゃありがたいけど、損してないか?」

 

「クーポンは使えることが大事なの」

 

「そんなもんか」

 

私はクーポンが好きだ。特に会員特典のような使用制限がかかるクーポンが好きだ。現世では小学生のころから父親経由で株をさせてもらうことがあったが、評価損益よりも株主優待券の方を優先してしまい、結果的に損してしまったことがあった。いまはエンジニアなせいでIS関連の株を買いにくいのが難点だった。

 

「クーポン使えますか?」

 

「使えますが、カップルメニュー限定になります」

 

 

「なら、デラックス宇治抹茶カップルパフェとハートストロージュースには使えますか?」

 

「ああ、それなら使えますよ」

 

「ならそれで」

 

「写真撮影が必要になります。よろしいですか?」

 

「え」

 

このことは一夏には言っっていない。最近、株主優待券のカタログギフトでもらったものだから、今までの経験にはないのだろう。今まで連れてきた際は実質的なペア割のものばかりで、今回はバカップル割だ。

 

「ごめんなさい。私の彼氏恥ずかしがり屋さんで」

 

「そうでしたか。ではお持ちしますね」

 

店員さんはにこやかに去り、注文を受け付けた。

 

「これがデラックス宇治抹茶カップルパフェとハートストロージュース」

 

ばかでかいサイズのパフェとジュースがひとつづつ来た。昭和の人間はこういうジュースを恋人で飲むことがあこがれだったらしい。今でもコテコテなシチュエーションだった。

 

「ほんとにやるのか?」

 

「ふりだけでもいいから」

 

2人でストローに口を付けた。私はそれを自撮りした。

 

「これうま」

 

「マジだ」

 

フルーティーな味わいがあふれ、それでいてしつこくない。紅茶が味の軸になっていて、いつまでも飲んでいられる。

 

「はいピース」

 

その一言で自撮りした。私は口元にピースをしている。一夏はストローをくわえたまま、控えめなピースをしていた。

 

「ナイスピース」

 

「城子のピースは変わらないな」

 

「ピースなんか変わらないでしょ」

 

しかも転生前が男であることを悟られないための女の子らしいピース全力だ。普遍的な可愛さがあったはずだ。

 

「なんか今の子はこう、指でハートを作るらしい」

 

人差し指と親指を重ねてハートを作るとは、シンプルながら興味深い。デフォルメの極致だ。最近の子ってすごい。こんど箒に教えてあげよう。

 

「今の子って、オジサンみたい」

 

「おれはまだ15だぞ」

 

「感性がジジイ。漬物とか好きそう」

 

「いいだろ漬物。この前のぬか漬けはうまかったぞ」

 

「でしょ」

 

会話の切れ目だったからか、シンクロしたタイミングでハートストロージュースに口を付けた。

 

「カップルみたい」

 

私にとって軽い冗談だった。いじりでもあった。

 

「今はそうだろ」

 

それは耳赤の一手だった。自分で演技をしようといったのに、逆に私がやられた。こんなに甘酸っぱい経験をするなんて、どうも私も女らしい。

 

「ハハハ」

 

恥じらいを笑って押し殺してしまった。恋ってこんなに恥ずかしいのか。ジゴロを相手にする限り、頬の赤身は取れないな。

 

「フフフ、ほら、恋人でしょ?あーんしよ、あ~ん」

 

デラックス宇治抹茶カップルパフェをすくい、一夏の口に放り込んだ。

 

「うま」

 

「私にもちょうだい」

 

「おう」

 

「うんまい」

 

ニュータイプの直感は侮れない。ごっこの名目とはいえ楽しい。バカップルみたいで好ましい。転生した際から、どうもこうなりたいというのが本能的にあったが、その輪郭がようやく見えてきた。

 

「そういえば一夏」

 

「なんだ」

 

「なんでシャルロットて男だったの?」

 

私はストローで氷をつつきながら言った。本人には聞きづらいので聞いておこう。

 

「あんまり言いふらすような内容ではないんだけどな。ざっくりいうと会社の陰謀」

 

「ならさ、ちょっとこっちでできることないか探してみるよ。友達だし」

 

「ほんとか?助かる」

 

「あんま期待しないでね。できたらキスね、ダーリン」

 

「城子じゃ似合わないな、やっぱ」

 

意外と重い話だった。カップルのフリはここまでにして、まじめな話もしないといけなかった。略奪愛にしても、義理は果たしてからしないとだめだ。

 

「ISが進化してからほんとになんにもない?」

 

「なんだよ急に。なにもないぞ」

 

「ならよかった。一夏、白式が進化しすぎたらエスパーになるかもしれん」

 

「頭打ったか?」

 

「わからんか。なら今日一日で、私がエスパーになったことを教えてあげる」

 

「?、それってどういうことだ?」

 

「最高にドキドキさせたげるってこと」

 

そりゃそうか。急にエスパーだなんだといわれてわかるはずがない。デート大作戦。開始。

 

「まず手始めにぃ服の感想をもらおうか。蘭ちゃんセレクション」

 

私は立ち上がり、スカートをつまみ、今日の服装を見せつけた。まるで残月のように白いレースのの服だった。しんぴんだから当然だ。

 

「おう。似合ってるよ」

 

「そういうとこ好きだよ。ジゴロだけど、ちゃんとほめてくれる」

 

「ジゴロって」

 

「水着の感想はくれなかったからね」

 

「いるんだ。悪い」

 

「とーぜん。なにせ大事な妹分の選んだ水着だからね」

 

「蘭がか。お姉さまって言ってたことあったよな」

 

「アレはやめさせるのに苦労したよ」

 

蘭ちゃんを出汁にして恋愛をしようとしている。友達を敵にしようとしている。自分の醜悪さが嫌になる。しかし手升城子であるためには、女の幸せを得るためにはハーレム人員Aに殉ずることべきだと思った。

 

「私セレクションのアクセサリーがあるんだけど、どれかわかる?」

 

「うーん。ヘアゴム」

 

「せいかい。よくわかったね」

 

「それだけ地味だからな」

 

「ちなみにコンタクトも」

 

一夏の目を覗いた。私が逆の立場なら、確実に恋に落ちる。

 

「うーん、紫か」

 

「……そんなに見つめないで」

 

「ああ、悪い」

 

そうだった。私は恋愛がうまくない。顔赤くして目をそらしてしまった。手の甲で目を隠す。涙が出そうだ。

 

 

電流が走る。危機感知能力だ。クラスメイトの気配がする。

皮肉にも、臨海学校前のシャルロットの行動に重なる。ああ、あれで一夏が消えてたんだ。恋する乙女は大変だ。

 

しかし策略家たる私は一味違う。計算高く、クラスメイトが近寄りにくく、外からも見つかりにくい店に行った。コスプレ専門店だ。

 

「なあこの店って」

 

「言うな」

 

ちょっとエッチなコスプレが置いてあった。ここで脳が熱暴走を始めた。セミオートマのビットと同じだ。鍛えられていない恋愛脳を使ったせいで疲れすぎた。

 

「お客様。ご試着はどうですか?」

 

「お願いします」

 

「しっかりしろ城子」

 

「しっかりしてるよ城子は」

 

「だめだ。完全に思考停止してる」

 

助けられたのは、私は着せ替え人形経験が豊富だったということだった。「お似合いです」「きれいです」といった褒めの言葉を聞いているうちに、全身がオートマ制御を始めた。現世の顔面とスタイルに感謝した。ナース、メイド、チャイナドレスにバニーガール。一通り着た。

 

「慣れてんだな」

 

「よくやられるからね」

 

「似合ってるぞ」

 

「ばか」

 

「ほめたのに」

 

エスパーを証明しようとした私の目論見は、かくしてすべて失敗に終わった。私の完全敗北だ。一夏は、何年も一緒にいる私の性格が急に変わってしまっているように思えるだろう。孤独なIS学園をより孤独にさせてしまう結果となってまった。

 

「膝枕、してあげる」

 

「いいよ、別に」

 

「なら一夏がしてよ」

 

「なんでそうなる」

 

夕焼けの見える時間帯、一夏の膝に、無理矢理頭を置いた。夕陽のおかげで、顔の赤さをごまかせて言い。

 

「今日はありがとね」

 

「うん、ああ」

 

「けっこうスタイルに自信あんだ。同じ職場の人に良く褒められて、あんなふうに着せ替え人形になってる」

 

「どうした…急に」

 

一夏は目を泳がせる。

 

「別に。言ったでしょ、ドキドキさせたげるって。失敗したから最後の抵抗」

 

その一言が、言い訳がましかった。最後の抵抗は失敗するものだ。それは歴史が証明している。

 

「ああ、それか」

 

「ごめんね、気まずくしちゃって」

 

「いいよ別に。今日はドタバタで楽しかったし」

 

「ありがと。でもそうじゃないんだ。多分ね、もう急にほかの子が怒ってもフォローできない」

 

「フォローが多かったか?」

 

「ラブコメに参加するってこと。ごめん」

 

すべて私の責任だ。ラウラやセシリアの時のようにマシンを直せばいいわけではないし、それでは何ともならない。

 

「なんで謝るんだよ」

 

こいつはわかってない。ラウラのようにストレートに、より強く言わないといけない。

 

上を向いた一夏の頭をつかみ、私の唇に引き寄せた。

 

「はは。口紅、付いてる」

 

白いハンカチで、一夏の唇をふき取った。

 

座り直し、正面を向いた。

 

「私はあなたに恋をした。昔、私に告白してきた子たちのことがようやくわかった」

 

だが、永遠に恋人になりたいと思えるのか。クラスメイトの官能が入り込んだだけなんだろうか。ロマンチックには興味はないのに、どこか不変の愛を求めている。恋の自己矛盾を感じていた。

 

「負けたよ。城子はエスパーだ」

 

「そうでしょ」

 

その一言に、一夏は安心したようだった。

 

「そうじゃないかもしれない。どうだろね」

 

「城子ぉー」

 

ここでようやくリンちゃんに抜け駆けがばれたようだった。

 

「答え合わせはまたこんど」

 

「おお、ああ」

 

 

箒の部屋で正座をしていた。正座はつらい。クッションが欲しい。

 

「それで、申し開きはある?」

 

「恋を…知ったんだよね」

 

私は目をそらした。

 

「お前もか。とりあえず抜け駆けは禁止だからね」

 

「はい、滅相もない。もう致しません」「そこらへんで許してやれ」

 

今は恋する女子高生。立場も彼女らと同じだ。

 

「はぁ、もういいよ」

 

箒の一声のおかげで私は足を崩しせた。

 

「何があったのだ?修学旅行が終わっても、何もなかったではないか」

 

「なんでだろーね。いつの間にかっていうか、なんかこう!って感じのきっかけがないんだよね。みんなと違って」

 

「そうか。ならライバルだな、その、恋の」

 

リンちゃんのジト目だ。

 

「それはそうとして、箒、何そのパジャマ」

 

「いいだろ」

 

「それはだね、ふっふっふ。私の誕生日プレゼント」

 

どうだ、リンちゃん。おどろいたか。虚無モルモットTシャツ。かわいいだろ。箒もよく喜んでくれた。お礼に髪を乾かしてくれるくらい。

 

「専用機に乗ることをしってたら、ブシドーブレードを作ったんだけど、」

 

「どんな開発スケジュールよ」




女主人公の着せ替え人形展開なんてなんぼあってもいいですからね
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