エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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たまに酒入れてる時にしか出て来ない語彙ってあるじゃないですか。


今回、ちょっとこれまでと違う書き方を試しています。
読みづらい等ありましたら申し訳ありません。


第49話 完全変態型マナティってなんだよ

 

バナディーヤでの出来事より3日後。

 

・11:32

タッシルへのライフライン敷設の目処が立ち、後続の作業手配をアル・ジャイリーに丸投げしたアークエンジェル一行は、遂に海への脱出を目的に移動を開始した。

 

・12:05

曳光弾を伴う長距離砲撃が、アークエンジェル進行方向に落ちる。つんざく爆音に、既に第1種警戒態勢を取っていたマリューは直ちに艦載機の発艦を指示。

 

・12:22

アークエンジェル、廃棄された工場地区上空に移動。

 

・12:26

2機のスカイグラスパーがアークエンジェル前方10キロの地点で、バクゥの戦列を確認。

想定を上回る数に戦線縮小の意見打診がムウ・ラ・フラガより発された。

 

・12:28

艦前方に降り立ったストライクは、2機のスカイグラスパーと情報連携のための通信リンクをアクティブにしつつ、シールドを構えて前進を開始。

 

同タイミングでアークエンジェルからの支援砲撃が行われるも、撃墜は無し。バクゥはその局地戦向けの性能を遺憾無く発揮した機動力で、砲撃をすり抜けるようにして接近してきた。

 

そこへ、2機のスカイグラスパーが猛禽さながらに襲い掛かる。

 

・12:32

ムウ・ラ・フラガ、セイル・オランチョ両パイロット、戦闘行動を開始。

機銃とビーム砲を伴う襲撃は、早々に一機のバクゥを行動不能にしてのけた。

 

しかし、集団より2機のバクゥが反転し、スカイグラスパーへの対空戦を開始。射速の高いレールガンと対空機銃、小型ミサイルを駆使して足止めを行う。

 

・12:37

回避に比重を置きつつ消極的に攻撃を続ける2機のバクゥに加えて、上空より戦闘ヘリ群が襲来。セイル、ムウ共に先行した敵への即座の追撃は困難と判断。

キラへの時間稼ぎを指示。

 

・12:38

キラ・ヤマト、戦闘行動を開始。

 

 

 

・12:38

キラ・ヤマト、戦闘開始から26秒で先行してきた3機のバクゥを撃墜。

 

 

 

バクゥのパイロット達は激しい動揺に襲われながらも、3機ずつに分かれたフォーメーションを組む。

 

・12:39

キラ・ヤマト、更に2機のバクゥを撃墜。

アークエンジェル艦長マリュー・ラミアス、『まるで撃った位置に敵機が飛び込んで来たように見えた』と証言。

以降、遠巻きに散発的な攻撃を繰り返すバクゥに対し、膠着状態となる。

 

・12:42

撃墜されたバクゥの内、1機から閃光弾が打ち上がる。

※戦闘後、工作兵を機上に乗せていた事が判明。

 

閃光弾は緩やかな軌道でアークエンジェル、レセップス同軸上に滞空する。

 

・12:43

直後、レセップスの主砲がアークエンジェルに直撃。

左舷エンジンより黒煙を上げた艦体を傾けながら、アークエンジェルが工場地帯の廃墟に追突。身動きが取れなくなる。

 

・12:45

レセップス並びにザウート中隊、前進を開始。

 

・12:48

アンドリュー・バルトフェルド、専用機ラゴゥにて出撃。

 

・12:50

ムウ・ラ・フラガ、セイル・オランチョ両パイロット、敵航空戦力及び2機のバクゥを撃墜。

 

ほぼ同タイミングで、両機がザウート中隊の射程に入る。

 

セイル・オランチョ、接近する未確認MSをバルトフェルド搭乗機と推定。スカイグラスパー2機は後退し、戦線の縮小を開始する。

 

・12:51

ストライク、スカイグラスパーと合流。

即座にバクゥ1機を撃墜。

 

同刻、ラゴゥが残る3機のバクゥと合流。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

「「クソったれ! 大誤算だ!!」」

 

スカイグラスパーとラゴゥのコックピットで、それぞれのパイロットは叫んでいた。

カスとバルトフェルドである。

 

カスの立てた計画では、敵艦からの初弾を誘発しつつ躱して、事故を装って工場跡で立ち往生したように見せかけることで、敵を引き込む予定だった。

 

それがまさかの直撃弾。直ちに航行に支障が出るレベルの損害となってしまった。

 

まんまと懐に呼び込んでしまった工作兵による、座標を誘導する閃光弾も然ることながら、直前にキラが余りに異常な戦果を挙げていたことで、ブリッジがその内容に釘付けとなっていたことも遠因だった。

 

『アークエンジェル、状況は!?』

 

ムウの焦った声が通信機越しに聞こえてくる。

 

『左舷エンジン部の外部装甲が圧壊寸前です! 現在設備消火中、損害状況は不明です!』

 

ナタルの応答に、ムウの舌打ちが返される。

 

『とにかく再浮上急いでくれよ! レセップスがそっち向かってるぞ!』

 

「半分素人のクルー抱えてちゃ、砲打撃戦の勝ち目はねえだろうからなぁ」

 

カスは苛立ちを抑えるようにタバコを咥えた。

 

「タカちん、キラを助けてやってくれる? 俺は連中の足止めしてくるからさ」

 

『おい、お前まさか……』

 

「特攻するのかって? バカ言え、俺は特攻してきた奴をコカして踏みつけて笑う趣味はあるが自分でやることはねえよ」

 

火をつけたタバコの煙を散らしながら、カスはそんな風に嘯いた。

 

『……こっちは任せろ』

 

そこにどんな覚悟を見たか、ムウはそれ以上何も言わなかった。

 

「デブ天使にも早く飛べこのブタっつっといて」

 

なのにこのカスはね、余計なことを言うからね。

飛べない豚はアレだからね。

 

『あー、艦長最近ウエスト気にしてっからその言い方は……』

 

バカもね、すぐ同じ方向に跳ねるからね。

 

「艦長にデブブ! デブブブブブ! ブヒブヒ! つっといて」

 

『別にデブ語を喋るとまでは言ってねえよ!』

 

『二人とも、海に出たら艦から吊るしますからね?』

 

憤怒の籠った声がコックピットを震わせた。

 

『ほらぁ、怒ったぁ! お前のせいだぞ!?』

 

バカが責任転嫁を開始する。

 

「うるっせぇデブ! おめえがローエングリン撃ちまくって牽制するって案を蹴らなけりゃこんなんなってねえんだよこのデブ! デブ! デエエェェブ!」

 

カスは開き直った。軍人の姿か……これが?

 

『デブじゃないです!! 採用できるわけないでしょ!? 汚染被害をなんだと思ってんですか!?』

 

マリューはちょっと涙目になって反論した。

なおブリッジは誰も何も言わなかった。素直に巻き添えになりたくないと思ったからだ。

 

「はあー? 別に俺が被害被るわけじゃねんだからどうでもいいだろうが知らねえよ! とにかく、ニコルをブリッツかジンに乗せて降ろせ! 引っ掛かってる残骸を撤去させるんだよ!」

 

カスはそこそこ現実的な案を出して状況の打開を進言した。

 

『ニコル君は今CICに入ってますよ……どっかの誰かがカズイ君とサイ君を医務室送りにするから!』

 

しかしどのツラ棚上げ案件だった。

 

「あのハゲ鬱ベイビーとデコメガネはまだ寝てんのかよ……舐めてんな」

 

性根の腐ったカスは持ち場を離れた部下に失望を顕にする。

 

『お前のせいだろ!? ドレス着たアルスターに抱きつかれて帰還したのはやり過ぎだ!』

 

ムウは今でも覚えている。

フレイに腕に抱きつかれながら帰還したカスを見た瞬間、倒れたサイを。彼に駆け寄って聴診器を当てた医療班が『え……止まっ?』と言い掛けた時の衝撃を。

 

バブりアライグマハゲについては言わずもがなだ。

 

「さて、そんじゃ俺はデカブツと遊んで来るぜ……エール寄越せよタカちん」

 

不毛な言い争いに飽きたカスは、ムウへ声がけすると空中ドッキングナビを起動した。

 

『任せたぞ! 持ってけ!』

 

ナビからの通信を受け取ったムウも、シミュレーターでの練習通り、カスのスカイグラスパーと軸を合わせてエールを切り離した。

 

「スクランダー、クロオォォス!」

 

うっぜえ掛け声とともに、自身のスカイグラスパーにエールストライカーパックをドッキングさせるカス。

 

ブッピガァン

 

「チェェェンジ、ゲッタァ――」

 

『はよ行けカス!』

 

「っしぁあ!」

 

エールストライカーを装着したスカイグラスパーを駆り、カスは敵艦の来る方へ機首を向けた。

 

……空中で合体するというのが琴線に触れたのであろう、シミュレーターをやり込んだカスから『今後はこれを目指して』と、真ゲを見せられたキラは泣いていた。これは無理ですよ、何この……何? と泣いていた。それはそう。

 

ともあれ、大天使の双翼の片割れが飛び出した。

 

「ああこれ、良いようにやられてんな……いや、キラの戦果までは想定外か……じゃなきゃバルトフェルドが前線に出るわけねえもんな」

 

誘われている、という予感。

こちらが押し付けられる強みを想定し、それらに対する、徹底した対策を施しているのだろう。

 

「まずは後衛を引っ掻き回して各個に殺すか」

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

「1分でバクゥが5機だと!? クルーゼの野郎、いい加減な共有しやがって……何が凶鳥を戦艦から切り離せば勝機はあるだ。とんだ人食い虎がいるじゃないか」

 

バルトフェルドの作戦では、閃光弾で射線軸、高度を合わせたレセップスの主砲で戦艦に打撃を与えた後、即座にバクゥを取り付かせて武装の破壊とブリッジの制圧を進める予定だった。

 

その為の戦力がまさか数十秒の内に失われるなど誰が想定できるだろうか。

 

かつて無い危機感に襲われながらも、バルトフェルドは獰猛に笑った。

 

「共食いになっちゃうわね、アンディ」

 

複座型のラゴゥのコックピットで、銃手のシートに座るアイシャがからかう様に言うと、

 

「何、まだまだ戦力差はあるし、こちらにはこの戦場に対する一日の長と、勝利の女神までついてる」

 

軽妙な口調で改めてモニターに映るストライクを見た。

 

「あらお上手」

 

アイシャも各種火器管制を操作し、いつでも攻撃が開始出来るように備える。

 

「各機、足を止めるなよ。この砂漠の王者がバクゥであることを、お上品な二本足に叩き込んでやれ!」

 

『了解!』

 

随伴するバクゥ4機に指示を出しつつ、ラゴゥのジェネレーター出力を上げていく。

 

「アイシャ、ビームはクールタイムを計算に、確実に当てていこう」

 

「わかったわ」

 

「さあ、行くぞエスパー君!」

 

戦場は、最終局面に移行した。





・一言メモ
バブりアライグマハゲ……そう言えば誰も、彼が頭を剃り直したりしているところを見たことがない。
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