ハリー・ポッターと友情、努力、勝利の本   作:じゃあな・アズナブル

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第十三話 ノーバートとの別れそして禁じられた森

チャーリーに手紙を送ってから数日ほどたったある日、ロンに一通のフクロウ便が届いた。

 

「チャーリーからOKの返事がきた!」

 

ロンが興奮気味に手紙を振ってみせた。

 

「来週の金曜、真夜中に北の塔まで運べばいいらしい。仲間が箒で受け取りに来るって!」

「じゃあ……透明マントを使おう」

 

ハリーが即座に提案する。

 

「もちろん私たちも手伝うわ!」

「僕も手伝う!」

 

一行が顔を見合わせ力強く頷いた。――そのすぐあと。柱の陰で、マルフォイがひとり無言のままその様子を見ていた。

 

***

 

決行の夜。月が雲の切れ間から顔を出し、ホグワーツの城を静かに照らしていた。ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビルの四人は、そっとハグリッドの小屋を後にする。

ノーバートは木箱に入れられ、鼻先から火花をちらちらと漏らしていた。その箱を大切に抱えながら、一行は北の塔を目指して歩を進めた。

その少し後ろ――マルフォイが、物陰からじっと様子をうかがっていた。

(……塔に、ドラゴン?)

状況が飲み込めず、ただ息を潜めることしかできなかった。やがて、塔の上に到着した一行の前に空から数人の箒乗りが現れた。

 

「問題なく運んだな。よくやった!」

 

チャーリーの仲間たちが静かに箱を受け取り、ノーバートを抱えて再び空へ舞い上がる。ドラゴンの翼が広がり夜空に向かって飛び立っていった。しばらくのあいだ誰もがその小さな影を目で追っていた。

 

「よかった……」

「無事に行ってくれるといいな……」

 

四人は小声で言葉を交わしながら、塔の階段を静かに降りていった。

 

***

 

そのころ――塔の階段下。こっそり後をつけていたマルフォイは、見回りをしていた先生と鉢合わせしてしまった。相手はよりにもよって――

 

「……マルフォイ? こんな時間に塔の近くで、何をしているのですか?」

 

マクゴナガルだった。

 

「……あっ」

 

マルフォイの声が詰まる。マクゴナガルの目が細くなる。夜の闇より鋭く、冷ややかな視線がマルフォイを貫いた。

 

「夜中に外に出ることが罰則の対象になるのは知っていますね? 何をしていたのですか?」

 

一瞬、マルフォイは口ごもった。見つかったときの言い訳を準備していなかったのだろう。

 

「……散歩です。いや、その……変な気配がして……確認しに来ただけです」

「塔の近くに? 散歩で?」

「はい。ひとりでです」

 

マクゴナガルの眉がわずかに動いた。

 

「ひとりで?」

 

その言い方には、明らかに“信じていない”という意図が滲んでいた。――にもかかわらず、マルフォイはそれ以上何も言わなかった。

(……言わないんだ)

階段の陰から様子を見ていたハリーたちは、思わず息を呑んだ。透明マントの下で身を潜めていたが、次の瞬間――

 

「出なさい」

 

マクゴナガルが杖を軽く振ると、風が巻き起こり、透明マントがふわりと剥がれ落ちた。

 

「っ……!」

 

ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビルの四人が、白日の下に晒される。空気が凍るような沈黙が落ちた。マクゴナガルは、驚きひとつ見せずにマルフォイの方へ顔を向けた。

 

「彼らとは関係ない、ということでよろしいですね?」

 

マルフォイの視線はすぐに逸れた。顔を背けたまま、何も言わなかった。マクゴナガルは短く息を吐くと、静かに言った。

 

「ポッターたちに伝えておきますが――そのマントに四人は、ちょっと無理がありますね」

 

誰も何も言えなかった。ハリーはただ、うつむいていた。

 

「そして――それぞれ三十点の減点です。夜間の出歩きは規則違反ですから」

 

全員の顔が一斉に青ざめた。

 

「さらに罰則もあります。内容については追って連絡します。今夜は直ちに寮に戻りなさい」

 

それだけ告げると、マクゴナガルは背筋を伸ばしきびすを返して去っていった。ハリーはふと隣を見る。マルフォイがどこか居心地悪そうな顔をしながら、誰とも目を合わせずに歩き出していた。

 

「……ねえ、マルフォイ」

 

思わず声をかけた。だが――マルフォイはそのまま足早に去っていく。背中だけが、無言のまま遠ざかっていった。

 

***

 

翌朝――。

沈んだ空気を引きずったまま、ハリーたちは朝食を終えていた。誰もが無言でテーブルを見つめている。

そのときだった。羽音とともにフクロウが何羽か飛び込んできた。そのうちの一羽が、まっすぐハリーたちのテーブルに舞い降りる。

 

「……きたわ」

 

ハーマイオニーが呟いた。ハリーは封筒を受け取りそっと封を切った。中には、小さな一枚の羊皮紙。そこにはこう書かれていた。

 

罰則通達

本日二十二時、玄関ホールに集合してください。

禁じられた森において夜間の作業に従事してもらいます。

                      ――マクゴナガル

 

***

 

夜――。ホグワーツの玄関ホールに集まっていたのは、ハリー、ロン、ハーマイオニー、ネビル、そしてマルフォイだった。

空気は張り詰めていて、誰も無駄口を叩かない。やがて、大きな扉が軋んだ音を立てて開いた。

ランタンを掲げたハグリッドが姿を現す。足元には、あの大きな猟犬――ファングがぴったりと寄り添っていた。

 

「よう来たな。……全員そろっとるな」

 

ハグリッドはランタンを掲げながら、皆の顔をゆっくりと見渡す。その声はいつもより低く、どこか緊張を帯びていた。

 

「罰則といってもただの反省じゃねえ。今日は“大事な仕事”の手伝いだ」

 

ハリーたちが顔を見合わせる。嫌な予感がした。

 

「……最近、森の中で“ユニコーン”が襲われとる。真っ白で、美しい生き物だ。だが今週に入ってから傷付いた痕跡があちこちで見つかっとる」

「誰が……そんなことを……」

 

ハーマイオニーが小さく息を呑んだように言う。

 

「わからん。だからこそ、お前らにも手伝ってもらう。森の奥に傷付いたユニコーンがいないか捜索してもらう。見つけたらすぐに知らせてくれ。保護せにゃならん」

 

“禁じられた森”――その名の通り、普段なら立ち入ることすら許されない場所。しかも今回は何者かが魔法生物を襲っているという。緊張が走る中、ハグリッドが静かに言った。

 

「俺とファング、どっちかについてもらうことになる。……希望はあるか?」

 

マルフォイが即座に口を開いた。

 

「僕は……犬のほうがいい」

 

ハリーもすぐに反応した。

 

「じゃあ僕も、そっちにする」

「ほうか。じゃあ……ロンとハーマイオニーは、俺と来い。ネビル、お前はファングの方についていけ。そっちは俺がいない分、人数が多いほうがええ」

「は、はい!」

 

ランタンをひとつずつ手渡し、ハグリッドは再度注意を促した。

 

「暗いが、気をつけてな。何かあったらすぐに叫べ。……そんじゃ、行くぞ」

 

そして六人と一匹は、夜の森の闇の中へと踏み出した。

 

***

 

森の中は昼間とはまるで別世界だった。月明かりもほとんど届かず、ランタンの灯りだけが頼り。

木々の影が揺れ、どこかでフクロウの声が響く。ファングは先を歩きながら、鼻を地面に近づけてクンクンと音を立てていた。そんな中、ハリーがぽつりと口を開いた。

 

「ねえ」

「なんだよ」

 

マルフォイのぶっきらぼうな声が返ってくる。しばしの沈黙を置いて、ハリーは続けた。

 

「この前、見つかったときさ……なんで僕たちを庇ったの?」

 

足音が、ふっと止まった。わずかに振り向いたマルフォイの顔は、暗がりでははっきりとは見えなかった。だがその沈黙が、ほんの一瞬――たしかに揺れた気がした。

 

「……なんだ、そんなこと聞くために“犬のほうがいい”って言ったのか?」

「まあね」

「だいたい庇ってなんかない。“散歩してただけ”だ。偶然、あそこにいた。それだけだ」

 

マルフォイはそれだけ言い捨てると、さっさと前を向いて歩き出した。ハリーとネビルは顔を見合わせ思わず苦笑する。

 

「……そっか」

「“偶然”かあ」

 

二人の声にマルフォイの肩がほんのわずかにぴくりと揺れた。暗がりのせいで表情は読み取れない。けれど、背中から漂う雰囲気には、どこかしら“居心地の悪さ”が滲んでいた。

それでも――マルフォイはなぜか、歩く速度を少しだけ緩めていた。

森の中は、冷たい湿気と土の匂いに満ちていた。地面には折れた枝や、ぬかるんだ苔が広がっている。ファングは時折くんくんと鼻を鳴らしながら先頭を歩き、そのたびに耳がぴくりと動いた。

ランタンの明かりだけが頼りだった。淡い光がゆらゆらと揺れ、影を引き連れて足元を照らす。ネビルはぎこちない足取りでハリーの後ろをついてきていて、マルフォイはどこか落ち着かない様子で、周囲に目を配っていた。

ハリーはふと立ち止まり、ゆっくりと顔を上げた。頭上には絡まり合った枝葉、そしてその向こうに黒く沈む夜空がのぞいている。

(……禁じられた森か)

名前の響きからして、もっと得体の知れない怖さがあると思っていた。けれど――不思議と恐怖はなかった。むしろ、胸の奥がひどく静かにでも確かにざわめいていた。

(思ったより静かだな……修行するには、もしかしてここ最高なんじゃないか?)

足場は悪い。けれど、それも訓練になる。木々の間を縫うように走れば回避や踏み込みの実戦感覚を養えそうだし、獣の気配を察知する練習にもなる。何より、この張りつめた空気が集中にはぴったりだった。

 

「ハリー、大丈夫……?」

 

ネビルが不安げに小声で呼びかけた。

 

「ああ、ごめん」

 

ハリーは歩を再開しながら、少しだけ頬をかいた。ユニコーンを探すという緊張感のなかで、自分ひとりだけがなぜかワクワクしている――

そんな事実が、少しだけ気恥ずかしかった。そのときだった。先を歩いていたファングの動きが、不意に止まる。

 

「……どうした、ファング?」

 

ファングが小さく鼻を鳴らすと、その場からじりじりと後ずさり尻尾を巻き込むようにしてうずくまった。警戒の色が濃い。

――次の瞬間、森の空気が変わった。風はないはずなのに、どこか遠くから冷たい何かが近づいてくるような――

そんな、説明のつかない“重さ”が、ゆっくりと彼らを包み始めた。

 

「……あれ」

 

ネビルが震える声で指さした先、ランタンの明かりが淡く照らし出したものを見て、ハリーは息を呑んだ。

それは――銀色の毛並みを持つユニコーンの死体だった。横たわり、まるで眠っているように静かだ。だが、その体は確かに動いていない。

そしてその傍らにいたのは、人型の“何か”。黒いローブを全身にまとい、フードを深くかぶっている。その身をユニコーンの首元にかがめ、血をすするように動いていた。

 

「……ワンッ!」

 

ファングが吠え声を上げたかと思うと、すぐさま来た道を一目散に逃げ出していく。

 

「ハリー、逃げよう! あれ絶対まずいよ!」

 

ネビルが袖を掴んで必死に訴える。だが、ハリーは一歩前に出ていた。すでに構えを取っている。

(……やるしかない)

空気が、足元から重くのしかかってくる。まるで深い湖に沈んでいくような、鈍くて圧迫感のある気配。

 

「お、おい……」

 

マルフォイが震える声で口を開き、汗で滑る手を必死に拭いながら杖を抜いた。その表情には、恐怖と葛藤と、かすかな覚悟が混ざっていた。

 

「……なんだよ、あれ……」

 

“それ”がゆっくりと顔を上げる。見えてはいけないものを見たような、嫌な悪寒が、ハリーの背筋を這い上がった。

――そのとき。森の奥から、別の音が近づいてきた。乾いた土を強く踏みしめる、リズムのある、どこか不思議な響き。

 

「……何か来る」

 

ネビルが囁くように言った、ちょうどその瞬間。黒衣の“それ”は、すっと闇に溶けるように姿を消した。

ハリーは構えていた姿勢をわずかに緩め、ぼんやりと森の奥を見つめる。あの気配――どこかで、似たような“何か”を感じた気がする。だが、それがいつどこでだったか、思い出す余裕はなかった。

 

「こちらへ来なさい」

 

柔らかくもはっきりとした声が暗闇を裂いた。現れたのは――ケンタウロスだった。人の上半身に、馬の下半身。月明かりを背に、神話から抜け出たような姿が浮かび上がる。金髪と青い目をもつ、フィレンツ。その穏やかな声音は場の空気をすっと落ち着かせた。

 

「あなたは――ハリー・ポッターですね」

「……はい」

「ここは危険です。森はあなたたちにはまだ早い。すぐに学校に戻りなさい」

 

その言葉に戸惑いながらも、ハリーは問い返した。

 

「さっきの……あれは、なんだったんですか?」

 

フィレンツはしばし空を見上げ、それから静かに言った。

 

「――ユニコーンの血を見ましたね」

「ユニコーンの血は、どんな病や呪いをも超えて、命をつなぐことができます。……たとえ、今にも死にかけていたとしても」

「それって……すごいじゃないか……」

 

マルフォイがぽつりとつぶやく。だが、フィレンツは首を横に振った。

 

「ですがその代償として、命は呪われます。純粋なるものを汚した報い――それは永遠に、その者に付きまとう」

 

空気が、静かに凍った。そしてフィレンツはハリーにまっすぐ目を向け、低く語りかけた。

 

「そんな手段を必要とする者とは――誰なのか。あなたならおわかりでしょう? ハリー・ポッター」

 

ハリーの心臓が、静かに、しかし強く打った。その隣で、マルフォイが低い声で尋ねた。

 

「ポッター……さっきの奴が、何なんだよ。知ってるのか?」

 

ハリーは静かに答えた。

 

「……ヴォルデモートだ」

 

その名が口をついて出た瞬間、空気が張りつめた。マルフォイの顔が引きつる。

 

「は……? “例のあの人”って……お前が……」

 

ネビルも震えながら言葉をつなぐ。

 

「赤ちゃんのときに倒したって……君が……!」

 

ふたりの視線が、じっとハリーに注がれた。だが――ハリーは何も言わなかった。そのまま口を閉ざし、目だけが森の奥を見つめていた。まるで、自分の中でもその答えに確信を持てないかのように。

しばらくの沈黙のあと、草むらをかき分ける音が聞こえてきた。ファングが舌を垂らして駆け戻ってくる。そのあとを追って、ハグリッド、ロン、ハーマイオニーの姿が現れる。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

ロンが真っ先に駆け寄ってくる。ハーマイオニーも心配そうに、身を乗り出してハリーの顔をのぞき込んだ。

 

「ケガしてない? 無事だった?」

「……ああ、うん」

 

答えながらも、ハリーの声はどこか遠かった。さっきまでの光景――黒いローブ、ユニコーンの血、そしてフィレンツの言葉。それらが頭の中で何度も反芻されていた。

ハグリッドは足を止め、地面に横たわるユニコーンの亡骸に目をやると無言のまま頷いた。そしてフィレンツのもとへ歩み寄り、何か短く言葉を交わす。声は聞こえなかったが、表情には互いの緊張が滲んでいた。

やがてフィレンツは何も言わず、星空を仰ぎ見るとそのまま闇の中へと姿を消していった。

 

「もうさすがに罰則は終わりで……戻っていいだろ」

 

マルフォイがぶっきらぼうに言い放つ。その口調にいつもの皮肉はなく、どこか気持ちを整理しきれないままの響きがあった。だが、それに応えたのはハグリッドだった。

 

「ああ……だがその前に、ユニコーンを埋葬してやらにゃならん」

 

その声は深く沈んでいた。誰も反論しなかった。ハグリッドが静かにスコップを握ると、他の皆も自然と手を貸した。マルフォイも、文句ひとつ言わず、無言で立ち上がっていた。

ハリーは、ただ黙ってその場にいた。手を動かしながらも、心はまだ森の奥に残されていた。

あの“何か”の気配――フィレンツの言葉――そして、自分の中に芽生えた、説明のできない直感。

森の夜は、ただ静かだった。月光の下、土を掘る音だけが、淡々と響いていた。

 

***

 

一行は、ランタンの明かりを頼りに、ゆっくりと城へ向かっていた。葉擦れの音と足音だけが、静かな森に淡く響いている。その中で、ネビルがハリーの横を歩きながら、何度かちらりと視線を送ってきた。

 

「ねえ、ハリー……さっきのって、やっぱり……」

 

ハリーはすぐには答えなかった。

(あの気配――間違いない。前にも感じたことがある。あの人だ……でも、血を欲していたのは……ヴォルデモート、でいいのか……?)

思考は深い霧のようにぐるぐると巡る。

 

「……ハリー?」

 

ネビルが不安そうに覗き込む。その少し後ろで、ロンがぽつりと口を開いた。

 

「なあ、結局……何があったんだよ?」

 

ハリーが答えられないでいると、ネビルが代わりに口を開いた。

 

「ユニコーンが……殺されてたんだ。その血を飲んでた“何か”がいて……それで、フィレンツっていうケンタウロスが来て助けてくれた」

「血……? ユニコーンの……?」

 

ロンの顔がこわばる。

 

「うん。フィレンツは言ってた。その血を飲んだ者は呪われるって……それで、ハリーに、“誰がそんなことを必要とするかわかるはずだ”って……」

 

その言葉に、一行は自然と黙り込んだ。ハリーは依然として何も言わず、ただ前を向いたまま、黙々と歩いていた。

少し先を歩いていたマルフォイも、足を緩めることはなかったが――その背中は、ときおりこちらを気にしているようにも見えた。

やがて、木々の合間から城の影が見えてくる。空はほのかに白み始め、夜が静かに終わろうとしていた。

玄関ホールまで戻ると、ハグリッドが立ち止まり、みんなを見渡した。

 

「今日は……ようやってくれた。ユニコーンは助けられんかったが、埋葬はしてやれた。……マルフォイ、お前もありがとな。……お前は意外と、いいやつだ」

 

マルフォイはふんと鼻を鳴らし、ぶっきらぼうに言った。

 

「罰則が終わりなら、僕はもう帰る」

 

それだけ言い残し、くるりと背を向けて階段を上っていった。残された一行はしばし無言だったが――

 

「なあ……あいつ、どうしたんだ?」

 

ロンがぽつりと呟く。

 

「最悪なやつだと思ってたけど、最近そうでもないっていうか……本当に、あれマルフォイだよな?」

「うん。一緒に立ち向かおうとしてくれたし、埋葬もちゃんと手伝ってくれたし」

 

ネビルが素直にうなずいた。

 

「……まあ、いいわ」

 

ハーマイオニーが、あくびをかみ殺しながら言う。

 

「今日はもう、帰って寝ましょう」

 

みんなも静かにうなずき、階段を上り始めた。長い夜を越えたその足取りは、どこかほんの少しだけ軽くなっていた。

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