ヒュッケバインって書くとガンダムになっちゃうじゃないですか(煽り)
あるところにカスのナチュラルがいた、と書くと些か多方面がうるさい為言い直そう。
ナチュラルのカスがいた。
まあ、セイル・オランチョだった。
彼は士官養成学校を、数字上それはもう素晴らしい成績で卒業した。内申点は過去最低だった。
百数十年続く養成学校で人物総評に、
『控えめに言ってカス』
『凛としてクズの如きカス、カス。もう一回書くね。カス』
『神は確かにいなかった。いたら私にコイツを殺すよう求めなかった筈がない』
『遺伝子をイジらなくても人の悪意はどこまでもいける生きた証明』
『全部間違ったジョージ・グレン』
等と書かれたのは間違いなく彼が初めてだった。
18歳、ピチピチの少尉として入隊したセイルは、『女の子食べ放題だよ』という言葉に踊らされてモビルアーマーのパイロットを志望した。
シミュレーターの成績だって最高だったから、配属先でセイルはこの世の春を謳歌していた。
数年後のC.E.69、大西洋連邦との模擬戦やベッドの上でブイブイ言わせていたセイルは、智将にして古豪のデュエイン・ハルバートン率いる第8艦隊に引っこ抜かれた。この時既に、階級は大尉だった。
そこは男社会の軍隊を絵に描いたような環境で、女の子はみんな提督付きか戦艦のオペレーターだった。配属初日、謎のシミが残るゴキブリの養殖場のような汚物をベッドと案内された瞬間に、セイルのストレスは限界に達した。
メビウスを奪って逃げようと足早に格納庫へ向かう途中、たまたま同期だった女の子がいたのを見つけたセイルは、嬉しくなって駆け寄って馴れ馴れしく名前を呼んで腰を抱き寄せ顎クイしながら口説き始めた。なんなら片尻は揉んでいた。
彼女はナタル・バジルールだったのだが、目の前にはその父親と、彼とは長い付き合いのハルバートンがいた。
こうして、セイル・オランチョは栄光ある第8艦隊に配属されて15分で、地球から遠く離れたL5宙域へと左遷された。2階級降格という偉業と共に。
そこでまあ、聞くもクズ、語るもカスな経験を経て、C.E.70の2月、セイルは第8艦隊に戻って来た。階級は大尉に戻っていた。
戻って来て初日にナタルに声を掛けあの日の続きと洒落込もうとしたところをハルバートンに見つかった。
セイルは中尉になった。
そんな彼からハルバートンに提出された戦術案こそが『対MS戦 艦隊運用プロトコル』だった。
曰く、
戦艦の照準システムは砲塔の旋回速度を超える小回りの機体に的中させる術を持たない。
第8艦隊は機動兵器群を使い、キルゾーンに誘い込んで殲滅する戦術を採っているが、MSはそういう戦い方を押し付けるのには向いていない。
単騎で戦艦を撃墜可能な武装を持ち、落としたところで損耗一機と1名にしかならないMSの為に、何機のモビルアーマーが犠牲になるか。
そこで本プロトコルである。
例え旧式戦艦の副砲でもMSは撃墜が可能だ。
しかし当てるにはシステム以上に砲戦を熟知するベテランの砲手が必要となる。
しかしちょっと撃ち漏らしただけで、そうしたベテランはポコポコ死んでいくので大変効率が悪い。
なので習熟が早くパイロットも多いモビルアーマーを使う。
戦艦はモビルアーマーをロックし、モビルアーマーがMSに肉薄した瞬間発砲。
モビルアーマーは良い感じに避ける。
ロックアラートもなく、いきなり飛んできた弾を避けられる奴はあんまりいない。
勝つ。
詳細は省くがそんな内容だった。
それを読んだハルバートンは、本当に優しげな笑顔で頭の横に人差し指を突き立てくるくる回してこう言った。
「イカれているのかな?」
「殺すぞクソヒゲ」
セイルは第3艦隊に出向になった。階級は少尉になっていた。
その後、世界樹攻防戦で旧型艦艇3隻とセイル自身が乗るモビルアーマー、メビウスにて本プロトコルが無断で使用され、撃墜2、撃墜補佐6と特筆すべき戦果を挙げた。
それを聞いたハルバートンは、
「本当にやったの? うわ、やば……」
と言ったという。
その後、グリマルディ戦線でも戦果を重ね、『エンデュミオンの凶鳥』の二つ名を獲得する。
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『来るか、セイル・オランチョ』
クルーゼはフットペダルを踏み込んで鋭角的な機動でブリッツへ迫った。
エンデュミオンクレーターの生き残りから話を集めた結果、凶鳥が戦艦の砲撃を呼び込みながら接近してくる戦術……戦術? をとることは確定だった。
要するに凶鳥より速く、先んじて動き続けることでその狙いは封殺が可能と判断していたのだ。
『ミゲル! 足を止めずに戦艦を狙え! コイツは私が抑える!』
『了解です!』
大筒を構えたジンを加速させ、ミゲルはアークエンジェルに狙いを定めた。
アスランのイージスも、その横を通り過ぎ戦艦へと肉薄していく。
時折高出力のMS火力によって押し戻されてはいるが、囮として及第点の動きだった。
戦艦からのロックアラートが来るが、そんなものが機動を続けるジンに当たることはない。
『ふん、ナチュラルめ。借りを返してくれる!』
『「フェーズ2、クリア」』
だから、一連の中で誰がカモにされているか、それが自分自身であることを、ミゲルは最後まで理解出来なかった。
突如飛来したビームが、ミゲルのジンを後ろから貫いていた。
『……は?』
『ミゲル!?』
アスランは驚愕の声を上げる。
そのビームは、クルーゼと相対する連合のMSから放たれていた。
そのMSは、今もクルーゼのジンハイマニューバとドッグファイトの様相を呈しており、1秒たりとも足を止めてはいなかった。
間違いなく、確実に。
ブリッツのメインカメラは一度としてミゲルのジンを捉えることはなかった。
ただ、右腕が一瞬だけこちらに向けられていた。
その一瞬に放たれたビームが、ミゲル機に的中していた。
『なんだとぉ!?』
動作に支障をきたしたミゲル機に、アークエンジェルから放たれた対空ミサイルが飛来する。
『ミゲル、避けろ! 動け!』
アスランの声も虚しく、ミサイルの爆圧半径から逃れることが出来なかったミゲル機は、何度か藻掻くように宙を掻いた。
『やめろおおおお!』
アークエンジェルへイージスのライフルを向けるも、即座にストライクの射撃がその行為を中断させる。
アスランが最後に見たのは、副砲と思しき高火力の一撃で、上下に叩き割られたミゲル機の姿だった。
前振り話を入れてたら少し長くなりそうだったので分けました。
ミゲルはセリフが想像しにくいんだよね。