エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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正直モントゴメリーは邪魔でしか無い
あいつのせいで全部バランス悪くなる
何しに来たんあいつ


第20話 歌姫キャッチ・アンド・リリース 後編

 

「いやラクス様って言ったらプラントのアイドルにして象徴、平和の歌姫とまで呼ばれるお方ですよ」

 

昼休み、ニコルとキラを始めとしたヘリオポリス組の面々はそんな会話を交わしていた。

 

「彼女の歌は本当に綺麗で、僕もピアノでいつかセッションしてみたいって思ってるんです」

 

「へぇ、アイドル。コーディネイターって、言っちゃなんだけど皆美形なイメージあるから、そういうの無いんだと思ってたわ」

 

トールはお茶を飲みつつそうこぼした。

 

「しっかしそんなお姫様拾って来るとか、キラにもロマンスが訪れたんじゃね?」

 

からかう様に続けるが、

 

「あ、でもラクス様は婚約者がおられますよ。あの、アスランなんですが……」

 

ニコルの言葉に、

 

「……………………………………………マジごめん」

 

謝った。

 

「いや、いいよトール。別に何とも思ってないよ」

 

キラは苦笑いしつつ言った。

 

「それにほら、急にお姫様とか言われてもね。彼女も僕達も何も変わらない、人間だよ……少なくともセイルさんよりはマシな」

 

「それはそう」

 

「コーディネイターって壁作ってても、馬鹿らしくなるよな、あの人見てると」

 

「隊長はやっぱり、能力的にはコーディネイター寄りなのかしら?」

 

「もしかしたら、隊長がザフトにいたって可能性もあるのかもな」

 

「そしたら僕は今頃ヒマシ油を一気飲みしてでも除隊していたでしょうね……多分、それでもまだ胃へのダメージは少ないと思うんで」

 

カスはその場にいると迷惑だが、いないと話題に事欠かない潤滑油となるらしかった。

 

そこへ、予期せぬ来訪者がやってくる。

 

「ちょっと、駄目だったら!」

 

食堂の扉が開く音と同時に、フレイの声が聞こえてきて、皆そちらに目を向ける。

 

「あら? ここはお食事をするところですの?」

 

「ハロ、ハロ、クワセロォ!」

 

「え!?」

 

「おいおい」

 

「軟禁されてたんじゃ……」

 

「ラクス様!」

 

驚きの声が重なる。

サイは床に倒れて小刻みに痙攣していた。

 

「あ、皆、ごめんなさい。今日は部屋に籠もるから、この子を見張ってろって、セイルさんに言われてたのに、勝手に部屋を出ちゃって」

 

フレイの申し訳なさそうな声に、サイの体が電気ショックを受けたように震える。

 

「えへへ、全然相手にしてもらえなかったんだけど、今日は名前呼んで頼み事までされちゃったの。これって進展だと思わない!?」

 

目の前で学友が所謂『都合のいい女』化していくことに、ミリアリアは戦慄していた。足元からサイの『ぐむぅっ』という断末魔が聞こえた。

嘘でしょ、手すら握ってないのにこんな依存させること出来るの?

 

「お尋ねしたいのですが、私を回収してくれたパイロットの方を探しております。ご存知ではありませんか?」

 

「それなら、ここにいるキラ・ヤマトさんですよ。ラクス様」

 

ニコルが立ち上がって言うと、

 

「まあ、その呼び方をするという事は、貴方はプラントの人でしょうか?」

 

ラクスは花がほころぶように笑った。

 

「ええ、はい。ニコル・アマルフィと申します。今はこの艦の捕虜ですが」

 

「そう、ご無事で喜ばしい限りです……それで、キラ様というのは……」

 

話を向けられ、キラも立ち上がる。

 

「貴方を回収したのは僕です」

 

「キラ様、改めましてお礼を述べさせてください。私はラクス・クライン、プラントからユニウスセブンの追悼慰霊団として派遣されて参りました」

 

ピンクの髪が豊かな頭を下げて、ラクスは優雅にお辞儀をしてみせた。

 

「そんな……僕達こそ、あの場所を荒らすような真似をしてしまって……プラントの方々には申し訳なくて」

 

「そうでしたの……あら? ですが、MSのパイロットということは、キラ様はコーディネイターでは? 」

 

そう問われ、キラは困ったような笑みを浮かべた。

 

「話すと冗談みたいなものなんですが……」

 

ここに至るまでの道のりを、キラは話し出した。

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

「まあ……そのようなことが……」

 

ラクスは感じ入るように口元を抑えた。

お嬢様は驚いてるところまで様になるなぁ、と、ミリアリアは慄いていた。これはアイドルだの歌姫だの呼ばれる訳だわ。

 

「平穏に暮らしていた皆様を戦火に巻き込んでしまったこと、もはや私の言葉1つでどうにかなるものではありませんが、謝罪させて頂きます」

 

「ラクス、ワビ、オトシマエ!」

 

ぺこり、と頭を下げるラクスにキラ達も慌ててしまう。

 

「やめてください、僕達は……僕は、自分で選んだんです。戦う力があるなら、使おうって。何と戦って、何を守るのか、まだ答えは出てませんが、考え続けることこそ、必要だと思うので」

 

「考える……そう、キラ様はお優しいのですね」

 

ラクスの言葉に、キラは顔に憂鬱を覗かせた。

 

「そんなこと……ホントに優しければ、きっと銃を手に取るなんてこともしなかったですよ」

 

「それでも、お友達の為に戦うことを選んだ。選んだ後も、それが正しいのか考え続ける……それはきっと、キラ様がキラ様だから、優しいからこそ、出来るのだと思いますわ」

 

「世の中不思議よね。ヘリオポリスを襲ったような連中もいれば、その中にニコルみたいな子がいるし、あんたやキラだって、皆コーディネイターって言っても、こんなに違うのね」

 

フレイの呆れたような言葉に、ラクスは笑った。

 

「そうですわね。でも、そういう違いこそが、コーディネイターであっても人足らしめている、と私は思います」

 

「まあいいけど。ナチュラルにもセイルさんみたいな人がいる訳だし、ホント、コーディネイターも人の種類の1つって言ってたあの人の言葉がよくわかるわ」

 

「へえ、隊長がそんなこと言うんだ……」

 

「9mm弾1発で死ぬような連中に新人類名乗られてもねって言ってたわ」

 

「まあ、隊長なら言うなそういうこと」

 

そんな会話の最中、食堂に新たな来客があった。

 

「きゃっ」

 

「きゃー♡」

 

上が半裸のカスだった。

 

「おい、キラいるか……なんでいるんだ?」

 

キラとラクスを交互に見ながら言葉を発する。

 

「えっと、どうしたんです、隊長」

 

トールが水を向けると、いつになく深刻そうな顔でセイルは言った。

 

「第8艦隊の先遣隊がこっちに向かってきてるんだが、俺らがユニウスセブンに寄ったせいで、多分向こうが先にクルーゼに捕捉されそうなんだよ」

 

「え、それは……マズいのでは?」

 

キラは漏らした。

この艦の性能と、ひとえにMSの性能によって、自分達の航海は成り立っている。それ位の自覚はあった。

 

「大分マズい。ほぼ確で全滅する。後でクソヒゲがメチャクチャうるせえからどうにかするぞ。艦長達も進路変えて全速を指示してる頃だ」

 

その目が、フレイを捉える。

 

「先遣隊にはお前の親父も乗ってるらしい。ハッキリ言って、現状で助けてやるとは約束できねえから今の内に諦めとけ。後が楽だ」

 

「そんな……パパが……!?」

 

「なんで、タカちんのゼロとお前のエールストライクで先行、とにかく場を引っ掻き回して先遣隊を撤退させろ」

 

セイルはつかつかとラクスに近付くと、その手首を掴んだ。

 

「俺はブリッツでヴェサリウスに強襲をかける。で、人質交換の交渉をして戦闘を中断させる」

 

その言葉に、セイルがやろうとしていることを理解したのか、キラは疑問を口にした。

 

「でも、人質で足を止めさせるのはこの前もうやってます。2回も続けて効果ありますかね?」

 

「大丈夫だ。ニコルとラクスなら人質の価値で言えば砂利と金塊位差がある」

 

「事実ですけど言葉にされると腹立ちますね」

 

「とにかく最大加速で向かえ。交渉さえうまく行けば、戦闘は長引かないはずだ」

 

「了解です。ムウさんはもう?」

 

「格納庫に向かってる。戦闘中域に入るまではフェイズシフトを使うなよ。途中まではゼロに曳行してもらえ、話はしてある」

 

 

その場の多くが慌ただしく動き始める中、セイルは不安そうな顔をするラクスへ告げた。

 

「それじゃ、トロフィーにはご同行願います。ああ、トイレは済ませといてくださいね。俺のコックピットのトイレは会員制なので」

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

「大尉! 一応何とかでっち上げましたが、こんなんで良いんですかい?」

 

セイルが格納庫に着くと、マードックが話しかけて来る。

 

「いくら構想があったっても、流石に無理がありますぜ」

 

そこには脚部に無理やりくくりつけられたプロペラントタンクに、胴体にワイヤーで縛り付けられたソードストライカーのバックパックでぐちゃぐちゃのシルエットになったブリッツだった。

 

プロペラントタンクからもバックパックからも、むき出しの配線とパイプがブリッツに接続されていた。

 

「こんなんじゃ戦闘機動は無理な上に、動力経路が干渉しちまってビームライフルは撃てて1発ですよ。それに、システムの改修は間に合ってないんで、取り外すまでフェイズシフトは使えません」

 

悪いニュースばかりだった。

 

「でもその分、長く飛べるんだろ?」

 

「まあ、航続距離はざっと1.5倍です。正直割に合いませんぜ、こんな改造」

 

「良いんだよ、このワンマッチだけなんだから。行って、戻って来れりゃいい」

 

「忠告はしましたからね……そんで、そちらは?」

 

マードックは横にいるラクスへ目を向けた。

 

「この子を連れて行くとヴェサリウスが動きを止めてくれる不思議なトロフィーさ。コックピットに入れとくとザフトの弾が避けてくれる便利アイテムでもある」

 

「……艦長達はご存知なんでしょうね?」

 

「当たり前じゃねえか、俺は隠し事が出来ない性格なんだよ」

 

なんせ良い子なもんで。

 

マードックはため息をついて整備員に指示を出した。

 

「ブリッツ、出すぞ! 追加パッケージとバッテリー、3分で確認しろ!」

 

「じゃお姫様はこれ着てもらえる? でかいからその上からイケるでしょ」

 

オーバーサイズのパイロットスーツをラクスに手渡し、セイルは自分もその場でスーツを着始める。

 

「こんなこと、あたしが言うにゃあ度が過ぎてるってもんですがね」

 

マードックが腰に手を当てて、

 

「ご武運を。大尉に何かあったら、副長が荒れそうで怖いや」

 

冗談めかしてそう言った。

 

「お前らな、艦長もだけど、ナタルと俺をくっつけようとするのなんなの? 小学校の性事情か?」

 

「そこはせめて恋愛模様って言いましょうや」

 

ここに連れてこられるまで何だか困った表情だったラクスは、その会話を聞いて少し笑った。

 

……マードックが、出撃したブリッツとその搭乗者を聞いて、ブリッジからどうして止めなかったとブチ切れられるまであと5分だった。





ラクスの運命の人検定難し過ぎるッピ

フレイはコーディネイターについて偏見がありましたが、カスから『てめえ、艦内でブルコス語話したら◯して捨てるぞ』と言われたため、見方を改める努力をしました。
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