ハリー・ポッターと友情、努力、勝利の本   作:じゃあな・アズナブル

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第六話 夜中の決闘そして三頭犬

夕食の時間。ハリーはグリフィンドールの長テーブルで、少し気まずそうにスープをかき混ぜていた。

 

「で? どうだったの?」

 

向かいの席でパンをかじっていたロンが、興味津々な顔で尋ねてきた。

 

「えっと……クィディッチの選手にされちゃった」

「……は!? ちょっと待って、今なんて言った?」

 

スプーンを置いたハリーが肩をすくめる。

 

「マクゴナガルに連れていかれて、気づいたら……チームに入ってた」

 

ロンは口をあんぐりと開けたまま固まる。

 

「す、すごいよハリー! 一年生でクィディッチのチームに入るなんて……なんのポジション?」

「シーカーだって」

「うわあ……マジで!? 一番重要なポジションじゃん!」

 

そのとき――背中をどん、と叩かれた。

 

「おーい、聞いたぞ新人!」

 

振り返ると、そっくりな顔の双子の上級生が立っていた。

片方がにやりと笑い、もう片方がハリーの肩をぽんぽんと叩く。

 

「俺はフレッド、こっちはジョージ。そこのロン坊やのお兄ちゃんな」

「ハリー・ポッター、だろ? 今年はお前のおかげで優勝間違いなしだな!」

「俺たちはビーター。敵にブラッジャーぶっ飛ばす係。つまり相手のビーターはお前を狙ってぶっ飛ばしてくるぞ。気をつけろよ」

 

双子は笑いながらパンをむしって食べ始めた。

初対面とは思えないほどフレンドリーで、頼もしさすら感じさせる。

 

「なんか……すごいことになってきたな」

 

ハリーは呟いた。

(思ってたより、クィディッチって大きな話だったのかも……)

そんなことをぼんやり考えていたとき――またしても、鼻につく声がグリフィンドールのテーブルに飛んできた。

 

「ポッター、最後の晩餐か?」

 

ドラコ・マルフォイだった。いつものようにクラッブとゴイルを従え、ふんぞり返るように立っている。

 

「退学になる前に、ホグワーツの料理をしっかり味わっとけよ。二度と食えないかもしれないからさ」

 

ハリーはスープを一口すすると、ゆっくり顔を上げた。

 

「ありがとう。でも退学の予定はないよ。君のほうは大丈夫?」

 

マルフォイの口が「は?」と開きかけ――そのまま固まる。クラッブとゴイルも、一瞬だけ目を丸くしていた。ハリーは真顔のまま、淡々と続けた。

 

「そんなに僕のこと気にしてくれてるなんて……心配してくれてるのかな? ありがとね」

 

マルフォイの頬がぴくりと引きつる。

その横で、ロンが「くくっ……」と肩を震わせ、にやりと口を挟んだ。

 

「知らないのか? ハリーがクィディッチの選手に選ばれたの、お前のおかげでもあるんだよな?」

「……え?」

 

マルフォイがまばたきした。ロンはその様子を楽しむように、さらに言葉を重ねる。

 

「今日の飛行訓練、お前が“思い出し玉”を投げたから、ハリーが空に飛び上がって――それで選手に選ばれたんだから」

「……!」

 

マルフォイの表情が一瞬、固まった。唇を引き結び、言葉を飲み込む。だがすぐに、ふいに言い放った。

 

「……だったら、今夜決闘しようじゃないか、ポッター。お前がクィディッチの選手にふさわしいか、ためしてやる。真夜中、トロフィー室でな」

「……うーん、夜は修行の時間なんだけどなあ」

 

ハリーはスプーンを置き、少しだけ考えるように呟いた。その表情は真面目とも冗談ともつかず、読みにくい。

(修行……?)

マルフォイが一瞬困惑している間に、ハリーはあっさりと続ける。

 

「でもまあ、体を動かすのは嫌いじゃないし……いいよ。せっかくだし、付き合う」

「ただ、トロフィー室は狭いから、中庭にしよう。あっちの方が広いし、動き回っても誰にも怒られなさそうだしさ」

 

もはや“決闘”というより、完全に自主トレの延長戦みたいな口ぶりだった。

マルフォイはしばし無言になり、口を開きかけて――また閉じた。

(なんだこれ……)

こんな展開、まるで想定していなかった。嫌がらせのつもりで出した誘いを、ここまで自然体で、しかも無邪気に受け止められるとは。

 

「……わかったよ。中庭でやろうじゃないか」

「うん、待ってるよ」

 

ハリーはさらっと答えると、再びスープをすくい始めた。

マルフォイは唇をへの字に結んだまま、黙って背を向ける。クラッブとゴイルも小声でざわつきながら後に続く。

歩きながら、マルフォイは自分の足取りが妙に重くなっていることに気づいた。

 

***

 

一方その頃、グリフィンドールの長テーブルには――怒り気味の足音が響いた。

 

「今の話、聞いちゃったんだけど!」

 

腰に手を当てて立っていたのは、ハーマイオニーだった。ローブの裾がわずかに揺れ、声には明らかな怒気がにじんでいる。

 

「あんなの、絶対ダメよ! 夜中にこっそり抜け出すなんて、校則違反だし、見つかったらグリフィンドールが減点されるのよ!」

 

勢いよくまくしたてるその姿に、さすがのロンもびくっと肩をすくめた。だが当のハリーは、特に動揺することもなく、きょとんとした様子でこう言った。

 

「え? でも僕、毎晩深夜に抜け出してるけど……今のところ減点されたことないよ?」

「……え?」

「え?」

 

ハーマイオニーとロン、ふたり同時に固まった。目を瞬かせるどころか、まるで思考が一時停止したようにハリーを見つめている。ハリーは、そんなふたりの反応に素直に首を傾げながら続けた。

 

「修行って夜のほうがやりやすいんだよね。静かだし、誰にも迷惑かけないし。たまに猫が歩いてるけど」

「猫……」

「うん。あと、魔力の流れを感じやすい気がするんだ。夜の方が集中できるというか……空気が澄んでるっていうかさ」

 

ハーマイオニーは固まったまま、目をぱちぱちさせていた。

(……この人、本気で言ってる)

ロンは隣でぼそっと呟いた。

 

「やっぱり……どっかおかしいよな」

 

天井を見上げながら、どこか納得したような顔だった。

 

***

 

その日の夜――城の中が静寂に包まれるころ、ハリーはローブを羽織って、そっと寮の外へと足を踏み出した。その背後から、ロンが肩をすくめつつ、不安げな表情でついてくる。

 

「……本当に行くのか? マルフォイと決闘なんてさ」

「うん。ちょうどいいタイミングだしね。相手がいた方が、修行になる」

「いや、修行じゃなくて決闘だから……」

 

ロンのぼやきが虚しく響くなか、ふたりの背後から足音が近づいた。

 

「ちょっと、待って!」

 

振り返ると、そこには腕を組んだハーマイオニーが立っていた。いつも通り真剣な顔つきで、どうやら本気で止める気らしい。

 

「どうしても行くって言うなら……私もついていくわ。誰かが見張ってないと、グリフィンドールの点数が何点減るかわかったもんじゃないもの」

「やった、見張りが増えた……」

 

ロンが小さく嘆息した。さらにそのとき、廊下の陰から、もそもそともうひとつの影が現れた。

 

「ね、ねえ……その……グリフィンドールの寮、入れなくなっちゃって……」

「ネビル!?」

 

ロンとハーマイオニーが同時に叫ぶ。

 

「えーと……合言葉を聞かれたけど、忘れちゃって……」

 

しょんぼりした様子のネビルは、結局そのまま同行することになった。こうして、妙にちぐはぐな四人の一団が、夜のホグワーツをこっそりと進み、中庭を目指す。

冷たい風が石畳を吹き抜けるなか、彼らがたどり着いたのは、月光に照らされた広場だった。

そこにはすでにマルフォイが立っていた。両脇には、いつもの取り巻き――クラッブとゴイル。腕を組み、不機嫌そうに睨みをきかせている。

 

「遅かったな、ポッター」

 

マルフォイの声は、やや苛立ちを含んでいた。ハリーは無言で前に出ると、すっと足を開いて構える。すでに戦う体勢だ。その自然な動きに、マルフォイが眉をひそめる。

 

「……おいおい、お前、決闘のやり方も知らないのか?」

 

呆れたような声だった。

 

「魔法使いの決闘だぞ? 杖を構えて、“ルール”があるんだ!」

「え、そうなの?」

 

ハリーは首をかしげた。どうやら本当に知らなかったらしい。マルフォイは得意げに杖を振り上げると、講釈を始めた。

 

「いいか、まず背を向けて歩き出す。それから――」

 

その説明どおりにふたりは背を向け、数歩歩く。ハリーは素直にルールに従い、構えを取った。

 

「わかったよ。じゃあ――やろうか」

 

軽く腰を落とし、杖を握ったその瞬間――

 

「レヴィ……!」

 

マルフォイが呪文を唱えかけた時には、すでにハリーが動いていた。

スッ――

ひと足で距離を詰め、ハリーの杖がマルフォイの手元を正確に打つ。マルフォイの杖は宙を舞い、あっけなく弾き飛ばされた。

 

「……!」

 

体勢を崩したマルフォイは尻もちをつき、呆然としたまま地面に座り込んだ。

 

「……はやっ!?」

 

ロンの叫びが、夜の中庭に響く。クラッブとゴイルが一瞬身を乗り出すが、ハリーはまるで気にも留めず、のんびりとマルフォイの方へ歩み寄った。

 

「悪かったね、ちょっとタイミング早かったかな? でもさ、構えはもっと腰を落とした方がいいよ。足幅ももう少し広めに。あと、杖の持ち方も工夫すると反応が速くなると思う」

 

完全に“教えるモード”に入っていた。

マルフォイは、怒りとも困惑ともつかぬ顔で立ち上がるが、ハリーは気にせず続ける。

 

「じゃあ、今のをベースにもう一回やってみようか。せっかくだし、みんなも一緒にやろうよ」

 

え? という顔をするロンに、ハリーが振り向く。

 

「ロン、前から思ってたんだけど君はいつも重心が片方に寄ってる。足の向きも見直した方がいいよ。ハーマイオニーは……杖の位置、ちょっと高すぎるかな」

「ちょ、ちょっと!? 私、別にやるつもりじゃ……!」

「ネビルも。体力なくても、姿勢だけでも覚えておくといい。戦いは準備が九割だからね」

「ぼ、僕も!?」

 

ネビルは目を丸くしながら身を引いたが、ハリーの真剣な表情に、否応なくうなずいてしまった。

気がつけば、ハリーはみんなに“基礎訓練”を教えていた。

 

「背筋を伸ばして、腰を落として……重心は、足の裏の三点で感じてみて」

 

などなど――誰もが「どうしてこうなった」と思いながらも、なぜか反論できなかった。

マルフォイでさえ、立ち去るタイミングを完全に失っていた。結局のところ、彼もまた、ハリーの指導を受ける側にいたのだった。

――そして、その場にいた全員が、心のどこかで同じことを思っていた。

(……こいつ、やっぱりおかしい)

けれど――なぜだろう。不思議な“謎の一体感”が、その夜の中庭には芽生えていた。しばらくのあいだ、構えの確認や杖の握り方講座が続いた。

だがハリーは、ふいに「じゃあ、僕は少し修行に戻るね」とだけ言い残し、ひとり静かに少し離れた場所へ向かった。

そして――何の前触れもなく、逆立ちを始めた。片手で。

 

「……」

 

誰もが言葉を失った。ハリーは、地面に対して上下反転したまま、黙々と腕を曲げ伸ばしている。

額を汗が伝っても、顔色ひとつ変わらない。次に、すっと足を下ろすと、低い構えに入る。

そのまま――

 

「ふっ、ふっ!」

 

ひとり、宙に向かって拳を繰り出し始めた。鋭い軌道を描く拳、柔軟な体捌き。自然と足も地を蹴り、まるで戦うように動いている。

続けて杖を手に取ると、小さく呪文らしき言葉をつぶやきながら、動作に“魔法”を組み込んでいった。

ハーマイオニーが、ぽかんとした顔でつぶやく。

 

「……拳と魔法を、組み合わせようとしてるの?」

 

隣で見ていたロンも、ただただ呆れていた。そして、少し離れた位置からその光景を眺めていたマルフォイが、ぼそりとつぶやいた。

 

「……あいつ、いつもあんなことやってるのか?」

 

あきれたような声で、ロンに話しかける。ロンは、少し気の抜けた声で答えた。

 

「ああ……もうわかってると思うけど、ハリーってどっか変なんだ」

「本当よ。ちょっと信じられない!」

 

ハーマイオニーが笑いながら言った。少し離れたところで、マルフォイは鼻を鳴らした。

だが、その目はハリーをじっと見つめたままだ。

 

「バカみたいだ……でも、ちょっと……」

 

その言葉は、声にならなかった。けれど、確かに。マルフォイの中で、何か小さなものが揺れたのだった。

――そして、もうひとり。

ネビル・ロングボトムは、少し後ろで静かにその様子を見ていた。黙々と体を動かし、呪文を組み合わせながら修行に没頭するハリーの姿。

その背中を、じっと見つめる。ふと、ネビルの目に小さな火が灯った。

(……僕も、あんなふうに……)

ぎゅっと握った拳に、まだ誰も気づいていなかった。けれど、確かに。ほんの小さな“始まり”が、そこにはあった。ハリーの修行が、空気を変えていく。

それは、マルフォイも、ネビルも、そして少しずつ――周囲の人間すべてを巻き込んでいく空気だった。

 

***

 

夜の冷たい空気の中、ホグワーツの石畳を踏む足音が、四人分、静かに響いていた。

 

「はあ……なんか、すごい夜だったわね……」

 

ハーマイオニーが小さくため息をつく。

 

「まさか“決闘”が、全員で“修行”になるとは思わなかったよ……」

 

ロンも肩をすくめながら言った。ネビルはというと、まだどこか緊張した面持ちのままだ。

口は開かず、けれど時折、ちらちらとハリーの横顔を見つめていた。

修行の姿が、強く印象に残っていたのだろう。ハリーはというと、至って普通の顔で歩いていた。

――というより、どこか満足げですらあった。

やりきった後の心地よい疲労感と、ひとつ“成果”を掴んだあとの高揚が、体の芯に残っている。

 

「さ、寮に戻ろうか。明日も授業あるしな」

 

ロンが言い、全員がうなずいた――そのときだった。

 

「……ん?」

 

廊下の先に、何かがいた。ぴたりと止まる影。長い尻尾。細く鋭い目。

 

「ミセス・ノリス……?」

 

ハリーが目を細める。やはりそうだった。やや痩せた猫が廊下の真ん中に座り、じっとこちらを見ている。

 

「……ハリー、あれって管理人の猫よね? まずいんじゃ……」

 

ハーマイオニーが焦った声を出すが、ハリーは落ち着いた足取りで猫に近づいていく。

 

「大丈夫、大丈夫。ミセス・ノリスとは顔見知りだから」

「……は?」

 

ハーマイオニーの口が、ぽかんと開いた。ハリーはしゃがみこみ、まるで友達に話しかけるように語りかけた。

 

「今日もおつかれさま。寒くなってきたね」

 

ミセス・ノリスは“にゃあ”とも鳴かず、するりとハリーに近づき、脚にすり寄ってくる。

 

「うそでしょ……」

 

ハーマイオニーがぽつりと呟いた。

 

「君……フィルチの猫とも知り合いなのかよ……」

 

ロンも半分あきれた声を漏らす。そのとき、ハリーがふと声をかけた。

 

「ほら、ロンも触ってみる? けっこう柔らかいよ」

「じゃ、じゃあ……」

 

恐る恐る手を伸ばした――その瞬間。

 

「シャアァァァ!!」

 

ミセス・ノリスが怒声のような声をあげて飛び退いた。

 

「うわっ!!」

 

ロンが驚いて後ずさる。

 

「な、なんだよ……!」

「……ごめん、たぶんロンに触られたくないみたい……」

 

ハリーがちょっと困ったように笑った。

そのとき――

 

「こらぁっ、そこにいるのは誰じゃあっ!」

 

フィルチの怒声が、背後から響いた。

 

「フィルチだ!!」

 

ロンが叫んだ瞬間、四人は一斉に駆け出していた。石畳の廊下を走り抜け、角を曲がり、階段を駆け上がる。

ハリーを先頭に、走る。背後には足音が迫ってくる。

 

「このままじゃ捕まるわ、どこか隠れられる場所は――あっ、あそこ!」

 

ハーマイオニーが前方のドアを指さす。ロンが勢いよくドアノブを回した。

 

「開かない! 鍵がかかってる!」

「どいて!」

 

ハーマイオニーが前へ出て杖を抜く。

 

「アロホモラ!」

 

カチャリ、と金属の小さな音。ドアがわずかに開いた。

 

「すご……!」

「入って!」

 

4人は次々に部屋の中へ飛び込み、扉をそっと閉める。誰かが中から押さえ、息をひそめる――

と、そのときだった。ごう……と、低く唸るような呼吸音が、部屋の奥から聞こえた。一斉に視線が暗がりに向く。

――そこにいたのは、巨大な影。

ゆっくりと、うごめきながら立ち上がる。三つの頭。鋭く光る牙。音もなく立ち上がったその獣が、じっとこちらを睨んでいた。

 

「……あれって……」

 

ハーマイオニーがかすれた声で呟く。

 

「三頭犬……!?」

 

ロンが息を呑んだ。ネビルはすでに足がすくんで、動けなくなっている。

その中で――ただ一人、ハリーの瞳だけがきらきらと光っていた。

 

「……ホグワーツなら、こんな強そうな生き物がいてもおかしくないよね!」

 

まるで興奮を隠しきれない少年のような声だった。

 

「馬鹿なこと言ってないで逃げるわよ!!」

 

ハーマイオニーが叫び、ハリーの腕をつかんで引っ張った。

 

「はいはい!!」

 

四人は再び走り出す。扉を開けて、階段を飛び出し、影のようにホールの中を駆け抜けていった。

背後では、三頭犬の低い唸り声が、まだ遠くで響いていた。ようやく寮の中へ戻ってきたときには、ハリー以外の三人はすでに息も絶え絶えだった。

談話室のソファに倒れ込むように腰を下ろし、誰もがしばらく言葉を失っていた。

 

「……あれ、いったいなんだったの……?」

 

ネビルが、ぽつりと口を開く。

 

「三頭犬。きっとそうだわ……本で読んだことがある」

 

ハーマイオニーの声も、どこか力が抜けていた。

 

「にしても、なんであんなのが学校にいるんだよ!? 頭が三つだぞ!? ここ、学校だぞ!?」

 

ロンが頭を抱える。それを聞いて、ハリーは腕を組んだまま、真剣な顔でうなずいた。

 

「でも、ホグワーツなら、ああいう強そうなやつがいても不思議じゃないと思うよ」

「感想がそれ!?」

 

ハーマイオニーが椅子から立ち上がりかけて――すぐに座り直した。

 

「だって、あれ、すごく強そうだったし……戦ってみたいよね……」

「いや、それはないから!!」

 

ロンが即座にツッコむも、ハリーはどこ吹く風で話を続けた。

 

「たとえばさ、三つの頭の視界にどう対応するか……行動パターンの分析から始めて、弱点を――」

「やめて!! 本気で考えないで!!」

 

ハーマイオニーが叫ぶように制止する。そんな騒ぎの中、ネビルがぽつりと尋ねた。

 

「……ハリーなら、あんなのにも……勝てるの?」

 

ハリーは少しだけ考えて、それからきっぱりと答えた。

 

「わからない! でも――勝てるように修行するんだ!」

 

力強いその一言に、三人とも思わず沈黙した。ネビルは、その横顔をじっと見つめる。不思議だった。

自分たちと同じ一年生なのに、なぜこの少年はこんなにも違って見えるのだろう。

恐怖を前にしても怯えず、ただ強さを目指して、まっすぐに進もうとしている――その姿が、どこかまぶしく見えた。

(……僕も……強くなりたい)

胸の奥に、まだ小さいけれど確かな想いが芽生える。誰にも気づかれないように、ネビルはそっと拳を握った。

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