エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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もしかして……まさかとは思うんですが……『〇〇という考えは原作キャラにはなかった。あったらこういう言動をしただろう』というのは、キャラ崩壊になるんですかね……
そういう意味では今回は特にキャラ崩壊気味な話かもしれませんね。


第54話 罪より速く、罰より先へ

 

「ノイマン曹長! 前方を塞いでるディンを蹴散らして!」

 

マリューの鋭くフワついた指示がブリッジに響いた。

 

「操舵手への指示じゃありませんよ! くそおおおっ!」

 

「当たったぁ! ホントにすげえ!」

 

ヤケクソ気味なノイマンの操作に、アークエンジェルの左前脚にあたる部分が進行方向上のディンを直撃した。

トールが驚きの声を漏らす。

 

『こちら格納庫! 今の衝撃は何です!? 危うく崩れた機材の下敷きになるとこでしたよ!』

 

「攻撃を受けたわ! ダメージコントロールをお願い!」

 

すかさずマードックから確認が入ったものの、鋼の精神があったらいいのにな、と常々思っているマリューはシレッと真実を握り潰した。

 

 

 

オーブ近海まで来て、ついにアークエンジェルはザフトに捕捉された。

数機のディンが足止めを目的とした遅滞戦闘に徹する中、次々と集まってくるザフトのMSに、グゥルと呼ばれるサブフライトシステムを駆るデュエルまでもが参戦して来ると、戦況は膠着の様子を見せ始めた。

 

そもそもが、アークエンジェルは損傷を騙し騙しでここまで来ている。おまけに空中戦の切り札であるスカイグラスパーはG兵器を相手には荷が重過ぎた。

 

ディン達が中距離支援に徹すると、それを受けたデュエルは2機のスカイグラスパーを追い散らしながらアークエンジェルへと迫る。

 

敵が捜索網を構築する為、部隊を広げていたことが唯一の救いとなり、まだこの場にGは揃っていない。しかし数を増しつつあるディンと、デュエルの猛攻は鬼気迫るものがあった。

 

「フラガ機、敵陣右翼を突破しました! 反転して挟撃に入ります!」

 

徐々に追い詰められていく中、オペレーターのミリアリアより朗報が発せられる。

ディンの群れを掻い潜ったムウが、敵右翼の後ろを突いた形となった。

 

即座にナタルから指示が飛ぶ。

 

「正面甲板のストライクに砲打撃支援をさせろ! 徹底して右翼を叩け! 中尉は!?」

 

「敵陣左翼でフッケバイン・プロトコルを施行中! サイとカズイが着いてます!」

 

トールからの報告に頷くと、ナタルはマリューへ向く。

 

「艦長、敵左翼を本艦の突入ルートとすることを打診いたします。挟撃で右翼を釣り出せれば、成功する可能性は高いかと」

 

「いいわ、やってちょうだい! 本艦はそれまで敵陣中央突破を偽装します! 進路このまま、ゴットフリート照準、てー!」

 

損傷で速度を落としながらも、アークエンジェルは前進を続けた。

全員が、ここで足を止めれば終わりだということを理解していた。

 

「グリーンチャーリーより戦域に高速で接近して来る機体を確認! 照合結果……イージスとバスターです! クソ、速い!」

 

チャンドラから悲鳴のような声が上がる。

 

「3機のGが連携を始める前に突破します! 機関全速!」

 

「全門開け! 撃ち尽くしてもいい! 敵を寄せ付けるな!」

 

マリューはナタルと一瞬視線を交わらせると、おのが責務に心血を注いだ。

 

しかし、刻一刻と終わりの時は近付いていた。

事前の検討でも、海上で向こうにG3機が揃えば、まず真っ先に艦が沈むと予測されていたからだ。

 

ブリッジのクルー全員が冷たい汗を背筋に感じていた。

 

 

 

 

『こちらはオーブ艦隊である。貴艦は我が国の領海を侵犯して――』

 

 

 

そこへ、待ち望んでいた第三者の介入が発生した。

 

「今よ! オペレーション・ニュートラルブレイカー(中立殺し)、スタート!」

 

その警告を聞いた瞬間に、マリューは叫んでいた。

今はただ、走り抜けるしかない。

 

最速で、それでいて最短を!

罪悪感を感じる前に!!

 

「ザフト軍、停止しました!」

 

「機関出力20%! 着水まで15秒!」

 

「所定の装甲を剥離します!」

 

「偽装用火薬点火!」

 

「煙幕全開!」

 

「着水と同時に救難信号発信して微速前進! 目標、オーブ艦隊後方!」

 

「ローエングリン展開、充填開始!」

 

「オーブ艦隊向けに共用周波数で録音データ流します!」

 

次々に《仕込み》を実行していくクルー達。

彼らの心は今ひとつになっていた。

 

「よし、やれ!」

 

ナタルの号令に合わせて、

 

『え〜、親愛なるオーブ艦隊の皆様、毎度おなじみ、皆様に愛される正義の軍団、地球連合軍、地球連合軍でございまぁす。任務ご苦労様でございまぁす』

 

録音されていたカスの声が、周波数に乗ってオーブ艦隊へと届流れ始めた。

何となく、丁寧で穏やかで、それでいて耳障りな声音だった。こんなモノを運ぶなんて、きっと世界で一番汚い電波だろうな、とマリューは思った。

 

『本日は皆様にお願いがあっての参上となりまぁす。お騒がせして申し訳ぇございません。あ、お手を振ってのご声援、ありがとうございまぁす。頑張って参りまぁす』

 

誰も手など振ってはいない。

 

『オーブ首長国連合の前代表、ウズミ・ナラ・アスハ閣下の御息女を、当艦にて保護しております。閣下におかれましてはぁ、さぞ御心配されたことかとぉ、思われます。我々も大変心を痛めておりまぁす』

 

心とかあったんか?

 

『え〜、御息女は心に大変な傷を負い、一刻も早い祖国での休息を必要としておりまぁす。つきましては我々を、あ、ワンちゃんをお連れのお父様も、応援ありがとうござぁいまぁす。え〜我々を、貴国までご牽引頂けますよう、よろしくお願いいたしまぁす』

 

ワンちゃんを連れたお父様もいない。

 

『なお、この要求が聞き入れられない場合、誠に残念ではございますが閣下の御息女には我々と共にアラスカまでお越し頂く予定となっておりまぁす。つきましてはぁ、ご発言、ご判断に責任の持てる方からのご連絡をお待ちしておりまぁす』

 

そして、その選挙カー地味た感じは唐突に終わった。

 

『え〜、え〜……メンド、領海内を陽電子砲で汚染されたくなけりゃこれ以上無駄な時間を――』

 

マリューの背筋が凍る。

 

「音声止めて!」

 

途端に慌ただしさを増すブリッジ。

 

「最後の何だよ!」

 

「誰だよデータチェックしたの!」

 

「ああこれ、外向け通信での再生時にだけ有効になるマスクデータですね。この条件付けの癖は、キラさんかな」

 

音声データを解析したニコルが苦笑いして言った。

 

「何してくれてんだキラァ!」

 

「俺達母国に帰れるどころか武装テロリストじゃないかキラァ!」

 

トールとサイがキレる。

というか、追い詰められすぎて迷子になった感情が爆発していた。

 

「砲塔が! 戦艦の砲塔がこっち向いてます!」

 

半泣きになりながらミリアリアが報告を上げる。

すわここまでか、となった時、ニコルが気付いた。

 

「音声データ、まだ続きがあるようですね……」

 

「艦長、この状況であの男が考えもなしにあの発言をするとは思えません。もしかしたら……」

 

ナタルは思わせ振りなところでセリフを止めた。

 

「もしかしたら何!? 何で最後まで言わないのナタル!? 私に判断させようとしてる!? 私に命令させようとしてるでしょ!?」

 

パニック寸前のマリューは疑心暗鬼となって責めるが、ナタルはそっと目を逸らして帽子のつばで目元を隠した。

 

「艦長!!」

 

そしてそのまま、再びそう叫んだ。

汚い大人の処世術を見せつけながら。

だが、それで十分だとナタルは判断していた。伊達に十年以上もカスと一緒にいるわけではないのだ。

あの男が周囲に齎す影響は、主に悪い方面で甚大だが、良い側面もある。

 

「もおおおおおっ! ミリアリアさん! 続き流して!」

 

それは、関わった連中が良くも悪くも思い切りの良さに目覚めることだった。

諦めの境地とも言える。

 

「は、はいっ!」

 

かくして、再びカスレコが再生される。

 

 

『これ以上無駄な時間をかけさすな。こっちはお前らが見捨てたヘリオポリスの避難民を救助し、責任を持って地球へ送り届け、更には政治家の一人娘まで護送してやってる。恩義に報いろ。軍事的ではなく、政治的な判断を仰げ』

 

普通にいつものカスだった。

マリューは心で十字を切った。

 

『この音声が終了次第、オーブ艦隊代表者は当該周波数にて当艦へ連絡せよ。なお、我々はお前らの技術部門が欲しがってるデータを有している。その事を上層部へ伝達の上、速やかに対応されたし』

 

その通信、繋ぐの私? 嫌だな、とミリアリアは思っていた。

 

『また、当艦の陽電子砲は、貴国軍艦から攻撃を受けた、と我々が判断した瞬間に速やかに発射する。攻撃してくる場合、それが誰の指示で、誰の責任によるものか明確にすることをオススメする』

 

大人が責任に弱いのはどの世界も一緒だ。実に嫌らしい物言いである。

 

『また、我々は貴国軍人であるレドニル・キサカ一佐より、御息女の生殺与奪全ての管理を委譲されている。その為、いかなる交渉、脅しの類を受けても、御息女だけを先に解放することはない』

 

はい、人質入りましたー。

 

『その辺よく考えて慎重によろしく。ああ、もしザフトがこちらを追跡していたら追い返すように。その際貴軍に発生する損害について、当方は一切関知しないものとする』

 

トッピング追いカスで。

 

『以上だ。地球連合軍第8艦隊所属、アークエンジェル乗組員一同より』

 

 

 

「「「「「「あんの野郎!!!」」」」」」

 

 

 

マリュー、ノイマン、チャンドラ、トール、ミリアリア、サイが叫んだ。カズイは『バッブゥ』と呻いた。

 

「いや違うんです、委譲はしてないんですが、してようがしてまいが彼等には関係ないと言いますか、特にヤバいのが1、2人いまして……いえ、躊躇う人間が少ない事は確かなんですが……」

 

その後ろで、悲しきオーブ軍人のキサカが通信機を片手に虚空に向かってひたすら頭を下げていた。

 

「いえ、違います、私は寝返ってないです」

 

「違います、私はオーブの獅子身中の虫ではないです」

 

「いや、別に上手いこと言った訳では」

 

きゅるきゅると胃が音を立てた。

ゲリラやってた時の方がマシだったな、キサカ、まさかの悔恨であった。

 

そうこうしている内に状況は進む。

 

「艦載機、各機着艦します」

 

「オーブ軍、ザフトに対し警告を開始」

 

「艦長、オーブ軍司令部より通伝です」

 

「オーブ軍の艦船より曳航用ワイヤー受け入れ依頼来てます」

 

「ナタルゥ……」

 

「……わかりました、同席しますから。そんな目で見ないで下さい……ああ、ケーニヒ二等兵、受け入れ依頼は許可して進めろ」

 

ため息をついたナタルが横に着くと、マリューは久し振りに腹部に痛みを感じた。

 

「……嘘でしょ? モルヒネでも駄目なの?」

 

呆然と呟く彼女に、ナタルが尋ねる。

 

「穴でも空きましたか?」

 

「もしそうなら、次の艦長は貴方ね、ナタル」

 

冗談口調でめかし込んだ本音に、ナタルは事も無げに答えた。

 

「御冗談を。第8艦隊上層部なら胃潰瘍まではかすり傷判定ですよ」

 

「一緒にしないでもらえるかしら、その界隈と」

 

貴方は十分()()()()なんですよ、とは、流石にナタルも言わなかった。彼女にも人並みに人の情というものは持ち合わせていたからだ。

 

それでもブリッジクルーの全員が、曳航準備が進むのを見てどうやら自分達は助かりそうだ、ということは理解出来た。

 

地球に降りて数日。激戦区の洗礼を受けたアークエンジェルはようやく翼を休める場所に辿り着いたようだった。





カス一行、オーブにヘッスラ。

でも皆、石田彰が毎晩頼めば良い声で音読してくれるって言われたら参加はするやろ? アスランがやるから異常な訳で。

ワンダフルスワンKKが天才の発想過ぎる。
やっぱ創作界隈の行く道は誰かが通った道なんやなぁ。
つまりカスも普通にいる……いる?
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