【美少女アムロの】機動戦士ガンダムGA//Girls Act!!【一年戦争】   作:GA

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Episode:01 「Stand up, GUNDAM !!」

 人類が増えすぎた人口を宇宙に移住させるようになってから、既に七十年余りが過ぎていた。

 地球と月の重力が釣り合う五つのラグランジュ・ポイントには、羽のような採光ミラーを備え、直径6キロにも及ぶ巨大な円筒型の人工都市「スペースコロニー」が何百基も配置されており、六つの「サイド」と呼ばれる居住エリアを形成していた。

 いまや数十億もの人々が、地球ではなくこの六つのサイドを故郷として、そこで生まれ、育ち、生涯を終えていく。

 宇宙移民は当初、人口増加に伴い悪化した地球環境の回復という大義名分と、新たなフロンティアの開拓という夢と希望をもって語られ、地球圏統一国家である「地球連邦」により大々的に推進された。

 しかし、宇宙移民者達がその欺瞞に気付くのに、長い時間は掛からなかった。過酷な宇宙に移り住む者は地球で食い詰めた貧困層が中心であり、富裕層や知識層はその大半が地球に残り、特権階級として宇宙に住む人々を管理した。宇宙移民と地球市民の間には政治的、経済的な格差が広がり、宇宙移民は明確な不満を募らせていった。

 

 そして、時に宇宙世紀0079年1月3日。

 

 地球から最も離れた宇宙都市群「サイド3」はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を仕掛けてきた。強力な電波攪乱などを可能とする「ミノフスキー粒子」の活用や、新機軸の人型機動兵器「モビルスーツ」の投入により、ジオン公国は国力で著しく劣りながらも地球連邦を圧倒、甚大な被害をもたらした。

 わずか一ヶ月あまりの戦いで、両国は人類の総人口のおよそ半数を死に至らしめた。

 人々は、自らの行いに恐怖した。

 

 やがて戦争は膠着状態に陥り、八ヶ月ほどが過ぎた。

 

 

 

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 機動戦士ガンダムGA//Girls Act!!

 Episode:01 「Stand up, GUNDAM !!」

 

 

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 サイド7。新たなサイドとするべく、およそ二年前から開発が進められている七番目の宇宙都市群である。もっとも、現状では、居住に足るスペースコロニーは「1バンチ」の一基しか存在せず、その1バンチコロニーも未だ未完成であり、住民は決して多くない。

 まさに僻地と呼ぶしかないスペースコロニーである。 

 その内部に広がる居住区の一角に建つ、ありふれた住宅の一室で、アミナ・レイはすやすやと寝息を立てていた。

 アミナは15歳の少女である。年齢からすると小柄で、身長は145センチに届かず、伸びやかだがほっそりとした肢体から推測するに、体重は40キロそこそこしかないだろう。その容貌は美少女と呼んで差し支えないほど整っているものの、女性と呼ぶには些か幼さが際立っていた。

 アミナが眠っているのは、二階にある自室のベッドだ。キャミソールにショーツのみというあられもない格好で、仰向けとなり、だらしなく眠っている。室内にはパソコンや工作器具、作りかけの機械などが散乱する一方、可愛らしいぬいぐるみ等も飾られており、やや混沌とした趣きを醸し出していた。

 枕元に置かれた目覚まし時計は、午前8時を指している。

 ふいに、来客を知らせるインターホンが鳴った。続いて、玄関のドアが開けられる音と、涼やかな少女の声が響く。

 

「アミナ、起きてるー?」

 

 誰かが階段を上がり、アミナの部屋のドアを開けた。

 

「アミナ! やっぱりまだ寝てた!」

 

 アミナと同年代の女の子だ。緑色を基調とした服を着て、同じく黄緑色の丸いペットロボットを連れていた。

 ペットロボットが、目を模した二つの光学センサーをピカピカと光らせながら、電子音声で呼びかける。

 

『アミナ、起キロ。アミナ、起キロ。朝ダ、アミナ、朝ダ、起キロ!』

 

 アミナはもぞもぞと上半身を起こすと、目元を手で擦りながら、欠伸と共に返事をした。

 

「おはよー、ハロ。今日も元気だね……」

「オハヨウ、アミナ! オハヨウ、アミナ!」

「アミナったら、またそんな恰好で寝て。あなた、せっかく可愛いんだから、もっと身嗜みには気を使いなさいよ」

「おはよー、フラウ・ボゥ。寝る時まで服に気なんか使いたくないよう……」

 

 ふああ、と大欠伸をするアミナ。ミディアムの茶色いクセっ毛の髪がゆらゆらと揺れる。

 そんなアミナにフラウはやれやれと溜息をついた。

 

「今日、避難指示が出てること、覚えてる?」

「覚えてるよー。連邦軍の軍艦が入港するから、10時までに指定の退避シェルターに行けって話だよね。もー、ほんと面倒くさいったら」

「ぶつぶつ言わないの。朝ご飯を作ってあげるから、その間に着替えて顔を洗ってらっしゃい。いいわね?」

「朝ご飯、なに?」

「冷蔵庫の中身次第だけど、リクエスト、何かある?」

「卵とベーコンが残ってたはず。エッグベネディクト食べたい」

「はいはい、わかりましたっと」

「わーい! フラウお姉ちゃん、大好きー!」

「もう、ひっつかないの。ほら、準備して」

 

 フラウが一階へと降りていく。アミナは昨晩のうちに用意していたTシャツとフード付きトレーナー、ショートパンツに着替えると、白いニーソックスを履いてから、一階の洗面台に向かった。

 顔を洗い、髪に櫛を通して、ヘアゴムで手早く括る。

 洗面台の鏡には、髪をショートポニーテールにした、いつも通りのアミナが映っていた。

 

「よし、完璧っ」

 

 ダイニングに行くと、キッチンではフラウが勝手知ったる様子で、アミナのエッグベネディクトを調理していた。

 アミナは戸棚からコップを、冷蔵庫からオレンジジュースのパックを取り出し、テーブルの上で注ぐ。

 フラウが手を動かしながら訊いてきた。

 

「アミナ、また夜更かししてたんでしょ。何してたのよ」

「ん-、パソコンで資料を読んでた。ここ一ヶ月くらい、ハマっちゃっててさ」

「資料? なんの?」

「それは詳しく聞かない方がいいと思うよー」

 

 アミナは悪戯っぽく笑う。

 フラウがたまに目にする類の表情だった。この小柄な親友は、普段はちょっぴりだらしないながらも真面目で良識的な優等生のくせに、時々、こちらを心底から驚かせるような真似をやってのけるのだ。良くも悪くも、突拍子もない行動に走るところがあった。

 聞きたくないが、放っても置けず、尋ねる。

 

「それは、どうして?」

「軍の機密だから。読んでたのがバレたら、逮捕間違いなしだね」

「なんですって!?」

 

 予想以上に酷かった。フラウが目を真ん丸にしていると、アミナは何でもないことのように嘯く。

 

「前に父さんが戻ってきた時にさ、仕事の資料を持ち帰ってたんだよね。そのデータをこっそりコピーして、私のパソコンに入れて読んでたの。昨晩、ようやく完読したんだー」

「こっそりコピーって……おじさんだってコンピューターにはパスワードとか掛けてるでしょ。どうやったのよ」

「父さんの設定したパスワードなんて簡単に分かるよ。決まって私に関することなんだから」

「ああ……そうね。おじさんならそうよね」

 

 フラウは思わず納得してしまった。

 アミナの父親、地球連邦軍の技術士官であるテム・レイ大尉は、電子工学と機械工学の専門家であり、極めて優秀な技術者なのだが、同時に一人娘のアミナを溺愛する生粋の子煩悩でもあった。この御時世だ。軍人は死ぬほど忙しいはずだが、テムは少しでも時間ができれば必ず帰宅し、アミナとの交流に努めていた。アミナの誕生日ともなるとフラウ達やコバヤシ家の人達を招いてバースデーパーティーを催すほどだった。アミナといえば、テムの得意分野にして仕事でもある工学関連が大好きなうえ、外見だけでなく性格まで素直で愛らしい女の子なのだ。テムからすれば、そんな一人娘が可愛くて仕方ないのだろう。

 アミナもそれを自覚しており、テムに対しては比較的わがままに振る舞い、他の人達より「やってはいけないこと」のハードルを低くする傾向があった。

 

「今、父さんが作ってるやつの仕様書というか、マニュアルみたいなものなんだけどさ。いやー、ほんと、めっちゃくちゃ面白かった! 父さんが熱中するのも仕方ないね」

「アミナ……あなた、無茶も大概にしてよ。聞いてるこっちが怖くなるじゃない」

「もう読み終わったから、データは全部きれいに消したし、心配いらないよ。暗記するくらい読み込んだけど、私の頭の中を覗けない限り、証拠は見つかんない」

「あきれた。そんなの、まるでスパイじゃないの」

 

 言いながら、フラウは完成したエッグベネディクトを乗せた皿を、テーブルについたアミナの前に置いた。温かな湯気と美味しそうな匂いが立ち上っている。

 アミナは小さな子供のようにはしゃぐ。

 

「これこれ。いただきまーす!」

「それ食べ終わったら、退避シェルターに行くからね」

 

 

 * * *

 

 

 サイド7、1バンチコロニーのドッキングベイ。宇宙船が接舷する為の港湾施設に、一隻の特異な形状をした軍艦が入港しつつあった。

 まるで木馬のような形をした軍艦は全長262メートル、全幅202メートル、全高93メートルという偉容を誇り、傷一つない装甲は太陽や誘導灯の光を反射してキラキラと輝いている。

 地球連邦軍が新造した、ペガサス級強襲揚陸艦「ホワイトベース」。

 それがこの軍艦の名前だった。

 ホワイトベース艦内、軍艦にしては広々とした通路を、一人の若い士官が足早に進んでいく。

 ブライト・ノア少尉。いかにも実直そうな黒髪の若者で、それほど使い込まれていない連邦軍の軍服に身を包んでいる。まだ19歳であり、本来ならば二年間を要する士官学校での教育を一年間に短縮され、戦時下ならではの特別任官により正式な軍人となったばかりの新米士官である。

 それゆえ、任される仕事は雑用が主だ。

 今も艦長から伝令を命じられて、技術士官に艦橋に上がるよう伝えにいくところだった。

 目的の個室にたどり着く。ノックをしてから、軍人らしく声を張り上げた。

 

「失礼します!」

 

 ドアを開けて、敬礼し、明瞭に言う。

 

「伝令。レイ大尉、まもなくサイド7に入港とのことです。至急、ブリッジまでお越しください」

「ああ、分かった」

 

 応じたのは、室内にいた、眼鏡を掛けた中年の技術士官だ。軍人にしては細身で、見るからに技術者といった風体の人物である。彼こそアミナ少女の実父、テム・レイ大尉だった。

 テムは読んでいた資料のファイルを閉じてから、ブライトに問う。

 

「確かブライト君と言ったね。軍に入ってどのくらいかな?」

「はい。六ヶ月になります」

「19歳だったか。若いな。うちの娘とそう変わらない」

 

 テムは目を細めて、机の上に置かれた写真立てに視線を向けた。そこには彼の愛娘であるアミナの写真が収まっており、ハイスクールの制服を着て溌溂とした笑顔を見せている。

 ブライトはその写真を見て、微笑ましく感じた。

 

「お嬢様でいらっしゃいますか?」

「ああ、アミナという。ハイスクールに入学したばかりでね。こう見えて、私に負けず劣らず機械やコンピューターの扱いが得意なんだ。ペットロボットを自作したこともある」

「それは大したものですね」

「うん、自慢の一人娘だ。……アミナくらいの年齢の子供がゲリラとして戦場に立っているという話も聞くが、本当かね?」

「はい。事実と聞いております」

「そうか。実に嘆かわしいことだ。……ブライト君。こんなことを言うのは、軍人として褒められたことではないかもしれないが、私はアミナの為に“ガンダム”を作ったようなものでね」

「お嬢様のために?」

「そうだとも。この戦争を終わらせて、あの子が平和な時代を伸び伸びと生きていけるようにする。私はその為に“ガンダム”を作ったのだ」

 

 テムはブライトに向けて肩をすくめて見せる。

 

「軍人失格だろう?」

「いいえ。自分はそうは思いません。軍人としても、父親としても、胸を張ってよろしいかと」

「君のような若者にそう言ってもらえると救われるよ。では、ブリッジに行こうか」

 

 テムとブライトは艦橋に向かった。

 ホワイトベースの先進的なブリッジでは、熟練の将校とオペレーター達がそれぞれの職務に励んでいた。一段高く設置された艦長席に座っているのは、その長い軍歴に相応しい貫録を備えた壮年の男性、パオロ・カシアス中佐だ。

 テムが艦橋に入ると、パオロ艦長が振り返り、肩越しに労う。

 

「ご苦労様です、レイ大尉」

「結局、ジオンの船は引き離せなかったようですな」

 

 ホワイトベースは航行中にジオン軍のムサイ級巡洋艦に捕捉されてしまい、追跡を受けていた。引き離そうと可能な限り努力したが、残念ながら振り切ることは叶わなかった。幸い、ムサイも単艦での戦闘に踏み切るつもりはないらしく、かなりの距離を空けて監視に徹している。

 パオロは嘆息してから言った。

 

「コロニーに入港したら、手早く“ガンダム”らを積み込んで、早々にルナツーへと出港するとしましょう」

「そうですな」

 

 どうやら忙しくなりそうだ。

 おそらく愛娘のいる自宅に立ち寄る暇はないだろう。心の底から残念に思いつつ、テムはこれからの仕事についての算段を考え始めた。

 

 

 * * *

 

 

 その頃、漆黒の宇宙空間を、三つの人影が進んでいた。いや、人影ではない。広大無比な宇宙空間ゆえに錯覚してしまいそうになるが、それらは20メートル近い巨体を持つ人型の機械だった。

 神話の怪物を想起させる、一つ目の巨人達。緑色の武骨な装甲と、宇宙空間を敏捷に進む為の推進器を備え、マシンガンを模した機関砲を携えている。それらは、此度の戦争において空前絶後の脅威をばらまいている機動兵器「モビルスーツ」であった。

 ジオン軍が開発した量産型モビルスーツ、MSー06「ザクⅡ」である。

 三機のザクは宇宙空間を密かに進み、サイド7の1バンチコロニーの外壁に接地した。そして、緊急用メンテナンス・ハッチの一つを、その人間の手にそっくりなマニピュレーターを駆使して開放し、滑り込むようにコロニー内部へと侵入する。モビルスーツだからこそ可能な、実に見事な侵入だった。

 エアロックを開け、居住区のある、コロニーのシリンダー内を確認する。

 このザク部隊を指揮する下士官、デニム曹長が通信で告げた。

 

「スレンダー。おまえはここに残って退路を確保しておけ。俺とジーンで内部を探る」

「はっ。了解であります」

 

 一機をエアロックに残し、デニム曹長とジーン伍長が操縦する二機のザクが、高所にあるエアロックからシリンダー内部に降下する。

 ザクの巨体は、推進器の適切な使用により、驚くほど静かにシリンダー内の人工大地に着地した。巨人達の侵入に気づいたのは、森林部に棲む鳥ぐらいのものだった。

 このコロニーに入港したばかりのホワイトベース隊には知る由もなかった。

 

 

 * * *

 

 

 アミナとフラウが、アミナの自宅のガレージから小型EVのエレカで出発しようとした時に路上で出くわしたのは、向かいの家に住む少年ハヤト・コバヤシだった。

 アミナとフラウの同級生である。彼も退避シェルターに向かうところだったらしい。家族と共に自家用エレカに乗り込もうとしていた。

「おっはよー、ハヤト!」

「おはよう、ハヤトくん。ハヤトくん達もこれから出発?」

「やあ、アミナにフラウ。君達もこれからかい?」

 

 エレカを停めて挨拶をした二人に、帯でまとめた柔道着を肩にかけたハヤトが朗らかに応じる。コバヤシ家は連邦軍に立ち退きを強制された経験があり、アミナやテムに対しても一時は複雑な感情を抱いていたようだが、アミナが持ち前の快活さとコミュニケーション能力で御近所づきあいを頑張った結果、今ではすっかり良いお隣さんとなっていた。

 

「うん、私達もこれからだよ。面倒くさいよね、まったく」

「ははは、言っても仕方ないさ。夕方には避難命令も解除される見通しらしいし、我慢だよ、アミナ」

「はーい。わかってまーす」

 

 アミナが学校の先生に答えるような口調で言うと、三人は穏やかに笑い合った。

 ハヤトが彼の母から声を掛けられる。どうやら出発のようだ。

 

「それじゃあ、また後で」

「うん、また後で」

 

 アミナとフラウはコバヤシ家と別れると、割り当てられた退避シェルターを目指して、エレカを走らせた。

 

 

 * * *

 

 

 デニム曹長とジーン伍長は、山岳ブロックに位置する連邦軍の施設を発見し、遠距離から望遠カメラで偵察を行っていた。

 ノーマルスーツと呼ばれる宇宙服の中でも、パイロット用としてスリムに作られた緑色のスーツとヘルメットを着用した二人が、密やかに連邦軍の施設を窺っている。デニム曹長は大型輸送車で運ばれていく“モビルスーツ”の部品に目を見張った。

 

「まさか、連邦が本当にモビルスーツの開発に成功していたとはな。シャア少佐の読みは流石だ」

「曹長! このままでは、敵のモビルスーツが例の戦艦に積み込まれてしまいます! いっそ、ここで攻撃を!」

「ジーン。我々の任務は偵察だ。手柄がないことを気にして功を焦るな。堅実に任務を果たしてこそだぞ」

「そんな悠長な……!」

 

 ジーン伍長は苛立ちを隠さず、そわそわと基地と自分のザクへ交互に視線を走らせる。

 そして、我慢し切れず、自分のザクへと駆け戻った。

 デニム曹長が驚き問い質す。

 

「ジーン! 貴様、何をするつもりだ!?」

「シャア少佐だって戦場で手柄を立てて出世したんだ! 俺だって!」

「馬鹿な真似は止めろ! 命令違反だぞ!」

 

 ジーン伍長はデニム曹長の制止を無視して、ザクのコックピットに乗り込み、愛機を再起動させる。

 跪いていたザクの巨体が立ち上がり、周囲の木々をめきめきと薙ぎ倒す。

 恐るべき緑色の鉄騎兵が、その圧倒的な暴力を振るうべく、連邦軍の基地に向かって歩き出した。

 

「止めろ、ジーン!」

 

 デニム曹長もザクに乗り込み、レーザー通信で怒鳴るが、ジーン伍長は答えない。

 ジーン伍長は緊張と興奮で額に汗を滴らせながら、ザクを基地が見渡せる位置まで進ませてから、120ミリの砲弾を連射できる重火器「ザク・マシンガン」を構えさせた。

 その照準が向けられた先は、組み立てられる前のモビルスーツを運ぶ大型輸送車である。

 

「これで、手柄は俺のものだ!」

 

 ジーン伍長がザクに引き金を引かせる。

 ザク・マシンガンがたちまち火を噴いた。凄まじい砲声が轟く。奈落の穴のような砲口から立て続けに吐き出された120ミリ砲弾が、赤いモビルスーツを運んでいた大型輸送車を木端微塵に破壊した。

 爆炎が吹き上がり、周囲を赤く照らし上げる。

 モビルスーツによるスペースコロニー内での破壊活動という、悲惨極まりない事態が始まった瞬間だった。

 

 

 * * *

 

 

 ホワイトベースの艦橋は、まさに晴天の霹靂に見舞われていた。

 

「モビルスーツによる襲撃だと!? コロニーの中でか!?」

 

 その報告を聞いた時、パオロ艦長は我が耳を疑った。閉鎖空間であるコロニー内でモビルスーツのような大型機動兵器に戦闘を行わせる。これは下手をすればコロニーという建造物そのものを内部から破壊しかねない行為である。スペースコロニーは宇宙空間に浮かぶ人工島なのだ。コロニーで暮らす全住民の生命を脅かす暴挙だった。

 今まさに襲撃を受けている基地から通信している下士官が、モニター越しに叫んだ。

 

『確認できている敵戦力はザク2機です! ホワイトベースへ移送中だったモビルスーツの破壊が目的と思われます! 現在、基地の守備隊が応戦していますが、明らかに劣勢です!』

 

 パオロ艦長は即座に命令を下した。

 

「ガンダムをはじめとするモビルスーツの収容を急げ! 収容次第、本艦はこのコロニーを離脱する!」

 

 ホワイトベースの任務は、地球連邦が秘密裏に進めていたモビルスーツ開発計画「V作戦」で完成した試作モビルスーツの実機を、地球連邦軍の本部であるジャブロー南米基地へと移送することである。

 地球連邦軍は国力で圧倒的に勝っていながら、ジオン軍を相手に苦戦を続けている。その最大の理由はミノフスキー粒子とモビルスーツにあった。稀代の物理学者トレノフ・Y・ミノフスキー博士が発見したミノフスキー粒子は、それまでの物理学の常識を覆す様々な現象を引き起こす不可視の粒子であり、高出力の小型核融合炉やビーム兵器の実用化を可能にした。しかし、ミノフスキー粒子がもたらした影響の最たるものは、そうした兵器の強大化ではなく、絶大なまでの電波攪乱効果による「戦場の古代化」である。

 平たく言えば、ミノフスキー粒子を高濃度で散布すると、電波による通信や誘導が深刻なレベルで阻害されるのだ。これにより、宇宙世紀が始まる前の旧世紀より軍事力の要であった広範囲レーダーやハイテク誘導兵器の数々が完全に無効化されるようになった。その結果、戦争を行う際は有視界戦闘、すなわち「敵を目視で捉えてから戦う」という、第二次世界大戦以前の古い方法を取らざるを得なくなったのだ。

 そして、古代化した戦場で猛威を振るった新兵器こそ、ザクに代表されるモビルスーツである。全長18メートルもの大きさがありながら、極めて高い汎用性と機動力を発揮する人型兵器。これをいち早く開発して戦線に投入したジオン軍は、戦争序盤において、明らかに物量で劣るにも関わらず連邦軍を圧倒。現在も互角の戦いを繰り広げている。

 地球連邦は膠着した戦況を打開する一手として、モビルスーツ開発計画「V作戦」を開始した。技術士官のテム・レイ大尉を中心としたプロジェクト・チームを発足し、鹵獲したザクを徹底的に研究した上で、ザクよりも遥かに高性能なモビルスーツの開発に乗り出したのだ。

 そうして設計されたモビルスーツを実際に製造・テストする拠点として選ばれた場所こそ、このサイド7の1バンチコロニーであった。サイド7は未だ開発中の僻地であることに加えて、ジオン公国から最も遠いサイドである。ジオン公国の諜報の目が届きにくい場所と評価されて、V作戦の開発拠点に選定されたのだった。

 しかし、ここにきて、ホワイトベースがジオン軍に捕捉されてしまった。

 ホワイトベースはV作戦の一環で新造された、モビルスーツを艦載機にすることを前提に設計された強襲揚陸艦である。サイド7には大型艦艇を建造できる設備がなかった為、別拠点の大型ドックで建造された後、乗員の慣熟訓練を兼ねたモビルスーツ移送任務に就いた。そして、試作モビルスーツを回収するべくサイド7に向かう途中で、ジオン軍のムサイ級巡洋艦に遭遇してしまったというわけだ。

 現在、コロニー内で暴れているザクは、間違いなく、そのムサイから送り込まれた部隊だろう。皮肉にも、ホワイトベースの行動こそが、サイド7とV作戦に危機を招いていた。

 V作戦の成果を失うこと、ましてやジオンに奪われることは、何としても避けねばならない。

 パオロ艦長は重ねて命じた。

 

「全兵員はホワイトベースの防衛と、モビルスーツの収容を最優先に行動せよ! 出せる戦闘員はすべて出せ!」

「艦長。私もガンダムの回収に向かいます」

 

 そう言ったのはテムだった。分厚いノーマルスーツを着込み、その後ろには彼の部下である技術者や作業員が並んでいる。

 

「レイ大尉。危険ですよ」

「承知の上です。ガンダムだけは絶対に守らなければなりません」

「……頼みます」

 

 パオロ艦長の言葉に頷き、テムは部下達と共に艦橋から出て行った。

 

 

 * * *

 

 

 二機のザクと守備隊の戦闘は激しさを増して、基地施設のみならず、その周辺にまで大きな被害をもたらしていた。

 守備隊は機関砲やミサイル発射装置を搭載した戦闘車両で応戦するも、次々とザク・マシンガンの餌食となり、返り討ちにされていた。兵士達がまるで紙屑のように吹き飛び、正視に堪えない無残な亡骸を晒していく。人の形を保っていればまだマシという有様だ。

 目標を逸れたミサイルや砲弾が、流れ弾として周囲に着弾し、爆風と炎をまき散らす。人命をたやすく無に帰す暴力が荒れ狂う。その鉄火場をのし歩き、睥睨するザクは、まさに悪夢の具現だった。

 

「全部ぶっ壊してやる! 俺の勲章になるんだな!」

 

 ジーン伍長は叫びながら、乗機のザクに基地施設を無差別に砲撃させた。爆発に次ぐ爆発。建物は吹き飛び、燃え上がり、舗装は穴だらけとなっていく。輸送中だった連邦軍のモビルスーツもかなりの数が吹き飛んでいた。

 もはや偵察どころではない。

 デニム曹長は苦虫を嚙み潰したような表情のまま、致し方なしと、ジーン伍長と共に守備隊との戦闘を続行した。

 

 

 * * *

 

 

 アミナとフラウは、フラウの家族と合流し、指定された退避シェルターの中にいた。

 非常灯のオレンジ色の光に照らされたシェルター内には、この区画だけで、数百人が収まっている。連邦軍から指示された時刻まで待機するだけの退屈な時間になるはずだったが、先ほどから不気味な振動が断続的に起きており、不穏な空気を感じた人々がざわめき始めていた。

 

「アミナ……さっきから、この揺れ、なにかしら」

「……」

 

 フラウは自分より小柄なアミナを守るように抱きしめながら、不安げに尋ねる。

 アミナはそれに答えることができない。おいそれとは口にできないことを推測していたからだ。

 

(この振動……多分、爆発だ)

 

 父親や専門書から学んできた豊富な知識がアミナに告げる。この揺れ方は爆発によるものだと。事故? いいや、こんなに連続して爆発が起こる事故なんて、そうそうあるものか。ましてや、ここは最大で一千万単位の人々が暮らすことを想定したスペースコロニーなのだ。そんな致命的な事故が起こる欠陥なんて、とっくの昔に洗い出されている。

 ならば、想定できることは一つしかない。

 アミナは無意識の内に呟いていた。

 

「……ジオンの攻撃だ」

「ア、アミナ。それ、本当なの?」

 

 フラウがぎょっとして問うてくる。アミナははっと我に返り、しかし否定できず、フラウにだけ聞こえるように囁いた。

 

「揺れ方の特徴が、本で読んだ爆発によるものと似てるの。そんな爆発がこんなに続くなんて、他に考えられない」

「そんな……! ど、どうしたらいいの?」

「この退避シェルターの規格だと、大規模な攻撃には耐えられないと思う」

「じょ、冗談よね…?」

「冗談でこんなこと、言えないよ」

 

 そうやって囁き合っていると、別のところから、誰かの叫び声が聞こえた。

 アミナと同じ結論に至った人がいたのだ。

 

「やっぱり、これはジオンの攻撃だ! ジオンが攻めてきたんだ!」

 

 シェルター内のざわめきが増す。

 アミナはまずい、と思った。下手に混乱が大きくなれば、暴動のようになり、将棋倒しのような事故や殴り合いの喧嘩などが起こるかもしれない。

 しかし、その時、ちょうどいいタイミングで、シェルター内に設置されたスピーカーが行政からの指示を放送した。

 

『こちらは地球連邦政府です。各退避シェルターにいる住民の方々は、直ちにシェルターを出て、ドッキングベイに向かってください。繰り返します。こちらは地球連邦政府です。各退避シェルターにいる住民の方々は、直ちにシェルターを出て、ドッキングベイに向かってください。繰り返します……』

「ドッキングベイだって……? 軍艦に逃げ込めってことか!?」

 

 誰かの言葉に、ざわめきが更に増した。ジオン軍による攻撃が起きているという推測を肯定するような放送だったのだ。ごく自然な反応と言えよう。

 退避シェルターの出入り口である二重隔壁扉を、その近くにいた大人達が数人がかりで開ける。すぐに外を目指す人々の列ができる。アミナとフラウ、フラウの家族もその列に並び、やがてシェルターの外に出ることが出来た。

 シェルターの外はひどく混乱していた。

 退避シェルターは連邦軍の基地施設の近辺に設けられている。管轄は行政府だが、軍が保守管理している施設なのだ。各区域から集まった住民の数は数千名という規模だろう。開発中の僻地のコロニーとはいえ、軍関係者の家族や早期移住枠に応募した人々がすでに住み始めている。コロニーの居住者数としては極めて少ないだろうが、こうして一ヶ所に集まれば秩序だった動きをすることは困難だった。

 駐車したエレカに向かおうにも、人の群れが壁となり、遅々として進めない。

 

「どうしよう、アミナ」

「いっそ歩いた方が早いかもしれな……」

 

 アミナがフラウにそう答えかけた時だった。

 ひゅうん、という、少し間の抜けた印象すらある風切り音が聞こえた。

 

 

 その直後、避難民が密集している一角が爆発した。

 

 

 爆風と炎熱が周囲を舐める。アミナとフラウ達を含めた大勢が思わず蹲り、目を閉じて悲鳴を上げた。

 改めて見れば、地面に大きな穴が開き、その周囲にたくさんの遺体が転がっていた。大半が原型を留めておらず、人体と思えぬほど無残に損壊し、黒々と焼け焦げていた。

 砲弾が流れ弾となって着弾したのだ。

 それを裏付けるように、シェルター区画からほんの数百メートルしか離れていないところに、緑色の巨人がぬうっと姿を現した。

 非現実的な光景は人々に沈黙を強制する。一瞬の静寂がその場を満たす。

 誰かの呟いた声が、やけにはっきりと聞こえた。

 

 

「ジオンの……ザクだ」

 

 

 瞬間、その場は阿鼻叫喚の巷と化した。生き残った数千人、その誰もが恐怖に絶叫しながら、方々へと無秩序に駆け出していく。完全なパニックである。一欠片の余裕すら失くした群衆が、ぶつかり、突き飛ばし合いながら、ただただ戦闘とザクの脅威から逃れようと藻掻いていた。

 

「最っ悪だ……!」

「アミナッ!?」

 

 アミナは苦々しく呻きながら、とっさにフラウの手を掴み、引き寄せ、シェルター施設の外壁に身を寄せる。群衆がパニックを起こした際、それに巻き込まれない為には、こうして建物の壁際に身を寄せることが有効だと聞いた覚えがあったからだ。

 そうしてフラウと抱き合い、群衆事故から身を守っていると、度重なる爆音とともに地面が揺れた。建物越しに周囲を確認すれば、ザクが少しずつ近づいてきていた。ザクと連邦軍の戦闘がこちらに移りつつあるのだ。

 もはや、この場に留まることは自殺行為に等しい。

 

「フラウ! フラウ・ボゥ! ドッキングベイまで走るよ!」

「待って、待ってよアミナ! 母さんとお祖父ちゃんが見当たらないの!」

「えっ……!」

 

 シェルターを出るところまで一緒にいたフラウの家族がいない。周囲を見回すが見つからない。目に入るのは無秩序な群衆ばかりだ。完全に逸れてしまった。アミナの胸に猛烈な焦燥感が湧き上がる。しかし、ここで冷静さを失えば、自分とフラウまで助からない。

 アミナは泣き出しそうなフラウの両肩を掴み、その目を真正面から見据えて告げた。 

 

「フラウ! 辛いだろうけど、今はドッキングベイに向かおう!」

「でも!」

「ここで探したって見つからない! それなら、ドッキングベイで合流できる可能性に賭けるべきだよ!」

「う、うう……っ」

「フラウ・ボゥ!」

 

 風切り音。

 アミナは息を飲み、半ば反射的にフラウを引き倒し、彼女に覆い被さるようにして地面に伏せた。

 爆発。

 すぐ近くで、再び流れ弾が着弾し、またも複数の人間が吹き飛んだ。

 死が、蔓延していく。

 すでに迷う時間などありはしなかった。

 

「フラウ! 走るよ! 走れえっ!!」

「う、あ、ああああああっ!」

 

 アミナはすぐさま立ち上がり、フラウの手を引いて、ドッキングベイに向けて走り出す。フラウは大粒の涙を流しながら、叫び、それでも健気にアミナの後ろについて走った。

 二人の背後、遠いのに遠くとは言えない距離で、ザクがマシンガンを撃ちまくっている。

 爆音、熱風、震動、悲鳴。

 アミナとフラウは、今、確かに、地獄にいた。

 

 

 * * *

 

 

 ホワイトベースを追跡していたムサイ級巡洋艦は、サイド7から距離を置き、ザクからのレーザー通信が辛うじて届く宙域にて、偵察部隊からの報告を受けていた。

 しかし、待ち侘びた報告の内容は、期待したものとは掛け離れていた。

 ムサイの艦橋で、指揮官であるシャア・アズナブル少佐は、通信モニターに映る部下のスレンダー軍曹に確認する。

 

「つまり、ジーン伍長は独断で戦闘を開始したわけか」

『はっ。その通りです!』

「デニム曹長は?」

『ジーンの援護に向かいました。いくらザクとはいえ、単独での戦闘は危険と判断したようです』

「それで、連邦軍はモビルスーツを完成させていたのだな?」

『はい。例の新型艦に輸送中だったらしく、大半が分解状態でしたが、実機を確認しております』

「スレンダー軍曹。おまえは撮れるだけの画像を撮って、連邦軍に捕捉される前に引き上げろ」

『りょ、了解しました!』

 

 レーザー通信を切ってから、シャアは偵察部隊の失態に溜息をついた。

 シャア・アズナブル少佐。弱冠20歳にして佐官の階級を持つ、ジオン公国軍の英雄である。ジオン公国軍の士官学校を次席で卒業後、ザクのパイロットとして、戦争序盤に起きた大規模戦闘「ルウム戦役」に参加。宇宙戦艦5隻を撃沈するという大戦果を上げたことで現在の地位に就いた俊英だ。

 彼のすぐ隣で報告を聞いていた、副官のドレン中尉が問う。

 

「いかがしますか?」

「デニムが新兵を掌握できなかったのは予想外だったな。そして、やはり連邦のモビルスーツは完成していたか」

「少佐の読み通りでしたな。流石の慧眼です」

「おだてるな、ドレン。ともあれ、こうなった以上、私の出番があるかもしれん」

「では、本艦をサイド7に近づけておきますか?」

「そうだな。そうしておこう」

 

 

 * * *

 

 

 戦火にさらされる恐怖の中、誰もが冷静にドッキングベイを目指せるわけではなかった。数千人の避難民は蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い、まるで見当違いの方向へ行ってしまう人々も少なくなかった。

 それでも、逸れた家族とは、ドッキングベイで落ち合える可能性を信じるしかない。

 アミナはフラウの手をしっかりと握り、港湾部へと続く、基地施設の側にある道路を、何百人もの人達と一緒に進んでいた。ほんの数十メートル向こうでは、連邦軍の守備隊とザクの戦闘が続いており、その光景はアミナ達の目にもはっきりと捉えることができた。

 砲声と爆音が途切れない。あまりの重圧に、アミナは何もかも放り出したくなるが、右手に感じるフラウの体温が、彼女の正気と冷静さを辛うじて繋ぎ留めていた。

 

「フラウ、頑張って。あと少しだから」

「うん、頑張る。ねえ、アミナ、会えるよね。母さんやお祖父ちゃん、無事よね?」

「会えるよ! 無事に決まってる!」

 

 そうしてドッキングベイを目指している最中、アミナは道路の傍らにある、基地施設と連結している貨物搬送用リフトの前に、珍しい形式の大型トレーラーが駐車されている様子に気づいた。明らかに軍用車両で、大規模な建設工事などに関わる仕事でもしていない限り、一般人がまず目にすることはないだろう代物である。

 

(……あれ、何を運んでるの?)

 

 大型トレーラーのキャリアー部分には、全長20メートル近い“マシン”が載せられていた。そう、あれは“マシン”だ。白を基調とした塗装が施されており、赤、青、黄色という、明るく目立つトリコロールカラーが各部位を彩っている。

 大きすぎて、一見しただけでは正体が分からなかった。けれど、自分は、あれが何なのか知っている気がする──。

 アミナは一瞬だけ思索に沈みそうになったが、トレーラーの側で作業をしている数人の軍人達を見て、はっとした。

 

「何をしている、早くトレーラーを動かすんだ! リフトに乗せろ!」

「エンジンが掛かりません!」

「なんだと!? くそ、仕方ない、牽引車を探して──」

 

 半ば怒鳴り合いながら、そんなやり取りをしている軍人達。

 そのうちの一人は、あれは──。

 

「──父さん!!」

 

 アミナの父、テムだった。

 必死の呼び掛けに、テムはすぐに気づいてくれた。彼はばっと振り返り、アミナとフラウの姿を認めると、軍人のものでも技術者のものでもない、父親の顔で駆け出して、その無事を確かめるように愛娘を抱き締めた。

 

「アミナ! 良かった、良かった。無事だったんだな……っ」

「父さん、父さん……っ」

 

 アミナもテムを抱き締めて、その胸に顔を埋める。

 けれども、すぐにやるべきことを思い出し、顔を上げて、信頼する父にすがるように言った。

 

「父さん! フラウのお母さん達と逸れちゃったの! どうすればいい!?」

「なんだって……」

 

 テムはアミナの傍らにいたフラウを見る。フラウは泣き腫らした赤い目でテムを見つめ返し、何度も頷いた。

 テムは「むう……」と唸ると、しばし考え、アミナに尋ねた。

 

「アミナ。此処にいるということは、おまえ達はドッキングベイに向かっていたんだな?」

「う、うん。シェルターで政府の放送を聞いたの。ドッキングベイに向かえって」

「それでいい。ドッキングベイの係留場にはホワイトベースが停泊している。ホワイトベースに逃げ込むんだ」

「ホワイトベース?」

「入港している軍艦だ。父さんも乗ってきた船だ。あそこなら安全だ。フラウくんと二人で向かいなさい」

「フラウのお母さん達は……?」

「すまない。今は父さんにもどうすることもできない。だが、ドッキングベイに辿り着けていたなら、ホワイトベースに誘導されているはずだ。ホワイトベースで合流できる可能性がある。今は、とにかく、ホワイトベースに向かうんだ」

「わ、わかった……父さんは、どうするの?」

「父さんには、まだ、やらなくちゃならんことがある」

 

 テムは背後の大型トレーラーを見上げた。つられて、アミナも見上げる。

 トレーラーに搭載されているもの。先ほどは分からなかったが、改めて見たことで、アミナはそれが何なのか気づいた。純白の装甲で鎧われたこのマシンは、そう、明らかに「人のかたち」をしていたからだ。

 つまり、これは──。

 

「父さん、これ……」

「おまえなら分かるだろう、アミナ。父さんはこれを守らなきゃならん。他の誰でもない、アミナ……おまえを、おまえ達を守る為にもだ」

「父さん……」

「行きなさい」

 

 アミナは頷くと、再びフラウの手を取り、二人で走り出した。

 一瞬だけ振り返り、叫ぶ。

 

「父さんも、どうか無事で!」

 

 テムは片手を上げて応えると、牽引車を探しに行くのだろう、トレーラーの運転席にいる部下らしき軍人に何か指示を出してから、アミナ達とは反対の方向へと駆け出した。

 父は、父にできることをしている。

 できることはやるべきだ──アミナがずっと抱いている、信念と呼ぶのは少し大袈裟だろう、個人的な価値観。彼女らしさの源泉とも言える行動原理。

 私も、私にできることをやるんだ!

 だから、走る。フラウと共に生きる為に走る。

 そうして、しばらく走ったところで、フラウの足が急に止まった。

 アミナは驚いて振り返る。

 

「フラウ?」

「アミナ! 母さんとお祖父ちゃんがいるわ!」

「えっ!?」

 

 フラウが驚きと安堵の混ざった表情で指差した先には、別のルートから合流したらしい人々がいて、その中に、確かにフラウの母と祖父の姿があった。

 無事だったのだ。

 

「母さん、お祖父ちゃん!」

 

 フラウがアミナの手を離して、一人、先んじて駆け出す。

 アミナもそれを追って走り出そうとした。

 そこで──風切り音が、鳴った。

 砲弾かミサイルか。どちらであろうとも、それは死を奏でる笛の音に他ならない。

 

 アミナとフラウの目の前で──フラウの母と、祖父と、多くの避難民が、爆撃に飲み込まれて消し飛んだ。

 

 

 * * *

 

 

「……嘘だぁ」

 

 アミナは茫然と立ち尽くしたまま、下手な冗談を聞かされた時のように、頬の引きつらせた泣き笑いじみた表情を浮かべて、現実を拒否する為の言葉を零した。

 こんなテレビドラマみたいな悲劇が現実に起こるわけがない。まるで見計らったみたいなタイミングで、人が吹き飛んで、燃えて、死んで……。それもフラウの家族が。優しくて善良なフラウ。世話焼きのフラウ。そんな子の大切な家族が、よりにもよって、目の前で、消えて、いなくなるなんて。

 そんなの、嘘だ。

 

「……母さん? ……お祖父ちゃん?」

 

 同じように立ち尽くしていたフラウが、ふらふらとした足取りで、目の前に穿たれた爆撃の跡へ近づいていく。爆撃は地面にクレーターのごとき大穴を穿ち、その周囲には何人もの遺体が惨たらしく散乱していた。散乱しているのだ。人の形を保っているものの方が少なかった。衝撃に千切れ、炎に焼かれ、命を失っている。

 フラウの母は、上半身しか残っていなかった。祖父は影も形もなかった。

 

「かあ、さん。母さん。母さ、ん……あ、ああ、あああああ……!」

 

 フラウは、膝から崩れ落ち、物言わぬ母にすがりついて、慟哭した。

 魂を、心を、残酷に引き裂かれた者の嘆きだった。

 その声に、涙に、悲しみに、アミナは奥歯を噛み締める。

 アミナはフラウの側へ歩み寄り、その小さく丸まった背中を見下ろして、言った。

 

「フラウ。逃げて」

「あ、ああ、母さん、お祖父ちゃん……やだ、やだぁ……!」

「フラウ。逃げるんだ」

「あ、ああ、いやぁ……!」

「フラウッッ!!」

 

 アミナは叫び、フラウの襟元を掴み上げ、その細腕が出したとは思えない力の強さで、フラウを無理やり立ち上がらせた。

 俯いたまま、絶叫するように言う。

 

「逃げなさいっ!! フラウ・ボゥッッ!!」

「……っ!?」

「このまま此処にいたら、君も殺される! 逃げるんだ!!」

 

 アミナは俯いたまま、右手をまっすぐに伸ばし、ドッキングベイの方向を指した。

 ぽたぽたと、涙を零しながら、声を震えさせて。

 それでも、はっきりと、フラウに言った。

 

「振り向かず、ドッキングベイまで走って。ホワイトベースに逃げて。私もすぐに行く」

「アミ、ナ……?」

 

 アミナはフラウを離すと、彼女の体をあえて突き飛ばして、振り絞るような声で叫んだ。

 

「走れえっ!! フラウ・ボゥッッ!!!」

「───ッ!!」

 

 その叫びに押されて、フラウは弾かれたように走り出した。心が乱れたまま、何も考えられないまま、それでも親友が示してくれた道標に従い、フラウ・ボゥは無我夢中で足を動かした。泣きながら、嘆きながら、けれども懸命に足を動かし続ける。

 アミナはその後ろ姿を見届けると、土埃に薄汚れたトレーナーの袖で涙を拭う。

 さっきまで自分がいた場所を見る。

 視線の先には、大型トレーラーがいまだリフトに移されず、そこに存在していた。

 

 アミナの胸の奥で、一つの感情が燃えている。

 ひどく昏く、おそろしく熱く、どうしようもなく燃え盛っている。

 怒りだ。

 正義の怒りが、燃えていた。

 

 アミナは大型トレーラーに向かって駆け出した。トレーラーの周囲にテムや軍人達の姿はなかった。運転席も無人である。先程の爆撃に恐れをなして逃げ出したのかもしれない。しかし、そんなことは、今はどうでもいい。関係ない。むしろ好都合だ。

 アミナはトレーラーの側面に取り付けられた梯子を使って、キャリアー部分に昇る。そして、そのまま、キャリアーに横たわっている“マシン”の上に攀じ登った。

 

 アミナはこのマシンの正体を知っていた。父のコンピューターから持ち出したデータは、このマシンの仕様書であり、操作マニュアルだったからだ。一ヶ月をかけて熟読した。何もかも覚えている。

 だから、できる。

 大きなブルーシートで覆われた、マシンの“腹部”に立ち、その全体像を見下ろす。

 アミナが父のデータで見た通りの姿形をしていた。白を基調としながら、胴体を赤、青、黄色のトリコロールカラーで彩られており、頭部に特徴的なV字アンテナとツインアイを備えている。

 人のかたちを模した機体。この戦争の趨勢を左右している人型機動兵器。

 すなわち───モビルスーツ。

 

 

 RXー78「ガンダム」。

 

 

 アミナの父、テム・レイが心血を注いで作り上げた、地球連邦軍の秘密兵器である。

 そのコクピットが腹部にあることを、当然、アミナは知っていた。ブルーシートを引き剥がし、放り捨て、確認する。

 コクピットのハッチは、開いていた。

 中を覗き込む。

 ディスプレイと計器類がはっきりと示している。

 ──アイドリング状態だ。

 

「動かせる……!」

 

 アミナは一切の躊躇いなく、ガンダムのコクピットに乗り込んだ。シートに座り、操作にまるで迷うことなく、コクピットのハッチを閉じて見せる。

 自動的に点灯する照明。

 ガンダムのインターフェースが目の前にある。デイスプレイ。計器類。レバー類。ペダル類。ボタン類。仕様書とマニュアルで読んだ通りだ。大丈夫。分かる。どうすればいいのか、どうやればいいのか、全て分かる!

 

「やってみせる!」

 

 アミナは四点式のシートベルトを素早く締めた。マニュアルを読んで覚えたガンダムの起動手順を淀みなく実行する。小柄なアミナにとって、コクピットの作りはやや大きいが、手足はレバーやペダルにちゃんと届いた。操作に支障はない。いける。

 アミナの操作に従い、コクピットのセットポジションが最適な位置に変更される。ディスプレイが作動して、メインカメラや光学センサーが捉えた外部映像を映し出す。

 最初に映ったのは、ザクの姿だった。スラスターを吹かして跳躍移動している。ザクはガンダムに気づいておらず、そのままカメラの範囲外へと消えていった。

 

「─────!!」

 

 アミナの胸で燃える。怒りが燃える。

 その怒りが叫んでいる。

 ぶつけろと。この怒りをぶつけろ。そして───巨大な敵を、討て!

 

「……立って」

 

 ボタン類を適切に操作。計器類の表示を確認。5倍以上のエネルギーゲイン。武装、頭部に2門の60ミリ三砲身式短バルカン砲、背面部に2本のビームサーベル発振器。ジェネレーターの出力を戦闘可能状態まで上昇させる。

 

「…立って」

 

 全ての事前操作を完璧に終わらせて、操縦レバーを握り、フットペダルに足を置く。

 その瞳に決意を漲らせて、激情に涙を散らす。

 アミナ・レイは、吼えた。

 

 

 

「立てッッ!! ガンダムッッ!!!!」 

 

 

 

 地球連邦軍の試作型汎用モビルスーツ、RXー78「ガンダム」。その足が動き、地面を踏み締める。腕が機体を支えて押し上げていく。まるで本物の生き物のように滑らかな動きで、大型トレーラーのキャリアーから起き上がる。

 やがて伝説となる白い機体が──大地に立つ。

 そのツインアイが、目覚めを誇るように、光り輝いた。

 

 

 * * *

 

 

「───お、おおっ!?」

 

 連邦軍の守備隊を思うまま蹂躙し、ほぼ壊滅状態に追い詰めたジーン伍長は、目の前に現れた予想外の存在に度肝を抜かれていた。

 自機のザクから、数百メートルほど離れた位置に、ザクとは異なるモビルスーツが突如として現れたのだ。

 白を基調として、赤、青、黄色の三色が配された特徴的なカラーリング。単眼のザクとは違い、人間のように二つのカメラアイを備えた機体。それが力強く立ち上がり、明らかにジーン伍長のザクを指向していた。

 間違いなく、連邦軍のモビルスーツだった。

 ジーン伍長はレーザー通信で叫ぶ。

 

「デ、デニム曹長! モビルスーツが、連邦軍のモビルスーツが動いています!」

『なんだと!? 輸送の為に分解されたものばかりではなかったのか!』

「ど、どうすれば!?」

『ジーン、落ち着け! とにかく、今は──』

 

 ジーン伍長がデニム曹長の指示を最後まで聞くことはできなかった。

 連邦軍のモビルスーツ──ガンダムが地面を蹴り、とてつもない加速力でザクへと突撃してきたのだ。

 速い。凄まじい速度だ。明らかにザクをはるかに上回っている。ガンダムはまるでアスリートのような前傾姿勢で疾走し、ジーン伍長のザクに迫ると、そのまま体当たりを見舞うようにザクの胴体に組みついた。

 

「う、うわあああああっ!!?」

 

 ザクの巨体が容易くバランスを崩し、コクピット内が大きく揺さぶられる。体験したことがない未曽有の衝撃に、ジーン伍長は動揺し、混乱し、冷静さを失って眦に涙を浮かべた。

 

「そ、曹長! 助けて下さい、曹長!」

 

 だが、その救援を請う叫びにデニム曹長が応じるよりも早く、ガンダムはなんとジーン伍長のザクをそのまま抱え上げた。ザクの機体は、強靭かつ軽量な先進素材を多用しているといえども、その重量は数十トンにも達する。そんな超重量の機体を、ガンダムは全く揺らぐことなく、軽々と持ち上げて見せていた。

 なんという、とてつもないパワー!

 そして、ガンダムは、信じがたいことに、そうしてザクに密着した状態のまま、ジーン伍長の息の根を止める死神の鎌を振り下ろした。頭部に装備された、2門の60ミリ三砲身式短バルカン砲。ザクの胸部、コクピット部分に頭部を密着させたまま、ガンダムはそのバルカン砲を容赦なく発射した。

 毎分数百発という連射効率が猛威を振るう。ガンダムの頭部バルカン砲から撃ち放たれた60ミリ砲弾は、ザクの強固な装甲すら一瞬にして引き裂き、貫き、コクピットにいたジーン伍長の肉体を跡形もなく粉砕した。砲弾はザクの機体を貫通して、胸部装甲のみならず、背面装甲にも大穴を穿っていた。

 わずか10秒足らずの交戦で、ジーン伍長のザクは沈黙した。

 ガンダムが、まるで不要な荷物を投げ捨てるように、大破したジーン伍長のザクを放り捨てる。ザクはまさしく亡骸のように、轟音を響かせながら仰向けに転がり、二度と動くことはなかった。

 

「ジ、ジーンッ!?」

 

 港湾部でホワイトベースが停泊している係留場を攻撃していたデニム曹長は、レーザー通信を受けてから、すぐさまジーン伍長の救援に移動していたが、間に合うはずもなかった。それほどまでにガンダムの攻撃は速く、強く、一片の慈悲もない暴威であった。

 ガンダムと交戦可能な距離で、ザクにマシンガンを構えさせながら、デニム曹長は滝のような汗を流して呻いた。

 

「あ、あれが、連邦軍のモビルスーツの力なのか……!」

 

 

 * * *

 

 

 やった。成功した。

 ガンダムのコクピットで、わずかに呼吸を乱しながら、アミナはザクを狙い通り撃破できたことに安堵していた。

 モビルスーツのジェネレーター、動力炉はミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉だ。父のテムが、鹵獲したザクのリバース・エンジニアリングを試みていた時期にそう言っていたし、ガンダムのマニュアルにも書かれていたので間違いない。この反応炉は重水素とヘリウム3を燃料とする核融合炉であり、ミノフスキー粒子を応用することで、莫大な発電量を実現しながら、しかし放射線漏出等の危険性は皆無という、夢のようなエネルギー源である。

 仮に外部からの攻撃で破壊されたとしても、原理上、核爆発も生じない。だが、それでも、燃料である重水素に着火した場合、大爆発を起こす可能性があった。下手をすれば、コロニーの外壁に孔を開ける規模の爆発すら考えられた。

 だからこそ、アミナは、バルカン砲による零距離射撃という、およそ常識では考えられない戦い方でザクを倒したのである。コクピットのみをピンポイントで破壊することで、重水素爆発のリスクを避ける。そして何より、射撃が命中しなかった際の二次被害を防ぎたいという気持ちがあった。

 フラウのお母さん達の悲劇を思う。

 流れ弾でも、人は死ぬのだ。

 

「あと、一機……!」

 

 メイン・ディスプレイに、もう一機のザクが映っている。索敵センサーの表示を信じる限り、あれが最後の敵のはずだ。あのザクを倒せば、ひとまず戦いは終わり、危機が去ると考えて間違いない。

 アミナは思う。

 今、私は、自分の意志で一人の人間を殺した。そして、これから、もう一人を殺す。フラウを守るために、父さんを守るために、このコロニーで暮らす他の人々を守るために、あのザクを撃破する。逆に自分が殺されるかもしれないことも承知の上で、戦い、殺し合う。

 戦争をする。

 覚悟は、とっくに決めたはずだ。

 

「やるよ、アミナ・レイ。できることを、やるんだ……!」

 

 アミナはガンダムを操縦する。

 その背面部に装備された2本のビームサーベル発振器。その一つを引き抜かせ、両手で握らせて、下段に構えさせる。

 発振器を作動させた。

 ブォンという空気を灼く音を響かせて、発振器から薄紅色の粒子ビームの刃が形成される。ビームサーベル──カタログスペック通りなら、ザクの超硬スチール装甲すら両断し得る近接兵器である。

 コクピットだけを貫く。

 

(このガンダムなら、できるはず!)

 

 尊敬する父、テム・レイがその英知の全てを懸けて作り上げたのだ。

 アミナはガンダムの性能を信じて、目の前のザクに吶喊した。

 

 

 * * *

 

 

「お、おおおおおっ!?」

 

 デニム曹長は戦慄していた。

 連邦軍の白いモビルスーツが突撃してくる。そのマニピュレーターで、見たこともない白兵戦用兵器……おそらく粒子ビー厶で刃を形成している武器を握り締めて、ザクとは比べ物にならない敏捷性で突っ込んでくる。

 デニム曹長は歴戦の兵士らしからぬ反射行動で、なかばパニックトリガーのようにザク・マシンガンを連射した。120ミリの砲弾が殺意の雨となり、ガンダムを迎え撃つ。

 だが、ガンダムの性能はまさに驚異的だった。ビームサーベルを下段に構え、姿勢をぎりぎりまで低く保ちながら、しかし接敵速度をまるで落とさず、ザク・マシンガンの銃撃を潜り抜けて、ザクをその間合いに捉えていた。

 デニム曹長の目に、ディスプレイを埋め尽くすガンダムの姿が映る。

 

「う、うわあああああっ!」

 

 デニム曹長は後退を試みるが間に合わない。運動性能がまるで違うのだ。バックステップを行うザクに対して、ガンダムは眩い軌跡を残しながらビームサーベルを一閃させる。斜め下から円を描くように振るわれたビールサーベルが、ザクの左腕を肘のあたりから一撃で斬り飛ばした。超硬スチール装甲がまるで飴細工のように溶断されていた。

 ザクが残った右腕でマシンガンを再び構えようとする。

 しかし、ガンダムの挙動は既にそれに先んじていた。斬撃の勢いを利用して、ビームサーベルを腰元に引きつけて、流れるような動きで刺突の準備を整えていたのだ。

 そして、一気に踏み込み、ビームサーベルの切先を鋭く前に突き出した。

 粒子ビームの刃が、ザクの胸部装甲を貫く。

 コクピットをピンポイントで破壊する。

 その早業に、デニム曹長は己の死を自覚することすらできなかった。

 

 

 

 スペースコロニー内での戦闘で、周囲に二次被害をほとんど与えることなく、2機のザクを単独で撃破。

 総戦闘所要時間、43秒。

 アミナ・レイ───15歳の初陣であった。

 

 

 




 ジークアクスがはちゃめちゃに面白くて、ガンダム熱が再燃して、衝動的に書いてしまいました。
 初陣において、殺意5割増しのガンダム。ジーンとデニムは犠牲になったのだ、マニュアルをがっつり読み込んだヒロインの犠牲にな……。
 アミナがちっちゃくてポニーテールなのは作者の趣味です。小柄でアクティブなヒロインっていいよね。なお、アミナは女性化アムロなので、パイロット能力とニュータイプ能力もアムロ並みです。
 10年くらいぶりに書いた小説なので、文章が下手っぴなのは、どうか許して下さい。

 評判が良ければ、のんびり続きを書きたいと思います。
 ドン亀更新になると思いますが、よろしくお願いします。
 ではでは。


※2025/5/14追記※
 匿名投稿の為、活動報告が使えないので、こちらに追記させて頂きます。

 Episode:01の投稿開始から、早くも9日が経ちました。時間の、時間の流れが早い…! 早くも感想や評価を頂き、一時はルーキーランキングで1位にもなり、とても驚かされました。
 感想を下さった皆さん、評価を入れて下さった皆さん、本当にありがとうございます! 執筆のモチベーションがもりもり高まりました! 評価に付けて下さった一言もしっかり読ませて頂いてます。貴重な一手間と心遣いに大感謝です!

 現在、Episode:02を鋭意制作中です。
 仕事などの都合で、小説を本格的に書けるのが基本的に週末だけでして、どうしても更新は遅くなります。速筆の方々が披露しているような週一更新はさすがに無理というのが現実でして、気長に待って頂けると幸いです。
 また、感想に対する返信なども、次話の更新後に行わせて頂きます。どうぞご了承のほど、よろしくお願い申し上げます。

 余談ですが、Episode:01の感想に「テム・レイ大尉、無事でよかったね!(意訳)」というコメントが複数あって、ちょっぴり罪悪感を覚えております。その、ええと、……じ、次回をお楽しみに!(汗)

 それから、ジークアクスの第6話、やばかったですね! まさか令和になってから新作で◯◯◯ガンダムとか聞くとは思わなかった……テンションぶち上がっちゃいましたよ。次回が待ち遠しい!

 それでは、Episode:02に御期待下さい。
 失礼いたします。
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