説明が不足していたかもしれませんが、レッドサバイバーの説明には最後に『彼等はもう誰からも翼を授かることはない』が入る予定でした。それだと1回は授かっちゃったことあるみたいになるので、なんか違うかなと思い消しました。
飛んだこともないのに翼を求められても、ね。
「これがG計画の結晶、ストライクとブリッツか…………あれ?」
ハルバートンが見上げる先には、勇壮な姿で立つストライクと、手足の長さが全部違うブリッツがあった。何なら右足が二本有り、左腕は関節らしきものが無く、手首から先にまん丸の物体がついていた。
「…………ぷ~?」
まるでおっさんの妖精を見たような顔でハルバートンは声にならない声を漏らした。
「おいおい、ホントに口から屁が出てんぞ? ケツ毛毟ってやろうか?」
ニヤニヤしたカス、煽る。
「報告書には手足欠損も補修済みとあったが……?」
「補修済みだよ。ちょっと右腕以外あんま動かねえだけで。チャームポイントは左のマニュピレーターだ。旧世紀の傑作ロボット、ド〇えもんをイメージした。まん丸だろ? キラに設計させたから、豆腐も落とさないように精密動作するぜ? 関節死んでるから何の意味もねえが」
キラは泣いていた。
関節が無い腕では使うことの出来ないモーションパターンを60通りも作らされて泣いていた。ゴミを作るために徹夜してるのかと思うと涙が止まらなかった。
「よそ様のお子さんに何やらしてんの?」
「あいつ何でもできるからなぁ……優秀過ぎて時間を持て余してるせいかな。友達守る為に友達と殺し合いながら自分の出自に悩んで落ち込んでふさぎ込めるんだよ。器用だろ?」
「ふむ……コーディネイターなど関係無く、優しい少年なのだろうね」
「人の優しさにつけ込むのって楽しいよね」
「どうしてぇ? どうしてカス虫はそんなカス虫なのぉ? ザフトは何でこいつを仕留め損なってんの? やる気あるの?」
「どうせモルゲンレーテから送らせた予備パーツとかここにあんだろ? お前んとこのメカニックにやらせとけよ。ついでに盗まれたGの予備パーツとかもあれば寄越せ。ストライクとブリッツで使い回しが効くんだ。他にも使い道あんだろ。ああ、コックピットのオプション装備は触らせるなよ。ようやくキラに全自動かき氷機つけさせたばっかなんだからな」
当時キラは泣いていた。
製氷機を入手する為に食堂の冷蔵庫をバラすことになったり、戦闘とは関係ない動力をマードック達に内緒でコックピットまで引くために、ソードストライカーからまた部品を抜いてきたりした。僕は何やってるんだろう深夜3時に、とキラは泣いていた。
なお一度も出番が無いまま、ついにソードは使えなくなった。
「軍用機にかき氷機つけちゃったの? ねえやめてよ。後で前例がないタイプの拗れ方しそうな問題起こすの本当にやめてよ、殺すぞカスおい」
「戦争がな……全てを狂わせたんだよ」
カスは遠い目をして言った。
「狂ってんのはお前だよ? 目を覚ませ?」
ハルバートンの瞳は優しかった。瞳だけは。
「あっ! っつうか何だよあの装備、ミラコロ!」
「最新兵器をグラコロみたいに言うじゃん」
「初見でデュエルに見破られたんだけど。実は消えてないんじゃねえの? おじいちゃん大丈夫? 馬鹿には見えない服とか買わされてない? 顔についたケツ毛と尻の穴が丸見えよ?」
「黙れカス……それはラクス・クライン返還交渉時の話だな?」
「おん」
「確か、ワイヤーを垂らして接触通信してた?」
「おん」
「じゃあ、機体から離れたワイヤーは見えてたな?」
「おん」
「あのな、ブリッツ以外のGには特殊仕様のセンサーが積んであってな。ブリッツがミラージュコロイド展開時、ワイヤーや実体弾が機体から離れて可視化されると、コロイド粒子の残置物から機体の動きを逆算して予測位置をモニターに出してくれるんだよ」
「おん?」
「好き好んで敵機に近付いてく高速のカスが見えなくなるとか、僚機にとっては地獄だろ? まあ、存在そのものは今すぐにでも消えて欲しいが……ブリッツと最低限連携させる為のシステムだよ。急造させた割には上手く動いたようだ」
「つまり、てめえのせいかクソヒゲコラ」
カスがチンピラのような目で上司を睨みつける。
「向こうからは見えなくなったー、ぼくちん無敵だぁー! ばんじゃーい! ってその気になってるお前はさぞかし見物だったろうなゴキブリカスピエロが。なんでそれで生きてるの? 意味分かんないんだけど」
ハルバートンは寄り目にして舌を出しながら、顔の横で赤ん坊をあやすように手を振った。ぴるぴるぴる、と煽り散らかす。
「はっはっはっはっ」
「わっはっはっはっ」
2人はひとしきり笑うとデコをぶつけ合った。
「ぶっ殺すぞクソヒゲ」
「やってみろクソガキ」
目はマジだった。
「ねえナタル?」
ようやくショックから立ち直ったマリューが、離れた所にいる2人を見ていた。
「何でしょうか、ゴッ……ラミアス大尉」
語呂が良くて通名を呼びそうになったナタルが取り繕う。
しかしマリューはそれを咎めた。
「艦長権限で貴方を今日からM.F少尉って呼ばせてもいいのよ?……コホン、要するに、アレが普段のオランチョ大尉な訳よね?」
「失礼しました……そうですね。やはりアークエンジェルでは我慢が溜まっていたようです」
「そうね、水を得た魚のようにカスよね」
「それがどうしましたか?」
「つまりここからアラスカまではずっと……?」
「まあ、もうここから先は緊張状態も長くは続かないでしょうから、恐らくは」
「ポンポンが痛いの」
縋るような目がナタルに向けられていた。
「……」
「ポンポンが痛いのよ?」
「すぐ慣れますよ」
「かれこれ10日は痛いのよ?」
「痛いというのは正常だからです……心が」
「この痛みがなくなった時、私、死ぬのね……精神的に」
アークエンジェルトップ2のあまりにしょぼくれた会話に、ムウは改めて自分がパイロットで良かったと思った。
「……で? 随分とアークエンジェルを急がせたそうだが、何企んどる」
ハルバートンは一息入れると懐から取り出した葉巻に火をつけた。
カスを部下に持ってから、煙と酒だけが彼の物言わぬ優しい隣人だった。
「なんで? 俺等が合流するまで襲ってこねえなら、急ぎ得でしょ」
カスも懐から取り出した煙草を咥え、先端をピコピコ振ってみせる。火種のライターは危険物として銃共々ナタルに没収されていた。
「ケッ……合流したから襲ってくるかもしれんぞ?」
仕方なく、ハルバートンはカスの為にマッチを一本擦ってやった。
「ふぃー……この位置でザフトと小競り合いでもやってたらお前、俺等をここに呼んだかよ? 要するに、ハエは飛んでるが家には入ってこない、そういう状況だろ?」
「……まあ、わかるか。せせこましい事に、連中、どうやら盗品頼みの戦を仕掛けてくるつもりらしい」
「クルーゼはラクス・クラインを本国へ移送している。引き渡した座標的に、高速艇でも往復に5日はかかる。そこから更に移動して来るんだ。連中の参戦は最短で3日後の夜だろうさ」
「1300到着では、整備、補給を考えればギリギリだったな」
「マードック……ウチの整備主任の見立てもそんぐらいだったからな。今急いだ分の数時間、俺等が有利になった。これならこっちの好きなタイミングで連中の合流前に仕掛けられる」
獰猛な笑みが吐き出された煙の後で形作られる。
ハルバートンはそれを鼻で笑った。
「お前等は大人しく降下しとかんか。家に入り込んだ盗人を叩き潰すのはパパの仕事だ」
「稼ぎ頭に舐めた口利くなよパパ。フェイズシフトは実際お前、今後の戦場を変えるぞ」
「誰が開発主導したと? そうでなくては困るし、尚の事お前等には無事アラスカへ辿り着いて貰わねばならん」
「地球連合がMS持っても、この艦隊レベルで艦載機運用が出来ねえなら、
「ふん、そんな先の事までこの老体に責任持たす気か? そんなもんはお前んとこでどうにかせんか。若いんだからしっかり汗をかけ」
からかうような物言いだが、その言葉にはこれから先の戦況を予測した上での冷徹な響きが含まれていた。
「俺、空調効いた在宅ワークで終戦迎えるのが夢なんだよね」
「レポートでは、随分と出力のおかしい空調がブリッツに積まれてるようじゃないか。それでいいだろ」
「あれはコックピットで熱々の鍋やかき氷食う時、季節感を演出する為にキラにつけさせたんだよ。仕事の為じゃねえよ」
「あれ軍の金で作った軍の備品なんすよカスさん、ご存じでない? あとお前、あの子の親に損害賠償請求されてもおかしくないからな?」
カスは沈痛そうな表情を浮かべると、
「だとしても、そいつは先に、向こうの家の離婚裁判が落ち着いてからになるだろうな」
本当にカスみたいなセリフを吐いた。
眉間にしわを寄せたハルバートンは、重苦しいため息をついた。
「ホントやめろよお前。お前1人のせいで地球連合軍の治安ゴッサム・シティ艦隊とか言われるウチのこと考えて?」
「第8艦隊は誰でも平等に暖かく迎えてくれる笑顔の絶えないアットホームさがウリだろうが。ちゃんと反論して来いよクソヒゲ」
悪びれないカスは煙で輪っかを作り始めた。
「お前本部で何て呼ばれてるか知ってる? 『地球連合軍のジョーカー』だぞ? まさか切り札じゃ無い方のジョーカー連想されてたとは思わないよね? 巡り巡って版元からクレーム受けたワシの気持ちわかる?」
「クソウケんだけど。アラスカ着いたら階段でダンスしてやろうかな」
「対艦砲で太陽に向けて撃ち出すぞお前……兎に角、ここはワシらで持ってやるから、さっさと地球へ降りろ。餞別に、ブリッツの修理には試作品も組み込んでやる」
「試作品? 言っとくけどあのMSセンス最悪だぞ」
「どこがだ。最高にイカしとるだろうが……どこで情報を入手したか知らんが、地球連合内でもMSの開発は進んでてな。そっちで考案された『可変式MSの高速戦闘用ブースター』の試作品だ。レイダーパックと呼ばれとる。短時間なら大気圏内も飛べるらしいぞ。誰も試したことはないが」
「明らかに別派閥じゃねえか。仲良くなったのか?」
「まさか。たまたま地上の物資集積所にあったやつが偶然こっちの補給に混ざり込んでただけだ。まあ……その時の集積所担当にあの煌く凶星Jがおったそうで、何となく察するが」
ジャン・キャリーという、かつて地上で意気投合して舎弟にした男を、カスは懐かしそうに思い出した。
「あー、ジャンか。あいつまだ生きてんのか。悪いことするねー」
「お陰で大西洋連邦派閥から抗議は来るし、ホント切れそうよ」
「もらっちゃっていいの?」
「どうせあと数日で戦闘だ。ミサイル当たって燃えちゃったとか言っとくわ」
肩を竦めるハルバートンに、カスは悪友にするかのように肩を小突いた。
「おいヒゲェ、それ軍の金で作った軍の備品らしいぞ? 知ってたか?」
「ふん、どうも連中、ここの所金の流れがおかしい。余程羽振りの良いパトロンでもついたと見える。これぐらいでケチケチすることもなかろう」
気に食わん、と言いたげなハルバートンは、葉巻の煙をゆっくりと吐き出すと、苛立たしげに舌打ちをした。
カスも煙を吐きながら、ヘラヘラと語る。
「パトロンかぁ、俺もいるよ。地上にもコロニーにも。あ、プラントにもね。士官学校の卒業旅行で風俗街巡りしてる時に知り合ったんだー」
「……おい」
「プロもいいけど、やっぱ一般家庭だよ。自分は真面目に生きてますって手合いは、すぐ転ぶし転び方もエロくてさぁ。あと、頼んでもねえのに金くれるんだわー」
「カスおい、まさかとは思うが……プラントで変なのに手は出してないだろうな?」
「プラントにいた赤ペケ先生何人かと、お偉いさんの秘書とかいたかな。流石に議員は無理だったよ」
「どうやって行った? もう緊張関係は始まってただろうに」
「みっ、こ、う♡」
「……聞かなかった事にしてやる」
「終戦したら自伝に書くから無駄だと思うよ?」
「それやったら本当にぶっ殺すからな。メネラオス特攻させてでも始末してやる」
「お前の事は男気溢れるパワハラ上司って記録してやるよ。どうせその頃には死んでんだろうからなぁ!」
「すまんが、ハニーからは後3人は子供が欲しいと言われとるんだ。それまでは死ねんな」
「年の差婚しといて性欲は釣り合ってんのかよ……心配しなくても、ガキの面倒は俺がしっかり見ててやるよ、へへ」
「面白い男だ。お前は絶対に殺してやる」
「自伝に書くお前に関する締めの言葉は決まってるんだ。それが、ハルバートンの最後の言葉だった。だ」
お互いの吐き出した煙が、2人のちょうど中間でぶつかって消えた。
この後、チンピラ同士のような殴り合いが始まるまで、10秒くらいかかった。
ハルバートンは45〜50ぐらいで嫁さんは32歳をイメージしています。
設定漁ったけど無かったからね。無いってことは有るかもしれないってことだからね。
また、このC.Eにはグラコロがあります。
手のひらサイズで期間限定だけどあります。
先の戦闘でモントゴメリー撤退に成功したため、熟練度ポイントを獲得。隠しユニットの『高機動型ブリッツ』を入手しました。
背中のスラスターユニットが倍くらいデカくなってる感じです。
攻略サイトには『だからなんだよ他全部ブリッツじゃん』とか書かれる感じの性能です。
もしもラクス・クライン返還時にクルーゼを撃墜していると、プロトタイプレイダー(可変機)との2択になり、アラスカに着くまでザフトレッドくん達が大変可哀想な事になるのでやめました。
僕は絵が描けないので変なカスタマイズされたMSの外観については皆様の心にお任せしますね。