エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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最後に空が青けりゃ何となく赦されるもんなんすよ


第三章 カスが戦艦でやって来る
第52話 いやー紅海の鯱は強敵でしたね


 

「だんだん動かなくなってきたな」

 

セイルは3本目の煙草に火をつけながらボヤいた。

 

「そりゃお前、土手っ腹撃った上で機体にランサーダート(そんなもん)3発も打ちこんだらそうだろよ」

 

その横で、ムウが飲料水の入ったボトルを傾けつつ言う。

2人は今、アークエンジェルの甲板上にいた。つい数日前までは行けども行けども砂漠しかなかったのに比べ、見渡す限りの大海原が広がっている。

 

そんな甲板上に、わざわざ格納庫から引っ張り出してきた整備用のクレーンが一台置かれている。

クレーンの先には紐が、そのさらに先には網が。

 

その網の中には、緑色のホヤみたいな物体が引っ掛けられていた。

 

まあ、手足をもがれたザフト軍の水中用MSゾノだった。

 

首周りのミサイルは撃ち尽くし、手足がないそのゾノは、コックピットの装甲を剥ぎ取られ搭乗者が丸見えになっている。

 

ついでに胴体部にはランサーダートが3本程打ち込まれており、カスが手にするスイッチでいつでも起爆できるようになっていた。他にも数本のケーブルがコックピットから引かれており、いくつかのスイッチが同じくカスの手元にあった。

 

「あんだけ粋がってたのよ? なあおい、ちょっと疲れちまっただけだろ? そうだよな?」

 

 

「モラシム?」

 

「クソがあああああ! 殺せっ! 殺せぇ!!」

 

 

その搭乗者、マルコ・モラシム。自身も腹をカスに撃たれ、地球上に存在するパイロットで、最新のベストオブ風前の灯が彼だった。

 

そんなモラシムの怒声に、カスは不快そうに舌打ちを返した。

 

「会ったばかりの人間に命令するとか常識ねえのか? 死ねよ」

 

「地獄の通夜でももうちょい慈悲があるだろ」

 

もはや何言ってもモラシムの運命は変わらないであろうことを理解しているムウは、一応常識人側のポジから発言した。

しかし当然、カスにそんな言葉が響くはずもない。

 

「常識のねえ奴には何やらせても駄目さ。ユニウスセブンで野垂れ死にしたコイツの嫁やガキも、さぞかし救いようのないゴミだったに違いねえ。そうだろモラシム?」

 

その言葉に、モラシムの脳裏をかつて幸せだった家族との思い出が過ぎる。

 

「がああああああああああ!!!!!」

 

そうだ、許してはいけない、絶対に許してはいけない相手が今、目の前にいるじゃないか。待っていろ、今父さんが仇を打ってやるからな……

 

「お、発作かな? 電気ショックー」

 

カスがゾノのコックピットから引いてきたケーブルの内、1本の先に繋がるスイッチを押した。

 

「あばばばばばばばばばばば!」

 

使い捨てバッテリーから作った雑な拷問装置により、致死量一歩手前の電撃がモラシムを直撃する。

 

「ギャハハハ! 眼球グルグルしてんぜ見ろよタカちん!」

 

「お前が味方で良かったとつくづく思うよ」

 

「シテ……コロシテ……」

 

モラシムの心はついに折れた模様だった。

 

「知るかボケ、俺の輝かしい経歴に捕虜殺害なんて汚点つける気か? さてはブルーコスモスだなてめえ」

 

「ブルーコスモス嫌い過ぎだろ……気持ちはわかるがザフトにそれを言ってやんなよ」

 

「つーわけでリリース!」

 

スイッチを押すと、クレーンに吊るされていたケーブルが火薬で爆破され、ゾノを空中へ投げ出した。当然だが、下には大海原が広がっている。

 

「あ…………?」

 

唖然とした間抜け面を浮かべたモラシムは、愛機と共に落ちていった。

 

「数十キロ泳げば陸地だよ。その手足のねえ穴だらけの鉄くずでも奇跡が起きればたどり着けるさ」

 

「一番近い陸地、砂漠だけどな」

 

「あ、ランサーダート起爆するの忘れてた」

 

ポチポチポチッ

 

ヂュドン……パシャパシャパシャ……

 

哀れなモラシムは魚のエサにジョブチェンジした。

 

「お前ほんと……ほんとさぁ」

 

ムウは若干引いた目をカスに向けた。

 

「砂漠で粋がってた虎よりも、制海権抑えてるこいつらのが数千倍邪魔なんだから仕方ねえだろ。海軍弱過ぎんだよウチ」

 

それを言われるとなぁ、とムウも頭を掻く。

 

「せめてカーペンタリアが無事だったらな……潜水艦も艦船も接近戦は想定してないし。確かにあのサイズのMSは厄介だよなぁ」

 

「奴は犠牲になったのさ。戦争の、犠牲の犠牲にな」

 

カスは知った風な顔で聞いた風なことを抜かす。

 

「お前が火影になったらあの世界終わるんだろうな」

 

こいつの顔が岩に掘られてる国、普通にやだな。ムウは思った。

 

「正直、穢土転生が必修になってない理由がわからない。下忍の卒業試験にするべきレベル。血継限界のエドテン牧場を作ろう」

 

「作品のジャンル変わりそう。そこはほら、禁術だからさ」

 

「チョウジぶっ殺してエドテンして影分身超倍化起爆札コンボで各里に突っ込ませれば天下取れるやん」

 

「地鳴らしかて。チョウジが何したってんだよ。戦後ナウシカみたいな世界になってそう」

 

「あとお色気の術は貞淑な人妻に無理やり使わせるのが絶対アツい」

 

「ちょ、待てよ。ツンデレで素直になれない子が好きな奴相手に自分からやってる方が興奮する」

 

「……つまり、自分の事を古臭くて時代遅れで好きになってもらえないと自認しているカグヤが流行りのアイドルの顔使って……」

 

「おいおいおい……()()、出ちまったか?」

 

グッ、パッ、タシッ、タシッ、グッ、パン

 

カスとバカ、ちょっと年齢差のある2人の奇跡的邂逅であった。

 

「ちな俺はハクが好きだった。夏休みの自由研究で彼にちんちんがついてない論理的根拠ってレポート書いた」

 

「イカれてんのか? あんな可愛い子にちんちんついてない訳ないだろ」

 

「は?」

 

「あ?」

 

ビキビキビキビキ

 

宗教上の不一致により、逆だったかもしんねぇ、的な睨み合いが発生したところで、ブリッジからの通信がカスの通信機に入った。

 

『あの、隊長?』

 

「どしたんミリりっちょ」

 

『割と副艦長がキレてるので怖いから言いますけど』

 

バカは早々に撤退をキメることにした。

 

「おいおい、ちゃんと謝っとけよセイル」

 

カスは現実逃避することにした。

 

「ナタルちゃんは再不斬が好きなんだよ。最終決戦読みながらボロ泣きしててな」

 

しかしミリアリアも慣れたものだ。要件だけとっとと伝えてしまうことにする。

 

『戦闘中に飛び出してったカガリさんが行方不明なんですよ』

 

「ウケる」

 

「嘘だろおい」

 

「つか海上で戦艦から飛び出すってなんだよ。脳みそ軽すぎて飛べると思ったのか?」

 

『捜索お願い出来ますか?』

 

「無理、おなか痛い」

 

『あの』

 

「無理、足の爪切らなきゃ」

 

『カガリさん、隊長のスカイグラスパーに乗ってったんですけど』

 

 

「ぶっっっっっ殺すぞあんガキャアアア!!! 生きたままスライサーにかけて魚の餌にしてやるぁ!!!」

 

 

「過去イチでキレるじゃん」

 

「はあ? 折角キラ達に徹夜させて完成した俺カスタムが? あのクソガキに? なんで乗せた? タカちん?」

 

しょうがないじゃん、と手を広げるムウ。

 

「戦闘直後で周辺警戒が必要だったんだよ。指定のコース飛んで、なんか見つけたら戻って来るってだけ。つか俺だって自分のに乗せんのはヤダよ。セッティングイジられたくないもん」

 

「おいマードック!! 適当なミサイルに段ボールでコックピット作ってあのガキ専用機としてくれてやれ! 二度と俺の機体に触らせんな!!」

 

『だから言ったじゃないですかフラガ大尉……絶対面倒くさくなるって』

 

頭痛を堪えるようなマードックの声に、カスの目がムウに向けられる。

 

「いやホント、簡単な偵察飛行だったし、俺の機体は修理したてで飛ばしたから点検必須だったしで……」

 

「クソが……戦闘後に発艦してんのは見たが、てっきりニコル辺りが乗ってんのかと思ったぜ」

 

『ニコル君はCICですって。カズイはともかく、サイはまだ白湯しか飲めないから』

 

ミリアリアは呆れたように告げた。

 

『バブりしゃす』

 

大丈夫、この艦では平常運転だから、これ。

 

『カズイもギリ人語を理解出来るレベルですし』

 

慣れたの私、もう慣れたのよ。

 

「クソガキがぁ……今から不眠不休で捜索に出るキラのことも考えろよ!」

 

仲間の負担を思うと怒りが次から次に湧いてくる。カスは憤った様子で吐き捨てた。

 

『え』

 

さっきまでバズーカ両手に海に潜ったり飛び出したりしていたキラは、格納庫で驚きの声を上げた。

 

「マードック、ブリッツとエールストライクだと、どっちのが飛行時間長い感じ?」

 

『まあ……飛べても十数分ですが、エールじゃないですかね。ブリッツのは飛べはしますが、基本推力のゴリ押しなんで燃費が悪いんすよ』

 

「キラ、行け」

 

『え、え?』

 

「悪い坊主、俺も点検終わったらすぐ出るから」

 

「クソが! 気分悪いぜ! 酒飲んで寝る!!」

 

『オランチョ中尉』

 

そこへ女帝から声が掛かった。

 

「その前にナタルちゃんのお尻揉まなきゃ、すぐ行くよ」

 

『キサカ一佐より伝言です。お約束の支援にプラスアルファをもぎ取るので、どうか、と』

 

その言葉に、数瞬の迷いがカスの動きを止めた。

そして、

 

「はぁああああああ…………戻ったらおっぱい揉んでいい?」

 

どうやら諦めたらしいカスのため息が響いた。

 

『駄目に決まってるでしょう』

 

「じゃハグ。俺からは触んないようにするから。正面からギュってするやつ」

 

『……それ位なら、まあ……あ、いえ、見つけられたらですよ?』

 

ナタルの見せた一瞬の隙、そう、隙の糸を見つけた瞬間、ブリッジで息を吹き返す人間がいた。

 

 

『オランチョ中尉は直ちに発進! 何としてもカガリさんを見つけ出すのよ!』

 

 

下世話な呼吸、一の型、しゃしゃりババァ。まあ、マリュー・ラミアスである。

 

『うわ艦長なんです急に』

 

『さっきまで船酔いしてたのに』

 

ミリアリアとトールが驚きの声を出す。

船酔い、と聞いて合点がいったようにカスも同調する。

 

「あー、凄かったもんなノイマンの《海面石切りドリフトから急上昇、からの直滑降》」

 

頷きながらムウも思い返す。

 

「俺そのまま海に落ちるかと思ったわ」

 

「戦艦でMS轢くとあんなグシャグシャになんのな」

 

「あのディンは可哀想だったな」

 

『二度とゴメンですよ……艦長がこんな指示する人だとは』

 

2人の会話に耐えられなくなったのか、人類史上初、《戦艦による打撃》でMSを撃墜した男、アーノルド・ノイマンが割り込んできた。

 

「お、殺人運ちゃん、ちーっす」

 

『やめてください……』

 

『誤解よ!? 私は臨機応変に避けながら射線確保って言っただけで……』

 

「艦長、それはギリ指示とは呼べないんだよ……?」

 

「射線確保だけなら別に高度取って半回転とかでよくね?」

 

『それは……確かに……いや、でも……うーん』

 

マリューはカスの指摘に悩み出す。

 

ナタルはそんなバカどもの一切を無視して的確に指示を出した。

 

『とにかく、オランチョ中尉はすぐに発艦し、指定ポイントまで捜索を。事前に予定していた警戒ルートの終点です。そこまでに見つからなければ、それより先でしょう』

 

「オッケー、アークエンジェルも終点まで来る感じ?」

 

『ええ、そこを起点に捜索します。まずは中尉、次にヤマト、最後に大尉の順でローテーションにします。大尉には申し訳ありませんが、スカイグラスパーの行動範囲に頼らせて頂きます』

 

「ま、嬢ちゃんの出撃に許可出した手前、しゃあないか」

 

ムウは隣のカスの肩を叩いた。

 

「オーブに着いたら一杯奢るよ」

 

「おー、マジ徹夜とかになったらガチでぶっ殺すあのガキ……」

 

 

なおカガリが発見されたのは翌朝だった。

明らかにちょっと前までMSがいた形跡も見つかり、カスは大いにキレた。

 

 

「せめて殺しとけよてめえ! 国も親父もてめえも揃って役立たずじゃねえか!」

 

「こ、殺されたから殺し――」

 

「るせえ! んなもんは殺してから考えりゃいいんだよタコ! 戦場において敵兵の殺害は全てにおいて優先されんだよ! おめえが見逃した敵がどっかで誰かのガキを殺すんだぞ! わかってんのかバカガキが!!」

 

「うう……」

 

ガン詰めされてボロ泣きしたところをキラに庇われて、カガリのなつき度がカンストした。

 

晴れやかな青い空の下、一行はオーブへと進路をとったのだった。





海に出る。
モラシム来襲。
ムウさん大活躍。
カス式ドラム缶爆雷で動きの鈍ったグーンをキラがバズーカで仕留めていく。

第8艦隊から持ち込んだワイヤー網をばら撒いたらまさか隊長機が引っ掛かったので、ブリッツでダルマにして即座に銃弾とランサーダートを打ち込んで拷問準備して冒頭のシーンですね。

本気で巻いたらこんなもんですよ。


なお、ドリフト時に頭を打ったせいでナタルは若干フワついていました。
隙ですね。

Tips:カスとバカ、漫画の趣味が同じ

こいつらの会話は無限に書いていられる。

赤服共が地球にインしました。
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