アンビー「ガウゥゥ、ホロウに侵蝕されて化け物になった。ガジガジ」
ビリー「おいアンビー、手ぇ噛むのはやめろ……つーか歯は大丈夫なのかよ!?」
アンビー「ごめんなさい、ニコを笑わせようと思って。私はこういうことには向いてないと再確認した」
ビリー「でも確かに、随分長くホロウの中にいるよな、俺たち。エーテル適応体質だっていっても、化け物になるスピードが遅いだけで──」
ハル「まあ一応、体内のエーテルを吸い取らせて侵蝕を遅らせるアイテムはあるにはあるけどさ」
ビリー「マジで?めっちゃ便利じゃねえか!?」
ハル「でも3回しか使えないし、使ったら吸い取った分を放出させないといけなくて、その放出する方法がちょっとアレだから割と危険なんだよな」
ビリー「うーん……放出させる方法が気になるが危ねえやつなのか」
ハル「まあ使わんと思って置いてきたけど。今はそれよりも……」
ハルはチラッとニコの方に目をやる。
ニコは落ち込んだ様子で何かを呟いている。
ビリー「落ち込んでんなぁ……ニコの親分」
ハル「いつもの様子が嘘みたいだな」
リン「あのニコが珍しいね」
突然、ボンプからリンの声が聞こえた。
ハル「ん?……プロキシ?」
ビリー「おぉ!?店長、戻ったのか!」
アンビー「大丈夫なの?プロキシ先生」
リン「うん、色々あって……ごめんね。もう大丈夫!それでニコはどうしたの?」
ハル「さてなぁ……」
ビリー「さっきからずっとあんな感じなんだよ」
アンビー「笑わせようとしたけどダメだった」
リンはブツブツと呟くニコの側に近寄る。
ニコ「はぁ……あたしらしくないことをしたわ……」
ニコ「金銭至上主義の邪兎屋……自分のこと以外はどうでもいいのがあたしの信条だっていうのに……」
リン「ニコは自分が思うほど、銭ゲバじゃないってこと」
ニコ「はは……別に慰めてくれなくていいわよ。ストリートで育った人間の本質は、あたしが一番よく知って……いやああああああああああ!?」
瞬間、ニコの絶叫がホロウ中に響き渡る。
ハル「グワーッ!?耳がああああああ!?」
ビリー「お、親分、いきなり叫ぶなよ……」
リン「気づくのが遅くない?」
ニコ「プロキシ!?本当にあんたたちなの!?」
アキラ「お待たせ。実はさっきからいたんだけどね。アンビーとビリーとハルが騒いでたのに、ニコは感傷に浸ってて気づかなかったみたいだね」
ニコ「ってことは……全部聞かれて……うっ、うぅぅぅ〜……!」
ハル「草」
ニコ「やっかましい!!」
ハル「ドムッ!?」
ニコ渾身の腹パンが打ち込まれ、その場に崩れ落ちるハル。が、大して効いてなかったのか、すぐに起き上がった。
リン「大丈夫、誰だってそういう時はあるよ。私としてはニコの素顔を見れて嬉しいよ」
ニコ「あ、あんなの、素顔じゃないっての!無駄話はいいから!プロキシ、一体何があったの?」
アキラとリンは接続が切れた間の出来事を手短に説明した。
ビリー「…なるほど。連絡が途絶えたのは、店長の設備が謎のハッカーに乗っ取られたのが原因だったんだな。ハルが思ってた通りだったな」
ハル「だな。ったくどこの奴だったんだ……」
アンビー「ニコが依頼料をケチったことを怒ってたわけじゃないんだ」
リン「そんな血も涙もないプロキシじゃないよ!」
ニコ「ふふん、やっぱり私の目に狂いはなかったわね!それで…プロキシの話を聞く限り、一番怪しいのはパスワードが保存されてたメモリディスクよね。そのハッカーは、それを介してあんたを見つけたのかしら?」
アキラ「H.D.Dの脆弱性診断を行ったけど、確かにその可能性が一番大きい」
ニコ「それじゃ、赤牙組の連中も誰かに依頼されて、金庫を奪ったってことになるわね……」
ビリー「俺たちと一緒だな!」
ハル「両者に依頼してまで狙うとは……それほど価値のあるもんが金庫の中にあるってわけか」
アンビー「プロキシ先生の介入がなかったら、私たちが正体不明の黒幕と対峙することになっていたはず」
ビリー「やっぱ店長は頼りになるぜ!まるでスターライトナイトの相棒犬、メテオマットみてぇだな!」
リン「えっと、ありがとう?」
アンビー「ビリーにとっては、最上級の褒め言葉なの」
ハル「だからって犬に例えるのはどうなんだ……?」
ニコ「はぁ……あの時は多額の報酬に目が眩んだけど、結局今回もろくな仕事じゃなかったわね……もう二度と情報屋の口車には乗らないんだから!帰ったら、さっさとこの火の粉を振り払って、仲介業者に2倍の追加報酬を要求してやる!」
アンビー「それよりニコ、ホロウでの捜索を急ぐ必要がある。私たちの滞在時間がエーテル適応体質の限界に迫ってる」
アンビーがニコに警告する。それもそのはず、プロキシとの接続が切れていた間に既に4回も安全活動推奨時間を過ぎてしまっているのである。
アンビー「侵蝕の影響で戦闘力が下がったりしたら、金庫の捜索中に起こり得るアクシデントに対応できなくなると思う」
ビリー「アクシデント?侵蝕で異化しちまった赤牙組のおっさん──つまり、あの上級エーテリアスのことか?」
ビリーの言葉にアンビーは頷く。
アンビー「そう。恐らくデュラハンは、今もホロウの中で私たちを探している」
ハル「出くわさずにいるってのは……無理な話よな」
ニコ「そうね。あの化け物より先に金庫を回収しなくちゃ!急いでターゲットを追うわよ!プロキシ、引き続きガイドをお願い!」
リン「オッケー!任せといて!」
一行は急いで、再びホロウの中を進んでいった。