ホロウを駆ける電光   作:ケルさん

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2章 ホロウの中心で…を叫んだ?
第18話 白祇重工の依頼


 

 

 

ある日のビデオ屋。リンとハルはアキラに呼び出された。

 

 

アキラ「2人とも、急にすまないね。実は今日、2人に話したいことが2つあるんだ」

 

リン「話したいこと?」

 

アキラ「まず1つ目。うちの今月の収支について……」

 

リン・ハル『ゔっ……』

 

 

アキラが収支について話そうとすると、急にリンとハルが呻き声を上げる。

 

 

リン「ち、違うの、お兄ちゃん!確かにカプセルトイをいっぱい回したけど、あれは……」

 

ハル「お、俺も色々コアバッテリーやらガジェットやら作ってたけど……」

 

アキラ「何のことだい?こっちは真面目な話をしているんだ。まずは聞いてもらっていいかな」

 

リン・ハル『アッハイ』

 

 

完全に自分から墓穴を掘った2人だが、構わずアキラは話を続ける。

 

 

アキラ「ビデオ屋の経営に関して、特筆すべきことはないかな。今月の収入は、いつもと大して変わらなかったからね。変化が大きいのは、僕たちプロキシ事業の方だ。インターノットで作った新しいアカウントは、まだレベルが低いからか…稼げる依頼が中々来なかった。今月の収入は、以前の三分の一にも満たない」

 

ハル「うっわ、マジか……」

 

Fairy『補足。現時点で受けられる依頼の中から、私が最も収益の高いものを選出したことで、貴方様の収入を32.21%アップさせることに成功しています。その収入金額は、インターノットにおける既存ユーザーのうち47%を超えるものです』

 

アキラ「手柄をアピールするのはまだ早いよFairy、今から君の話をするんだ。実はFairyが原因で、今月の電気代が5倍も上がったんだ」

 

ハル「WHAT!?」

 

リン「5倍!?お兄ちゃん、どういうこと?」

 

アキラ「FairyがH.D.Dを制御できるのをいいことに、ほぼ24時間フル稼働させてるからさ」

 

ハル「24時間フル!?そりゃ電気代も跳ね上がるわな……」

 

リン「今月のローン、払えるかな……」

 

ハル「俺の貯金から何割か出すべ……」

 

アキラ「流石に頼るしかないね……でもこういう時ほど、お金に目が眩まないように気をつけないと……まさにこれが、2つ目の話なんだ」

 

リン「と言うと?」

 

アキラ「さっき、インターノットを介して高額の指名依頼が舞い込んだ。だけど、具体的に何をしてほしいかは一切書いてなくて、詳細はDMで送るときた。僕たちのアカウントはまだレベルが低いし、これといった実績もない。そんな僕たちをこっそり指名するなんて、普通じゃないだろう」

 

ハル「なるほどね。相手はどこからかこのアカウントがパエトーンのものだってことを突き止めたのか……」

 

アキラ「依頼人には、何か企みがあるのかもしれない。ただでさえ近頃は、インターノットを使った詐欺が横行しているんだ」

 

リン「いっそ誰だか分かればいいけど、そんなの無理だもんね。インターノットは匿名フォーラムだし、ユーザーの個人情報なんてトップシークレットでしょ?」

 

Fairy『異議あり。この指名依頼には、依頼人の身分に関する隠された情報がある可能性があります』

 

アキラ「身分に関する隠された情報……?どういうことだい?」

 

Fairy『依頼元のインターノットアカウントは、投稿の前日に新規作成されたものです。アイコンには明確な被写体のない低解像度の画像が使われています。ネット上に類似する画像がないため、これはユーザー本人が撮影したものと推測されます。照合した結果、この写真に映っている場所は、ヤヌス区の境界に位置する現「旧都地下鉄改修プロジェクト」の工事現場と一致しました』

 

ハル「……ん?おい、その場所って」

 

アキラ「そういえば…僕たちがヴィジョンの悪事を暴いた後、プロジェクトの競争入札は仕切り直しになったんだったね。今回の請負を勝ち取ったのは、確か……」

 

ハル「……………白祇重工」

 

リン「それじゃあ依頼を出したのって、もしかして白祇重工の人だったり?……あれ?確かハルのもう一つのバイト先も……」

 

ハル「………白祇重工」

 

アキラ「そういえばそうだったね。ハルは何か聞いてないのかい?」

 

ハル「聞いてるわけないでしょうに。バイトの立場の俺が、そんな踏み込んだ話に入れるかっての」

 

リン「それもそうだよね……」

 

アキラ「ともかく、この地下鉄改修プロジェクトを軸に、あと一、二悶着はありそうだ」

 

Fairy『マスター、指名のあった依頼人からDMが届きました』

 

リン「向こうから連絡が来たの?」

 

Fairy『肯定。DMの一部に、「生きるか死ぬか」を迫られる内容を検出。ただ今読み上げます──』

 

 

「パエトーン。オレらに力を貸してくれ!恥を忍んで言うが…オレらは今、生きるか死ぬかの瀬戸際だ。力を貸してくれ──頼れる相手は、お前しかいねえんだ!事情が事情なんでな。依頼内容をここに書けば一発でこっちの正体がバレちまう。つうことで、ここはひとつサシで会おうや。明日の朝5時に、六分街の交差点に来てくれ。頼む!」

 

 

DMの文章は何やら暑苦しさを感じさせるものだった。

 

 

ハル(この話し方……)

 

 

ハルはこの話し方に覚えがあるのか、思考を張り巡らせていた。

それを他所にアキラとリンは話を続ける。

 

 

アキラ「ふむ……DMを見る限り、依頼人は本当に切羽詰まっているみたいだ。それに、正直に現状を吐露しているように感じる。けど、面会を要求してくるのは怪しいな。依頼内容を説明せず、直接プロキシに会いたがるなんて……インターノット上ではあり得ない。ましてや、早朝の5時だ」

 

リン「まあ工事現場って朝早いらしいし」

 

アキラ「そうだけど……ん?待てよ」

 

 

するとアキラが、DMの文章の一部に注目した。

 

 

アキラ「このDMの1行目……『パエトーン。オレらに力を貸してくれ』って……僕たち、このアカウントでパエトーンと名乗ったことは一度もないはずだ。どうしてこの人は知ってるんだ?」

 

ハル「言っとくけど俺は言ってねえぞ」

 

リン「分かってるって」

 

Fairy『マスター、依頼人からもう一通DMが届きました──「報酬の20%を前金として振り込んだ。こいつは心ばかりの誠意ってやつだ。マジに頼んだからな!」インターノットのアカウントに振り込みを確認』

 

ハル「………うーん」

 

アキラ「……リン、ハル、面会というのは罠かもしれない。この依頼は断っておかないか?『お金か命か』なんて二択を、天秤にかけるのはやめよう」

 

ハル「………いや、大丈夫だと思う」

 

アキラ「え?」

 

リン「ど、どうしてそう思うの?」

 

ハル「このDMの文章の話し方……聞き覚えがありすぎる」

 

アキラ「……それは本当なのかい?」

 

ハル「あぁ、バッチリだ。この熱血漢みたいな話し方するのは1人しかいない」

 

 

ハルの言葉に、アキラは少しの間考え込んでから頷いた。

 

 

アキラ「……分かった。相手はサシでと言っていたけど、リンとハルの2人で行ってくれるかい?バイトとはいえ白祇重工の関係者であるハルが一緒の方がいい」

 

リン「うん!」

 

アキラ「念の為、罠かどうかの警戒はしておいてくれよ」

 

ハル「任しときな。まあ大丈夫だろ、あの人なら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の早朝、ハルとリンが待ち合わせの場所に行くと、依頼人であろう男がブツブツと独り言を言いながら立っていた。

 

 

「……チクショウ。兄弟…俺は本当に、お前抜きでやれるんだろうか……?だああ!グダグダ考えたって始まんねぇ!こんなもん、正々堂々ぶつかってナンボだろうが!兄弟、お前がここにいたら、きっとそう言ったはずだ!」

 

 

リン「なんか……怪しい人が独り言を言ってる……」

 

アキラ『確かに、ちょっと怪しいね……』

 

ハル「あぁ、やっぱりか」

 

 

周りの通行人たちも、その男を怪訝な目で見ながら通り過ぎていく。

 

 

リン「やっぱりってことは、あの人が……」

 

ハル「あぁ、白祇重工の現場責任者のアンドーさん」

 

アキラ『そうだ。誰かと思えば、昨日の『ボンプは知っている』にゲスト出演していた人じゃないか』

 

リン「あ、そういえばそうじゃん!」

 

ハル「まあ見ての通り、いつもあんな感じの人さね」

 

リン「でも、兄弟って……?」

 

ハル「愛用のハンマードリルのこと」

 

リン「えぇ……」

 

アンドー「よう、見つけたぜ!……ってハル!?」

 

 

すると、こちらに気づいたのかアンドーという男が声をかけてきた。

 

 

ハル「ドーモ、アンドーさん」

 

リン「ど、どうも……」

 

アンドー「なんでお前がこんなとこに……いや、それよりもそっちの嬢ちゃんがパエトーンだな?」

 

リン「う、うん。私がパエトーンだよ」

 

アンドー「白祇重工のアンドーだ。なるほど、ハルが世話になってるってのがパエトーンだったわけか」

 

リン「う、うちのハルがお世話になってます」

 

ハル「おい待てぇ」

 

アンドー「いやいや!こっちこそハルには色々と頼っちまって!」

 

ハル「アンドーさんまで……」

 

アキラ『あはは……それで依頼についてなんだけど』

 

アンドー「あぁ、悪い。パエトーン、初っ端からこんなふうに会うのは筋が通らねえかもしんねえが……送った通り、我が社はいま崖っぷちに立たされてんだ。事情が事情だけに、部外者に正体を知られるわけにもいかねえ。これは俺らなりに考えた結果だ……いっそのことガチンコで、お互いの秘密を握っちまうのが安全だってな。すまねえが、分かってもらいてぇ」

 

リン「なるほど、それも一理あるね。でも依頼の話をする前に、こっちの質問に答えて。あのアカウントが私たちのものだって、どこで知ったの?」

 

アンドー「そいつは言えねえが……ただ、情報提供者は胸を叩いて保証したぜ。あれが間違いなく、名だたるパエトーンのアカウントだってな。腕前はもちろん、人間としても大したヤツだとよ!」

 

ハル「……あぁ、邪兎屋か」

 

アキラ「あのニコにそれほどの評価をもらえるなんて、恐縮だね」

 

アンドー「なんだよ、あっさりバレちまった。邪兎屋の連中、口を揃えて褒めちぎってたぜ。ところで……」

 

 

アンドーはキョロキョロと誰かを探すように、周りを見回す。

 

 

アンドー「あいつらが同じように褒めちぎってた、ブリッツって奴はいねえみたいだが……」

 

リン「えっ」

 

ハル「……アンドーさん。それ、俺のこと」

 

アンドー「あ?」

 

 

ハルはそう言って、周りに人がいないのを確認してからブリッツドライバーをアンドーに見せる。

 

 

アンドー「はあああ!?お、お前がブリッt」

 

ハル「ちょちょちょ、声がデカい!」

 

 

あまりの衝撃にアンドーは驚いて叫びそうになり、慌ててハルはアンドーの口を塞ぐ。

 

 

アンドー「す、すまねえ……にしてもお前がなぁ…」

 

ハル「まあ詳しいことは社長と一緒の時に言うよ。それより」

 

アキラ『あぁ、今は本題に集中しよう。アンドーさん。白祇重工は一体、僕たちに何をしてほしいんだ?』

 

アンドー「引き受けてくれんのか?そいつはよかった!来いよ。今すぐ現場まで案内してやる!依頼の件は、うちの社長が直々に説明してやっからよ!」

 

リン「現場って……地下鉄改修プロジェクトの?」

 

アンドー「あぁ!ヴィジョンの手に落ちてたら、あの辺りも木っ端微塵になってただろうが……今は我が社の兄弟たちが汗水たらして働く、漢の戦場だ!」

 

アキラ『アンドーさん。こっちも仕事で出かけるんだから、準備は必要だ。先に現場で待っててくれないか?準備が整ったら、妹とハルが現場まで向かうよ』

 

ハル「建設業はともかく、他の人はまだ寝てたりする時間だし」

 

アンドー「おっと、それもそうだな。それじゃ、俺は一足先に現場で待ってるぜ!」

 

 

そう言って、アンドーは先に現場まで向かっていき、ハルとリンも準備をするためビデオ屋に戻った。

 

 

 

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