ホロウを駆ける電光   作:ケルさん

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※最後のビデオ屋でのことが文字数が中途半端だったので、5/28に書き足しました。これにより1章は完結といたします。


第15話 一件落着

 

 

ハルたちがデッドエンドブッチャーと戦っているその一方で、猫又はヴィジョン爆破解体本部にて交渉を持ちかけていた。

交渉には秘書であるサラ長官が対応した。

 

猫又は爆破を中止し、閉じ込められた住民の救出を約束すること、そうすればパールマンを返すことを約束する。

さらに猫又は自分が赤牙組の元組員であることを告げ、自身を住民を人質にして工事を妨害した張本人としてヴィジョンに捕られられるという、自身を取引の材料として出す作戦に出る。

 

しかし次の瞬間、サラはパールマンの額に麻酔弾を撃った。

 

ハルの予想通り、ヴィジョンはパールマンを取引の材料として見ていなかったのだ。

 

 

猫又「そうか……パールマンはただの操り人形……陰で糸を引いて爆破解体を企てたのは、あんただったんだ!どうして……ヴィジョンにとってこのプロジェクトは、人の命より大事なものだったの!?」

 

サラ「大事かどうか?あなたみたいな小物に尋ねる資格はないわ。無駄話をしすぎたわね。そろそろ本題に入りましょう」

 

 

するとサラは何かのスイッチを取り出した。

 

 

猫又「それはなんだ!?」

 

サラ「この小さなおもちゃ?もちろん、爆薬の起爆スイッチに決まってるじゃない」

 

猫又「そんな、待っ──!だめだ!!」

 

サラ「私からも……存在しない住民たちに、お悔やみを申し上げるわ…」

 

 

サラが爆薬の起爆スイッチを押そうとした、その時──

 

 

『キュイーーー!』

 

 

猫又「え?」

 

サラ「何……きゃっ!?」

 

 

どこからか何かが飛来して、サラの手からスイッチを弾き飛ばした。

弾き飛ばされたスイッチは、パキンと音を立て真っ二つに切り裂かれた。

 

 

サラ「い、一体何が……!痛たたた!?」

 

 

突然脚に激痛が走り、見ると青いクワガタがサラの脚をハサミで挟んで締め上げていた。

 

 

「うわっ、ちょ、なんだなんだ!?」

 

「いでででで!?何か飛ばしてきた!?」

 

「グワーッ!?小型なのにこのパワー!?」

 

「あ、頭が割れるぅぅぅ……!」

 

 

他にも兵士たちに向かって、銀色のライオンが鬣からガトリングのように弾を飛ばし、灰色のゴリラが兵士を殴りつけ、紫色の蝙蝠が超音波で撹乱し、他にも色んな小型の動物たちが兵士を攻撃していた。

 

 

猫又「な、何あれ……」

 

 

目の前で起こっている光景に、猫又が呆然としていると足元に赤色のウサギと橙色のタカが現れる。

 

 

猫又「あんたがスイッチを……?」

 

『キュイ!』

 

 

猫又の問いにウサギは跳ねて、タカは鳴いて答える。

 

 

「いでで……お、おい!ホロウに繋がるトンネルから、誰か出てくるぞ!」

 

 

兵士がそう言うと、そこからは──

 

 

 

「ヴィジョンは命を軽んじたわ!ヴィジョンを倒すのよ!」

 

「ヴィジョンの手は血まみれだ!その体の隅々まで、罪なき一般市民の血に濡れているんだ!」

 

「いつまでも私たちの口を封じられると思うな!」

 

 

爆破エリアに閉じ込められていた住民たちが、ヴィジョンへの怒りの抗議と共に出てきたのだ。

 

 

猫又「ニコ!それにみんな!」

 

ニコ「ちょっと何よ?この状況?」

 

猫又「さ、さあ……あたしにも分かんないぞ」

 

ハル「お、上手くいったみたいだな。俺の保険(・・)

 

猫又「保険?」

 

ハル「カプセルボット。動物を模したサポートガジェットだ。お前が行った後、列車から出てすぐに後を追わせたのさ」

 

サラ「くっ……!ホロウレイダーのくせにやるじゃない……!でも、それで全てが公になるなんて思ってないわよね?忘れないで……ここにはうちの人間しかいないの」

 

ハル「おーおー、小型のロボットに一方的に蹂躙されてる雑魚揃えてよう言うわ」

 

サラ「うるさいわね!でも、それまでよ」

 

 

サラが手を上げると、兵士たちはカプセルボットたちを振り払って銃を構える。

 

 

サラ「命令よ。撃ちなさい」

 

「そ、そんな!?」

 

「あの女、本気だぞ!?」

 

 

すると機械頭の兵士が、バチバチとスパークするとガクンと動かなくなる。

 

 

「え、な、なんだ!?」

 

「おい!しっかりしろ!」

 

サラ「な、一体何よ!」

 

「わ、わかりません!何人かが行動不能に……」

 

ハル「ふっふーん♪」

 

猫又「ん?……あっ」

 

 

猫又がハルの足元を見ると、さっきの赤いウサギがバチバチと電気を纏って立っていた。

 

 

アンビー「EMP……それも強力な」

 

ハル「あったり〜」

 

リン「色んなことができるんだね。この子たち」

 

サラ「ぐっ……この…!」

 

 

さらに、どこからかパトカーのサイレンの音がけたたましく響いてくる。

 

 

「速報!速報です!あのヴィジョンに、重大な人命軽視が発覚しました!情報を受け、本局の記者は治安局の部隊の後に続いて、デッドエンドホロウ入口付近の爆破解体本部に駆けつけました。現在、治安部隊は現場を封鎖しており、治安官を装った不審者を多数確保したとのことです!」

 

『サラ長官、サラ長官!治安局に囲まれました!』

 

『いえ、治安局だけではありません。白祇重工もいます!彼らはメディアを多数連れています……これ以上は制御できません!』

 

 

ニコ「ふふん、ヴィジョンが大人しく交渉に応じるわけないと思って、ホロウを出て真っ先に白祇重工に連絡したのよ。さっすが競合他社、行動が早いわね〜……ってハル、なに隠れてんのよ?」

 

ハル「いやだって、社長にここにいるのバレたら面倒なことになるし……」

 

リン「白祇重工でもバイトしてたんだ……」

 

 

白祇重工の職員たちから見つからないように、ニコたちの陰に隠れるハルだった。

 

 

『サラ長官、我々はどうしましょう……?サ、サラ長官?いないぞ!?』

 

 

ヴィジョンの兵士たちは治安部隊に捕えられ、住民たちも無事に保護された。

 

猫又はその様子を見て、立ち去ろうとしたその時──

 

 

『キュイ!』

 

猫又「うわぁ!」

 

 

タカ型のカプセルボット、ホークボットが目の前に飛んでくる。そしてアンビーも一緒だった。

 

 

猫又「あ、あんたも……何してるの?」

 

アンビー「一人でこそこそしてたから。これから治安局が事情ちをするって、拡声器で言ってたでしょう?」

 

猫又「それは……解決したのはあんたたちだし、あたしなんか、いなくても大して変わんないでしょ……」

 

アンビー「いいえ、あなたはヴィジョンを罪に問うための大事な証人よ。何より、邪兎屋にとって……」

 

猫又「罠にかけようとした犯人……でしょ…?」

 

アンビー「あなたはまだ、自分の分を払ってない」

 

猫又「え?じ、自分の分って、何のこと……?」

 

アンビー「食事代よ。前に言ったでしょう?今回の依頼が終わったら、みんなでご飯に行くって。スターライトナイトのレストランが嫌だって言ったから、ビリーの奢りじゃないけど……ニコは、折角だからいいものを食べたいって言ったの。だから割り勘」

 

猫又「待って!大事な顧客だから盛大に奢るって言ってたのに、何であたしまで払わなきゃいけないの!?それに、あたしはそもそも一緒に行くなんて一言も……!」

 

アンビー「そう。なら正式に聞くわ。猫又、私たちとご飯に行く?」

 

ビリー「店長たち、プロキシ兄妹も来るぜ!しかも、食べ放題だぞ!」

 

ニコ「ええ、サバを好きなだけ食べられるわよ!」

 

ハル「お前ら払えるほど持ってんの?」

 

猫又「あたし……その…えっと……」

 

『キュイー……』

 

『ガウ!ガウガウ!』

 

『ホッ!ウホッホッ!』

 

 

プロキシとハル、邪兎屋の面々だけでなく、カプセルボットたちも猫又の足元で顔を見上げる。

 

 

猫又「っ……ほんとに好きなだけサバを食べていいなら……考えてやっても…いいぞ!」

 

 

涙を浮かべながら、猫又は笑顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、Random Play店内……

 

 

ニコ「…とにかく、猫又と赤牙組の間柄のおかげで、もう赤牙組がちょっかいを出してくることはないわ。それと、あんたたちに頼まれた調査に進展があるの。組員から聞いた話だと、彼らは金庫争奪の件に関わったとはいえ、その出所については誰も知らないそうよ」

ニコ「シルバーヘッドは、研究所で金庫を手に入れる依頼を謎の依頼人から受けただけらしいの。でも、それ以外は組員たちにも詳しく話していないみたい。奪った後にどう処理して、誰に受け渡すつもりだったかも、みんな知らないって」

 

アキラ「待ってくれ。僕の聞き間違いかな?『出所については誰も知らない』『謎の依頼人』『みんな分からない』……」

 

リン「これが進展?赤牙組は、金庫のことをなにも知らなかった。以上……ってこと?」

 

ハル「あれ、これ全く進んでなくね?それどころか余計にこんがらがってね?」

 

ニコ「そもそもあの金庫は手がかりが無さすぎて、調査が難航してるの!それに、せっかく助かった住民たちのために、慰謝料を勝ち取ってあげたい気持ちもあるし……あの人たちを救ったのは、他でもないあたしたちでしょ?」

 

アキラ「……ニコ、道徳を盾にすることを覚えたんだね。ご高説痛み入るよ」

 

ハル「そういや、猫又はどうした?」

 

リン「たしかに。あの日以来、見かけてないね」

 

ニコ「あぁ、あの子?そろそろ来るんじゃない?」

 

 

すると工房の扉を開けて、猫又が入ってくる。

 

 

猫又「にゃにゃ〜ん──子猫ちゃん、参上だにゃ!みんなの集合写真をプリントしてきたんだ〜!ん〜、よく撮れてる!はいど〜ぞ!こっちがアキラの分で、こっちがリンちゃんの、そんでこっちがハルの分だぞ!」

 

 

そう言って、猫又は3人に写真を渡す。

 

 

リン「ありがとう猫又!たしかによく撮れてるね〜」

 

ハル「あの時の会計見た時のお前らの顔ときたら……」

 

アキラ「結局、あの時はハルに払ってもらってしまったね……」

 

ニコ「うぐ……」

 

 

そう言って苦笑いするアキラに、気まずそうに苦い顔をするニコ。

 

 

ニコ「コ、コホン!改めて紹介するわ。邪兎屋の新しい従業員──」

 

猫又「猫宮又奈、猫又って呼んでいいぞ!今は邪兎屋で働いてるんだ。三人とも、これからもよろしくだにゃ〜!」

 

リン「よろしくね、猫又!」

 

アキラ「こちらこそ、よろしく頼むよ」

 

ハル「よろしく、猫又」

 

 

こうして、邪兎屋に新しい従業員として猫又が増えたのだった。

 

 

 




カプセルボット:ブリッツのサポートガジェット。ガチャガチャのカプセルのようなものにウサギやタカ、ライオンやゴリラなど動物型の小型ロボットが球体などの待機モードで入っている。カプセルの真ん中のスイッチを押してから投げると、カプセルが開いて起動モードで出てくる。投げたカプセルやボットはいちいち回収しないといけないのがたまにキズ。モチーフはハリケンジャーのカラクリボールや爆丸。
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