機動戦士ガンダム0082 ~欺瞞のテネス~ 作:aonagi-custom
ポケットからがさがさと煙草を取り出し、右手のライターでゆっくりと火をつける。吹き出す煙が、自分のすっかり白髪が増えた頭髪を思い出させた。
戦争が終わった後の俺は、まるで生きちゃいなかった。戦闘機での初陣の時、ただ生きて帰る。それだけだったさ。だがな、いつの間にかみんーな死んで、気づいたらMS乗りになってた。んで戦争も終わちっまった。周りの連中は次々に軍を抜けていった。戦果が大層なもんだから、エリートコースはお約束だったが、俺は軍を辞めた。あの時は軍のために、だとか宇宙世紀のために、んな志なんかはなかった。ただただ、好きに殺しをして、それに疲れてた。しばらくして、サイド6に移り住んだ俺は、女と籍を入れて、農園なんぞをやって2年がたった。幸せってのがなんなのかは、今も、分からないままだ――――
宇宙世紀0082。サイド3がジオン公国と名乗り連邦軍に対して独立戦争が起き、連邦軍が勝利を収めてから、2年の月日が流れていた。
連邦軍でそこそこの士官をやっているカール・リヴァ大尉は、横にオア・ケイル少将を乗せ、やたら道が悪いサイド6の農道をエージェント仕様のjeepで走っていた。
「本当にこんな所にいるのだろうな、カール君。見たところ我々の前に広がるのはトウモロコシ畑だが。」
「はっ。連邦人事局によりますとテネス・A・ユング元少佐は退役後、確かにサイド6のこの住所に移りすんでいる、との事でした。」
「君は相変わらずお堅いな。いや、堅すぎる。君の意見が聞きたい。私は。あのアムロ越えの人殺しをやったパイロットがこんな辺鄙な場所に移り住むとは思えんのだよ。」
「・・・・・少将殿、到着致しました。」
「はぁ・・・・すまん。助かったよ。」
中年太りでぶくぶくと太った体を重そうに動かしてjeepからオアは降りた。同時に颯爽とjeepから降りたカールを、どこかの誰かさんが羨ましがるように見ていた気がする。同時に多くの兵士が警備にあたるため、ずらずらと車両から降り、我々の様々な方向に防御につく。
大層なものだと感じつつも、一件の赤い屋根の一軒家へ足取りを進めていった。だが意外にも、人事局が指すこの住所は空き家だった。オアがまた人事の奴らがしくじったか・・・と落第していたが、気分が落ちているのはオア少将だけではなかった。カールもだ。なにせ畑が多くあるこの周辺では、住宅も多く入り交じっている。その中から一人の人物を見つけ出すのは至難の業だ。これは骨が折れそうだとカールが思っていると、家の前の畑で深く帽子を被っていた黄昏れている男がいた。ダメ元で声をかけ、カールは写真を見せた。
「この人物を探しているのですが・・・・」と声をかけてみると、予想外のことが起きた。どこかこの男にテネスの面影を感じるのだ。オア少将は私の顔を見て、相手の男の顔をじっと訝かしんでいた。それもそうだ。写真よりも痩せこけ、白髪が多くなりすぎていたからだ。
そこでふとカールが聞いた、「テネスAユング少佐・・・殿ですか?」
緊張の瞬間だった。だが男はすんなりと答えた。
「あぁ、そうだよ。テネスAユング、`元`少佐だが。」
私が驚く暇も無く、オア少将が先に口を開いた。
「君がそれを裏付ける証拠は何かあるかね?」
「階級章なら確か納屋に放り込んだはずだが、、、、」
「ともかく・・・・何の用なんだ?見たところお二人さん、どちらも連邦のお偉いさんと見えるが」
オアが大きく咳払いをしたのち、本題を話し始めた。
「まぁいい。本題に入らせてもらおう。連邦軍が大きく軍縮をし始めたのは知っているな?」
「あぁ」
「これを良い事に、ジオンの残党どもが宇宙と地上で動き始めている。」
「だろうな、ジオンの残党どもがそれを見逃す筈がねぇな」
「地上の方は既に駆逐部隊が出ている。しかしながら、宇宙には依然として主力としての部隊はない。人手不足も相まって、物資の強奪や略奪を繰り返している。新兵も多くてな、訓練の足りていない若者達が次々と死んでいる。」
テネスが煙草に火をつける。
心なしか、カールに睨まれた気がしたが、煙を吐き出す。
「そこで連邦の上層部は一年戦争でのエースパイロットを1年間のみ召集し直し、残党狩りを行う、特殊部隊を編成することとなった」
「・・・・・それで俺がか?」
「そういう事になる。どうだ?契約するのならば、お前の望む事はできる限りしてやろう。」
「生きて帰れる保証が、俺でもそうは無い訳だ。じゃなきゃそんな事は言わないはずだ、そうなんだろ?」
オアが目をテネスから背ける。
「どうするのかね。」
テネスがもう一本の煙草を取り出し、ゆっくりと吸い終わると、彼は煙草を吸うようにゆっくりと答えた。
「条件がある。階級は軍に在籍していた時のまま、それと喫煙スペースがある艦(ふね)にしてくれ。」
オア少将があきれたように首を振り、上層部にテネスが契約を交わしたことを電話で伝える。
テネスがふっと鼻笑いした。
オアが3日後にここに来いと記されたメモを受け取り、空き家の玄関の階段から重い腰を上げて立ち、女の待つ所に向かう。そこに入ると、いつものように女は俺に、おかえり、と言う。
俺は言う。「あと3日したら、しばらく帰ってこれねぇ。」
「・・・・・軍の仕事なんでしょう?見てたわよ。ずいぶんと偉そうな太った男が来てたじゃない。・・・・仕事はなんなの」
「ジオンの残党どもを狩る、それを一年間だ」
「狩るって・・・殺すってことなの・・・?」
「あぁ」
「ちょっと待ってよ!あなた、私と結婚するとき、もう殺しはしないって私に誓ったじゃない!それは嘘だったの!」
「しょうがねぇだろ。俺が行かなきゃ皆が死ぬ」
「いつもしょうがない、しょうがないって、皆が死ぬ!?あなた1つもそんな風に思っていないんでしょ!また殺しがしたいだけなんじゃないの!!!」
「あぁそうだよ、したいだけさ、その通りさ、俺には戦争しかねぇんだ」
「・・・なんなのよあなた、、、、最低ね。この人殺し。」
それから3日間、俺と女が喋ることはなかった。
サイド6の連邦軍の駐留基地へ向かう。案内され宇宙港のスーギルスとかいう艦のMSデッキに到着した。
そこにはオア少将が多くの警備に囲まれながら、MSを見ていた。
「来たか、テネス・A・ユング少佐。」
「もちろんだ、で、俺の機体はどれだ?」
「もちろん、君と言えばこれだろう。」
手が指す方向を見ると、ヘッドのバイザーにはシャークマウスのノーズアート。17のマーキングに、ハンマーヘッドシャークのエンブレムが貼ってある機体を見ると、、
「俺のジムスナイパーカスタム・・・・!」
俺は間違いなく、この2年間の中でどんな時よりも、一番の興奮をしている。やはり俺が居るべき場所はここだ、ここしかない、そんな思いが頭の中で蠢いていると、オアが口を開く。
「正確には、ジムスナイパーカスタム改だな。君用に様々なチューニングに部品が組み込まれている。あまり、口には出せないが、RX78-2の後継機の試作機の部品が肩や足に交換されている。最新のマグネットコーティングに、新型の高出力スラスター、そして、、、、」
「そして、、なんだい?」
「君のお望み通り、この新型の艦内の中にわざわざ喫煙スペースを増設した!、更 に だ!技術部に無茶を言ってコックピット内でも喫煙が出来るようにした。」
「最高の仕様じゃねぇかよ。ありがとよ。少将殿。」
「ふっ!!!!全く、私が上に打診し、圧をかけたと思っているんだ!!!!必ず戦果を上げろ、いいな!!!!少佐!!!!」
「了解だよ少将殿。」
大きく鼻で笑いながら、大股で歩いて行くオアをテネスは見ていた。
初投稿となります。楽しんでいただけたでしょうか。つたない文章で、読みにくい所が多々あると思いますが、こよろしくよろしくお願い致します。なお、不定期更新となります。