「篠ノ之 束の再来ならば、以前の無人機の再現など可能ではないか?イギリスのAIの開発者でもあるんだろ」
「技術的には可能でしょう。しかし、あれではだめでしょう。篠ノ之 束の開発の疑いのある無人機ですら単調なシステムで動いていました。慣れたパイロットであれば楽に倒せます。もし戦争への利用を想定するのであれば、いたずらにコアを奪われるだけでしょう」
企業への説明は面倒だった。基本的にやりたくはない。派手な流行り意外興味ないんだろう。
「すまないね。君のような若者には、好きにさせたいのだが」
「いえ、そういう義務は理解できます。便宜を図ってくださっているのも理解しているつもりです」
つまらない説明の後、同じ開発チームのティムさんと喫茶店にいた。この人をチームに組み込めたことは、女尊男卑の数少ない幸運でもあった。
「そうか。IS学園は充実しているか?」
「そのことで相談が」
恋愛相談だった。身近な中だと唯一の相談できる人間が、このティムさんだった。あとは猫カフェの猫くらい。パパは恋愛能力が目に見えて低いので対象から外れている。フランスでゴダールごっこをしているおじさんがモテるはずがないのは自明だからだ。
「わはは。君からそんな相談が来るなんてね。しかし弱ったなぁ。恥ずかしながら、夫婦仲があまりよくなくてね。ほかの開発チームの2人に相談した方がいい。女同士、気兼ねないだろう」
恥ずかしそうにティムさんは頭の後ろをさすった。
「まぁあの子たちはね、恥じらいがあります」
部下である彼女たちには恋愛の相談しにくかった。服飾センス以外は尊敬してくれている反面、そういう弱みを出しにくいのもあった。
「たしかにそうだな。どうしようか」
「大人であろうとしたのが早すぎたんでしょうか?」
少し後悔があったのがある。せっかく子供に生まれたのに開発ばかりしていた。もっと奔放でいていいと、今さらの後悔だ。
「そういう君に頼りきりだったのも確かだ。ようし、知り合いにあたってみよう」
「そういうのはいいです。過干渉は息子さんにも嫌われますよ」
「君は時たまそういう失礼があるよね」
ティムさんは目に見えてしょげた。その後キョロキョロして、ちょうど一夏のお弁当箱くらいのサイズの包みを出した。
「以前言っていた回路の問題が解決していなかったと思う。ぜひこれをジ・Oの記憶回路に取り付けてくれ、性能が数倍に跳ね上がる」
「ああ、ありがとうございます。助かります」
彼の仕事は私と同じで、理論よりも機械いじりが好きな人間だった。パパからの紹介で、現世での私の師匠ともいえる人だった。
「中身は見ればわかるだろう」
「もちろん」
IS学園に戻り、すぐにティムさんの回路を取り付けた。近くにいた専用機乗りたちと手加減なしの模擬戦をすることにした。一夏と箒はいなかった。一夏は生徒会長に捕まっていて、箒は部活だ。
「堕ちろ、蚊トンボ」
セシリアのビットを撃墜した。
「お口が悪くてよ」
「バイオセンサーの制御ができていないみたいだね」
「今の制御はパーフェクトなのだよ。天才性を表現するのにはね」
「セシリア、2人で城子を!」
リンちゃんがセシリアと協力するようだった。シャルロットとラウラも協力を始めたようだ。
「まずは貴様からだ、城子!」
ラウラがジ・Oを静止してきた。置いておいたビームライフルを起動させようとする。
「まかせた」「そうはさせないよ」
シャルロットがライフルを打ち抜き、攻撃を防いだ。セシリアの光線が後ろから来る。
「さかしいな」
私から放たれたプレッシャーを食らったラウラは停止結界を解除し、私がよけた光線を受けた。ついでにサーベルで切り付けた。
衝撃波を出しながら近づくリンちゃんをセシリアのビットが援護する。
「近接なら」
「じつに有効だ。だが甘い!」
リンちゃんとの鍔迫り合いは、サブアームでぶん投げ回避した。残りのビットは接近していたのでビームサーベルで撃墜した。周囲が空いたからか、シャルロットが実弾で攻撃してきた。
「ほんと当たらないねっ」
パイルバンカーには排熱板がぶつかった。私の意志を反映して、ジ・Oが射出したのだ。シャルロットが排熱板に意識がそらされた影響か、ぎりぎりで回避できた。回避ついでにシャルロットを蹴り、その反動でビームライフルを回収する。
「パワーダウンか」
さすがに相手が多すぎたのか、ビームサーベルの出力が下がった。
出力の下がったビームサーベルをセシリアに投げた、そこにビームライフルを打ち込んだ。
「その手は知ってますわ」
セシリアはビットを離した。残りのビットがすべて破壊されることを恐れたのだ。だがビームサーベル本体を打ち抜き、IS本体にあたった。ビット操作しながら移動するマルチタスクが出来ず、回避しきれなかったのだ。セシリアはライフルを落とした。そのすきにビームライフルを打ち込んだ。
演習は終わった。ほかの専用機乗りは、ジ・Oに攻撃を当てられないまま負けたのだ。
数倍に膨れ上がったジ・Oの性能は圧倒的だった。ティムさんの回路のおかげでサイコミュの制御が容易だった。
だが、進化への欲求は抑えられない。ジ・Oもそうだろう。the・オールマイティを冠するジ・Oに完成はない。
文化祭当日だ。どうも私はメイドになるらしい。ほとんど役割をこなしてこなかったから、ノーとは言いづらかった。赤面を隠すために、メイド服に保冷剤を仕込んだ。
「一夏君いる?」
「あ、簪ちゃんのお姉さん。一夏なら休憩中です」
一夏の休憩中にヤツが来た。面倒なヤツだ。
「あなたは、同室の……生徒会長の更識楯無よ。1年生最強って噂は聞いてるわ。よろしく」
「ええ、はい。生徒会長なんですね」
私は会長の握手には応じなかった。簪ちゃんに見られたら勘違いされることは明白だったからだ。
「織斑くん、貰ってくわよ」
「構いませんよ。けどそういう強引さを妹さんに向ければどうです?」
すきな男をうばう女に、私は厳しく当たってしまった。
「あなたが助けてくれればいいじゃない」
「しませんよ。すれば決着がつかなくなります。本人から求められたら別ですが、そうじゃない」
「厳しいのね」
「プライドの問題です。特殊武装のデータのような、間接的なサポートにとどめるつもりです」
「それであなたが」
その時、一夏が休憩から帰ってきた。
「楯無さん、なんでここに」
「そんなことより一夏、感想どーぞ?」
「なんだその、似合ってんじゃないか?」
「そう」
「ふうん」
一夏が更識楯無を見ている。ここにいることに驚いてか、それとも彼女の放漫な豊満につられたか。一夏なら前者だろう。そう踏んで感想を聞いた。
合点がいったような反応を見せた更識楯無が一夏を攫った。
「演劇、楽しみにしててね」
しばらく接客をしているうちに、クラス中がざわめき、客足が大きく遠のいた。どうも演劇というのは一夏との同居の権利を争うものだそうだ。
あの薄汚い豚女めが。二度と日の出も見れんようにしてやる
ふと気づいた。これが怒りかと。彼女らが暴走する意味がよく分かった。等身大の模型ISなんか、ぶっ壊しても罰は当たらない。怒りのあまり、本気で彼女をけちょんけちょんにする算段を組もうとしていた。
途端、ニュータイプの直感が告げる。演劇会場の周囲に明白な敵意だ。一夏が危ない。
私は、急いでそこに向かった。鬼教官のもとで走り込みをしていてよかった。息切れをしながらなんとかその前につくと、織斑先生から通信が来ていた。
「手升、どこにいる」
「更衣室の前です」
「壊してもいい、行け」
ビームサーベルでで切り付けた。ドアが開けたら、蜘蛛のような機体が逃げるところだった、
仮面付きのISが宙に浮いていた。
イギリスの2号機か。セミオートマを売った時に聞いたことがある。テロリストめ
「手升ちゃん、行って」
ビームライフルを散弾にして打ち出した。
「テロリストごときに、邪魔されてたまるか」
散弾として撃ったが、精神が安定しないのか当たらない。メイド服のせいでサイコミュの制度が下がってしまっているのもある。
「しっかりしろ、城子」
仮面付きに飛びつく一夏の言葉に意識を戻した。
「堕ちろ、仮面付き!」
「ジオか、クソッたれ!」
「帰投だ。オータム」
蜘蛛型のISが装甲のみ歩き出した。
ビームサーベルのピンを引き抜いた。サーベルが槍になった。ビームジャベリンだ。
「みんな」
それを蜘蛛型にブン投げた。一夏が止まれず、爆破する蜘蛛型の方へ向かってしまっていた。
会長が蜘蛛型の爆破から救ってくれていたようだった。礼を言いたい反面、私の前でイチャつきやがった。ゆるせん。ラッキースケベだ
オリ主の行動が遅いのはご愛敬。ハーレムに加わるのが遅かったのかもしれませんね