ハル「♪〜」
バイトからの帰り道、ハルは鼻歌を歌いながらバイクを走らせていた。
信号の辺りで止まった時、ふと電気屋に置いてあるテレビを見ると、ヴィジョンのプロジェクトに関する報道が流れていた。
ハル「崩壊した地下鉄の爆破解体ねぇ……」
テレビに映るパールマンとその秘書を見て、なんとなく胡散臭さを感じていたハル。
そうこうしてるうちに信号が青になったので、ビデオ屋まで再びバイクを走らせる。
─ Random Play ─
一方、ビデオ屋には猫のシリオンの少女が慌てた様子で、プロキシ兄妹を訪ねて来ていた。
「あ、あんたたち、ドアを開けるならちゃんとニャーって声をかけて!すっ転んじゃったぞ……」
アキラ「今からニャーって言っても遅いよね……六分街で一番のビデオ屋へようこそ」
リン「お客さんはどんなビデオを探してるの?新しいのだと「7710と彼の猫」が入荷してるよ」
「ビデオを借りに来たんじゃないぞ!わかってる……あんたたちはパエトーン!プロキシのあんたたちに、依頼がしたいんだ!」
アキラ「お客さん、何かの間違いじゃないですか?我々は見ての通り、至って普通のレンタルビデオ屋ですよ」
猫又「待って!警戒しなくていい、あたしは猫又!ニコに言われて、あんたたちを探しにきた。悪いやつじゃないぞ!」
アキラ「その方が誰か、わかりかねます。店を間違われたのではないですか?」
猫又「邪兎屋のニコだって!ほら、あの子のボンプだ!」
猫又という少女が見せてきたボンプは、2人のよく知るニコのボンプ『アミリオン』だった。
リン「このボンプ……ニコがいつも持ってるやつだよね」
アキラ「確かに、間違いないね。本当に、ニコが君にここへ来るよう頼んだの?彼女たちは今、どこにいるんだ?」
猫又「さっきのニュースで言ってたとこ……ヴィジョンの爆破エリアにいる!」
猫又が言うには、パールマンは住民を避難させたと言っていたが、実際には住民がまだ爆破エリアに取り残されているらしい。
リン「ハルの言ってた通りになるとはね……早すぎない?」
アキラ「よりにもよってこんな時に、ヴィジョンの工事現場で一体何をしてたんだ?」
猫又「探し物だ!…えっと、依頼したのはあたし!それに赤牙組がケチをつけてきて、もみくちゃになって……とにかく人がぎゅうぎゅうで、魚の缶詰みたいだった!」
アキラ「落ち着いて、ゆっくり話して。今の説明だと、デパートの初売りにしか聞こえないよ」
猫又「えっと…その……う、上手く説明できないぞ……そうだ!ニコのボンプ!あの中に、ここ数日の視覚データが保存されてるはずだ!それを見ればきっと分かる!」
アキラ「残念だけど、ボンプ内部の視覚データをエクスポートするには、所有者であるニコ自身がやるか、メーカーのマルセルグループに問い合わせるしか……」
『ピ───』
リン「……変な音が聞こえたような…」
アキラ「Fairy?何かを伝えようとしているんだろうか?」
猫又「何か言ったか?ファーリー……?」
アキラ「いや、なんでもない。Fairy、ボンプの内部にあるデータを強制的に取り出す方法はない?」
Fairy『確認。指示の内容ですが、「ボンプ内部の視覚記録を出力すること」で間違いありませんか?』
猫又「にゃ?今、誰か喋ったような……他にも誰かいるの?」
アキラ「新しくインストールしたPCアシスタントだよ、気にしないで……それで、Fairy…データは取り出せる?」
Fairy『ボンプ内部で直近数日間の視覚データを検索中。「自分がバカだった、もっと早くFairyを頼るべきだった」と仰ってください』
アキラ「あぁ、僕がバカだった。もっと早くFairyをシャットダウンするべきだった……」
3人はアミリオンを椅子に座らせ、Fairyにデータを出力してもらい映像記録を観始めた。
少しして、ビデオ屋に着いたハルは駐車場にバイクを停め、裏口から店内に入る。
ハル「ただーいまー……っと、おん?」
すると工房から光が漏れているのが見えたのと、音声が聴こえてきたので覗いてみると、何やら映像を観ているところだった。
ハル「一体何見てんだ……?」
ニコ『なーにがデッドエンドホロウよ!クライアントが御所望なのよ、明日にでも乗り込んでやろうじゃないの!』
猫又『ホント?やった〜!それじゃ、あたしの家族の形見は任せたにゃ〜』
猫又「うぅ……猫を被ってる自分を見るのが、こんなに恥ずかしいだなんて……!」
ハル「キッツ」
猫又「うにゃあ!?なんだあんた!?」
リン「あ、ハル。おかえり〜」
ハル「おう。この子は?」
アキラ「彼女は猫又。ニコたちの依頼で、僕らを頼ってきたみたいだ」
ハル「あー……案の定面倒事に巻き込まれてたわけね……」
リン「ところで、あの「にゃ」ってわざとだったの?」
猫又「えっ!?い、いやいや!猫のシリオンはみんなこんな感じだ……にゃあ〜」
ハル「えー?ホントにござるかぁ?」
猫又「う、うるさいな!大体あんたはいったい……って待てよ?パエトーンと一緒にいるってことは、あんたがブリッツ?」
ハル「そだよ。さっきまでバイト行ってたけど」
リン「さて話を戻すけど、状況は大体わかった。あんたは今日、ニコたちと赤牙組の拠点を探しに、デッドエンドホロウに向かったんだね」
猫又「そう!それからも色々あって……とにかくニコたちは今、爆破エリアにいる!」
ハル「は?それマジ?」
アキラ「そうらしい」
Fairy『マスター。ただいまニュースチャンネルにて、今回の依頼に関連しているとみられる情報が放送されています。お見逃しなく』
すぐにテレビをつけると、デッドエンドホロウの入り口が映っていた。
『速報です。生中継でお送りいたします──まもなく、ヴィジョンの最後の輸送列車が出発し、デッドエンドホロウへと入ります!情報によると、この無人列車は自動運転モードで走行し、爆破解体に使う最後の爆薬を目的地まで輸送するとのことです。列車が到着し次第、現場の監視拠点に控えているパールマンさん自ら指示を出し、爆破解体が実施される予定です。パールマンさんは、爆破解体の準備が整ったことを確認してから技術スタッフと共に現場から撤収、市街地の本部に戻るようです』
猫又「まずい……!最後の列車がもう発車しちゃう!視覚記録の続きを観てる時間はないぞ!何とかして爆発を阻止しないと!ニコが埋立地の灰になっちゃう……」
リン「どうやって?みんなの前で列車を止めちゃったりなんかしたら、その場で治安局に捕まるのがオチだよ」
アキラ「事態を通報するのが一番だけど、ニコたちがホロウレイダーをやってることもバレる……」
ハル「となると……」
Fairy『提案。いっそ、ホロウの中で列車を止めるのはいかがでしょう」
猫又「そっか!外から直接ホロウの中の様子は探知できないから、捕まる心配もないぞ!」
アキラ「うん……今からデッドエンドホロウに潜入して、列車が必ず通る道を阻むことができれば……確かに理論上は可能だ」
リン「Fairy、列車の位置をリアルタイムで把握できる?」
Fairy『可能。目標車両までの安全なルートを計算しています』
リン「オッケー、今回は緊急事態だし、デッドエンドホロウの中で列車を止める方法を探そ!」
アキラ「そうとくれば急がないと。ハル、帰ってきて早々に悪いけど、すぐに準備してくれ」
ハル「了解した」