アスランは2話続けて出すの疲れるんすよ。
あいつのセリフ考えるのが一番カロリー使う。
第35話 カス、地球へ行く
■エイプリルフール・クライシスから半年後
「核攻撃を援護したこと自体は、別にどうでもいいんだ」
独白のような言葉を、ナタルは聞いていた。
「ユニウスセブンはぶっ壊されて当然だし、それに対する報復もあって当然だった。停戦できない以上、やり返すのは当たり前だ。でも、そっからカオシュン、ヤキン、グリマルディと続いて……ハッキリしたよ」
彼の傾ける酒のグラスは、薄暗い部屋の明かりを受けて僅かに琥珀色の輝きを揺蕩えていた。
「必要なのは、互いが気の済むまで殴ることじゃなかった。それ以前の、
線だよ。もう一度、彼は消えそうな声で言った。
「そうさ……だって、止まれなかったじゃないか。コロニーを焼かれても、地球が飢えて凍えても、俺達は止まれなかったじゃないか」
グラスの中身が消えて、彼の吐き出す紫煙がゆっくりと天井を覆っていく。
「誰かが引かなきゃいけない。なら、それをするのは俺であるべきなんだよ、
ナタルは黙ってそれを聞いていた。
当時のナタルには、それしか出来なかったからだ。
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「全滅……!? ジン20機が全滅だと!?」
アデスの驚愕に、クルーゼは舌打ちをした。
「言わんことではない……撤退するぞ。既に第8艦隊には統制困難な損害を与えた。直ちに次の作戦に影響を出すことはないだろう」
しかしその指示に、オペレーターから躊躇いがちな報告が上がる。
「しかし、まだイージスが帰還していません」
「何……今どこだ?」
「先程の通信を聞いてから、交戦中のストライクを置いて敵MSの追撃に……」
「まさか、巻き込まれたのか!?」
「いえ、機体ビーコンはアクティブです。位置的には敵機進行方向が最も近く、そちら側かと……」
それを聞いて、クルーゼは悩ましげに首を振った。
「ヴェサリウスを寄せろ。幸い足つきは降下中だし、アスランとてそうやすやすと落とされはしまい。間に合う可能性はある」
「了解です。機関全速、取舵10」
アデスの指示に、ヴェサリウスが動き出した。
セイルは決死の逃避行を終えて、機体各部のチェックを行なっていた。
「スラスター出力……40%制限? ああ、これバッテリーが安定してねえのか。試作型のパワーエクステンダーね……負荷かけてから一気に抜くと駄目か……それでも従来品よか性能上なのはすげえな」
コンソールを叩きつつ、進路をアークエンジェルへと向ける。
「……折角直した
キラにつけさせたドリンクバーでミックスを選択。
コックピットの壁面に据え付けられた取り出し口から、ランダムにシェイクされた飲み物がパックに入れられて出てくる。
「ふぅ……キラのヤツに、茶と乳酸飲料は同時選択条件から省くように教えねえとな……強めの肩パンと共に」
どうやら不味かったらしい。
『……尉、中尉。ご無事ですか?』
アークエンジェルからの通信だ、多少ノイズが走るのは、距離の問題だろう。
殿艦隊とリンクを形成するために、降下中にも関わらずコースを大きく逸らした代償だった。
それでもプロトコルが上手く作用したのは、ブリッツとアークエンジェルの間に、更にハブとなる存在があったからだ。
「無事だよナタルちゃん。でも疲れちゃった。帰ったらハグキスからの膝枕で癒して欲しいなぁ」
『お断りします。無事なら結構。そちらはどうだ、
『無事ですよ、バジルール中尉』
『僕も大丈夫です。機体も損傷ありません』
2人の声は緊張からの解放に弾んでいた。
ブリッツ進行方向、遥か上方のアークエンジェルとの中間地点に何かが飛んでいる。
それは、いつかに鹵獲したジンの強行偵察型だった。
手にはスナイパーライフルを持ち、色も真っ黒に塗られている。
両肩レドームのランプは作動中であることを示すように、定期的に赤く点滅していた。
『アークエンジェルからの通信をリレー、第8艦隊との相互リンク有効、ブリッツへ順次転送……やはり偵察型は通信強度が違いますね』
複座のコックピットでは、操縦席に座ったトールの後ろでニコルが今もコンソール操作を続けていた。
偵察型の優れた通信機能は、艦隊同士の相互リンクを補助し、ブリッツの位置情報からプロトコルの施行を遠隔で成立させる要となっていた。
『いやでも肝が冷えたわー。すぐ横をミサイルが通り過ぎてったんだぜ? 俺結構頑張ったよな?』
胸を撫で下ろしたトールの声に、ニコルも笑って答える。
『ええ、大したものでしたよ。シミュレータで練習した成果ですね』
『いやいや、隊長が全員にやらせてたからな。キラ除けば、俺が一番うまかったから、何かあったらやらなきゃって』
『そういうの、良いと思います』
ニコルはかつて一緒だったアカデミーの仲間達を思い出していた。
そう言えば、アルテミスでは生きていることは伝えられてもロクに会話も出来なかった。
『でもよ、ニコルこそよかったのか?』
『……セイルさんの言葉が本当なら、思うところはあります。でも、だからといって、脱出ポッドでさえ撃墜するような戦い方を自分に許したつもりはありません……今ハッキリわかりました、僕は――』
その言葉を遮るように、MSの強襲を伝えるアラートが鳴り響いた。
『貴様ああああ!!! セイル・オランチョ!!!』
襲来したのは、赤い異形。モビルアーマー形態のイージスだった。
「うお、キモ! イソギンチャクが飛んでるぞ」
セイルは驚きつつも、スロットル操作を行い機体を切り返した。
しかし、先ほどまでに比べ余りに遅いその動きでは、到底イージスを振り切ることは無理に思えた。
「うっわ、駄目だこりゃ」
最大加速の反動で動きの鈍ったブリッツに、逃げ場は無い。
『母の仇! そして多くの同胞の無念を晴らすために!!』
「……どっちだよ」
そのままセイルは、駄目元でミラージュコロイドを展開。
ガタつく手足を使ったAMBACで、フラフラとイージスの軌道上から退避した。
『例え消えたとて!』
イージスのコックピットで、アスランはバックグラウンドで常にアクティブになっているサポート・フッケバイン・マニューバを表示した。
『お前だけは落とす!!』
モビルアーマー形態時のみに許されたイージスの最大火力、580mm複列位相エネルギー砲スキュラが、ブリッツの予測位置へと放たれた。
「うおっ」
セイルはそれを、一瞬だけスラスターを吹かして躱す。
胸部装甲が融解したが、何とか無事だった。
イージスはそのままブリッツを通り越し、旋回して再度向かってくる。
『お前が元凶なんだ! 俺とキラを引き裂いた! 俺達はいつでも2人で1つだったのに!!!』
「キラァ、アミーゴは選べよ……フォロー出来ないキモさじゃねえか」
『地元じゃ負け知らずだったんだよ!!』
イージスはMS形態に瞬時に変形し、ビームライフルを構えた。
「ニコル、この変態ロックしてー。大丈夫、殺さないからー」
『アスラン……正気を失って……』
ニコルの指が軽やかにコンソールを滑り、イージスをロック、ブリッツへ連携。即席のプロトコルフェーズ2を成立させた。
「……いや、こっちか」
セイルが放った一撃は、イージスに当たるまで察知されなかった。
その一撃を受けたイージスは、大きく進路をブラした。
『なんだとぉ!?』
突如として機体に発生したダメージ、そして衝撃。
慌ててチェックすれば、左肩の付け根に金属製の杭が突き立っていた。
そう認識した瞬間、杭は爆発。
イージスの左腕は破断して吹き飛んでいった。
「なるほどねぇ、こう使うのか、ランサーダート君は」
初乗りからこっち、不遇の扱いを受けていたランサーダートの見事な活躍により、ブリッツは窮地を――
『まだだぁ!』
脱してはいなかった。
イージスが、残った腕でライフルを構える。依然、ブリッツの位置は特定されていた。
「ホモはしつこいな。おい、キラのケツならくれてやるからもう帰れよ。キモいよお前」
『俺とキラはそんな関係じゃない! 俺達はもっと深く……魂で繋がりあった親友なんだ!!』
「……こいつ殺したらキラ怒るかなぁ……」
舎弟の友達ということで僅かにあった遠慮が消し飛ぼうとしていた。
セイルは静かにライフルをイージスのコックピットに向けた。
一方で、サポート・フッケバイン・マニューバをブリッツへの攻撃に使う際の欠点を、セイルはハルバートンから聞いていた。
このシステムはあくまで自機の攻撃を、誤って
おおまかな位置情報を知らせてはくれるが、ブリッツがどんな体勢でいるかなどは分からないのだ。
(今更だけど、攻撃中はシールド使えねえのも結構な欠点だよな……)
イージスの銃口はこちらを向いているが、少し下気味だ。あれなら一撃で撃墜は無い。セイルはそう判断した。
そんな、一触即発で向き合うブリッツとイージスの間を、地球への降下艇が通り掛かった。
どうやら、戦闘宙域を大きく迂回するコースを取っていた筈の降下艇の進路に、近付き過ぎていたらしい。
「げ、端っこに来過ぎたか?」
『ちっ、邪魔だナチュラル!』
思わず銃口を逸らしたブリッツに、構えたままのイージス。
降下艇は余りにもゆっくりと、2機の間を降りていった。
『構うものか……これは、お前達が引いた引き金だ!!』
「やべっ」
イージスが当たっても構わないとばかりに攻撃に移ろうとした瞬間、そのライフルを上方から1発の弾丸が撃ち抜き、破壊した。
『なに!?』
思わず見上げると、そこには偵察型のジンがスナイパーライフルを構えていた。
『アスラン、それは、それだけはいけない』
聞こえてきた声に、アスランは身を震わせる。
『ニ、ニコル!?』
『貴方の境遇は知っているし、その殺意を否定はしない』
ジンのコックピットで、急遽トールからコントロールを奪ったニコルは、銃を下ろしながら続けた。
『でも、死んだ人達の為だけに引き金を引いたら、僕達は永遠に戦い続けることになってしまう』
『どうして、どうしてなんだニコル……』
『貴方の悲しみには寄り添いたいと思います。でも、今その引き金を引くことをザフトが是とするならば……』
ニコルの強い意志がこもった声に、
『僕はもう、ザフトでなくていい』
『……っ!』
アスランは何も返すことが出来ず、後退るようにその場を撤退していった。
「メンタル不安定な奴だな……ありゃ面倒くせえぞ」
ミラージュコロイドを解除しながら、セイルはボヤいた。
激昂していたかと思えば、常に冷静な部分が同居していた。
ダメージを負った直後はかなり興奮していたが、ニコルとのやり取り後は素直に撤退を選んでいる。
「気苦労多そうだ、ありゃハゲるな」
ため息を吐いていると、ジンが寄ってきた。
『降下艇は無事ですね?』
「おう、別にどっちでもよかったけど、今回は無事だったな……ああほら、あの窓際、あの子だよほら、ドエムちゃんだっけ?」
『エルちゃんですね』
ニコルがカメラアイを向けると、そこには確かに折り紙の花をくれた少女、エルがこちらを見ていた。
距離も離れつつあり、向こうからこちらが誰かは分からないだろう。
ニコルはライフルを手放すと、ジンのマニュピレーターをマニュアル制御で動かして見せた。
ピアノを弾くような、そんな動きだ。
降下前、最後に見えたエルの顔には、笑顔が浮かんでいたように見えた。
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さて、アークエンジェルのブリッジである。
「艦載機の収容は?」
マリューの問い掛けに、ミリアリアが答える。
「メビウス・ゼロ、ストライクを収容済みです」
「現在、当艦の進路は所定降下ポイントを大きく外れつつ、ブリッツ、ジンを回収しながら地球に向かっています。予定降下ポイントは……どうやらアフリカのようですね」
ナタルの言葉に、マリューは深々とため息を吐いた。
「まあ……提督も皆も無事だし、なんだかんだ凄い戦果だったし、それくらいは許容範囲……よね?」
「1つ問題があります」
ナタルの返しに、マリューは身を固くした。
「問題……?」
「アフリカからジョシュアはかなり距離があります……ヤツももう、遠慮はしないでしょう……フライトの幸運をお祈りします。祈るだけですが」
「いいやあああああああ………」
マリューのか細い悲鳴を乗せて、アークエンジェルは遂に地球への降下を開始した。
地球『こ な い で』
アフリカ『出 て っ て』
明けの砂漠『命 だ け は た す け て』
はっきり言って開戦から1年で起こったこと字面だけで追うと野蛮過ぎて引くんですよねC.E.。
ジャブという概念が存在しないボクシングの試合観てるみたいな。
左フックが世紀の発見とか言われちゃってるような原始感あるのよ。もっと真面目に生きた方がいいよこの世界は。
僕はザフト一般兵は語彙が豊富な世紀末モヒカン族くらいの勢いで書いてます。