エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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タグをいじろうかとも思ったんですが、ただ酷い目に遭い続けてるだけのことを『強化』とするのは如何なものかと思うんですよね。お前もそう思うだろ? カズイ。


第45話 汚えアイリスアウト

 

「バスカークが軍医から、著しい幼児退行と摂食障害の診断がされましたが」

 

ナタルがそう声をかけると、食堂の椅子に座っているカスの口からは屁のような返答がまろび出た。

 

「ええ? なんだってぇ、そりゃあ心配だなぁ。後でプロテインでも差し入れてやろう」

 

手元の報告書に目をやりつつ、辛抱強くナタルは続けた。

 

「……中尉の名前を聞くと悲鳴を上げて震えるのですが」

 

カスは目線を自分の手元にやったまま、心配そうな声を吐く。

 

「俺へのリスペクトが限界突破した故の発作かもしれんな。高過ぎるカリスマも考えものだぜ」

 

眉根にシワを寄せたナタルはため息をついた。

 

「……また()()()()()ね?」

 

その言葉に、カスは戸惑い100%の表情で答える。

 

「いや……心当たりはねえかな……本当に心配だよ」

 

カチャカチャ

 

「ブリッジでの事はノイマン軍曹からもヒアリングしていますし、通信記録も確認しました。言っている意味がわかりますか?」

 

「いや……皆目見当もつかねえ……一体何の話だ?」

 

カチャカチャカチャカチャ

 

「取り敢えずそのルービックキューブいじる手を止めてもらってよろしいですか?」

 

「今日中に黄色の面揃えるって死んだ婆ちゃんとの約束なんだよ」

 

「メリッサ御婆様は生きてるでしょう」

 

「あー、危篤になった爺ちゃんだったかも」

 

「ミシェル様は63歳で現役の会社役員ですよね? 士官学校時代はあなたが休む為に月イチで危篤と報告されてましたが」

 

「そうか……なら死んじまった婆ちゃんも、死にかけ続けてる爺ちゃんもいなかったってことだな。そいつぁ、今日一番の良いニュースだぜ」

 

カチャカチャ

 

「生憎と発狂したバスカークは現実に存在しているんですよ中尉」

 

その言葉に、カスはようやく視線を上げてナタルを見た。

その後ろでは虚ろな目で天井を見上げるマリューとそれを気の毒そうに見るムウがいた。

 

「ナタル、言葉には気を付けるんだ。発狂だと? 確かに俺の部下がちょっとメンタルやっちまってバブりダイエットしてるのは事実かもしれねえが」

 

「バブりダイエット等という単語はこの世に存在しないんですよ中尉。この先オーブに着いたら、親御さんに説明しなければいけない艦長の身にもなって下さい。先程からショックで微動だにしていませんよ」

 

「彼は勇敢に戦った。彼の勇姿は今も私達の心に焼き付き、共にあるのです、これは抜け殻で絞りカスすよ、とか言っとけばいいじゃん」

 

「いいですか? この前までただの学生だった子供が敵の、それも砂漠の虎とさえ呼ばれるような大物に名前を認知されるというのは、凄まじいストレスになるんですよ。そうでなくてもバスカークは元々気弱で臆病な気質なんです。こうなるのは当たり前なんですよ。そもそも――」

 

ナタルからカスへの説教は続く。

 

 

あれから、飛び出して行った者達が何時間経っても戻らないこと、遠くで砲撃音がしたことをニコルのジンが感知したことで全滅と判断。

ザフトを刺激しないため捜索隊は出す事なく、物資ばら撒きタイムという名の救援活動は終了した。

 

ナタル達首脳陣がブリッジへ向かう途中、すれ違うように奇声を上げて泣きじゃくったカズイが走り抜けていった時点で、マリューが『セーブ、セーブしたのよ昨日……ぼうけんの書は何処かしら』とか言い出した。

ムウは3秒ほど考えた後、『デロデロデロデロデンデン』と呟いた。

 

そんな二人を放置してナタルが後を追い掛け医務室へ駆け込むと、ベッドの上で親指を咥え足を抱えて横になるスキンヘッド少年ボーイがいた。

 

『ばぶぅ』

 

無垢な瞳をしていた。

取り急ぎの処置で医師が経口タイプの鎮静剤を飲ませようとすると盛大に嘔吐。

 

『オランチョ中尉の仕業ですかね』

 

洗面器を持った医師がそう漏らすと、死んだ目をした赤ちゃんアライグマは再度泣き喚きながら布団に潜り込んだ。

 

『またかー』

 

手慣れた様子でカズイに全身麻酔を施す医師に、診断書の作成と提出を指示するとナタルはカスへ連絡した。

 

ちょうど食堂で遅めのディナータイムを洒落込んでいたカスは、説教の予感がした為ルービックキューブを取り出し、今に至る。

 

 

「つうか、物乞い共にくれてやった物資の補填とかしなくていいの? 砂漠の虎とは確定でぶつかんだからよ、消耗前提で備えとくべきなんじゃねえのってオランチョ思う訳」

 

とは言え、優しさ、罪の意識、人の心と言う善性デッキのマストパーツを欠いたカスに反省という文化はなく、話の矛先をすり替えるコントロールの巧みさを見せつける。

 

「少なくとも、コルシカ条約における難民救護の規定では、必要最低限のライフライン確保を目的とした救援活動は、あらゆる戦闘行為の対象外とされてる訳だし。あの物乞い共が自発的に燃えカスの片付けとか始める前に、買い出しは済ませとくべきなんじゃあねえの?」

 

「買い出し……バナディーヤのことを言ってますか? あそこはザフトの拠点が……」

 

「ダルいこと言うなって。広義の意味で、今の俺たちの行動はすべからく人命救助なんだよ。普通に素性を隠して穏便にやる分には、向こうも事を荒立てやしねえさ」

 

それに、とカスは続けた。

 

「本当に俺等を殺りたいだけなら今夜、ついさっき、救援活動中に襲いかかるべきだった。それをやらなかったのは、統制が取れてるからだ。なんちゃって軍隊のザフトでそれが出来るのは、上がしっかり手綱を握ってる証拠さ。ちらっと会話した限り、少なくともそれが出来るアンドリュー・バルトフェルドはクソヒゲ寄りなんだろうよ」

 

ナタルはそれを聞いて、考え込むように腕を組んだ。

 

「しかし、彼は無抵抗のタッシルを焼いています」

 

「逆さ。バカ共がやり過ぎなきゃそんな事は起こらなかった。やらかしに対して即座に報復出来る程、拠点の位置を把握してたのに今まではやらなかったんだから」

 

ナタルはなおも悩ましげだ。

迷いを示すように、目線が左右に動く。

 

「ナタルちゃん、イレギュラーな事態に陥った時、失敗した時のデメリットとその損失を補填する方法から考えるのは悪い癖だぜ? 返し手が失敗前提でヌルくなる。時には成功時のメリットと比較して――」

 

「成功確率を自力で高めて全ベット……あなたのその考え方は、私にはどうも苦手です。彼等への支援が間違いだった、と思いたい訳ではないのですが」

 

「だから俺等は相性が良いのさ」

 

いつの間にか全面が揃っているルービックキューブをテーブルに置きつつ、セイルは笑った。

 

「お前の考える()()は俺が帳消しにしてやる。だから俺を上手く使って、成功して得られる成果を最大化する方法を考えろ。頼りにしてるぜナタルちゃん」

 

その言葉に、なおも考え込みながらナタルは言葉を紡いだ。

 

「……今日の明日です。外から見知らぬ連中がやって来て、大量に物資を買い漁れば、嫌でも目に付くでしょう。虎に捕捉されることなく買い出しを終えるのは不可能です」

 

「ああ、そうだな」

 

「タッシルの住人の話では、街を焼いた砲撃は3発。ミサイルではなかった。なら戦艦……レセップスでしょう。通信手も当然いたはずなのに、無線に応答してきたのは虎本人でした。確かに自ら前に出て来る気質はあなたや提督と似ているかもしれません。であれば、仮にバナディーヤでザフトとの交渉になった場合、またアンドリュー・バルトフェルドと遭遇する可能性は高い……そうなったら、あなたならそれをかわせますか?」

 

「連れてく連中の人選権をくれ。感覚だが、8割はどうにか出来ると思うわ」

 

「誰を?」

 

「俺、キラ、カガリは確定。後は……アルスターかな。あのガキの平凡さは使える」

 

「ヤマト少尉とアスハ嬢は?」

 

「キラは多分、虎が会いたがる気がするんだよ。MSのパイロットを探してる風だった。俺は今日以外はスカイグラスパーだったし、低軌道での戦闘報告は流石に聞いてんだろうから、俺がいる事やブリッツに乗ってることは知ってる筈だしな。なら、無茶な真似はされねえかなって。メスガキはいざという時に囮として置き去りにする……わかった、そんな目で見ないでくれ。ある程度行動が縛れて現地の案内が出来る奴は必要ってだけだよ。別に髭達磨共の誰かでもいいが、邪魔になったら殺すだろうし。弾もったいねぇよ」

 

「……一度まとめた上で、艦長にお伺いします。許可が取れましたら、物品リストと一緒に指令書をお届けすることになるかと」

 

「オーライ、んじゃ俺はもう寝るから、キラ達にはブリッツ正座カスタムの図面引くように言っといてくれ」

 

欠伸をして、カスは立ち上がった。

 

「言っておきますが今回一番問題なのはその件ですからね? 目の前でMSの壊れる音を聞かされた身にもなって下さい」

 

「正座させたのはナタルちゃんでしょ」

 

「それと」

 

ナタルは少し言い淀んだ。

 

「普段は許可もなく触る癖に、こういう時だけ所有権を主張されても困ります……が、礼は言っておきます。私では、あの子達を追い散らす事は出来なかったので……それでは」

 

未だに惚けるマリューの方に去っていく。

 

「あら……あらぁ?」

 

カスは意外なものを見たような顔で、その後ろ姿、取り分け形の良いヒップラインを見送った。

 

「ナイス、ムチムチ」

 

茶化すような声の張りは、少しばかり若気を多く含んでいるように聞こえた。

 

 

 

 

 

 

「ばぶぅ」

 

「あ起きた? 取り敢えず、腰から下は動かないようにしときまちょうねー」

 

「ぢゃあ"あ"あ"!?」





カス家、アホみたいに結婚と子作りが早い
何故ここに書くか? そりゃあ本編に出てくる予定が皆無だからに決まってるじゃないすかぁ。

■オランチョ家の系譜
祖母:メリッサ・オランチョ
15歳で幼馴染のミシェルを捕食しデキ婚。186cm、75kg。
座右の銘:愛があれば力尽くも合法

祖父:ミシェル・ヤスオカ(旧姓)
幼馴染の巨女に突如喰われ家業を継ぐ以外の道が無くなる。子供は8人いる。

母:フレデリカ・オランチョ
16歳で自称幼馴染で運命の人である4個下のマオリを捕食しデキ事実婚。197cm、80kg。
座右の銘:ブレーキとアクセルは紙一重

父:マオリ(孤児のため旧姓不明)
初対面の巨女に拐われ目覚めたらパパになっていて人生が詰む。実は襲われた際に種割れしたが1ミリも通用せず、以後常時目が死んでいる。子供は6人いる。

長女:アルカ・オランチョ
3年かけてイケメン若手教師の人生を破壊して16歳で家庭を築く。

次女:エレーヌ・オランチョ
16歳で同い年の転校生を転校初日に以下同文

三女:フレッチェ・オランチョ
15歳で気弱な先輩(女)に以下同文

四女:ハゴロモ・オランチョ
17歳で家庭教師先の5個下の少年に以下同文

五女:マヌカ・オランチョ
16歳で同じクラスの男女の双子を以下同文

長男:セイル・オランチョ
オランチョの血筋で初の男子。10歳でナタル・バジルールと出逢う。一部除く姉達が若くして母親になり旦那が全員目が死んでいたことが軽いトラウマで、一時期相当な歳上しか恋愛対象に出来なかった。復調しかけた矢先、士官学校卒業前に長女の娘に襲われかけて10代が本格的に無理になる。

……どうした? カスの悲しい過去話だぜ? まあ、性格の醸成には一切関連しないが……

最初キャラ設定を作る時にハーフコーディネイターにしようかとも思ったんですが、出来れば主人公の能力には他の理由付けがしたいなと思い無くしました。
セイル・オランチョは100%ナチュラルです。

いや、だから性格は最初からカスなんですよ。
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