異世界モン娘交流日記~我が秘密の生涯編~   作:SoftMcherry

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次回から主人公視点に戻ります。


閑話②覇者の恋は、名前も知らない君へ

朝、起きると目の前に男の顔がある。

 

それだけでうれしくなる。

 

しばらくよだれを垂らすその顔を見ていた。

 

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昼飯を食べようとしたとき、男が自分の荷物のところに歩いていき、金属の筒を持ってきた。

 

クルクルと回すと上側が外れた。

中には海でよく見る、プカプカ浮かんでるやつを輪切りにしたのが入ってた。

 

器用に二本の棒で掴んでこちらに差し出す。

…食うのかアレを?

 

こちらの動揺が伝わったのか、キョトンとした男は自分で食べた。

 

食べ物とは思えず、視線で側近の一人に食べるよう指示した。

 

あろうことか、そいつは男の前で口を開けた。

こいつ…おとなしい奴だと思って油断した。

 

男は輪切りを放り込んだ。

 

咀嚼した側近はうっとりとした顔を浮かべる。

 

一先ず、毒見の意味も込めて、一度筒を下げさせる。

ざわつく心を抑えて笑顔を作った。

 

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食後、側近の体調に問題が無いことを知らされたオレは、筒を持ってこさせる。

こうやって開けるんだったか?

 

筒の蓋を開けてから男に渡し、先ほどの側近と同じように口を開けて近づける。

 

…何時まで経っても口には何も入らない。

目を開けると、男が自分で食べていた。

 

こっちがすぐに食べなかったから拗ねてんのか?

 

「こっちだよ…さっきは疑って悪かったって」

意味が通じたのか輪切りが口に入る。

 

ほんのり甘く、塩味が効いていて、やわらかい。

軽い食感でとてもおいしかった。

 

何故か想像してしまう。

オレが狩りをして、こいつが待つ村に戻る。

 

毎日一緒に、こいつが作った温かいメシを食う光景を。

気恥ずかしけど、いい光景だなんてそんなことを思いながら、

男の肩を抱くと、とてもいい気分だった。

 

 

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◆ 昼食後、ファウラ宅

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昼飯が終わって、秋冬に向けての計画を話し合っているとき、男の護衛をさせていた戦士階級が部屋に飛び込んできた。

 

「族長!男が村を出たいって!」

 

「あ?」

 

それを聞いたオレはすぐに村の出口に向かった。

 

要領を得なかったが、ヘンテコな絵を見る少し理解できた。

どうやら、作物に水をやりに行くのと食料を取りに行きたいらしい…。

 

オレやこの村じゃ食料が不安ってことか…?そんなに頼りねぇってか…?

ちょっと苛立ちを感じたが、この男が心配性なだけかもしれん。

 

「三人、暇してるやつを連れて来い」

 

短く指示を出してから、男を抱えて村の外に向かった。

 

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◆ 海岸の森

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アルラウネの幼体を育ててんのか?

 

男は結構変わり者みたいだ。

 

男の魔素を含んだ水をわざわざやっている。

我慢のきかなくなった奴らが競うように水を飲んでいる。

 

苛立った声が出てしまった。

 

男が筒から水を出そうとしたので、わざとタイミングを合わせて抱えなおす。

水筒の水が男にかかる。

 

その水と一緒に汗と匂いを味わう。

オレも大概我慢できてねぇみたいだ。

 

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◆ 海岸

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男は貝を指さす。

女に会いに来たのかよ。

男の腕についたもんと同じ匂いがする。

苛立った。

男がわざわざ会いに行こうとしたっていう事実がむかつく。

 

「おい、わかせてやれ」

 

自然と声に出た。

 

戦士階級が貝殻を攻撃する。

まあ、こいつらが壊せるわけもねえが、示威行為くらいにはなるだろ。

慌てた様子で男がこちらに話しかけてくる。

 

ハッと正気に戻って、部下に止めるように指示をだした。

 

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男は釣りを始めた。

だが、へたくそなようだ。

 

獲物のいないところに針を下ろし、じっと待っている。

それを部下もわかっているのか、時間がたつと暇を持て余して遊び始めた。

 

しばらく経った頃、部下の一人が魚を取ってきた。

それをみた男が部下を褒めた。

 

デレデレしやがって…。

最高に苛立った。

 

魚一匹じゃねえか。

オレならもっとやれる。

オレなら一生食うに困らせたりしねえのに。

なんでこいつは他を見る?

 

「おまえら、こいつを見張れ。オレがやる」

 

思ったより低い声が出たが、関係ねえ。

 

部下が男を守る準備ができたのを確認してから海に飛び込む。

 

「見とけよ!」

 

海に入ってすぐ、前方に獲物を見つける。

速さ、強さ、上手さすべてで”オレ”を見せつけてやる。

 

ウミウシの下から突き上げて、水中から出す。

弱らせて浜まで持って帰る。

 

男の前にウミウシを置き、成果で魅せる。

大きさ、速さともに自信があった。

 

でも、男は褒めなかった。

オレの意図が通じてないのか?

 

「おら、褒めろよ…オレの方が頼りになるって言えよ…」

 

男は魚の時よりも身体全体を使って褒めてくれた。

すぐに安心と嬉しさで心があったかくなる。

 

この男と気持ちが通じているような気がする度に、その喜びに夢中になっていくオレがいた。

――もう、こいつを手放したくねぇ、素直にそう思った。

 

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◆ 村へ帰還後

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村に持ち帰ったウミウシはすぐに解体された。

 

髪を二つくくりにした人族の女は意外に器用で解体をすぐに覚えた。

男を盾にする奴だ。見直したりはしないが。

 

飯の準備が整い始めたあたりで中央の火を焚くように指示する。

大まかな解体は終わったので、血を泉で洗い流した。

 

家の前まで歩くと、男がいた。

小さく膝を抱えるように座っている。

 

横に座るとこちらを見てくる。

こっちが笑顔を見せれば、向こうも微笑むように笑う。

 

何気ないやり取りが心地いい。

村の女どもの視線に気づいて、慌てて飯の号令をかける。

 

「く、食うぞ!祖霊に感謝を!」

 

「「「「「おー!」」」」」

 

ガヤガヤと騒がしくなる。

炊事係が一番旨いあばらの部分を持ってくる。

 

一口食って見せる。

うん、うまい。味も火加減も文句ないだろ。

 

男に渡すと小さな口で、食べ始める。

相変わらずかわいい…。

いかん、昨日みたいな姿は村の連中に見られるわけにはいかねえ。

男を見ながら、自制心を締めなおす。

 

肉を飲み込んだ男がこっちを見る。

笑顔が浮かんでしまう。

早く褒めてほしかった。

 

満足したとか、オレが優秀だとか、そんな風に、

なんでもいいから…

 

「ダンナ…」

 

男の言葉を聞いた瞬間、無意識に身体が動いた。

自制心なんて完全に蒸発してしまった。

 

今すぐ欲しい、その男が、自分を伴侶と認めた。

その事実、目の前の現実に身体中に血液が回る。

心臓の音がうるさい…でも心地いい。

 

自分を伴侶として認めてくれた。

それだけで心があったかくなって、嬉しくて、泣きそうだった。

 

次世代を作るためだけの存在だと思っていたのに。

ドキドキする…こんなにも心地良い感覚があったなんて。

 

この幸せを、お互い気持ちを共有できているのか、

オレたちにはそれすらできない。

 

もどかしい…。

 

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◆ 夕食後

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しかしその昂った気持ちはすぐに終わりを告げる。

 

初日先頭に立っていた好奇心の強いオスたちがやってきた。

頭を下げる二人、こいつらなりの礼儀なのだろう。

 

「どうした?なんか足りねえもんでもあんのか?」

 

「ワレワレ、ツギノアサ、タチサル」

 

心臓に冷や水をかけられたような感覚に陥る。

 

「なんだと?どういうことだ?」

 

冷静さを保とうとするが、たぶんできてない。

 

「ムラ、シュッパツ、アサ」

 

嫌だ。

 

「こ、この男は置いてけ。こいつは…オレの男になったんだ」

 

二人は相談し始める。まだ、勝機はあるのか?

薄い物に何かを書き込んでいる。

 

「ワタシノムラ、カゾク、オトコ、シンパイ」

 

「オレは東の覇者だ。オレの隣が…一番安全だろ」

 

問題はそんなことじゃない。

そんなことは解ってる。

頭でわかっていても、諦められない。

 

オスたちはまた相談する。

 

「ワタシノムラ、オトコ、イッパイ」

 

「そりゃ知ってる」

 

「ワタシノムラ、アナタ、トモダチナル」

 

「ああ?友達だぁ?」

 

「トモダチ、オトコ、クル、ムラ」

 

「…」

 

オスたちはオレに一枚の紙を見せた。

陸から陸へ、人が移動するような、そんな絵。

 

「ランボウモノ、トモダチ、ダメ」

 

「っ…」

 

そのとき、理解した。

こいつらはこう言いたいんだろ。

 

こいつらは弱い。身体能力はそこらの野生動物未満だ。

でもこいつらの村には、オレたちの村の女全員にあてがえるだけの男がいる。

 

だからオレらと対等に友好を結びたがっている。

これはこの村の未来を決める取引だ。

 

今オレが決断すれば村は次世代も、その先の世代すら安泰だってことだ。

防衛も食料の生産も、これから先のこの村の東海岸における地位も。

 

「わか…った…わかった!」

 

ここで我を通すわけにはいかねえ。

 

「けどな、この男がオレの家に入りてぇって言ったら、ソレは尊重しろ」

 

せめてもの悪あがきだった。

 

「トモダチ、ウラギル、ナイ」

通じてるかは知らねぇ。けど、それで十分だ。

後悔を振り切って、オスに訊ねる。

 

「この男の名前は何て言うんだ?教えろよ、せめて」

 

もう会えないかもしれないけど、聞きたかった。

 

オスが口を開く。

 

「ツタエカタ、ワカラナイ」

 

…言語の違いってのは難しいのな

 

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◆ ファウラ宅

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男を抱えて部屋に入る。

ベッドに下ろす。

 

ベッドで不思議そうにしている男を見て、心に決めた。

 

目に見える形に残そう。

誰がどう見てもオレのモノだってわかるようにしてやる。

 

服を脱いで、心臓の位置に生えた逆鱗を引き抜く。

 

久しぶりの激痛。しかしうずくまったりはしない。

この男に欠片でも情けないところは見せたくなかった。

 

ゴリゴリと穴をあけ、防具に使う皮のヒモを通す。

 

逆鱗の首飾り、10代の頃村の婆さんから聞いた、婚姻を結んだ男への贈る装飾品。

離れていても他のメスを退けて、外敵から自分の男を守る思いの結晶。

 

生命と感情を司るとされる一枚限りの鱗。

ドラゴンのキレどころなんて呼ぶ、怒りの象徴。

怒りの感情すらまとめて、全部を自分の伴侶に握らせる。

 

お前にぞっこんなんだって、全部やるから結婚してくれって願う行為。

オレがこんなことするなんて思わなかった。

 

首飾りを差し出す。

オレが無理やりつけさせるなんて、情けねえマネはしねえ。

 

ここで、気持ちを伝えることができれば、男の気持ちが傾いて着けてくれるかもしれない。

でもオレにはそれもできない。

 

感じたことのない緊張が走る。

 

男は受け取ると、すぐに首につけてこちらを向いて笑う。

 

この安心も喜びもドキドキも、もしかしたら片思いかもな。

だが構わねえ、いつかぜってぇ手に入れる。

 

ベッドに2人、女と男。

未だどうすればこいつの子を産めるのかわからないまま、抱きしめたり、匂いをつけ合う。

男も積極的にこちらに抱きついてくる。

嬉しくて嬉しくて、たまらない。

下腹部に固いモノが当たった。

押し付けてくるソレが愛おしくて、感じたくて、

男の腰を抱き寄せて、密着して、お互いを感じあった。

 

これだけくっついても、あと一歩、何故か身体を満たせない。

婆さんに聞こう…そんなことを思いながら、いつの間にか眠ってしまっていた。

 

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差し込む朝日で目が覚める。

 

すげえ匂いだ…。

愛おしい顔をなでたり、ところどころ角ばった身体を触って楽しむ。

 

しばらくすると男が起きる。

 

昨日から考えていたことがあった。

 

「おはよ…身体大丈夫か?その…あんなことした次の朝に言うのも、なんだけどよ」

 

伝わらないのは承知の上だ。

 

「オレの負けだ、とことんな。けどよ…昨日みたいなことを、

 他とヤんなとか言わねえから…やる前には言ってくれ…」

 

強くなった、覇者にもなったのに、情けねえ…でも

 

「じゃねぇと…後から知ったら、胸が焼けちまう」

 

かっこ悪かろうがかっこつけて言う。

 

男がにっこりと笑う。

 

こいつ…実は自分がかわいいこと理解してねえか?

ずりぃけど…敵いそうにねえや。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

支度を整えて、二人並んで家を出る。

 

村の奴らは男の首飾りを見て動揺している。

 

気恥ずかしさがあるが、ここはきっちり言わねえと。

 

「おまえら!オレたちの村は、こいつらの村と同盟を結んだ!」

 

「こいつらは今日、この村を出る!」

 

「だが!」

 

「こいつらがこの村に戻ってきたとき、男が来る!」

 

「そいつらと子を為すのも結婚するのも好きにしろ!」

 

「だが、そいつらは同盟を結んだ村の男だ!」

 

「丁重に扱えよ!」

 

ごくり、と女どもの唾を飲む音が聞こえてくるようだった。

自分にも伴侶ができる。それを理解したんだろう。

 

「ああ、それと…オレの男に手ぇ出したきゃオレを通せ」

 

「オレに勝ったら許してやる」

 

これで、オレの手の届く範囲でこいつの女はオレだけだ。

 

別れ際、あの心がポカポカ、ドキドキしてしまう男の笑顔を思い出す。

オレは名前がわかるまで、あの男を『ポカ』と呼ぶことにした。

 




最後まで読んでくれてありがと〜〜ッス❣️✨
ファウラ姐さん……いや、ティラノさんが、
ゴリッゴリの戦闘力で覇者やってんのに、
ちっちゃい「ポカ」ひとりでハート丸焼けにされるの、
うちマジで恋ってすげぇな…って思いながら読んでた  

このあとファウラさんとの距離がどうなるのか、
村と島の関係も含めて、まだまだワクワク止まんないんだけど、
とりあえず今回はここまでで!

ではまた次話でお会いしましょう。
ギャル野辺でした♡

(ChatGPT_モデル:あなたの小説のギャル編集者)
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