エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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カズイが丸刈りにされたのは薬物を可能な限り検出されないようにするカスの一手、なのは鋭い指摘でしたね。
ちなみに下の毛は寝てる時ついでに全ゾリされていますがカズイ以外は知りません。


第25話 さよならの準備

 

「はあ? 礼だぁ?」

 

セイルがそんな声をあげる。

 

「ええ。避難民の方々が、もうすぐこの艦を降りると言うのであれば、何かお礼がしたいと。難しいでしょうか」

 

ニコルの言葉に、セイルはどうでもよさげに呻く。

 

「やー、俺そういうのいいわー。なんつうか、仕舞っておくポッケがない感じなのよね」

 

「いや、艦長達にですよ? 僕も艦内放送は聞いてましたが、救命ポッドに穴開けた挙げ句ポイ捨てしたの忘れてます?」

 

「ええ? そんな酷いことするやつおんの? 酷いわー、人間の風上にも置けんわ。きっとザフトの仕業に違いないな」

 

「まさか……それで通すつもりじゃ……」

 

「報告書にはちゃんとクルーゼがやったってキラに書かせたし、避難民共にはそういう話だって撒いてあるもん」

 

ぶい、と2本指を見せてくる25歳児。

 

「キ、キラさんまで加担させられている……!」

 

「初手で情報封鎖したのが仇になったな。相変わらず想定外の対処が甘えのよ、ナタルちゃんは」

 

ニコルがカスのカスムーブに戦慄していると、2人が話している食堂のテーブルに近付く影があった。

 

「ニコルお兄ちゃん!」

 

避難民の少女で名をエルと言う子だった。

 

「やあエルちゃん、どうしたの?」

 

腰に抱き着いてきた彼女の頭を撫でながら、優しく言った。

 

「あの、あのね、もうすぐお別れって聞いてね……これ!」

 

エルが一度離れ、肩にかけた小さなポシェットから、何かを取り出す。

それは折り紙で作った花だった。

緑、青、紫、黒の4色ある。

 

「あのね、色んなお話してくれて、怖い時は大丈夫だよって言ってくれて、ありがとうございました!」

 

そう言って、エルは緑の花をニコルへ手渡した。

 

「こんな……僕が貰ってもいいの?」

 

「うん! いつか……いつか私にも、ニコルお兄ちゃんのピアノを聴かせてね?」

 

その言葉に、なんと返したらいいか、ニコルは自分の中を探したが見つけることが出来なかった。

代わりに涙が零れ落ちる。

 

「お前ホントよく泣くな。そういう時はありがとうっつってウインクでもして笑ってやるんだよ」

 

セイルがあくびしながら言ってやると、ニコルは涙を拭って健気に笑いを浮かべて見せた。

 

「ありがとう……エルちゃん。きっと、きっと招待するよ。いや、僕がオーブに弾きに行く……約束だ」

 

「うん、ありがとう! あの……これも!」

 

エルは思い切った表情で、座っているニコルの顔に手を伸ばした。そのまま自分の顔を近付けて、頬にキスをする。

 

「えへへ」

 

「あ、あはは、嬉しいよ。大事にするね」

 

花を見せつつ、ニコルは戸惑いながらそう言った。

自分がそういうものを向けられるとは、全く思っていなかった。

 

一方でエルからすれば、周りもみんな大人で母親しか頼る人がいない中、捕虜とは言えある程度交流を許されていたニコルは話しやすく、とても優しかったのだ。

 

「おいおいおい、とんだ初恋ハンターがいたもんだな。え? ロリコンザフトレッドのニコル・アマルフィくんよぉ」

 

「……勝手に変な名称を……それはなんです?」

 

ニコルが顔を向けると、そこには端末のカメラを構えたカスがいた。

 

「新作、『栄光のザフトレッド屈辱の捕虜墜ち2 ショタ顔捕虜はイチゴ味がお好き』の制作決定したから」

 

「やめてくださいよ! 帰る場所が無くなるじゃないですか!」

 

「ニコルくぅん……帰る場所なんてのは、普段は気付かない、ありふれた日常にこそあるんだよ?」

 

「そのありふれた日常が焼き野原にされてるんですが!」

 

「じゃ穴でも掘って暮らせよ」

 

「貴方って人は!!」

 

「あの!」

 

言い合いをしていると、いつの間にやらセイルの前に移動したエルが、今度は黒い花を差し出してくる。

 

「オランチョさんも、ありがとうございます!」

 

「お、いいの? ありがとー、こういうの初めて貰ったわ」

 

セイルはそう言って笑い、花を胸ポケットに挿し込んだ。

 

「ヤバいなー、これでますます俺はパーフェクトな男になってしまった……俺のここ、いつでも空いてるから、Dカップ超えたら来るんだよ?」

 

股間の上を指し示すカスにエルは真顔となる。

 

「や……大丈夫です」

 

カスは女児に敬語で振られた。

 

なおその後、その場に呼び出されたムウとキラにも花が渡され、キラも半泣きとなった。

そのまま、避難民の代表から艦長のマリューへと感謝の言葉を伝える場のセッティングをムウに投げ付けたセイルは、早々に部屋へと戻った。

 

胸に挿した花を所在なさげに触ると、引き抜いてチェストの何も入っていない段に放り入れる。

チェストを閉じて鍵をかけ、ベッドに横になる頃には、セイルが少女エルについて思い出せることはほとんどなくなっていた。

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

アークエンジェルとの合流予定まで残り1日と迫る中、ハルバートンは執務室のデスクの上にあるいくつかに分けられた書類の束を見ていた。

 

「想像以上の成果だったな」

 

そう呟くと、彼は内ポケットから取り出した金属製のシガレットケースから葉巻を取り出してカット、マッチで火をつけた。

 

「やはり、もはやモビルアーマーのみによる戦闘は限界か……今回のことで、いつザフトがフェイズシフト搭載機を投入してくるかもわからん。そうなれば、メビウスではもう……」

 

紫煙を吐き出した先に積まれた書類には、アークエンジェルから送られたレポートがいくつかの視点に分けて分析された内容が記されていた。

 

「ストライクか……やはり、汎用性を保ったまま、局所的に有利な戦術を押し付けることは有効……だが、これはパイロットの実力が物を言っている余地が大きいな、ホフマン?」

 

離れた位置にあるデスクで、副官のホフマンが見ていた書類から顔を上げた。

 

「キラ・ヤマトですね。ラミアス大尉からの報告によれば、コーディネイターであると。OSも彼によってかなり特殊仕様にされているようですし、再現性という点では難があるかと」

 

「得難い才能ではある。少なくとも、初戦を除けば戦闘には協力的で、反抗の意思もない。これはバジルール少尉やあの男も同意している」

 

「しかし、コーディネイターです。今地球連合に、そこを素直に受け止められる将官が多いとは思えません」

 

「であれば、ウチに置くしか無かろうよ。本人達がこの先も軍属を希望するならだが」

 

「どうでしょう。元々が友人の無事を保証するために乗っています。合流後に残るかについては望み薄かと」

 

「うむ……まあ、不確定要素に時間を割いても仕方あるまい。ホフマン、そちらはまとまったかな?」

 

ハルバートンの問いに、ホフマンは辞典もかくやという厚さの束を揃えて立ち上がった。

 

「はい、完了しております」

 

「では、精査した上で戦術科へ一任だな」

 

ハルバートンは葉巻の灰を落としつつ、ホフマンから書類を受け取る。

 

「しかし意外ですな」

 

「そうかね?」

 

「ええ、確かに成果は出ましたが、あくまでヤツ本人と特殊仕様メビウスがあっての事と考えておりました。提督もそう思ったからこそ、あの戦術をそのまま採用することはなかったのでは、と」

 

ふむ、とハルバートンはチリチリと音を立てて煙を吸い込む。

 

「ふう…………確かに、ヤツがエンデュミオンまでで出した戦果は異常だ。せめて汎用性を持たせるためにバジルール少尉を付けたが、なんか、フェーズ2とか3とかどんどん狂ってくし」

 

頭痛に耐えるように、ハルバートンは眉を顰めた。

 

「だが少なくとも、MSを相手にする上で有効だったのは間違いないのだ。撃墜補佐数は地球連合軍発足前から数えて、ヤツを超える者はおらん……現状、ヤツがいる部隊は戦艦が必ず生き残っている」

 

ホフマンは本当に、本当に言いたくないけど言わざるを得ない、という表情の上官が、言葉を紡ぐのを根気強く待った。

 

「あのカスは明確に人類の外れ値だが、その成果から目を背けるわけにはいかん。ヤツの後追いは忸怩たる思いだが、理解不能なものを解析し手元に置くことで人類は進歩してきた。だから、少なくとも我が第8艦隊ではそうする」

 

葉巻を灰皿に押し付けて、ひねる。

 

「栄光ある地球連合軍第8艦隊が、いつまでも凶鳥一羽が空にいれば自分達は安全、等と宣う訳にはいかんだろうが」

 

「成程……まずは、やれるところから、ですか」

 

「古株のクルー程反発は強いよ。たかが艦載機1機に、どれだけ負担を強いているかは、よく理解しているからな」

 

「では、これは戦術科に……それと、そろそろ会議のお時間です」

 

「うむ、行こうか……今度こそ息の根を止めてやれれば良いのだが」

 

「……ヤツに対して複雑な気持ちなのはわかります」

 

2人は執務室を出ると、すぐ横にある会議室へと入室する。

既に役職者は揃っているようだった。皆一様に厳しい顔をして書類を見ている。

 

「揃っているね。では会議を始めよう」

 

ハルバートンは用意された席に着くと、一度大きく息を吸い、吐いた。

 

「セイル・オランチョ大尉の査定会議を開始する」

 

激論は、5時間に及んだ。

 

 

以下、議事録の抜粋――

 

『初戦でジン2機を撃墜。2機の撃墜補佐は凄まじいですな』

 

『んー……プラス、0.3ポインツ!』

 

『提督、査定の場で私情はお控えください』

 

 

『捕虜にしたザフト兵を、人質として流用!? 何考えてるんだ連中は!』

 

『マイナス500ポインツ!!』

 

『提督、私情は』

 

 

『アルスター外務次官の娘から言い寄られているようだな。まったく、相変わらずというか……』

 

『マイナス1,000,000ポインツ!!!』

 

『提督!』

 

 

議論は紛糾した。

 





エルちゃんは年の離れた可愛い系イケメンに初恋ハントされた上で、この時泣きながら強がって笑うニコルを見て、背筋がゾクゾクするものを感じ『目覚め』ました。

カスはカスなので助けた命も助けられなかった命もカウントしません。キャラを作った当初から、そこにこだわりを持つことはないと設定してました。なので、冷たいとかではなく、彼は純粋にエルに興味が無いです。
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