ホロウを駆ける電光   作:ケルさん

13 / 22
久しぶりに4000文字超えた


第12話 列車強奪作戦

 

 

「ほれ、アンビーちゃんや、これで委任状は全部だよ」

 

アンビー「ありがとう」

 

「いやいや、お礼を言うのはこっちの方さ。あなたたちがいなかったら、あたしら全員どつなってたことやら。それにしても……助けを呼びに行ってくれたお嬢ちゃんだけど、なかなか戻って来ないねぇ」

 

ニコ「確かに妙だわ……また想定外のことに巻き込まれたんじゃないでしょうね……」

 

リン「確かに想定外のことはあったけど、策を思いついたよ!」

 

ニコ「この声は……プロキシ!」

 

 

ニコが声がした方を振り返ると、プロキシ、猫又、ハルの3人が来ていた。

 

 

猫又「みんな、お待たせ!」

 

ハル「待たせたな」

 

ビリー「ハルも来てくれたのか!」

 

ハル「バイトから帰ったら、すぐに駆り出されたぞ」

 

アンビー「それは……お疲れ様」

 

 

ニコはリンと猫又から事の経緯を聞く。

 

 

ニコ「なるほど。列車を止めて爆破自体をやめさせようとしたけど、車両はヴィジョンの武装した増援で一杯だった……どうやらヴィジョンは住民たちの抵抗をよっぽど恐れてるみたいね。でも、プロキシの言ってたプランはいいと思うわ!流石、知恵と勇気のパエトーンね!」

ニコ「おばあさん、さっきの救助プランは聞いててくれたわよね?住民のみんなを、一番近い駅に集めてくれる?」

 

「安心しなさい、足手まといにはならないよ。すぐみんなに知らせてこよう」

 

ニコ「えぇ、お願いね。あ……そうそう、この近くのホロウに赤牙組の古い拠点があるって聞いたんだけど、何か知らない?」

 

ハル「あ?何で今それを聞くんだ?」

 

ニコ「だって猫又の依頼料……じゃなくて、家族の形見がまだ見つかってないのよ。ここの住民なら、何か知ってると思って」

 

「そのあたりのことなら、知ってるよ。というより……ここに住んでる人で、赤牙組のことを知らない人はいないだろうね」

 

ニコ「えっ、どういうこと?」

 

「赤牙組はこの場所で生まれたんだよ。ここに住む人々は、何かしら彼らと関わりを持ってるのさ。もっとも、赤牙組も昔はずいぶん違ったんだよ。当時は孤児たちを引き取って、戦い方の他に読み書きも教えていたんだ。弱きを助けるために立ち上がったのも、一度や二度じゃない。ずっとこの場所を……故郷を守ると言ってたのに、あのシルバーヘッドって若造、数年経ってめっきり人が変わってね。貧民街を見下すようになってからは、組員を率いて、人様に言えないようなことにも手を出し始めた」

 

ハル「……金庫の件がそういうのに当たんのかな」

 

ビリー「どうだろうなぁ……」

 

「そんな様子を見てられなくなって、組を抜け、ここを出ていった者も少なくない。しばらく経って、赤牙組自体もここを離れたのさ。あたしらは今の赤牙組と関わりはないし、関わりたくもない。シルバーヘッドが治安局に追われてホロウに落ちたのだって、自業自得としか思えないね……」

 

猫又「えっ……今、なんて……?」

 

 

シルバーヘッドの話を聞いて、急に猫又が声を上げた。

 

 

「どうしたんだい、お嬢ちゃん?たしかに赤牙組とは関わりたくないと言ったけど、気に障ってしまったかい?」

 

猫又「そこじゃなくて……シルバーヘッドは、治安局に追われてホロウに落ちたの?邪兎屋に……やられたんじゃなくて……?」

 

ニコ「ぎくっ……そ、それは……」

 

ハル「………おい、お前ら、まさか」

 

ビリー「子猫ちゃん……いや、依頼人さん、わかってくれ!誤解を解こうとしたんだが、そのキラキラした目で見つめられると、何も言えなくなっちまって……悪い!確かに、俺たちはたまたま現場に居合わせた……けどあいつをやったのは……治安局なんだ……」

 

猫又「そんな……あんたたちじゃ……なかったの……?」

 

アンビー「猫又、気を落とさないで。たとえ治安局の介入がなかったとしても、邪兎屋なら、シルバーヘッドに手こずることはなかったわ」

 

ハル「それ慰めになるのか……?」

 

ニコ「コホン……今回の件は、確かに猫又が勝手に誤解しただけとはいえ……あたしたちにもほんの少し責任があるわ。形見探しの依頼料は、ちょっぴりオマケしてあげる!と、とにかく、この話は終わりよ!今は一刻も早く列車を奪って、住民たちをここから連れ出さなきゃ!」

 

ハル「これ少しどころかだいぶ責任あるんじゃねえの?」

 

ニコ「ぐっ……さ、さあ、出発するわよ!」

 

 

そう言ってニコは足早に行ってしまい、プロキシたちもそれについて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして、一行はヴィジョンの監視拠点の近くまで来た。

 

 

ニコ「作戦目標は至ってシンプルよ──守衛を倒す、列車を奪う、そのままずらかる。以上!」

 

ビリー「了解!」

 

アンビー「ドンドドドンドン、ドンドドドンドン、ドンドドドンドン……」

 

猫又「お?アンビーは何してるんだ?」

 

ビリー「多分、BGMで盛り上げようとしてるんじゃねえか?十中八九、映画の影響だな」

 

ニコ「大丈夫よアンビー。そんなのなくたって、この作戦の重大さはみんな分かってるはずだわ」

 

ハル「ヴィジョン……ヴィジョン殺すべし…!」

 

猫又「あのちょっと、こっちの人なんか違うの乗り移ってないか?」

 

ビリー「まるで家族を殺された相手を探し求めて、敵組織丸々潰しそうな雰囲気だぁ……」

 

ニコ「叩けば治るでしょ。プロキシ、運転はあんたに任せたからね。そっちの準備はどう?」

 

リン「腕が鳴るね〜!任せといて!」

 

アキラ「相変わらず、やる気は充分だね。作戦の成功が最優先なんだ、あまり興奮しすぎないように」

 

ニコ「それじゃあ行きましょ!あっと言わせてやるわよ!」

 

 

一行は作戦を開始、ヴィジョンの兵士の制圧にかかった。

 

 

アンビー「放電!」

 

ビリー「でりゃりゃりゃ!」

 

猫又「これでも食らえ!」

 

ハル「ぶった斬る!」

 

ニコ「じゃあね!」

 

 

アンビーが電気を纏ったナタで斬り伏せ、ビリーが二丁拳銃で乱れ打ち、猫又は爪と双剣で切り刻み、ハルはブレードと格闘で叩きのめし、ニコはエーテル弾で兵士を吹っ飛ばす。

 

そして数分後、ヴィジョン監視拠点の列車の前。

 

 

パールマン「グハァ!?」

 

猫又「だるまのオッサン!命を何とも思わない大悪党め、大人しく降参しろ!」

 

 

パールマンを取り押さえる猫又。

 

 

ニコ「猫又、こいつも連れてって!アンビーとビリーが運転室に向かってる。プロキシ、ホームで乗車を待つよう住民たちに知らせて!」

 

パールマン「お、お前たち……あのスラムの連中を列車で連れ出すつもりか?させん!させんぞ!連中が外に出て何か言おうものなら、私とヴィジョンは終わりだ!」

パールマン「誰でも構わん!どんな手を使ってでも、こいつらを阻止しろ!」

 

 

パールマンがそう言った直後、Fairyから連絡が入った。

 

 

Fairy『警告!予定ルート上路線の予期せぬ破断。小規模な爆発による線路の損壊を検出。計画は失敗です』

 

リン「そんな!?ニコ、まずいよ!線路を壊された!」

 

ニコ「何ですって!?」

 

「パ、パールマン長官、ご安心を!新エリー都へ続く唯一の線路を爆破しました。これで奴らはもう出られません」

 

猫又「なんだって!?」

 

パールマン「お、おおお前、このバカタレが!線路を爆破するのは、我々が撤退した後だ!スラムの連中だけでなく、我々まで閉じ込められてしまったではないか!?」

 

アンビー「ニコ、四方から敵の増援が来てる!どうする?」

 

ニコ「ああもう……だるまのオッサンを連れて、列車の中に隠れるわよ!」

 

ハル「その前に……!」

 

 

ハルは爆破スイッチを押した兵士の方へ駆ける。

そして──

 

 

ハル「こんの……クソ野郎があああああ!!」

 

「ごべあぁぁ!?」

 

 

その兵士の顔面をサッカーボールの如く、本気で蹴り飛ばした。

兵士の頭装備はゴシャア!と音を立て、空き缶のように潰れて吹っ飛び、兵士自身も蹴られたボールのように跳ねて転がっていった。

その様子を見て、パールマンだけでなくプロキシや邪兎屋、遠くから見ていた増援の兵士も思わず息を呑んだ。

 

 

リン・ビリ・猫又『ヒェ………』

 

ハル「フシュウウウウ……!」

 

ニコ「ほ、ほら隠れるわよ!」

 

 

その隙に一行は、パールマンを連れて列車の中に隠れた。

 

 

『パールマン長官。列車付近で身元不明の侵入者による襲撃を受けました。負傷者も出ておりますが、人数や物資の面では我々が優勢と思われます。侵入者は今、列車の運転室に立てこもってます。火力を頼んで突入いたしますか?ご指示願います!』

 

「と、突入はするな!私は今その運転室だ!邪兎屋の侵……くっ、紳士淑女に捕まっている!よく聞け、絶対に動くんじゃないぞ!この私が少しでも怪我を負ったら、会社はお前たちの責任を問う!」

 

 

ビリー「あのオッサン、意外と役に立つな〜」

 

アンビー「しばらくは攻撃してこないはずよ。でも、私たちの計画も失敗に終わった」

 

ビリー「そうだよな……線路が無くなっちまったんだ。列車があったところで、住民たちを運び出すことはできねえ」

 

ハル「キャリアーでも、全員を乗せるなんて無理だし……もういっそ目の前のヴィジョンの奴ら根絶やしにするか?」

 

ビリー「やめよ?気持ちはわかるけど、流石にやめよ?さっきの兵士を見たら居た堪れないぜ……」

 

猫又「……へへっ」

 

ハル「あん?猫又、どうした?」

 

猫又「ううん、あんたのこと笑ったわけじゃなくて。これ、さっきの戦闘でたまたま見つけたんだ。──あたしの家族の、形見」

 

 

猫又が見せたペンダントには、写真が入っており、写っているのは猫又とシルバーヘッドだった。

 

 

ニコ「写真?写ってるのって、あんたと……赤牙組のシルバーヘッド?」

 

猫又「実は、あんたたちを騙してたんだ。赤牙組に形見を奪われたってのも、嘘。私は、昔カンバス通りの近くに住んでて、組に引き取られた孤児のひとりなの。昔の赤牙組には理想があった。みんなで故郷を守ろうって、お互いに誓い合ったんだ。だけど、あんたたちが聞いた通り、組は日に日に酷くなっていって……あたしも組を抜けて、ここへは戻らなかった。でも、どんなに組に失望しても……それでもシルバーヘッドが引き取ってくれたことは事実だし、あそこはあたしにとって、一番『家』に近い場所だったんだ」

猫又「シルバーヘッドがホロウに誘き寄せられて死んだと聞いて、あたしは復讐のために、あんたたちを同じようにデッドエンドホロウに連れてった。だけどあんたたちは、あたしが想像してたのと随分違って……子供を助けるためにホロウを駆け回ってくれたり、ヴィジョンの陰謀を知った後も、躊躇わず残ることを選んでくれた」

猫又「結局、シルバーヘッドが死んだのもあんたたちのせいじゃなかったし……あたしにはもう、あんたたちに復讐する理由がない。赤牙組は誓いを破って、守るべき人たちを見捨てちゃった……かつて一員だった者として、組が同じ過ちを繰り返すことを、黙って見てるわけにはいかないんだ」

 

 

猫又はパールマンの首根っこを掴むと、列車の扉へと向かう。

 

 

ニコ「ちょっと、何する気?」

 

猫又「あたしがヴィジョンと交渉してくる。安心して。パールマンって切り札もあるし、あたしの出身が赤牙組だって知ったら、きっと交渉に応じてくれる」

 

ビリー「依頼人さん!おい、猫又!戻ってこい!」

 

 

パールマンを連れて、猫又は列車から出ていってしまった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。