異世界モン娘交流日記~我が秘密の生涯編~ 作:SoftMcherry
季節がいくつ巡った後だろうか。
大陸の沿岸の町には大きな船が停泊している。
ボーーーーっ。
出発を急かすかのように、船の汽笛の音が響く。
「ほら!おくれるわよ!急ぎなさい!」
「なんたって高校とかいうのに行くんだ…族長の息子なのに…」
「族長の息子だからよ!あんたのお母さまもカンサイの学校を出てるのよ?」
「島からでたくないよぉ…じいちゃんとダラダラしてたい…」
「あの働き者の御両親から、こんな息子が良く生まれたものね」
「俺はきっとじいちゃん似なんだよ」
「それ、おじいさまに失礼じゃないかしら?」
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薄暗く、広い会場。
壇上には一人の男が立っている。
スクリーンに映されたのは様々なモンスター娘と円形の図。
「まとめますと、この亜人にはPoecilia formosa(ポエシリア フォルモサ)の一部の遺伝子と似た、アナログと思われる遺伝子が複数存在することがわかりました」
「これらの遺伝子によっておそらく、オスの精子は基本的に卵割のスイッチを発動させるためのみに使用されるようになることが予想されます」
「この受精時における精子寄生、あえて言えば盗精子様式によって亜人たちは多種多様な形態や遺伝子を持ちながらも、雑種形成を巧妙に回避し、世代を繋いできたのでしょう」
パチパチパチ…
会場で手が上がる。
「盗精子様式?ということは、子の遺伝情報のほとんどは母親と同じものになるということですよね?そうなると特定の遺伝子疾患等が発生している場合には、かなり生存には不利ではないですか?」
「その通りだと思います。亜人にはほとんど男が生まれない点も、遺伝的多様性が確保しにくい環境下になっているでしょう。その点で最近面白い進展がありまして…」
壇上の男は質問者と目を合わせて、楽しそうに言う。
「亜人の男の誕生を確認しました。順調に成長し、そろそろ二次性徴を確実に迎えている頃です」
「彼はおそらく同族とも異種族とも子をなすことになるでしょう。現在の日本の男女比を鑑みれば、もしかしたら、人間とも子を為すかもしれません」
「いずれの場合も大変興味深い事例となるでしょう」
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洋上を浮かぶ船の上
「はあ~うちが離れていく…」
「こっから半年はカンサイに住むんだから、目に穴があくまで見てなさいよ」
「憂鬱だぁ…人族って魔素つかえないんだろ?」
「つかえないんじゃなくて、使い方がわからないのよ」
「どっちでも一緒だよ…うちのじいちゃんを見たろ?未だにばあちゃんと名前呼び合ってイチャイチャイチャイチャ」
「言語を超えた愛…素敵じゃない…!」
「そうかな~?」
「あたしおばあちゃんになっても伴侶とイチャイチャしたいわ~!
そういえばおじいさまは今おいくつなの?」
「ん~?50くらいじゃない?」
「え?じゃあ、まだ…」
「そうだよ…この前生後2か月の叔母に会ったんだよ…」
「素敵…!」
「スメガキんところはちがうのか?」
「おばあちゃまが妊娠したなんて、聞いたことないけど…」
「親族なんて知らぬ間に増えてるものだよ」
「そういえばおじいさまのご実家に挨拶に行かない?」
「ヒョーゴの北っていってたね」
「歩いていけるのかしら?ま、あんた小っちゃいしあたしが肩車してあげるわよ」
「ほざけ、俺より小っちゃい癖に。
そっか、オークの血を引いてると馬鹿力だしな~」
「おじいちゃまを馬鹿にしてるの!?」
「いーい?おじいちゃまはすごいのよ!
オークでありながら、おばあちゃまの方から惚れるいい男なのよ!」
「はいはい」
「おばあさまとおじいさまの出会いはとっても素敵なのよ~!
おばあさまのプロポーズの言葉はね!」
「その話何度も聞いたよ」
「”あなた、精子、欲しい”よ?なんてまっすぐで女らしい最高の言葉!」
「受け継いだ女らしさとやらで生涯の伴侶を潰さないようにな~」
「やっぱり馬鹿にしてるじゃない!こっから放り出してクラーケンの餌にするわよ!」
水面から声がする。
「お~い!」
「お、どうしたー?」
「きみのおばあさまから忘れ物だってー!お父様の首飾り忘れてるよー!」
「わかったー!日本の港で受け取るよー!」
「手がめっちゃピリピリするから忘れないでよー!?」
大きな島が近づいてくる。
新しい生活が始まろうとしていた。
異世界モン娘交流日記~我が秘密の生涯編
ポカ編 END
長らくのご愛読ありがとうございました。
と…いうものなのかどうかすら、初めてのことなのでわかりません。
ともかくありがとうございました!
この物語は一旦ここで終了です。