仮にカスがニコル以外を捕虜にした場合、
アスラン→発狂するまでイジられ続けて精神を病む
ディアッカ→過酷なパシリに精神を病んで超小声の「ぐぅれいとぉ」以外発せられない身体になる
イザーク→親を寝取られた後、親子の絆を深めるとか言って風呂にまでカスが乱入してきた挙げ句、母親から『弟と妹どっちがいい?』とブッコまれて精神を病む
という感じです。
まあ別にニコルがそれに比べてマシって訳じゃあ無いんですがね。
ザフトレッドに救いは無い、救いは無いのだ。
デュエイン・ハルバートンの朝は早い。
目覚めてすぐにニュースをチェックし世の中の動向を確認しつつ、着替えを行う。
この際、寝汗がひどければ先にシャワーを浴びる。
紳士たるハルバートンが身だしなみで手を抜くことはあり得ない。
次にヒゲの手入れだ。
自身の指紋、静脈、網膜認証による3段階ロックをかけた箱の中から、長年愛用するお手入れグッズを取り出していく。
一度とあるカスに脱毛剤を仕込まれた為、警戒は厳重にしていた。
伸びた部分をハサミで整え、クシを通していく。
毎晩トリートメントを欠かさないヒゲは、それこそ少年の髪のような質感と艶を保っていた。
「……うむ」
満足がいくと、自室のテーブルへ向かう。
そこには秘書がコーヒーと朝食を用意してくれていた。
朝食を済ませつつ、本日の予定を確認する。
出来る紳士は隙間時間の活用を怠らないのだ。
「アークエンジェルは本日1300到着予定か」
かつての教え子、マリュー・ラミアスが艦長を務めることになった新造艦。度重なるザフトの襲撃やカスの起こすトラブル、カスの呼び込むトラブル、そして
試しに麾下の艦長達に聞いてみた。
もし、今回のマリューと同じ立場になったら、どうする? と。
実に8割の艦長が、歴戦の古強者たる第8艦隊の艦長達が、『その場で自分の頭を撃ち抜く』と答えた。
残りの2割は想像した時点で立ち眩みを起こし医務室へ運ばれて行った。
バジルール少尉のレポートによれば、緊急時故の判断かカス本人もかなり大人しく、既に第8艦隊首脳陣はカスの押し付け先として彼女を引き続きアークエンジェル艦長として続投させることが既定路線となっている。
「……
さりげなく愛弟子にえんがちょ判定を下しながら、ハルバートンはコーヒーをしばいた。
「やはり苦みが薄いな。酸味も強すぎる」
そこへ、自室の扉をノックする音が響く。
「提督、
ホフマンの声だ。
「……早くない? まだ心の準備が出来とらんよ。カスと顔を合わせる心の準備が」
「そのオランチョ大尉が、早く提督の顔が見たいと全速力を出させたそうです。現在補給艦アマリリスが推進剤などの補充を行っています。その……カラッ欠だったそうで」
「タカりに来おったのかあのカスめが……まあいい、メネラオスを寄せろ。報告にあったストライクのパイロットや、戦時徴用した学兵の子たちとも会っておきたい」
「はっ!」
ホフマンが立ち去ると、ハルバートンは大きくため息をついた。
「相変わらず、こちらの都合などお構いなしか、まったく、悪ガキが」
苦笑を浮かべ、棚の上に置いてあったシグ・ザウエルP220を上着の内にあるホルスターへしまう。
「……舐めた真似したらケツの穴を増やしてやる」
かくして、第8艦隊名物である第ウン次ハルバートン・カス戦役が幕を上げようとしていた。
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アークエンジェルブリッジのクルー達は、一様に疲弊していた。
ブリッジでミーティングをした日の夜、いきなり乗り込んできたカスが、親の死に目にもかくやという勢いで最大船速を要求。
困惑するマリュー達を、『急いでくんないとぼくちん艦内で
ナタルの『味方との合流が近づき、我慢が限界に来たのかもしれません』という一言も効いたようだった。
なお、途中からブリッジには胃痛でもだえるマリューのうめき声が絶えず響いていた。
「つ、着いた……」
朦朧とした様子のマリューが独り言のように呻く。
「補給艦アマリリス、ドッキングシークエンスに入ります。推進剤もほとんど空でしたから、助かりますね」
ノイマンのひと心地着いた声。
操舵士である彼にとっては、刻一刻と目減りしていく推進剤のメーターを見ることは精神をすり減らしていたに違いなかった。
「あ、着いた?」
そして、元凶であるカスが起きてアイマスクを取った。
CICの席を占拠していたカスは、何故かカズイを膝の上に乗せている。
「うわ、なんだチミはぁ!」
ぺシーン、と頭部をはたかれた挙句天井に向けて投げ飛ばされるカズイ。
「あんまりだ……」
「あれ、俺は確かにナタルちゃんを抱き枕にしてた筈……マイスウィートエンジェゥラヴリープニプニムチムチパフパフ泣き虫ナタルちゃーん! L・O・V・Eナタルちゃーん! ヤラせてヤラせてナタルちゃ……」
「名誉棄損で訴えますよ大尉。いびきがうるさいのでバスカークに場所を変わってもらったんです」
タイミングよく、小休止でブリッジを外していたナタルが戻ってくるなり、舌打ちをした。結構辛辣なやつだった。
「僕が何したっていうんだ……」
無重力のブリッジを漂うスキンヘッドの涙が煌めいた。
「やべえ絵面でしたよ隊長」
「バジルール少尉が乗ってる時は艦長もホカホカ顔だったんですけどね」
トールとミリアリアも、もはや慣れたものといった風に口を開く。
「ナタルが照れてすぐどいちゃうから……胃が」
マリューも自分の端末カメラで撮ったらしい画像を見せつつ、恨みがましくナタルを見た。
「い、いつの間に。消して下さい艦長、ブリッジで個人的な写真撮影は規則に違反しますよ」
「やーよ。これね、お守りにするの。胃が痛いとき見るの。胃痛が原因で死んだら棺桶に入れてもらうの。二人が結婚するなら言ってね、式で流す用にあげるから」
一晩続いた痛みとストレスから、可哀想な艦長はぶっ壊れていた。
「結婚…………結婚?…………ヤツと?………なぜ?………」
「あら~?」
宇宙ネコ顔で言葉を反芻するナタルを見て、艦長は再起動した。
「あ、艦長、ハルバートン提督が1時間後の0900にアークエンジェルへいらっしゃるそうです。ええと、ヘリオポリス避難民用の降下シャトル搬入と、学兵への面会って……私達!?」
ミリアリアの驚いた声。
「落ち着けハウ、恐らくだが、オランチョ小隊員に関しては提督から略式の任官通知がある筈だ。ヘリオポリス崩壊前に遡って軍人だったという経歴にし、その上で除隊許可証にサインするよう言われるのだろう」
ナタルが説明すると、カズイが微妙な顔をした。
「何か変な感じですね。軍隊って、もっと融通が利かないもんだと思ってました」
「おいおいトール、俺らは軍隊だぞ?」
カスはカズイのウェッティで顔を拭きながら偉そうにほざいた。
「人が人をぶっ殺すのを国際的に合法化してる殺人集団だぜ? 世界一融通の利く組織だよ俺らは」
「僕はカズイですよ隊長。あと、言い方って本当に大事だと思うんです」
「ああすまん、お前らの中で唯一の非童貞がトールか。それ以外はDの意思を継ぐ者達だったな。悪かったよ、カズイ・D・バスカーク」
「本当に言い方なんですよ、隊長」
「ハゲハゲの実とか食ったの? フフッ、クソ弱そうじゃん。イーストブルー止まりだなオメーは」
「隊長が剃り落としたんじゃないですか!」
「あの、わかってると思いますが私は女なので、そういう話題は普通にセクハラですよ……セクハラですよね?」
ミリアリアがジト目でナタルに尋ねると、ナタルは珍しく、本当に言いにくそうに、
「そうなんだが……こいつにセクハラだと騒ぐ女性は大抵、そう間を置かずに静かになるんだ」
そう答えた。
「え、何でですか!?」
「…………その、
シン、とブリッジが静まり返った。
「隊長ぉ……ミリィに手を出したら俺、マジで許しませんからね?」
据わった目のトールが言った。
刺し違えてでも、そう感じさせる眼差しだった。
「おいおいおい……ただでさえ年下は対象外なのにBカップ以下で寸胴気味とかもう特殊性癖の領域だろ。大丈夫だミリリっちょ、お前は俺のジュニアの好みじゃねえ!」
カスは地雷原でドリブルをした。
「銃貸してもらえますか艦長。人体がコナゴナに出来るやつか、ビームライフルでもいいです。あと、まさかそのミリリっちょって私の事ですか?」
「ごめんなさいねミリアリアさん、用途が確実に物騒だから却下するしかないのよ」
「何言ってんだ隊長! ミリィは寸胴系可愛い女子だろうが! ちゃんと肉はついてるし、鼠径部とかエロいんだぞ!!」
「プッ、お前の彼女レゴで再現できそうだよな」
「レゴだよ、それは!」
「ナイフでもいいですよ艦長、2本。ビームサーベルでも大丈夫です。キラかニコルにお願いしますから大丈夫です」
「ごめんなさいねミリリッちょさん、何も大丈夫ではないのよ。彼らはちゃんと叱るから……大尉の方は少尉と提督に任せましょう」
「今なんて呼びました?」
「語感が良くて……呼んでみたくなっちゃったの、ごめんなさい」
そして面倒くさい連中の一番面倒くさいところをそのまま渡されたナタルは、流石に嫌そうな顔をした。
「私はお目付け役であって管理者ではないのですが……」
「もう早く首根っこ捕まえて入籍しちゃってくださいよ少尉。このまんまじゃ絶対やばいですって」
トールの泣き言に、
「こらこら、誰の何がヤバいって?」
カスはケラケラ笑って宣った。
「隊長の、ナニが?」
「俺のジュニアはジャスティス・アンリミテッド・ナイトメア・オブ・イモータル・オーバー・ライド、略してジュニアだ。二度とナニなんて呼ぶな!」
「どこの世界にジャスティスなんて名前のナニがあるんですか。MSでも使わないでしょジャスティスは」
「じゃあキラの乗ってるストライクは今日からストライクジャスティスね」
「やめて下さいよ、ちょっとカッコいいじゃないですか」
「ストライクって単語が既にイケてるのズリいよな。俺なんかブリッツだぜ? ケツから出てくる音感じゃん」
「戦闘中に笑ったら隊長のせいっすからね!」
カチャ
無言のナタルが、手にしたワルサーP99のスライドを引いていた。
「ナ、タルゥ? あの?」
マリューが青い顔をして話し掛けるが、第8艦隊が誇る才媛の一人は一顧だにしない。
「………………死ぬか?」
室温が氷点下になるような冷たい声だった。
あのCICを統べる女王が、カスの飼い主にしてカスとのカップリング最有力候補が、艦内で最もカスへの耐性があるであろうナタル・バジルールが、切れていた。
今度は泣いていない。純粋にブチ切れていた。
「申し訳ありませんでした! マム!!」
トールはビシリと礼をして叫んだ。
「あ、それこの前あげたやつじゃーん。どう? 小さくて扱いやすいっしょ?」
カスはヘラヘラ笑っている。
「それはこれから判断するんですよ」
1発撃ったところで、ブリッジに向かっていたムウとキラが駆け付けてナタルを取り押さえた。
事情を聴くと解放し、カスに手錠をつけて床に転がした。ムウは2、3発蹴りを入れた。キラは明らかに銃痕の場所が椅子のヘッドレストより下であり、完全に当てる気の一撃だったことに気付いてゾッとしていた。
「……どうしてあの距離の弾をかわせるのかしら……」
マリューの不思議そうな声は、メネラオスからの接舷連絡によってかき消された。
後日、寝不足の時にキャパを超えると変に吹っ切れて楽しいナタルちゃんになる、とカスから聞かされたマリューは、二度と同じ轍を踏まないよう心に決めた。
カスは死ねばいいのに、と百回くらい思った。
自分の駄文がガンダムSEEDというジャンルでどんくらいのもんか、というのを見てみたら、なんと『ここすき数』では歴代で1位になっており、ションベンを漏らし散らかしながら土下座で感謝を捧げました。本当に、読んでくださる方ありがとうございます。
初めて書いたSSの文章が好き、と評価されるのは本当に嬉しいです。皆様の感想、ご評価が、大変励みになります。