エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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キラは原作だとこの時点でフレイ寝取って艦内の腫れ物デイズの中で、やりたくもない戦闘させられて初めて相手の顔や考えを知ってる人間を殺して誰にも相談出来ず助けても貰えない感じでしたね。

……イカれてんのか? コズミック・イラは。



第51話 砂塵の向こうへ

 

ラゴゥの動きは時間が過ぎるごとに悪くなっていった。

左後ろ脚に動力を伝える部分に突き刺さったアーマーシュナイダーが原因だ。

 

それでも脚部に搭載されたキャタピラによる高速移動で的を絞らせず、アイシャの的確な砲撃によってなんとかストライクを近寄らせずに戦闘を継続している。

 

「ジリ貧だな。これは……」

 

コックピットで冷や汗を垂らしながら、バルトフェルドは呟いた。

 

「なら、撤退する?」

 

アイシャのからかう様な言葉に、しかし虎は笑った。

 

「何、まだまだ。レセップスの榴散弾頭は来る方向さえ分かっていれば、例え彼の乗るモビルアーマーとて避けられはしない。ダコスタ君がここを射程に収め次第、僕らの仕事は弾道観測に変更さ」

 

この戦闘の目的、それは戦艦の行動不能とブリッジの投降。

その為の策を練り、戦型を考えた。

 

しかしバルトフェルドは気付かない。

それぞれが違う、指定されたゴールに向けた競争は、設定されたゴールの難易度によって大きな差が生まれてしまうことを。

 

 

遥か遠方で、瞬きと共に爆煙が空へと立ち昇った。

少し遅れて、爆音が響く。

 

 

「!?……まさか、やられたのか!?」

 

その驚きが一瞬、眼前のストライクから意識を奪う。

 

「アンディ、正面!」

 

トリガーを引きながら、アイシャが叫ぶ。

 

ストライクが一気に距離を詰めようとしていた。

放たれたラゴゥのビームは僅かにストライクの肩を薙いだが、サーベルを取り落とす程の影響は無い。

 

更に距離が縮まった。

 

「チィッ!」

 

反射で後ろへ跳躍するも、着地と同時に左後脚部の出力が一気にダウンする。遂に限界を迎えたアクチュエーターが停止したのだ。

 

「せめてコイツだけでも!」

 

スラスターを吹かし、頭部の両脇から伸びるビームサーベルを、突き立てるようにストライクのシールドへ振り落とす。

 

そのまま、姿勢を入れ替えるように前腕のクローでシールドを掻い潜りストライクの胸部装甲を叩く。

 

「フェイズシフトさえなければな!」

 

毒づきながらも、振るわれたストライクのビームサーベルを自身のものでいなし、最大出力にしたスラスターの勢いのまま押し倒すように圧を掛けていく。

 

『バルトフェルドさん!……もう、やめてください!』

 

キラの悲痛な声がコックピットに響いた。

 

「アイシャ、撃て!」

 

僅かに通った射線にビームが放たれる。

その一撃は今度こそ、ストライクの右肩の装甲を撃ち貫いた。

 

『こんのおおおお!』

 

右腕の出力が半分以下に落ちた状態で組み合ったまま、キラはストライクの頭部イーゲルシュテルンを引き絞る。75mmの弾丸が、ラゴゥの背部ビーム砲塔を散々に打ち据える。

 

「……! アンディ、1門ダメになったみたい、それに、角度調整も!」

 

「上等だ!」

 

『やめろって、言ってるでしょ!』

 

なおも戦意衰えないバルトフェルドに対して、キラは凄まじいストレスを感じていた。

 

何故か――もうここから、アークエンジェル含めた味方が負けることは無いと確信したからだ

 

何故か――それなのに、それを理解しているだろうに、目の前の相手が戦いを放棄しないからだ

 

何故か――そんな、いい歳した大人の我儘に、何故自分が付き合わなければいけないのかという苛立ちがあるからだ

 

 

 

何故か――何よりもキラ自身が無意識に理解しているからだ。

 

目の前にいる()()はもう、自分の脅威にならないことをだ。

 

 

 

『バルトフェルドさん! 貴方を殺したくないっ!』

 

「言われてるわよ、アンディ」

 

「ふっ――それは情けのつもりかね、少年! お互いが武器を手にして戦場にいるんだぞ!」

 

どいつもこいつも、キラに命のやり取りを強要してくるのは何時だって敵だった。マリューやムウ、トール達でさえ、時には戦わなくてはいけない現状に、悔しさを滲ませていたというのに。カスは除いて。

 

まるで殺さなくてはいけないのだ、と。

一挙手一投足でキラに迫るのだ。

反発だってしたくなるというものだった。

 

『その上で! 命だけは助けてあげますから投降してくれって言ってんですよ!』

 

流石に癇に障る物言いに、バルトフェルドの笑みが剣呑なものに変わる。

 

「……ならばその青さ、この場で後悔させてやろう!」

 

『力が伴わない想いや言葉で、何が変えられるって言うんだ!!』

 

蹴りで突き放したラゴゥに、今度は自分から突っ込んでいく。

シールドを相手の頭にぶち当てて、更にイーゲルシュテルンをばら撒く。

 

「今更止まれるものか! 幾多の悲しみや後悔を乗り越えて、僕達は戦場にいるのだから!」

 

アラートの鳴り響くコックピットで、バルトフェルドは吠えた。

 

『戦うことを後悔するぐらいなら、何でこんなとこまで!』

 

「そうしなければ祖国が焼かれていた! ユニウスセブンのように!」

 

『その言葉を殺した人全員に言って回るつもりなんですか!?』

 

気味が悪かった。

ザフトの誰しもが免罪符の様に振りかざす()()に、人の魂が、悲しみや想いが、どれだけ込められていようとも。

出力されるのは報復による殺戮であることが。

 

「――っ!」

 

『真面目に戦争やってる人までそんな燃費の悪いこと言ってるから……』

 

いよいよストライクのバッテリーが危険域に突入する。

キラは、中立コロニーに住むなんてことない一人の少年だった彼は、戦士になった。それが今になって、無性に悔しかった。

 

『中立コロニーだって平気で撃つような人達が出て来るんですよ、バルトフェルドさん!!』

 

「知った風なことを!」

 

バルトフェルドはラゴゥの首をひねり、サーベルを器用にシールドの奥に突き込もうとする。同時に、その動きを囮にして前脚のクローを死角から伸ばし――

 

『それはもう、見飽きたよ!!!』

 

ラゴゥのビームサーベルは口元にあり、意表を突こうとすれば必然、首を動かすことになる。

そうして浮いた首元に、ストライクの全体重を乗せた膝が叩き込まれた。

追撃のシールドバッシュで、頭部を上から叩き落とす。

 

「ぐっ……いかん、伝達系が……ぐああああっ!!」

 

衝撃にコックピット内壁が歪み、バルトフェルドの左足を押し潰す。

 

「アンディ!」

 

アイシャは飛び出してバルトフェルドを持ち上げようとするも、それは叶わなかった。

 

ミシミシと音が響くと、コックピットに日の光が差す。

ストライクが装甲を剥ぎ取ったのだ。

 

『……僕の勝ちだ……もう、もうやめましょうよ』

 

勝者である彼の声は、今にも泣きそうな少年のものだった。

 

「泣かせちゃったわね、アンディ」

 

「やれやれ、まるでこっちが悪者だな……悪者、か……」

 

砂漠を吹き抜ける風に、それまでの熱気が嘘のように飛散していった。

 

 

『でーっでっででー! でっでっでー! でっでっでー!』

 

 

そこにカスが来襲した。

 

『あれー? あれあれー!? 負けちゃったのアンディ? アチュくなっちゃったのかなぁ?』

 

2機の周りを旋回しながら、外部スピーカーで苛立たしい声を上げるカス・フライトタイプは、徐々に高度を落とし始めた。どうやら着陸する気らしい。

 

「アイシャ、アレなんとか撃ち落とせないかな?」

 

「ごめんなさいアンディ、流石に無理だわ」

 

『敗北者インタビューの時間だオラァ!』

 

実ににこやかな笑顔のカスが、着陸したスカイグラスパーのコックピットから飛び降りて来る。

 

「どぅーもー! 砂漠のディアブロスことアンドリュー・バルトフェルドさん、ざーっす! 本日はピクニックですかぁ? ペットのワンちゃん達は皆おねむみたいですが、YOUは何しにここに!?」

 

そのままダッシュで2人のいるコックピットへよじ登ると、マイク代わりに銃口を突きつけてインタビューを開始した。

 

「っ、あなたは……!」

 

アイシャが迷わずバルトフェルドの前に出た。

足を潰されたバルトフェルドは未だにコックピットから出られない。彼女が盾となるように、その身を銃口の前に晒すしかなかった。

 

「よせっ! アイシャ!」

 

「はっはぁん」

 

パァン

 

何の躊躇いもなく撃ち放たれた銃弾が、アイシャの左肩を貫いた。

 

「ああっ!」

 

「アイシャ!!! やめろ、やめてくれセイル・オランチョ! 頼む!!」

 

何とかコックピットから這い出ようとするバルトフェルドだが、叶わず、懇願の苦鳴を上げることしか出来なかった。

 

「おいおい、俺は死んでも女は撃たねえ感じのアレでやらしてもらってる男だぜ? その俺に撃たれるとは何様のつもりだ? 死んで詫びようか?」

 

カスはゆっくりと、銃口を巡らせてこちらを睨むバルトフェルドへ照準を合わせた。

 

「……駄目よ」

 

そのバルトフェルドに、覆い被さるように、アイシャはその身を盾にした。

 

「やめろアイシャ! どくんだ! どいてくれ!!……頼むよっ」

 

パァン

 

今度は右大腿部だ。覆い被さってきたアイシャの身体から、力が抜けていく。

 

「逃げてくれ、アイシャ、アイシャ!」

 

「……生きてね、アンディ」

 

「ありふれた行為も、愛によるなら美しい……昔の詩人は良いこと言うね」

 

タバコに火をつけながら、感心したように首を振るカス。

 

「退屈なクソテンプレシーンがまるでクライマックスみてえだ」

 

「僕を殺せ! 僕をだ! 彼女は、彼女だけは!!」

 

限界まで身を乗り出して、前に出ようとするバルトフェルド。

 

そこへカスの銃口が向けられる。

 

「お前らはここで死んどかねえと……また地球で人を殺すんだろう?」

 

『……隊長、やめてください、そんなこと』

 

ストライクからキラの声がする。

緊張した様子の声色は、否応なしにバルトフェルドの危機感を煽った。

 

「僕だけにしろ、頼む……!」

 

パァン

 

放たれた銃弾は、()()()()()()()()()()へ吸い込まれた。

 

「ぐあっ……!」

 

「やっぱブレるなぁ……」

 

カスは銃をしまうと、2人の傍に近寄ってしゃがみ込んだ。

 

「ミジメなもんだよなぁ、ガキに負けて、女に庇われ、命乞いだ……男として立つべきものが何もねえ、インポってやつだぜぇ?」

 

「くっ……笑いに来たのか?」

 

下から睨みつけるバルトフェルドに、カスはニヤニヤとした笑みを返す。

 

「そこまで暇じゃねえよ」

 

煙を輪っかにして吐き出す。

 

「優秀な奴がやりてえ事をやらねえの、見てて腹立つんだよね」

 

「……なに?」

 

「いざって時に命懸けで自分をかばう女を横に置いて、戦争なんて無理だろって話さ」

 

立ち上がったカスはタバコをその場で踏み消した。

 

「今回は俺等の勝ちだよ。救助は呼んどいてやるから、何で負けたのか次回までに考えといてください……ああ、マグノフの借りはそれでチャラだ」

 

ストライクにタラップを降ろすよう指示をしながら、カスは振り向いた。

 

「その内、また会おうや。そん時ゃサシで酒な。ああ、女撃ったのは悪かったよ。しばらくは仲良く入院生活を楽しんでくれ」

 

「……何故、殺さなかった?」

 

「馬鹿言え。弾が逸れたんだよ……砂のせいかな」

 

「そうか……それは、砂のせいだな」

 

その時、一際強い風が周囲の砂を巻き上げた。

空に目をやると細かな粒子がキラキラと舞う。空は、その向こうに何も無いと言うかのように青く広がっていた。

 

『あー、あー、こちらはカズイ・バスカーク、アンドリュー・バルトフェルドの乗機を撃墜した。ポイントは――』

 

遠くに聞こえるカスの声を無視して、バルトフェルドは今一度アイシャの身体を抱き締めた。

そっと、抱き返されるささやかな感触だけが、今この時の彼にとっての現実だった。





あった……? 撃つ必要……?
舐めてたら砂漠編めちゃ長くなったので鯱さんは巻きます。


【次回予告】

や め て !

砂漠での不完全燃焼でストレスの溜まったムウに

空戦用のディンを全部焼き払われたら、

カスがドラム缶に地雷を仕込んだクソ雑な爆雷に対処出来ない

グーンを指揮してるモラシムの精神まで燃え尽きちゃう!


お願い、死なないでモラシム!

あんたがここで倒れたら、バルトフェルドの無念や

クルーゼへのドヤ顔勝利報告はどうなっちゃうの?


命はまだ残ってる! ここを耐えればカスに

勝てるんだから!


次回
カス『ハイハイハイハイ! モラシム君の、ちょっといいとこ見てみたぁい!』


デュエルスタンバイ!! ガンダム!!(cv.三石琴乃)


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