ハリー・ポッターと友情、努力、勝利の本 作:じゃあな・アズナブル
夕食の時間。ハリーはグリフィンドールの長テーブルで、少し気まずそうにスープをかき混ぜていた。
「で? どうだったの?」
向かいの席でパンをかじっていたロンが、興味津々な顔で尋ねてきた。
「えっと……クィディッチの選手にされちゃった」
「……は!? ちょっと待って、今なんて言った?」
スプーンを置いたハリーが肩をすくめる。
「マクゴナガルに連れていかれて、気づいたら……チームに入ってた」
ロンは口をあんぐりと開けたまま固まる。
「す、すごいよハリー! 一年生でクィディッチのチームに入るなんて……なんのポジション?」
「シーカーだって」
「うわあ……マジで!? 一番重要なポジションじゃん!」
そのとき――背中をどん、と叩かれた。
「おーい、聞いたぞ新人!」
振り返ると、そっくりな顔の双子の上級生が立っていた。
片方がにやりと笑い、もう片方がハリーの肩をぽんぽんと叩く。
「俺はフレッド、こっちはジョージ。そこのロン坊やのお兄ちゃんな」
「ハリー・ポッター、だろ? 今年はお前のおかげで優勝間違いなしだな!」
「俺たちはビーター。敵にブラッジャーぶっ飛ばす係。つまり相手のビーターはお前を狙ってぶっ飛ばしてくるぞ。気をつけろよ」
双子は笑いながらパンをむしって食べ始めた。
初対面とは思えないほどフレンドリーで、頼もしさすら感じさせる。
「なんか……すごいことになってきたな」
ハリーは呟いた。
(思ってたより、クィディッチって大きな話だったのかも……)
そんなことをぼんやり考えていたとき――またしても、鼻につく声がグリフィンドールのテーブルに飛んできた。
「ポッター、最後の晩餐か?」
ドラコ・マルフォイだった。いつものようにクラッブとゴイルを従え、ふんぞり返るように立っている。
「退学になる前に、ホグワーツの料理をしっかり味わっとけよ。二度と食えないかもしれないからさ」
ハリーはスープを一口すすると、ゆっくり顔を上げた。
「ありがとう。でも退学の予定はないよ。君のほうは大丈夫?」
マルフォイの口が「は?」と開きかけ――そのまま固まる。クラッブとゴイルも、一瞬だけ目を丸くしていた。ハリーは真顔のまま、淡々と続けた。
「そんなに僕のこと気にしてくれてるなんて……心配してくれてるのかな? ありがとね」
マルフォイの頬がぴくりと引きつる。
その横で、ロンが「くくっ……」と肩を震わせ、にやりと口を挟んだ。
「知らないのか? ハリーがクィディッチの選手に選ばれたの、お前のおかげでもあるんだよな?」
「……え?」
マルフォイがまばたきした。ロンはその様子を楽しむように、さらに言葉を重ねる。
「今日の飛行訓練、お前が“思い出し玉”を投げたから、ハリーが空に飛び上がって――それで選手に選ばれたんだから」
「……!」
マルフォイの表情が一瞬、固まった。唇を引き結び、言葉を飲み込む。だがすぐに、ふいに言い放った。
「……だったら、今夜決闘しようじゃないか、ポッター。お前がクィディッチの選手にふさわしいか、ためしてやる。真夜中、トロフィー室でな」
「……うーん、夜は修行の時間なんだけどなあ」
ハリーはスプーンを置き、少しだけ考えるように呟いた。その表情は真面目とも冗談ともつかず、読みにくい。
(修行……?)
マルフォイが一瞬困惑している間に、ハリーはあっさりと続ける。
「でもまあ、体を動かすのは嫌いじゃないし……いいよ。せっかくだし、付き合う」
「ただ、トロフィー室は狭いから、中庭にしよう。あっちの方が広いし、動き回っても誰にも怒られなさそうだしさ」
もはや“決闘”というより、完全に自主トレの延長戦みたいな口ぶりだった。
マルフォイはしばし無言になり、口を開きかけて――また閉じた。
(なんだこれ……)
こんな展開、まるで想定していなかった。嫌がらせのつもりで出した誘いを、ここまで自然体で、しかも無邪気に受け止められるとは。
「……わかったよ。中庭でやろうじゃないか」
「うん、待ってるよ」
ハリーはさらっと答えると、再びスープをすくい始めた。
マルフォイは唇をへの字に結んだまま、黙って背を向ける。クラッブとゴイルも小声でざわつきながら後に続く。
歩きながら、マルフォイは自分の足取りが妙に重くなっていることに気づいた。
***
一方その頃、グリフィンドールの長テーブルには――怒り気味の足音が響いた。
「今の話、聞いちゃったんだけど!」
腰に手を当てて立っていたのは、ハーマイオニーだった。ローブの裾がわずかに揺れ、声には明らかな怒気がにじんでいる。
「あんなの、絶対ダメよ! 夜中にこっそり抜け出すなんて、校則違反だし、見つかったらグリフィンドールが減点されるのよ!」
勢いよくまくしたてるその姿に、さすがのロンもびくっと肩をすくめた。だが当のハリーは、特に動揺することもなく、きょとんとした様子でこう言った。
「え? でも僕、毎晩深夜に抜け出してるけど……今のところ減点されたことないよ?」
「……え?」
「え?」
ハーマイオニーとロン、ふたり同時に固まった。目を瞬かせるどころか、まるで思考が一時停止したようにハリーを見つめている。ハリーは、そんなふたりの反応に素直に首を傾げながら続けた。
「修行って夜のほうがやりやすいんだよね。静かだし、誰にも迷惑かけないし。たまに猫が歩いてるけど」
「猫……」
「うん。あと、魔力の流れを感じやすい気がするんだ。夜の方が集中できるというか……空気が澄んでるっていうかさ」
ハーマイオニーは固まったまま、目をぱちぱちさせていた。
(……この人、本気で言ってる)
ロンは隣でぼそっと呟いた。
「やっぱり……どっかおかしいよな」
天井を見上げながら、どこか納得したような顔だった。
***
その日の夜――城の中が静寂に包まれるころ、ハリーはローブを羽織って、そっと寮の外へと足を踏み出した。その背後から、ロンが肩をすくめつつ、不安げな表情でついてくる。
「……本当に行くのか? マルフォイと決闘なんてさ」
「うん。ちょうどいいタイミングだしね。相手がいた方が、修行になる」
「いや、修行じゃなくて決闘だから……」
ロンのぼやきが虚しく響くなか、ふたりの背後から足音が近づいた。
「ちょっと、待って!」
振り返ると、そこには腕を組んだハーマイオニーが立っていた。いつも通り真剣な顔つきで、どうやら本気で止める気らしい。
「どうしても行くって言うなら……私もついていくわ。誰かが見張ってないと、グリフィンドールの点数が何点減るかわかったもんじゃないもの」
「やった、見張りが増えた……」
ロンが小さく嘆息した。さらにそのとき、廊下の陰から、もそもそともうひとつの影が現れた。
「ね、ねえ……その……グリフィンドールの寮、入れなくなっちゃって……」
「ネビル!?」
ロンとハーマイオニーが同時に叫ぶ。
「えーと……合言葉を聞かれたけど、忘れちゃって……」
しょんぼりした様子のネビルは、結局そのまま同行することになった。こうして、妙にちぐはぐな四人の一団が、夜のホグワーツをこっそりと進み、中庭を目指す。
冷たい風が石畳を吹き抜けるなか、彼らがたどり着いたのは、月光に照らされた広場だった。
そこにはすでにマルフォイが立っていた。両脇には、いつもの取り巻き――クラッブとゴイル。腕を組み、不機嫌そうに睨みをきかせている。
「遅かったな、ポッター」
マルフォイの声は、やや苛立ちを含んでいた。ハリーは無言で前に出ると、すっと足を開いて構える。すでに戦う体勢だ。その自然な動きに、マルフォイが眉をひそめる。
「……おいおい、お前、決闘のやり方も知らないのか?」
呆れたような声だった。
「魔法使いの決闘だぞ? 杖を構えて、“ルール”があるんだ!」
「え、そうなの?」
ハリーは首をかしげた。どうやら本当に知らなかったらしい。マルフォイは得意げに杖を振り上げると、講釈を始めた。
「いいか、まず背を向けて歩き出す。それから――」
その説明どおりにふたりは背を向け、数歩歩く。ハリーは素直にルールに従い、構えを取った。
「わかったよ。じゃあ――やろうか」
軽く腰を落とし、杖を握ったその瞬間――
「レヴィ……!」
マルフォイが呪文を唱えかけた時には、すでにハリーが動いていた。
スッ――
ひと足で距離を詰め、ハリーの杖がマルフォイの手元を正確に打つ。マルフォイの杖は宙を舞い、あっけなく弾き飛ばされた。
「……!」
体勢を崩したマルフォイは尻もちをつき、呆然としたまま地面に座り込んだ。
「……はやっ!?」
ロンの叫びが、夜の中庭に響く。クラッブとゴイルが一瞬身を乗り出すが、ハリーはまるで気にも留めず、のんびりとマルフォイの方へ歩み寄った。
「悪かったね、ちょっとタイミング早かったかな? でもさ、構えはもっと腰を落とした方がいいよ。足幅ももう少し広めに。あと、杖の持ち方も工夫すると反応が速くなると思う」
完全に“教えるモード”に入っていた。
マルフォイは、怒りとも困惑ともつかぬ顔で立ち上がるが、ハリーは気にせず続ける。
「じゃあ、今のをベースにもう一回やってみようか。せっかくだし、みんなも一緒にやろうよ」
え? という顔をするロンに、ハリーが振り向く。
「ロン、前から思ってたんだけど君はいつも重心が片方に寄ってる。足の向きも見直した方がいいよ。ハーマイオニーは……杖の位置、ちょっと高すぎるかな」
「ちょ、ちょっと!? 私、別にやるつもりじゃ……!」
「ネビルも。体力なくても、姿勢だけでも覚えておくといい。戦いは準備が九割だからね」
「ぼ、僕も!?」
ネビルは目を丸くしながら身を引いたが、ハリーの真剣な表情に、否応なくうなずいてしまった。
気がつけば、ハリーはみんなに“基礎訓練”を教えていた。
「背筋を伸ばして、腰を落として……重心は、足の裏の三点で感じてみて」
などなど――誰もが「どうしてこうなった」と思いながらも、なぜか反論できなかった。
マルフォイでさえ、立ち去るタイミングを完全に失っていた。結局のところ、彼もまた、ハリーの指導を受ける側にいたのだった。
――そして、その場にいた全員が、心のどこかで同じことを思っていた。
(……こいつ、やっぱりおかしい)
けれど――なぜだろう。不思議な“謎の一体感”が、その夜の中庭には芽生えていた。しばらくのあいだ、構えの確認や杖の握り方講座が続いた。
だがハリーは、ふいに「じゃあ、僕は少し修行に戻るね」とだけ言い残し、ひとり静かに少し離れた場所へ向かった。
そして――何の前触れもなく、逆立ちを始めた。片手で。
「……」
誰もが言葉を失った。ハリーは、地面に対して上下反転したまま、黙々と腕を曲げ伸ばしている。
額を汗が伝っても、顔色ひとつ変わらない。次に、すっと足を下ろすと、低い構えに入る。
そのまま――
「ふっ、ふっ!」
ひとり、宙に向かって拳を繰り出し始めた。鋭い軌道を描く拳、柔軟な体捌き。自然と足も地を蹴り、まるで戦うように動いている。
続けて杖を手に取ると、小さく呪文らしき言葉をつぶやきながら、動作に“魔法”を組み込んでいった。
ハーマイオニーが、ぽかんとした顔でつぶやく。
「……拳と魔法を、組み合わせようとしてるの?」
隣で見ていたロンも、ただただ呆れていた。そして、少し離れた位置からその光景を眺めていたマルフォイが、ぼそりとつぶやいた。
「……あいつ、いつもあんなことやってるのか?」
あきれたような声で、ロンに話しかける。ロンは、少し気の抜けた声で答えた。
「ああ……もうわかってると思うけど、ハリーってどっか変なんだ」
「本当よ。ちょっと信じられない!」
ハーマイオニーが笑いながら言った。少し離れたところで、マルフォイは鼻を鳴らした。
だが、その目はハリーをじっと見つめたままだ。
「バカみたいだ……でも、ちょっと……」
その言葉は、声にならなかった。けれど、確かに。マルフォイの中で、何か小さなものが揺れたのだった。
――そして、もうひとり。
ネビル・ロングボトムは、少し後ろで静かにその様子を見ていた。黙々と体を動かし、呪文を組み合わせながら修行に没頭するハリーの姿。
その背中を、じっと見つめる。ふと、ネビルの目に小さな火が灯った。
(……僕も、あんなふうに……)
ぎゅっと握った拳に、まだ誰も気づいていなかった。けれど、確かに。ほんの小さな“始まり”が、そこにはあった。ハリーの修行が、空気を変えていく。
それは、マルフォイも、ネビルも、そして少しずつ――周囲の人間すべてを巻き込んでいく空気だった。
***
夜の冷たい空気の中、ホグワーツの石畳を踏む足音が、四人分、静かに響いていた。
「はあ……なんか、すごい夜だったわね……」
ハーマイオニーが小さくため息をつく。
「まさか“決闘”が、全員で“修行”になるとは思わなかったよ……」
ロンも肩をすくめながら言った。ネビルはというと、まだどこか緊張した面持ちのままだ。
口は開かず、けれど時折、ちらちらとハリーの横顔を見つめていた。
修行の姿が、強く印象に残っていたのだろう。ハリーはというと、至って普通の顔で歩いていた。
――というより、どこか満足げですらあった。
やりきった後の心地よい疲労感と、ひとつ“成果”を掴んだあとの高揚が、体の芯に残っている。
「さ、寮に戻ろうか。明日も授業あるしな」
ロンが言い、全員がうなずいた――そのときだった。
「……ん?」
廊下の先に、何かがいた。ぴたりと止まる影。長い尻尾。細く鋭い目。
「ミセス・ノリス……?」
ハリーが目を細める。やはりそうだった。やや痩せた猫が廊下の真ん中に座り、じっとこちらを見ている。
「……ハリー、あれって管理人の猫よね? まずいんじゃ……」
ハーマイオニーが焦った声を出すが、ハリーは落ち着いた足取りで猫に近づいていく。
「大丈夫、大丈夫。ミセス・ノリスとは顔見知りだから」
「……は?」
ハーマイオニーの口が、ぽかんと開いた。ハリーはしゃがみこみ、まるで友達に話しかけるように語りかけた。
「今日もおつかれさま。寒くなってきたね」
ミセス・ノリスは“にゃあ”とも鳴かず、するりとハリーに近づき、脚にすり寄ってくる。
「うそでしょ……」
ハーマイオニーがぽつりと呟いた。
「君……フィルチの猫とも知り合いなのかよ……」
ロンも半分あきれた声を漏らす。そのとき、ハリーがふと声をかけた。
「ほら、ロンも触ってみる? けっこう柔らかいよ」
「じゃ、じゃあ……」
恐る恐る手を伸ばした――その瞬間。
「シャアァァァ!!」
ミセス・ノリスが怒声のような声をあげて飛び退いた。
「うわっ!!」
ロンが驚いて後ずさる。
「な、なんだよ……!」
「……ごめん、たぶんロンに触られたくないみたい……」
ハリーがちょっと困ったように笑った。
そのとき――
「こらぁっ、そこにいるのは誰じゃあっ!」
フィルチの怒声が、背後から響いた。
「フィルチだ!!」
ロンが叫んだ瞬間、四人は一斉に駆け出していた。石畳の廊下を走り抜け、角を曲がり、階段を駆け上がる。
ハリーを先頭に、走る。背後には足音が迫ってくる。
「このままじゃ捕まるわ、どこか隠れられる場所は――あっ、あそこ!」
ハーマイオニーが前方のドアを指さす。ロンが勢いよくドアノブを回した。
「開かない! 鍵がかかってる!」
「どいて!」
ハーマイオニーが前へ出て杖を抜く。
「アロホモラ!」
カチャリ、と金属の小さな音。ドアがわずかに開いた。
「すご……!」
「入って!」
4人は次々に部屋の中へ飛び込み、扉をそっと閉める。誰かが中から押さえ、息をひそめる――
と、そのときだった。ごう……と、低く唸るような呼吸音が、部屋の奥から聞こえた。一斉に視線が暗がりに向く。
――そこにいたのは、巨大な影。
ゆっくりと、うごめきながら立ち上がる。三つの頭。鋭く光る牙。音もなく立ち上がったその獣が、じっとこちらを睨んでいた。
「……あれって……」
ハーマイオニーがかすれた声で呟く。
「三頭犬……!?」
ロンが息を呑んだ。ネビルはすでに足がすくんで、動けなくなっている。
その中で――ただ一人、ハリーの瞳だけがきらきらと光っていた。
「……ホグワーツなら、こんな強そうな生き物がいてもおかしくないよね!」
まるで興奮を隠しきれない少年のような声だった。
「馬鹿なこと言ってないで逃げるわよ!!」
ハーマイオニーが叫び、ハリーの腕をつかんで引っ張った。
「はいはい!!」
四人は再び走り出す。扉を開けて、階段を飛び出し、影のようにホールの中を駆け抜けていった。
背後では、三頭犬の低い唸り声が、まだ遠くで響いていた。ようやく寮の中へ戻ってきたときには、ハリー以外の三人はすでに息も絶え絶えだった。
談話室のソファに倒れ込むように腰を下ろし、誰もがしばらく言葉を失っていた。
「……あれ、いったいなんだったの……?」
ネビルが、ぽつりと口を開く。
「三頭犬。きっとそうだわ……本で読んだことがある」
ハーマイオニーの声も、どこか力が抜けていた。
「にしても、なんであんなのが学校にいるんだよ!? 頭が三つだぞ!? ここ、学校だぞ!?」
ロンが頭を抱える。それを聞いて、ハリーは腕を組んだまま、真剣な顔でうなずいた。
「でも、ホグワーツなら、ああいう強そうなやつがいても不思議じゃないと思うよ」
「感想がそれ!?」
ハーマイオニーが椅子から立ち上がりかけて――すぐに座り直した。
「だって、あれ、すごく強そうだったし……戦ってみたいよね……」
「いや、それはないから!!」
ロンが即座にツッコむも、ハリーはどこ吹く風で話を続けた。
「たとえばさ、三つの頭の視界にどう対応するか……行動パターンの分析から始めて、弱点を――」
「やめて!! 本気で考えないで!!」
ハーマイオニーが叫ぶように制止する。そんな騒ぎの中、ネビルがぽつりと尋ねた。
「……ハリーなら、あんなのにも……勝てるの?」
ハリーは少しだけ考えて、それからきっぱりと答えた。
「わからない! でも――勝てるように修行するんだ!」
力強いその一言に、三人とも思わず沈黙した。ネビルは、その横顔をじっと見つめる。不思議だった。
自分たちと同じ一年生なのに、なぜこの少年はこんなにも違って見えるのだろう。
恐怖を前にしても怯えず、ただ強さを目指して、まっすぐに進もうとしている――その姿が、どこかまぶしく見えた。
(……僕も……強くなりたい)
胸の奥に、まだ小さいけれど確かな想いが芽生える。誰にも気づかれないように、ネビルはそっと拳を握った。