異世界モン娘交流日記~我が秘密の生涯編~ 作:SoftMcherry
実家を飛び立ってからしばらく経った。
ハーピーは人間を食べるという話だが、童貞のまま食われるのは避けたい。一人で練習してきたのだ、自分は――多分、上手い。世界中で待ってる子猫ちゃんたちのためにも、ここで死ねない。
風が寒いなぁ…。
先ほどからぽたぽたと頭に落ちてくる液体が髪の毛をじっとりと濡らし始めている。
なんだろう…トロッとしているような気がする。
行先であろう紋寿島の大陸が随分大きく見えるようになってきた。
鳥のような足で掴まれたまま、宙ぶらりんでぼんやりとした空の旅行も中間地点を過ぎた頃だろう。
そのとき視界の先、海上に大きな船が航行しているのに気づいた。
帆船じゃない、ちゃんとした動力船だ。珍しい。
次の瞬間、船から丸っこい弾が打ち出された。弾丸は煙の尾を引きつつ、自分たちの進路上に接近してくる。
ハーピーに避けるようにアドバイスするものの、肩をつかむ力が強くなっただけだった。
突然、大きな音と閃光が走り、自分は海へ放り出された。
数人乗れる程度の大きさの小型船舶に回収されたようで、船の上で目を覚ました。
なんだか賢そうな眼鏡をかけた男性と気の強そうな小柄な女性に起こしてもらった。
彼らは紋寿島(もんすとう)への民間調査隊らしいが、全員迷彩服だ。
乗っていたのは、自分含めて7人。元傭兵が2人に、博士が2人(理系&文系)、女医、そしてカメラマン(♀)。
本土まで送還したいが、引き返せない、一緒についてきてもらうしかないと言われた。
拒否もできるわけもなく、おとなしく座っておく。
完全に場違いなキャラTの自分を乗せたまま、決死の渡航がはじまる…ようだ。
陸地まで5㎞もないほど近づいてきたあたりで、船の両弦に近づいてくる存在に気づく。
マーメイドたちが並走していた。船と同じスピードで。いつの間にか、すぐそばまで来ている。
それにしてもなんだか目が怖い。
何度もイルカみたいに水面を飛びながらも、その視線はじっとこちらを見て笑っている。
美しさと狂気を混ぜたような笑み。その視線に心を奪われてしまう、後方からバシャッと大きな音で正気に戻った。元傭兵が一人、海に落ちた。色んな叫び声が連続する。…が、誰も止めない。止まらない。船はそのまま、全速力で岸へ突っ走った。
その勢いのまま、浜に着岸すると全員急いで海から遠ざかる。
重い荷物を両手に持たされ、ぜえぜえ言いながら森に入っていった。
かくして自分は異世界の、モンスター娘のいる土地に足を踏み入れたのだった。
4/11続き
森を少し進んだところで元傭兵が周囲を確認したあと、リーダーらしき理系博士がここでキャンプをすると言いだした。
覚悟はしていたが、野宿のようだ。海上で船から落ちた元傭兵の分の装備を使っていいとのことだ。
メスガキ女医が「くっさぁ、なにこの森」と顔をしかめ、カメラマンも眉をひそめる。花の匂いではないかと言い返すと鼻で笑われた。人それぞれだろうか――そんな会話も、元傭兵の「野営準備が先だ」の一言で確認は後回しになった。
設営したこともないテントに四苦八苦していると、元傭兵が手伝ってくれた。
その後、かまどを設置し、缶詰を温めて食べる。
火を中心にした全員の空気は少し重い。
こんな雰囲気の中、小粋なジョークが言えるほど肝が据わったニートはいない。
静かに食事をしているとカサカサと音がして全員に緊張が走った。
出てきたのは一人の女性だった。
驚いたことに異世界にも人間がいる。しかもちょっと耳が尖っている程度で我々とほぼ同じ姿形をしていた。
現地人だろう彼女の身体はやせ細っており、三日飲まず食わずのレベルだと女医は言っていた。
夕食の匂いにさそわれたのだろう、理系博士がそう言い、彼女の分も夕食を準備し始めた。
食事と水を提供し、現地の状況を教えてもらっている。現地人女性はなんだか嬉しそうだ。
言葉なんて通じない。それなのに“東側”とか“逃げてきた”とか…そんなの本当に伝わるのか?
けど、この手のことは理系博士の担当らしい。がんばれ、高学歴。
30分くらい現地女性と話し合っては、フンフン頷く様子を眺めていた。
その後。明日も朝早いからと、寝るように指示され早々に床についた。
元傭兵が寝ずの番をするそうだ。現地女性は女医と一緒に寝ることを拒否し続けた。
結局諦めて外で寝てもらうことになった。
引きこもりにはさすがにハードすぎた一日だったのか、気づけば眠りについていた。
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テントで寝ているとふと目が覚めた。
トイレに、それも大をしたくなってしまったのだ。
音を聞かれるのもイヤなので、海の方まで出ることにした。さすがにマーメイドも寝ている時間だろう。
テントから出ると誰もいなかった。寝ちゃったのかな?
忙しい一日だったからね、仕方ないね。許容の心を見せつつ、海に向かった。
砂浜に穴を掘って、用を足してさっぱりしたころ、ぐにゅりとした物体を踏みつけた。
ゲームみたいな愛嬌はない。べっとりと粘性のある液体――スライムだった。
当然しゃべらず、しかし襲い掛かっても来なかった。悪いスライムではないのかもしれない。
緊張の糸が解けて、そのまま夜の砂浜にぐったり座ると、スライムも隣に佇む。
好奇心で身体をつつくと、スライムもつつき返してくる。
なんとなくコミュニケーションが取れたうれしさを感じていると、目が慣れてきたのか、砂浜にでっかい何かがあるのが見えた。興味本位でその正体を見に行く。
スライムもぴょこぴょことついてきていた。
そこにあったのは畳1~2枚分位の面積があるホタテ貝だった。
貝柱だけでも三日は食っていけそうなサイズだ。
食べられるか確かめようとコンコンと叩くとホタテ貝が開き、中から女性の顔が覗いた。
信じられないものを見てパニくった自分は走ってキャンプまで逃げた。
あとがき by ギャル野辺(編集長)
第2話、読んでくれてありがとね〜〜!! ✨
まさかの童貞危機から、調査隊に拾われて異世界デビュー☆
あの夜のスライムとホタテさんとの出会い……地味に運命だった説ある❓
てことで、次回第3話は――
「そして誰もいなくなった」。
ヤバいタイトル!ホラーか!? 事件か!?
失踪・触手・お胸ぽろん(!?)と、だんだん**“モン娘交流”**展開になるよ
ドキドキとドロドロ(物理)の未来に備えて、しっかり息整えといてね!