ハリー・ポッターと友情、努力、勝利の本   作:じゃあな・アズナブル

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レガシーではスリザリン生として生きました


第四話 組み分けと最初の授業

大広間に足を踏み入れた瞬間、ハリーは思わず天井を見上げた。天井が……空だった。

いや、よく見れば本物ではない。魔法で映し出された空なのだと、隣のロンが小声で教えてくれた。

満天の星々が、静かに、そして確かに輝いている。空気すらも、どこか澄んでいるように感じられた。

 

「すごい……」

 

思わず、そんな言葉がこぼれた。ふと視線を前方に移す。

そこには、見るからに古びたとんがり帽子――そして、その奥にひときわ目を引く人物がいた。

(あの人が……ダンブルドア)

カエルチョコのカードで見た顔だ。そこでは笑って手を振っていたが、実物はそれ以上に、強い“存在感”を放っていた。

(たしかに……何か、感じる。力強い気配みたいなものが)

 

「それでは、組み分けを始めましょうかの」

 

そのとき――

イスに置かれたボロボロの帽子が、ぴくりと動いた。ぱっくりと口のような裂け目が開き、帽子が歌い出した。

 

 

グリフィンドールに行くならば

勇気ある者の住まう寮

勇猛果敢な騎士道で

他とは違うグリフィンドール

(騎士道……勇気……)

 

ハッフルパフに行くならば

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

(修行にはもってこいの寮だな)

 

古き賢きレイブンクロー

君に意欲があるならば

既知と学びの友人を

ここで必ず得るだろう

(知識の寮か……鍛えるには悪くないけど)

 

スリザリンではもしかして

君はまことの友を得る

どんな手段を使っても

目的遂げる狡猾さ

(……まるで悪役だな。DIOとか、フリーザとか)

 

帽子はそこまで歌うと、まるで満足したかのように静かになった。

イスの上で、再び微動だにしない。静寂を破ったのは、きっちりとした女性の声だった。

 

「名前を呼ばれた者から、椅子に座って帽子をかぶりなさい。――アボット、ハンナ!」

 

ハリーのすぐ近くにいた少女が、小さくうなずいて前へ進む。帽子を頭にかぶせられると、すぐに声が響いた。

 

「ハッフルパフ!」

 

拍手が広がり、テーブルの一角で生徒たちが立ち上がって彼女を迎える。

緊張しつつも、どこか安心したような表情で、少女はその列に加わっていった。

 

***

 

組み分けは次々と進んだ。帽子が即決する者もいれば、しばらく悩む者もいた。

ロン・ウィーズリーの番になると、彼は肩をこわばらせて前へ出る。

 

「グリフィンドール!」

 

帽子が叫ぶと同時に、ロンの顔にぱっと安堵の色が広がった。

ハーマイオニー・グレンジャーも数秒の沈黙ののち――

 

「グリフィンドール!」

 

(もしかして、レイブンクローと迷ったのかな)

汽車の中での彼女の様子を思い出しながら、ハリーはふと思った。そして、ドラコ・マルフォイ。

 

「スリザリン!」

 

結果は当然といった様子で、満足げにうなずきながら列に加わっていく。

(やっぱりな……)

 

***

 

「ハリー・ポッター!」

 

広間が静まり返る。ハリーはゆっくりと息を吸い、前へと進み出た。

椅子に座ると、帽子が深くかぶせられ、視界が暗くなる。ざわめきが遠のき――次の瞬間、低い声が頭の中に響いた。

 

「ふむ……これは、なかなか迷うな」

 

帽子の声は、思っていたよりも穏やかだった。

 

「君にはスリザリンの素質がある。ずる賢くはないが、狡猾になれる頭はあるし、意志も強い。スリザリンに入れば――偉大な魔法使いになれるぞ」

 

(偉大な魔法使い……)

一瞬だけ心が揺れる。だが――ハリーの中に、はっきりとした思いがあった。

(僕は、偉大な魔法使いになりたいんじゃない。ただ、強くなりたいんだ)

誰よりも。自分自身を、過去を、弱さを乗り越えられるような力がほしい。帽子はしばし沈黙した。

 

「……なるほど。ならば――グリフィンドール!」

 

その瞬間、視界が開ける。帽子を脱ぎ、椅子を降りると、グリフィンドールのテーブルから拍手と歓声が上がった。

ハリーはその音の中を歩きながら、胸の奥に確かな感覚を抱いていた。これが、自分の道だ。新しいスタートだ。

グリフィンドールのテーブルから湧き上がる拍手と歓声の中、ハリーはまっすぐ歩を進めた。

緊張していた胸の奥が、少しずつほどけていくのを感じる。席につくと、すぐ隣でロンが笑顔を向けてくれた。

 

「ハリー! 一緒の寮でよかった……ほんとに、ちょっとホッとしたよ」

「うん、僕も。なんか……落ち着くよ、ロンがいてくれると」

 

自然と口から出た言葉だった。

ロンは照れくさそうに目をそらしたが、その顔にはどこか安心しきった色が浮かんでいた。

 

「グリフィンドールってさ、“勇気ある者の寮”なんだよね……僕なんかで本当に大丈夫かな」

「大丈夫だよ。むしろ……」

 

ハリーは肩をすくめて、笑いながら言った。

 

「たとえば組み分け試験で怪物と戦うってルールだったら、ロンだって戦ったでしょ?」

「えっ……いやいやいや、全力で逃げるよ!? そんなの冗談じゃないから!」

 

その必死な声に、思わず吹き出した。ロンもつられて笑い、ふたりの緊張が少し和らいだ。

ハリーはふと、グリフィンドールのテーブルを見渡した。木の長テーブル、真っ赤な紋章、あたたかい笑い声。そこには、どこか安心できる空気があった。

(……ここから、始まるんだ)

 

***

 

壇上に立ったダンブルドアが、にこやかに両手を広げる。

 

「ようこそホグワーツへ、新入生たちよ。楽しむ前に、いくつか注意事項を伝えねばならん。まず――禁じられた森には、決して立ち入らぬように。名前のとおりじゃからな」

 

そして声のトーンを変えずに、さらりと続ける。

 

「それと――とても痛い死に方をしたくない者は、四階の右側の廊下には入らぬことじゃ」

 

穏やかな声のはずなのに、背筋がひやりとする。

その後、ダンブルドアは笑みを浮かべ、唐突に校歌を歌い始めた。

 

***

 

歓迎のひとときが終わると、生徒たちは上級生に案内され、寮へ向かった。長い廊下、いくつもの階段、そして――大きな肖像画がかかる入り口。

合言葉を言うと、肖像画が左右に開き、グリフィンドールの談話室が現れた。赤を基調にしたインテリア、暖炉の灯り。けれど見学もそこそこに、一年生たちはそのまま寝室へと案内された。

天蓋つきのベッドが並ぶ部屋。自分の荷物を置いたとき、ハリーはようやく深く息をついた。

(……ここが、僕の部屋か)

長い一日だった。けれど、不思議と心地よい疲労感だった。

 

***

 

その夜。すでに部屋には寝息が漂い始めていたが、ハリーは静かにベッドを抜け出す。

杖を手にし、談話室をそっと通り抜ける。

“魔法の修行”の可能性を思うと、体が自然と動いてしまうのだ。夜の城を抜け、中庭へと出た。

月明かりが石畳を照らし、冷たい空気が肌を撫でる。誰もいないのを確認して、準備運動を始める。

(魔法を使うとき、どこに力が集まるのか……意識するだけでも違ってくるはず)

杖を手に魔法を試すにはまだ早い気がした。

今夜は、まず“感覚”を探る。体内のどこかにあるはずの“魔力の流れ”――それを見つけるために。

腕立て、スクワット、ジャンプ。

いつものトレーニングをこなしながら、意識を内へ向ける。

(“気”のような流れ……あるはずだ)

けれど焦らない。修行とは積み重ねだ。

汗をひととおり流したあと、ハリーは月明かりの下で深く深呼吸した。

(明日から、いよいよ授業……)

そのわくわくを胸に、静かに談話室へ戻る。

誰にも気づかれることなくベッドに戻り、心地よい疲労に包まれて眠りに落ちた。

修行の第一歩は、すでに始まっていた。

 

***

 

朝。ロンはあくび混じりに目を覚ました。

寝室には朝の光がうっすらと差し込んでいる。のそりと体を起こし、隣のベッドに目をやった。

(……あれ、ハリーがいない?)

枕も布団もきちんと整っていて、まるで最初から誰も寝ていなかったようだった。

 

「どこ行ったんだ……?」

 

ぼやいたその時、扉が静かに開いた。入ってきたのは、案の定ハリーだった。

 

「どこ行ってたの?」

 

ロンの問いに、ハリーは額の汗をぬぐいながら、あっさりと答えた。

 

「ちょっと、修行してきた」

「修行って……この時間に?」

「うん、毎朝やってるから。日課なんだ」

 

さらっと言って、自分の荷物のところへ向かう。ロンはしばらく呆然と、その背中を見つめていた。

(ハリーって、ちょっと変人かも……)

少しだけ、遠い目になった。

 

***

 

朝食は大広間でとった。テーブルには、魔法で次々と現れる料理が並び、どれもおいしそうに湯気を立てていた。

そのあと、ホグワーツ最初の授業――変身術が始まった。

教室は石造りの静かな部屋。机と椅子が整然と並び、教壇の上には――一匹の猫。

生徒たちはなんとなく席に着きながら、そわそわと周囲を見渡していた。

 

「先生、まだ来てないのかな……?」

 

そんな声が上がった次の瞬間。猫が、ぴたりと動きを止めた。

背筋を伸ばし、前足を揃える。そして――体がぐにゃりと揺れ、姿が変わり始めた。

気づいたときには、眼鏡をかけた魔女が、そこに立っていた。

 

「おはようございます。私はマクゴナガル。変身術の担当です」

 

静かで落ち着いた口調だったが、教室は一瞬で静まり返った。

 

「変身術は高度な魔法です。便利ではありますが、誤れば危険を伴う。だからこそ、正確さが求められる」

 

ハリーはじっと彼女を見つめながら考えていた。

(姿かたちも、まるごと変わってる……これ、幻覚ってわけじゃないよな)

ただ驚くだけでは終わらない。どう応用できるか――修行にどう組み込めるかを、すでに考えていた。

(動物に変身できるってことはもし、魔法で体を強化できるなら……)

ハリーの瞳が、わずかに輝いた。

 

***

 

授業はすぐに実践に入った。目の前に置かれたのは一本のマッチ棒。

 

「これを縫い針に変えてください。杖の動きと呪文の発音、両方が正確でなければ成功しません」

 

マクゴナガルの声が響くと、教室には杖を振る音と、つぶやき声が飛び交い始めた。ハリーはマッチ棒を見つめた。

(質量、形状、素材……すべてを正確に“イメージ”して、魔力を流す)

修行で培った“力の流れ”への感覚と、魔法の理屈が自然と重なっていく。

(これは精密操作の訓練だ。大事なのは集中とコントロール)

深呼吸。静かに呪文を唱え、杖を振る。

マッチ棒がかすかに光り――

ゆっくりと銀色に染まり、先端が細くとがっていく。やがて、完璧な縫い針がそこにあった。

 

「お見事、ポッター」

 

マクゴナガルの声に顔を上げると、彼女はわずかに口元を緩めていた。

その横でも、カシャッという音。ハーマイオニーのマッチ棒も、縫い針へと変わっていた。

 

「ハリーも成功したの? やっぱりすごいわね!」

 

ハーマイオニーが嬉しそうに言い、マクゴナガルも頷いた。

 

「グレンジャーもよくやりました。ポッター、グレンジャー、ふたりともグリフィンドールに5点」

 

教室がざわつく。

 

「ハリーすげえ……」

「やっぱ“あの”ポッターか……」

 

けれど、ハリーの意識は別のところにあった。

(……この魔法、応用できる)

たとえば――皮膚を硬化させて刃物を防ぐ。骨格を変えて、跳躍力や瞬発力を向上させる。筋肉の密度を一時的に高める。

あるいは――体の一部を金属化して打撃力を増す……。

(できる。きっとできる)

ハリーの目が、興奮にきらめいた。あらゆる魔法を、身体強化につなげる。

(変身術ひとつでこれだ。他の授業だって……)

拳を握る。ハリーの脳内は、すでに修行プランでいっぱいだった。

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