エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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ガルシアはほっといてもどうせ終わるんだから、少し位改変してもいいよね?


第14話 消えるガンダム、こびり付いたカス①

アルテミスに到着し、入港してからは、全てが計画通りに進んでいた。

 

要塞司令のジェラード・ガルシアという名のハゲは、アークエンジェルが地球連合のIFF未登録艦であることを根拠に、艦とクルーを一時的に拘留。調査を行うと告げてきた。

 

「Aチャートのパターン1だな。単純過ぎない?」

 

ムウの囁くような問い掛けに、マリューも思わず苦笑いをした。

 

「まあ、うまくいってると思うことにしましょう」

 

そんな会話など耳に入らず、ガルシア主導の臨検が始まった。

クルー達はミーティングルームに集められ、ガルシアの臨検後に別途聴取が行われることになる。

 

 

 

格納庫、鎮座するストライクに対してガルシアは感嘆の声を漏らした。両脇に控える兵士も驚きの表情でストライクを見上げている。

 

「素晴らしい……これが連合のMSか! やはり、パイロットはフラガ大尉が?」

 

エンデュミオンの鷹と名高いムウ・ラ・フラガの名は、連合内でも広く知られているのだ。

 

「いや、自分はアーマー乗りですので、そいつのパイロットは別にいますよ」

 

ムウは愛想笑いと共に答えた。

 

「ほう。大尉ほどのエースを差し置いてコイツに乗っている者がいると……大変興味深い。ご紹介いただけますかな?」

 

嫌らしくニヤついた笑みで、艦長であるマリューに頼みという名の命令を降す。

マリューは凄まじい罪悪感に苛まれながら答えを口にした。

 

()()()()()()()()ですよ、ガルシア司令」

 

「は?」

 

「コーディネイターをパイロットに使っています」

 

「な、何を言って、言っているのかおわかりなのか!?」

 

狼狽したガルシアは責め立てるように叫んだ。

 

「ええ、たまたま素養のあるコーディネイターを確保することに成功しましたので、利用させてもらっています」

 

マリューは鉄面皮の笑顔でそう続ける。

 

「コーディネイターなど! いつ裏切るとも知れない存在を、連合の最新兵器に乗せているというのかな!?」

 

「裏切る……あら」

 

マリューは面白い冗談を聞いたとでも言うように笑った。

 

「司令はユーモアの豊富な方ですのね」

 

その後ろで、ムウも肩を震わせ俯いている。

 

「はは……いや、失礼」

 

その様子に、ガルシアは憤慨も隠さず、

 

「ならばそのコーディネイターとやらに、会わせていただいても!?」

 

半分は強がりによる虚勢で叫ぶ。

マリューは改めて、親しげに笑ってみせた。

 

「勿論。我が艦のエースをご紹介いたします」

 

ほんの僅か、その笑みに引きつりがあることを、ガルシアは気付くことは出来なかった。

 

 

 

ガルシアと兵士達が見たものは、艦内食堂の床から天井までを貫く鉄色の柱だった。艦内のレイアウトとは余りにも違うそれは、明らかに後付けでそこに据え付けられたものだと言うことがわかった。

 

そこに、一人の少年が()()()()()()()()

 

「こ、これは……!?」

 

「ご紹介致しますわ。()()が、我が艦のMSパイロット、キラ・ヤマトです」

 

まるでお買い得商品を紹介するような口調で、マリューは首と両手足を鎖で柱に繋がれたキラを指し示した。

目は虚ろ、床に向かって何やらぶつぶつと呟いている。

 

「こ、これって、いや、鎖、鎖は……!?」

 

「……?」

 

何のことだかわからない、といった風にマリューは首を傾げた。

 

「こ、こんな扱いをしている者が、危険な目に遭ってまで艦のために戦うなど、なんの冗談ですかな!?」

 

ガルシアの疑問に答える者は、別に現れた。

 

「ヤマト! 機体の掃除の時間だ! 言うまでもないが隅々まで磨いてワックスがけしろよ!」

 

ナタルだった。

それはもう悪人のような鋭角のサングラス(カスの私物)、人間を殺傷可能なレベルの尖ったピンヒール(カスの私物)、太ももが根元まで見えるようなショートパンツ(カスの私物)、襟付きノースリーブジャケット(カスの私物)を身に着けたナタルだった。

 

「…………???」

 

ガルシアはついに言葉を発しなくなった。

 

「おい」

 

ナタルが声を掛けると、横からノロノロと小柄な人影が歩み出た。

 

「ひ、ひぃ!?」

 

ガルシアが悲鳴を上げる。

兵士達も思わず銃を構えたが、『民間人ですよ?』というマリューの言葉に落ち着きを取り戻した。

 

そこにいたのは自分の意志でやったとは到底思えないヘアスタイルにパンツ一丁、胸板には卑猥な4文字のタトゥー(シール)を入れられた少年だった。

 

つまりカズイ・カス式SpecⅡであった。

 

「いや民間人ではねえだろ」

 

兵士の一人がボソリと言った。

 

カズイは相変わらずバキバキにキマった目でキラに歩み寄ると、手にした鍵でキラの鎖を外していった。

そして外し終わった鎖を、今度は自分の身体に繋いでいく。

 

「いつも通り、貴様が時間内に戻らなければ柱から電流が流れるようになっている。今回は60分だ。それまでにMSの掃除だ。貴様のお友達の命を守る為の大事な道具だ。隅々まで磨いておけよ」

 

ナタルは雑巾の入ったバケツをキラへ手渡した。

 

無理だろ、ガルシアは思った。

せめてクリーニング用の機材は渡してやれよ、メビウスでさえ機体清掃は自動化されているのに……

 

キラはバケツを受け取ると、ノロノロと歩き出した。

その目は相変わらず虚ろで、どこも映していないように見えた。

 

「さっさとしろ! 貴様のお友達は、そいつ一人じゃないんだぞ!」

 

ビクリと肩を震わせたキラは、少し速度を上げた。

 

「司令、どうされますか? 機体の清掃をご覧になります?」

 

マリューから、まるで献立の予定を聞かれるように話しかけられて、ガルシアは背中から冷たいものが広がっていくのを感じた。

 

「あ、ああ……あ、彼は……?」

 

柱に繋がれ、バキバキアイで天井を見上げるカズイに一歩近寄るガルシア。

 

「シェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

「うわああああああ!!!」

 

その途端に奇声をあげて鎖をガンガン引っ張り出すカズイに、ガルシアは尻もちをついて遠ざかった。

 

「あらあら、今日は元気なのね」

 

困った子を見るように笑うマリュー。

 

「ねえナタル。そろそろ()()()かしら?」

 

ナタルは軽く頷くと言った。

 

「ですね。次はサイ・アーガイルにしましょう。()()()()()()方が、ヤマトも気合が入るでしょう」

 

「そうね。カズイ君、すぐにこうなってしまったものね」

 

困ったものね、いやよね、と笑う。

 

その仕草とセリフと表情が許されるのは井戸端会議の若奥様だけだと、ガルシアは思ったが口には出さない。

 

「司令、見ての通り、我々はパイロットとしてコーディネイターを使っております。彼はヘリオポリスでも、そこのカズイ・バスカークをはじめとする数名の友人達が非常に良くしてくれたそうです」

 

ムウが倒れたガルシアに手を差し伸べる。

 

「だから我々は言ってやったんです。お前が我々の言う通りにMSに乗れば、お友達はきっと無事に地球へ行けるだろう、と」

 

酷い話だった。

主に事態を主導したのがカスだと言う点を明かしていないことを除けば、話の内容がカズイの件も含めて軒並み真実なのも救いが無かった。

 

「え、あ、しかし、それは、倫理的に、余りにも……」

 

ガルシア、ついに倫理とか言い出した。

 

「言っちゃなんですが、あのMSのOSは酷い出来でしてね。我々も戦闘では苦労しっぱなしなんです。まったくあんなものが連合の新兵器だなんて、悪い冗談ですよ」

 

「し、しかし君達は現に、あのクルーゼ隊を退けたと言うじゃないか!」

 

戦闘記録に関するレポート(捏造)は既に目を通したのか、ガルシアは喚き立てるように言った。

 

「司令もエンデュミオンにいたんだ。ご存知でしょ?」

 

ニコリ、ムウの、感情のない微笑み。

 

「フッケバイン・プロトコルですよ」

 

その言葉に、ガルシアの顔面は今度こそ蒼白となった。

 

「あ、あんな、欠陥戦術を、本気で……?」

 

「直に連合内にも採用されるでしょうが、フェイズシフト装甲なら実体弾や爆炎は高効率で無効化出来ます。彼にあのストライクでジンを羽交い締めにさせて、我々がミサイルで……ボォン」

 

いたずらに成功したように話すムウ。

 

「呆気ないもんですよ。はっはっはっ」

 

「うふふふふ……」

 

「ふ、ふははははは!」

 

「シェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

 

コイツラは、狂っている。

きっとヘリオポリス崩壊の時に精神を病んだか、元々おかしい連中を集めたかだ。

 

ガルシアは恐怖に震えていた。

 

あの頭のおかしい格好の女は軍人だろうか?

どう見てもまともじゃない。心底他人をいたぶることに喜びを覚える痴女だろう。

 

エンデュミオンの鷹もだ。

グリマルディ戦線では真っ当に見えたが、きっとサイクロプスでちょっと脳みそを茹でられたとかでおかしくなったのだろう。

 

1番やばいのは艦長だ。

あのデュエイン・ハルバートンのもとで技術大尉という経歴だが、この状況をどこまでも他人事のように見ているような言動。

きっと真性のサイコパスに違いなかった。

 

「り、臨検は一時中断とする! 私は仕事があるのでね! また後程!」

 

一刻も早くこの艦から逃げなければ。

ガルシアは一方的に言い切ると、兵士達を連れて食堂を出て行った。

 

「……まさかなぁ」

 

ムウはしみじみと言った。

 

「パターン1のまま最後まで走り切るとはなぁ」

 

「そうねぇ……怖いくらい」

 

マリューも苦笑いだ。

 

「あの……やはり冷静に考えても私がこの格好をする必要はなかったのでは……?」

 

ナタルが恥ずかしそうにホットパンツの裾を引っ張った。

 

「いやだって、大尉が」

 

「セイルが」

 

「「それ着なきゃ成功しないって言うから」」

 

「本当にそうだったのでしょうか……?」

 

 

 

(もしかしなくても、あいつ何だかんだで少尉のこと気付かれないようにからかってない?)

 

(そうよね、やっぱりそうよね! やー、若い子のああいう関係ってこっちまで潤うわよねぇ!)

 

「というか、こんな服を何故ヤツが……」

 

「似合うと思って買ったって言ってたぞ。多分なんか理由をつけて少尉に贈りたかったんじゃないの?」

 

「ヤツがたまに送りつけてくる服は、大抵こんなのばかりなので困るのですが……」

 

「あ、ナタル待って。お茶淹れるから、その話詳しく」

 

 

 

「やれやれ……カズイもありがとな。ガルシアの奴、すっかり信じ込んでたぜ」

 

「あ、俺で役に立てたなら良かったです。早くブリッジ業務に戻れるよう、頑張ります」

 

「うんまあ、いや、先ずはその目が治ってからだな」

 

「隊長に『最高にハイになれるエナドリ』って渡されたの飲んでから、一睡も出来ないんですよね」

 

「あのなんか、ごめんな。本当にごめんな」

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

■アークエンジェル作戦会議中

 

「ガルシアはビラード准将んとこで、グリマルディの後も小規模な戦闘に参加してた」

 

セイルがブリッジに持ち込んだ情報端末を見ながら話す。

 

「あいつはフッケバイン・プロトコル……そう呼ばれ始めたのはエンデュミオンの後だから、正確にはまだ『対MS戦 艦隊運用プロトコル』って名前だったが、それを自分の管轄部隊で再現しようとしたんだな。まあ、俺の戦果を見て憧れたんだろう」

 

憧れ云々は置いておいて、馬鹿なことを、とナタルは思った。

あの戦術を成立させるには、少なくとも戦闘態勢のジン相手に数分間のドッグファイトを成立させるレベルの腕が必要なのだ。

その上で、戦艦の武装、弾種、発射から着弾までの誤差、弾道予測、信管起爆から発動までの時間を計算に入れてマニューバを行う必要がある。

 

ハルバートンがかつてセイルに言った言葉は、的を射てはいたのだ。

 

――イカれているのかな?

 

イカれていなければ出来ない戦術なのだ。

 

だからナタルは、少なくともパイロットに依存しなくてもいい部分を増やす為に、戦艦側……CICとの連携を充足させることで、少なくとも発射された弾の回避をパイロットの技量だけに任せる運用からは脱却させた。

 

その上で持ち込んだ改定案は、ハルバートンからも『吟味はしよう』と言わしめた。フッケバイン・プロトコルという名前も含めて、ナタルの自信作だ。

その後、司令部直々に1週間もの休暇を与えられたのは、労いという意味の粋な計らいだったと思っている。

 

 

……裏でハルバートンはホフマンに、

 

『どうしよう、親友の娘がカスに毒されちゃった……やっぱりあのカス殺すしか無いかな? 重粒子砲で人撃ったら犯罪になるかな? カスなんだけど。あとカス毒って消えるの?』

 

と相談し、

 

『毒抜きをしてみましょう』

 

と言われた結果の休暇だった。なお毒は消えなかった。

ハルバートンは泣いて友人に謝った。

 

 

ともあれ、そうした改案もせずにそのまま導入した部隊がどうなるかなど、火を見るより明らかだった。

 

「結果部隊は壊滅。まあそれでも? メビウス12機損耗でMS3機撃墜だから、キルレじゃ勝ちみたいなもんだ。流石俺、歴史の本に『軍神』として載る日も近いな」

 

カス神の間違いだろ、とムウは思ったが言わないことにした。

 

「んで左遷。たまたまユーラシア連邦は宇宙での戦闘経験者かつ指揮官職が少ねえこともあって、そのままL3宙域みてえなカビの生えた壁際にあるアルテミスに押し込まれた」

 

セイルは笑っている。

ナタルはその顔を良く知っている。

言うなれば、ドブに落ちた犬を見つけた時のカスの顔だ。

 

「こいつは言うなれば無能だが行動力があり、自分が理解できないものを無理やり自分の尺度に押し込もうとして失敗するタイプの馬鹿だ。フッケバイン・プロトコルなんて、こいつにゃ理解出来ない最たるもんだろう」

 

このカスは、そういう時躊躇いなく棒で叩くか石を投げる。

 

「つまり、初手でこいつの理解力を上回る情報を与えてやって、ひたすら畳み掛けてやれば、一度は追い返せる筈だ。臨検に協力的な態度をしてやりゃあ、いきなり武装した兵士達を連れ込むこともねえだろう。幸い、向こうはエンデュミオンの鷹のファンみたいだ。仲良くして少人数か、出来れば一人で艦内に誘い込め」

 

そしてもう少しで崖から落ちそうな間抜けを見た時、

 

「1回追い返せば、時間的にもクルーゼ隊が間に合うだろう。念の為、アルテミスの哨戒範囲ギリ手前で止まって追いつかせといてやればいい。後はアルテミスがクルーゼ達を見つけたら、俺が傘をぶっ壊す」

 

このカスは笑顔でその背中を押すのだ。

 

「お前らはそれをザフトの仕業だって騒ぎ立てて、取り敢えずすぐ積める物資やら推進剤やらをガメてこい――で、出航した後のプランだが――」

 

マリューは思った。

 

「人質作戦といこうか」

 

最終的にこの戦争が和解で終わった場合。

自分達は悪逆の集団のように教科書に載るのではないか、と。





カズイは別に、髪型がプラスドライバー用のネジ頭みたいになって両眼がバキバキに見開かれて瞳孔開きっぱなしになってて情緒が不安定なってるだけのただの民間人ですよ。
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