すみません、前回投稿から休みがゴリゴリ削れてて残業が連続100時間超えてるので時間無くて書けませんでした。
「わ、私はどうなってもいいから……彼等は、仲間のことは助けてやって欲しい、殴ったことも謝るから……!」
アークエンジェルに連れ帰られたカガリは、医務室で意識を取り戻すや否やベッドから飛び起きてキラの足元に縋り付いた。
カガリはかつてない恐怖に身を震わせていた。
軍人があんな簡単に人を撃つの? 警告すらなかったし、防弾装備がなければ自分の内臓は大変なことになっていた。
怖い怖い怖い、理解が追いつかな過ぎて怖い。
唇は青ざめ、目には涙が浮かんでいた。
それでも、明けの砂漠にはこの軍艦の助けが必要だし、逆に敵対されてしまえば抵抗らしい抵抗も出来ず、彼らは全滅してしまうだろう。
わずかに残った義務感が、なんとかカガリを動かしていた。
「えっと……大丈夫ですよ」
キラはそんなカガリを見て、安心させるように言った。
「殺す気なら多分、皆さん近づく前に撃ってましたから。そういう人なので。当面は大丈夫だと思いますよ……当面は」
実に嫌な質感を伴うカスの説明と言えた。
「君を撃った時も、何となくだけど、たまに艦内で銃抜いた時と同じような雰囲気だったし、本当に殺す気は無かったと思うな……ワンチャン死んでもいいかな、位には思ってたと思うけど」
カガリは知らないが、目の前の優しげな風貌をしたナヨっちい優男は、この艦、否、地球連邦軍でもトップクラスのカス害経験者と言えた。今日会ってちょっと撃たれて死にかけただけのカガリとは、吸ってきた空気が違うのだ。
そんなキラの言葉は、鉛のような質量で抗いようもなくカガリの心に伸し掛かってきた。
「今、キサカって人を艦長達で尋問してるから、それが終わるまではゆっくり身体を休めてて……場合によっては、それが君にとって最後の休息になるかもしれないから」
主に舎弟的な意味で。
カガリにとって何一つ救いにならない言葉だけ置いて、キラは医務室を出た。だって、これからブリッツのOSを弄って内装回収を行い、野生動物ハンティングに出なければいけないからだ。
「艦長、ストライク使わせてくれないかな……」
歩きながらキラの目が瞬く間に死んでいく。
虚ろなる混沌の3代目会長、キラ・ヤマトの日常が始まったのだ。
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アークエンジェル内の小会議室は深い沈黙に包まれていた。
「……ドゥンッチッチッ、ダララッタッパ……ワォ!」
イヤホン着けて踊ってるカス1人を除いて。
「えー、オーブ首長国連合の代表、オーブの獅子、ウズミ・ナラ・アスハの一人娘……はい……はい……なるほどね、今回はそういう感じね」
虚空を見つめながら、マリューは誰ともなしに口を開いた。
「…………ふぅ」
そしてため息と共に、上着の内から取り出したものをテーブルに置く。
ゴトリ
重い鉄の音と共に、SFP9の黒い銃身が室内にいる者達の前に晒された。
「……………………」
数秒間、カスを除く全員が沈黙に包まれた。
「か、艦長?」
「おいおい……」
ナタル、ムウは戸惑いがちに引いていた。
「……………………」
マリューの瞳はどこまでも真っ直ぐでドブ色に淀んでいた。
「……………駄目?」
マリューの瞳はどこまでも真っ直ぐでドブ色に淀んでいた。
「駄目に決まってるだろ怖いこと言うなよ!?」
「落ち着いて下さい、そもそも誰がやるんですか!?」
副官達の言葉に対し、マリューは静かに泣き始めた。
「……だってもう無理よ……どうして? なんにも悪いことしてないのに……次から! 次から! 次から! 次へと! なんなの!? どうして!? いいじゃない1発位!?」
「鎮静剤を持ってくる。ここは任せたぞダブル中尉」
「私が行きますからこの場はエンデュミオンコンビにお任せします」
「ヒーハー!!!」
「「その踊りをやめろ!!」」
結局マリューはムウとナタルに抱えられて、部屋を連れ出されていった。
「あの、私からもよく言って聞かせるので、どうか寛大な処置をお願いしたい……」
ずっとその場にいたキサカが申し訳なさそうに言った。
「ねえねえ、キィサァカァ君」
ようやく踊るのを止めたカスが、キサカの後ろから肩を揉むように手を添えた。
「……なんでしょう、オランチョ殿」
「お前が大変なのは理解すっけどさぁ、今の状況ってあのガキのパパ上的にもマズくないかしら?」
実にいやらしいカスの物言いに、キサカは目を閉じると沈痛の面持ちで言葉を紡いだ。
「……既にウズミ様は、GAT-Xシリーズ開発とオーブ国防用兵器開発を主導した責を取り代表を辞する準備を進めています」
それは、少なくともセイルからすれば『まあ、そうだろうな』というようなものだった。
地球とプラントが世界を二分して争っている中で、堂々と中立を宣言していた国が、自国利益の為とはいえ、地球連合へ肩入れした動きをしたのだ。
首長国連合なんて政体の国であっても、そういう時に誰が責任を取るのかなんてことは、考えるまでもなく決まっていた。
一番偉い奴である。
「んで? あのバカ娘はなんでこんなとこいんのよ?」
カスはそれこそが本題だ、と切り出した。
「ヘリオポリスから帰還した折、ウズミ様より言われたのです。『お前は世界を知らぬ』と。それで……」
話しながらキサカは思った。
一国を代表する政治家の一人娘が普通に家出した、を何か荘厳な儀式のような雰囲気にデコレートする方法なんか無くない? と。
「ああ、成程ね」
カスは的を得た、という風に頷いた。
「今のこの情勢下で、自分の国が裏でインチキしてまで兵器開発をしなきゃなんねえ理由を、察せられないバカ娘を処分するつもりで戦場に捨てた、そうだな?」
確信に満ちた顔だった。
「違います」
キサカは項垂れてそれを否定した。
そう思われることは否定出来なかった。
「ってことは、お前の真の任務は戦火に巻き込まれた風を装ってバカ娘の脳みそを吹っ飛ばす、護衛兼暗殺者って訳か……おいおい、ランボーかと思ったらボンドかよ」
「真の任務とかないです」
「え、でも、オーブの政治家なんか、身内にあんなのいたら夜中に車で撥ねて海か山だろ? 他の氏族で代役効くんだし、生かしとくメリット皆無じゃん」
「そこまで蛮族ではないんですよ」
カスはつまらなそうに唇をプルプル震わせた。腹の立つ仕草だった。
「すまん、待たせた。オーブの軍人さんは無事か? まだ生きてる?」
そこへ、ムウ達が戻ってきた。
どうやらマリューも落ち着いたらしい。適切な処置が行われたらしいマリューは実におだやかな表情でナタルが押す車椅子に乗っていた。
「さ、艦長、着きましたよ」
「お空キレイ……」
適切な処置が行われたらしい。
「ふうん…………いや、そうか、そういう事だったのか。本当ならあのバカ娘はヘリオポリスで死ぬ筈だったんだな? それが運悪く生き延びちまったから、適当な理由で追い出して適当な戦地で始末する……これはいわば、バカ娘暗殺計画エピソード2……どうよ?」
そんな様子を一瞥もせず、カスは続けた。
「どうよってなんですか。エピソード1など存在しないです。あとその展開だと暗殺する側が壊滅して終わりませんか?」
キサカのメンタルは既に床を突き抜けて地表に到達せんばかりに下降していた。
ああやっぱり、連合軍人から見た
「断言しますが、カガリを殺すつもりも死なせるつもりも、ウズミ様にはありません。ただ、今のままではこの先の戦乱を潜り抜けることは不可能と、まさに獅子が千尋の谷に我が子を突き落とすかのように、心を鬼にして試練をお与えになったのです」
「あんな極貧ゲリラに自分から所属しといて戦場で軍人殴るようなシャバガキを、千尋の谷に突き落とすなら死ねって事だろうが。そもそも、お前みてえなガードゴリラを相乗りさせるなら、それはもう試練とは言わねえのよ」
ねえ? と周りに意見を求めるカスだが、幸い乗るものはいなかった。
「まあ、こんなご時世だし。始末する気が無いってんなら、護衛の一人もつけるのが親心ってもんだろ」
ムウは肩を竦めると言った。
「よしんば彼女を害するつもりがあったとしても、単身国外に出すのはあまりに外聞が悪いでしょう」
ナタルも同意見のようだ。
「初めてのおつかいシリーズよね。カメラがずっと後ろを着いていくの。わかるわ、好きだったもの、あれ」
一旦部屋を連れ出され、鎮静剤を打たれてから車椅子で戻って来たマリューは穏やかな目でその様に例えた。
そんな彼女の様子を、キサカは全力でスルーしていた。ただ、とんでもない魔窟に来てしまったことだけは確かだと、背筋の凍る思いだった。
「あーね、可愛い子には旅をさせよって番組だっけ? 初手タクシー拾ったガキとか爆笑もんだったよな。カメラマンがダッシュで追い掛けてくの」
はいはいはい、とカスも追随する。
「あの、その理屈だと初めてのおつかいに出た子供が銃で撃たれて半殺しにされた事になるのですが……」
「ここでは坂道でジャガイモ落としたくらいのハプニングよね。撮れ高だわ」
「ちょっと蹴ったら死ぬような生き物路上に出すなら、あって然るべきシチュエーションだろ」
「治安がゴッサム過ぎるのでは……」
「うるせえなあ、そんなに言うならそもそも適当な留学先見繕って酒とクスリと男でも与えときゃいいじゃねえかよ。わざわざ戦闘地域までやって来てゲリラ入るとかバカじゃなきゃなんだよ」
「……それは…………まあ、はい」
キサカは何も言えなかった。
カガリを送る先として、この辺りのゲリラをまとめるサイーブがウズミの学友であり、ある程度統率が取れ、何よりも小競り合いが常態化した
「そう、ですね……冷静に考えなくても、戦場は駄目ですよね」
キサカはそう言ってテーブルに頭をつけんばかりに身を屈めた。ランボーのような体躯の彼がそうすると、その身は殊更小さく見えた。
「折るなよ、心を。他国の軍人のをさぁ」
ムウの呆れたような言葉に、カスは軽く肩を竦めてみせた。
「わざとじゃねえよ。勝手に折れるんだから仕方ねえだろ」
「何もしてないのに壊れたみたいに言うじゃん」
「俺基準なら実質何もしてねえに等しいだろがい」
「人のメンタルを棒高跳びの棒か何かだと思ってらっしゃる?」
「まさか。ヤスリで削るといい音奏でる楽器位に思ってるよ」
「提督はすげえよなぁ、これ下に置こうと思ったんだもんなぁ」
結局尋問は、夕方まで3時間近く続いた。
終わる頃には、アークエンジェルの航路にオーブが加わっていた。
失意のキサカが口を滑らせ過ぎた結果により、カスは今ならオーブにタカり、シャブれると判断したからだ。
将来、この事はオーブの歴史書にも記載されることになる。
見出しはこうだ。
『舞い降りた悪魔』
舞い降りちゃったのだ。
コズミック・イラにもはじめてのおつかいはある。
無いとは設定資料に書いてないのだからある。
休日出勤の振休に仕事をすることで休みなのに労働時間を捻出するという時間の錬金術により過労死ライン越え4か月目になりました。そろそろあかんですね。