前話で楽曲コードのこと言ってくれた人、あざます。
ノリで書いてるとうっかりしがちですね。
!?
ピキピキピキピキ
「おかえんなさぃ……」
1秒も戦闘してないのに膝から下がオシャカになったブリッツを、格納庫でにこやかな笑顔のマードック達が出迎えた。
「……すまんて」
カスはにへらと笑いながら片手を上げて謝罪した。
「いやあ、今回も見事に壊しましたね中尉」
!? !?
マードックの後ろからマガジン産の不良マークを付けた整備班達が、にこやかにこちらを見ていた。
「……わかった、こうしよう。今から下に降りて適当に女どもを徴発して来よう。諸君らはそれを好きにしていい、どうだ?」
「そいつぁ素晴らしい提案だ、完璧な作戦と言っていい……あたしらがこの後徹夜でブリッツの修理をしなきゃなんねえってことを除けばですがねぇ〜!」
!? !? !?
「オーライ、ブラザー! 俺が悪かった……かどうかはさておき、正座もできねえ人型兵器なんか間違ってるよ。欠陥品だ、後でキラとニコルに改修案出させるから」
ピキピキ、ピキピキピキ
「いいよ、わかったよ! ほら、終わったらコイツで好きにやってくれ。無事オーブに着いたら、改めて女でも奢るよ。もち整備班全員だ……どう?」
カスは懐から自分名義の軍用通貨専用のプリペイドカードを取り出して、マードックの手に握らせた。
マードックは眉根を揉みほぐすようにして大きなため息を吐いた。
「はぁー…………ま、中尉が謝罪だけで済ますような堅物じゃなかっただけ良しとしますか……でも、こんな損害はこれっきりにしてくださいよ?」
「勿論だ兄弟、気を付けるよ」
このカスをして、整備班にそっぽ向かれるのはマズイと思ったのか実に物わかりの良い対応だった。
「それと、MSに正座させるなら膝の可動域は勿論ですが、ふくらはぎの装甲の貼り方やシルエットも変えなきゃなんないんですから、現地改修じゃ通りませんぜ?」
「いたいけな少年兵が敬愛する俺に少しでも楽させようと頑張って設計するんだ、その辺の責任はヒゲに取らせるよ」
しかしキラ達のタスクは何も減らないようだった。
マードック達がやれやれと整備に入ろうとしたその時――
『キーラァー! べべべベスト・オブ、ベスト・オブ・ザ、ベスト・オブ・ザ・ザ・ザザザ・フレンドォ〜!!』
カスの懐からぶっ壊れたラジオみたいなアスランの音声が響いた。
「お、なんか下であったかな?」
取り出した通信端末を見るカス。
「……それ、なんなんです?」
マードックの問い。
「キラのお友達の声がログに残ってたからスクラッチしてみた」
「目茶苦茶オモチャにするじゃないですか」
「だってオモチャじゃん、現状」
ははん、と笑いながら通信を繋ぐ。
「おう、どうした?」
『セイルさん、キラです! なんか、さっき騒いでた避難民の一部が報復だって武装始めたんですけどマズくないですか!?』
「殺せ殺せ、いいよ殺して、皆殺しにしちまいな」
『良い訳ないでしょ!? カガリさんも着いてこうとしてますよ!?』
それを聞いたカスは、マリアナ海溝よりも深い、それはもう深いため息を吐いた。
「……取り敢えずガキは捕獲しとけ。MSで掴んじまえば向こうも諦めんだろ」
『了解……です、くっ……確保しました……うわ、目茶苦茶文句言ってます。あ、下の人達に銃口向けられてます!』
「したらストライクを避難民共を集めてるとこまで下がらせろ。人間の盾ってのはそうやって使うんだよ」
『これ、後で問題になりませんか……?』
「ならねえよ! 何かあったら俺の方で持ってやるから気にすんな」
『あ……彼等、行っちゃいましたよ』
「何台? 武装は?」
『ええと、ジープ5台に……車載火器……いや、あんなの死にに行くようなもんですよ! 止めなきゃ!』
「いいよ面倒くせえ。それよかこれ以上追従する奴が出ねえよう、男共を散らしとけ。念の為、ニコルのジンに連中が行った方向を警戒させとけ。後は俺が処理するよ」
心底面倒くさそうに、カスは通信を切った。
「どうすんです?」
マードックが問い掛けると、
「軍人のお仕事してくる」
そう返してブリッジへと向かうカスであった。
――――――――――――――――――――――――――
「あれ、隊長。どうしたんです?」
突然ブリッジに現れたカスを見て、カズイは驚きの声を上げた。
ブリッツが早々に帰還したので、てっきり自室に戻るのかと思っていたからだ。
ブリッジには他にチャンドラやノイマンもいたが、皆一様に不審者を見たような目を向けていた。
「んー、ちょっとお仕事よ。ワリ、国際緊急周波数、最大強度で流してもらえる?」
言いながら、カスは艦長用のシートに備え付けられた受話器を取り上げた。
「え、え……?」
「急げカズイ、マジなヤツだ。この受話器に繋げろ」
「は、了解です!」
ツ、ツ、と無線が接続された音がしたのを確認した上で、おもむろにカスは言葉を発した。
『近隣のザフト軍へ告ぐ。こちらは地球連合軍第8艦隊所属艦、アークエンジェル。軍用コードC802241ER』
『こちらの音声が届いているものとして続ける。現在我々は、貴軍が先刻武力行使を行った原住民に対し、人命保護の観点から救護活動を行なっている』
『しかし先程、原住民の一部が暴徒化、武装した上で貴軍を襲撃する意図で出立した。我々は現時点で彼等を原住民ではなく武装テロリストと認定。コルシカ条約第37条の5項に則り、原住民の保護を最優先すると共に、貴軍への注意喚起を行うものである。武装テロリストは軽車両5台に車載火器複数、襲撃に備えられたし、送れ』
一つ一つ言葉を言い切ると、
「カズイ、反応あるまでリピートしろ」
そう指示をして受話器を置いた。
「り、了解!」
カズイが操作を終えると、カスの言葉が繰り返し周波数に乗せて流され続けた。
「チャンドラ、反応あったらまたこっちに繋いでー」
「了解です……中尉、コルシカ条約とか守る人なんですね」
「バッカお前、俺等がけしかけたって相手に理由付けされたらこのまま戦闘だぜ? 夜の砂漠で、局地戦のプロ相手に、民間人後ろに置いて? ここで死にてえのか?」
想像したのだろう。チャンドラは乾いた笑いを浮かべた。
「そりゃ、たまんないですね」
「それに俺は条約を守った訳じゃねえ、使っただけさ。ノイマン、取り敢えず3種警戒、暖機始めとけ」
「了解です……艦長達へは?」
「この後の展開次第かなー」
カスは煙草に火をつけながら返した。
当然ながら、それを注意出来る人間は一人もいない。
「それは……と、中尉、応答ありました」
チャンドラの言葉に、煙を吐きながら受話器を取り上げるカス。
「オーライ、繋げ」
「了解」
ツ、ツ、という音の後、相手側の声が聞こえてきた。
『こちら、ザフト軍、北アフリカ方面軍、司令官のアンドリュー・バルトフェルドだ。貴艦の通信に感謝を。応答されたし、送れ』
アンドリュー・バルトフェルド、その名前に、ブリッジの緊迫感が跳ね上がる。
「嘘だろ……?」
泣きそうなカズイ。
「よりによって親玉かよ」
苦々しげに吐き捨てるノイマン。
「勘弁してくれ」
チャンドラも同様だ。
「我々は条約に則った行動をとったに過ぎない。感謝は不要である。送れ」
唯一人淡々とした、カスの声が無線に乗って飛んでいく。
『はっはっは、貴艦があくまでコルシカ条約を前提とした行動をとったことは了承しているよ。心配しなくても、今夜これ以上我々が戦闘行動を取ることは………………うん、
返ってきたのは砕けた物言いの、良い声だった。その後ろで2つばかり、何かの爆発音が響いた。
『念の為確認だが、武装解除しこちらの誘導に従う意思はあるかな? 送れ』
「我々は現在、軍規に基づく作戦行動中である。進行を妨げるならば実力を持ってこれを排除することになるだろう、送れ」
『やれやれ、本当にどいつもこいつも戦いが好きで困るな……最後に、我々からの逆撃というリスクを呑んで勇気ある通信を試みた君、名前を聞いても? 送れ』
その言葉に、舌打ちをひとつこぼしてタバコを一吹きしたカスは、おもむろにこう名乗った。
「いつか……いつか、俺の撃つ信念の弾丸がお前らザフトを皆殺しにし、世界に真の平和を齎すだろう。その日まで、俺の引き金を引く指が止まることはない……俺は……俺はダイナミック・ダイナマイト・ダブル・ディック・チャンピオンのカズイ・バスカークだ。魂にこの名を刻み、震えて眠れ、
通信が途絶える。
ブリッジには緊迫感を残した沈黙が漂っていた。
「いや…………え…………何してくれてんですか?」
呆然とする少年志願兵の言葉は、夜の砂漠に反響もせず溶けていった。
■人物紹介
氏名:カズイ・バスカーク
戦乱が加速する中、北アフリカで初めて公的な記録に姿を現した地球連合軍所属の少年兵。
現地民を助けにその身を晒したアークエンジェルからザフトを遠ざける為、コルシカ条約における人道的行為を背景に、北アフリカ方面軍司令官にしてザフトが誇る英雄の一人であるアンドリュー・バルトフェルド相手に一歩も引かぬ交渉を繰り広げた。
その際行われた彼の名乗りはバルトフェルドによって記録され、ザフト軍内では『カズイ・D4C・バスカーク』と呼称されるようになる。
戦後研究が進む中で、一説には不沈艦アークエンジェルの艦載機いずれかのパイロットとも目され、映画化の際には『バスカーク専用ストライク』のパイロットとして登場。
奇声を上げながら執拗にコックピットを狙う戦闘スタイルで『死神』の二つ名を欲しいままにした。
セイル・オランチョの自伝シリーズにも度々登場しており、その扱いの気軽さから、カスの盟友の一人と見なされている。