ニコ「ははっ、ははははは!やっと……やっと!」
ニコが両手を広げて3人の方へ駆け寄ってきて、ビリーとアンビーもハイタッチをしようとする。
ニコ「みーつけた!!」
ハル「えぇ……」
ビリー「親分……」
しかし、ニコが向かっていたのは金庫の方で、ビリーとアンビーの方は見事にスルーして行った。
リン「水を刺すようで悪いけど……喜ぶのはまだ早いよ。ニコ、落ち着いて聞いてね……」
リンはニコに件のハッカーによって、ホロウを脱出するためのデータを削除されたことを伝えた。
ニコ「ここから出られない!?」
リン「と言うわけで……」
ニコ「は、はは……あんなに苦労して、やっと元に戻ったと思ったら、まさかこれで終わりだなんて」
ビリー「くっそ、モニカ様とデートもしたこともねぇってのに、悔しいぜ……けど…なかなか悪くない人生だった…」
アンビー「落ち着いて、他の手がないか考えてみる。そういえばブリッツは?」
アンビーがブリッツの方を見ると、既にいつものハルの姿に戻っていた。手にはモノクロカラーの電池のようなものを持っている。
ビリー「あれ?もう変身解いちまったのかよ」
ハル「さっきのでバッテリー切れだ。もうちょっと長持ちできるようにしないと……」
アンビー「それがさっき使ってたアイテム?」
ハル「そ、今はエネルギーが無くなって色が落ちてるけどな」
ニコ「ぶ、ブリッツまでダメだなんて……ははは…」
リン「あっ、でもそんな悲観的になる必要はないよ、とっておきの切り札があるんだ!ただ、ニコの同意が必要なんだけど……」
ニコ「同意する!」
リン「受け入れるの早くない!?とりあえず話を聞いて」
即答で同意するニコに呆れながら、リンは話を続ける。
リン「悪玉ハッカーが言ってたの、金庫にはあのロゼッタデータ並みに価値のあるものが入ってるって。それがあれば、ホロウを自由に出入りできるみたい。もしその話が本当なら、それを使ってホロウから脱出できるはずだよ!ニコがこれを開けることに同意してくれればだけど…」
ニコ「同意するってさっきから言ってるじゃない!」
リン「そんなあっさり?依頼人の方はどうするの?」
ニコ「生きるか死ぬかの瀬戸際なのよ?第一あたしがここから出られなかったら、誰が金庫を渡すっていうの?開けちゃっていいわ!」
リン「まあそう言うなら……」
金庫に番号を入力して開けると、中にはデータチップが入っており、リンはそれを手に取る。
リン「でも正直……私も何が保存されてるのかは分からないんだ、強制的にデータを読み取った結果何が起きるかは……」
ハル「まあ今はそれしか方法がないし、一か八かだな」
リン「あと……あまり考えたくないけど…もし私が失敗したら、H.D.Dシステムがインターノットで救援依頼を出してくれることになってる。その時は……」
ニコ「安心して!ここを脱出できたら、何があっても店まで助けに行くから!」
ハル「いざとなったらホロウをぶった斬ってでも、ニコたちをホロウから出してやるさ」
リン「ふふ、頼もしい限りだね!」
そう言ってリンはボンプの額部分にデータチップを挿入した。
イアス「ンナナ──!」
するとボンプが激しく光りだして、ハルたちは思わず目を閉じた。
リン「うっ……」
リンが目を覚ますと、そこはRandom Playの工房の中だった。
すぐ側にはアキラとハルがいた。
ハル「お!やっと目を覚ました!」
アキラ「リン、大丈夫かい?」
リン「あのデータチップは…?ニコたちは?それと…私は一体どうやって帰ってきたの…?」
アキラ「落ち着いて、回復したばかりなんだ、あまり興奮しない方がいい。ちゃんと状況を説明するから、まずはデータチップを読み取った後、君の身に何が起きたのか教えてくれるかい?」
リン「声が聞こえて……利用規約とか、同意とか……あとは共に新エリー都をって……」
ハル「んー……よぐわがんね」
アキラ「とにかく、事の経緯は概ね把握できた。次は僕らが話す番だ」
アキラ「リンがチップを読み取った後、ボンプが暴走したんだ。それから何らかのオーバーロード状態に入ったらしくて……」
ハル「ライブハウス「404」のミラーボールみたいに光り始めてよ。失敗したのかと思ったけど、ボンプが急に動き出して、俺たちを出口まで誘導してくれたんだ」
アキラ「君はその途中で気を失って、痙攣しながらずっとうわ言を言ってたんだよ」
リン「えぇー……何それ、怖っ…」
ハル「こっちの台詞だっての。マジでビビったぞ」
アキラ「とにかく、そうして僕が慌てていたところに、ニコたちが知り合いの闇医者を連れてきてくれて、何とか君をH.D.Dから引っ張り出したんだ」
ハル「今ニコたちがこのことについて調べに行ってる」
アキラ「いい知らせは、借金を返済するっていう約束を守ってもらえたことかな。ほとんどは医療費とボンプの修理代に消えたけど……」
ハル「まあ金銭面は俺が掛け持ちバイトしてるから大丈夫っしょ」
アキラ「けど、本当の悪い知らせはこれじゃない。心の準備はいいかい?」
リン「え……?心の準備…?」
3人はパソコンの前に向かう。
アキラ「驚かないでくれよ……Fairy、いるかい?」
すると、工房内の電気が点滅して、テレビにはノイズが生じ始める。
リンはパソコンを覗き込む。
リン「何よこれ!」
Fairy『システムを起動──III型総順式集成汎用人工知能『Fairy』です。こんにちはマスター』
パソコンの画面が変わると女性の声が聞こえた。
アキラ「これが悪い知らせさ。君が気絶した後、H.D.Dが再起動したんだ。そして──彼女が現れた」
リン「この声……聴いたことある!気を失っている間、頭の中に語りかけてきた人だよ!」
ハル「そマ?」
リン「マ!」
Fairy『肯定。私はIII型総順式集成汎用人工知能。Fairy(フェアリー)とお呼びください。マスターがサインした利用規約に則り、あらゆる面でマスターをサポートし、貴方様がご自分の作業を完了できるよう協力いたします。
アキラ「待ってくれ、規約って何だ?それに、その時って…?」
Fairy『利用規約に則り、私はその質問に答える権限を有しておりません。回答は適切な時期に、適切な場所でお知らせいたします』
ハル「適切な時期と場所……ねぇ」
アキラ「……ここは妹に任せるか」
リン「お兄ちゃん、なんか楽しんでない…?」
3人を他所にFairyは続ける。
Fairy『マスターのデータが第三者によって削除、および伝送された直近の形跡を検知いたしました。これにより、マスターの違法ホロウ事務調査員、通称「プロキシ」としての個人事業が損害を受けております。私はこの損害を補填し、マスターのプロキシ事業を再建することができます』
アキラ「待って、削除したデータを復元できるってこと?」
Fairy『否定。削除命令は撤回できません。しかし、データベースを再構築することができます。私は全都市80%以上の知能設備に対し、無制限のアクセス権限を有しています。私の協力があれば、累積式でホロウデータを獲得する必要がなくなり、毎回リアルタイムでホロウ脱出ルートを分析することが可能になります」
ハル「何それやばくね?前もって組んでたルートがアクシデントで使えなくなっても、その場で別ルートを再構築できる……ってコト?」
リン「ワッ……!」
アキラ「そ、そんなの出来るわけがないだろう!?」
Fairy『否定、これは私のコア機能です。証明のために、ホロウ調査活動を補佐いたします。既にホロウ調査事務の個人情報統合センター、通称「インターノット」の匿名フォーラムより、マスターの現状に相応しい依頼を選別しました。どうぞ、スケジュールやご希望に合わせて、実行時間をお選びください。これからよろしくお願いいたします、マスター』
そんなこんなで奇妙な同居人?が増えたパエトーンだった。