エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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AI君ですが何回言っても眉毛金にさせると超サイヤ人にするので断念しました。無念です。僕の部下だったら詰め◯してるんですけどね(小粋なジョーク)。


第56話 舞い降りた悪魔(中編)

 

「あの、まずはこちらの話を聞いて……」

 

相変わらず腰を抱き寄せられながら、エリカは何とか言い出した。

 

「聞くとも。変わりに場所は選ばせてもらっても?」

 

カスは予定調和のようにエリカを連れてアークエンジェルへ向かおうとする。

 

「ば、場所って……」

 

「んー……戦艦の艦長席で抱かれたことは? それか、MSのコックピット」

 

いよいよもってヤバいらしい。

 

「いえ、ですから本当に私は――」

 

そこに、

 

「やめろバカァ!」

 

スコンッ!

 

カスの後頭部に空の紙コップがぶつかり、地面に落ちた。

カスが振り向くと、そこには鼻息を荒くしたカガリと、何やらギャルゲーではヒロインの友人枠で専用ルートが無いタイプの半モブチックな3人娘がパイロットスーツ姿で立っていた。

 

「……」

 

カスは地面に落ちた紙コップに視線をやる。

 

「……」

 

それを自分に投げ付けたカガリへ目を移す。

 

 

 

「……………………アハッ☆」

 

 

 

カチャカチャカチャカチャカチャカチャ……

 

無言のままエリカから手を離したカスは、笑顔を浮かべてポケットから取り出したバタフライナイフをカチャつかせながら早足でカガリに近付いて行った。

 

「うわああああ来た来た来たっ! 怖い怖い怖い! アサギィ!」

 

「勢いで突っ走り過ぎですよカガリ様……はい、ちょっと、それ以上近付かないで!」

 

3人娘の内、公式のアンケートでは一番支持者が多そうな金髪ショートで強気そうな目の少女はカガリの前に出ると、ベレッタを抜きセイフティを外しながらカスへと向けた。

 

その時にはもう、カスのナイフは回転しながら彼女……アサギに向かって投げ付けられていた。

 

「え、きゃっ!」

 

思わず身を竦めた所に、たまたま刃以外のところが腕に当たる。

そのナイフが地面に落ちるより早く、もうカスはアサギの目の前にいた。

 

カスの長い脚がアサギとカガリの足元をまとめて薙ぐ。

 

「うわっ!」「や、ちょ!」

 

倒れたアサギの胸元に、カスの膝が落ちてくる。

受けたことの無い暴力により呼吸が止まったアサギを他所に、カスの手はカガリの髪を鷲掴みにしていた。

 

「あ……!」

 

後頭部から地面に叩きつけられた。

思わず口を空けて苦悶を漏らすカガリの口へ、空いた手でアサギの拳銃を持ったままの手を上から握り、銃口を突き込んだ。

 

凄まじい膂力に、2人揃ってロクな抵抗も出来ない。

 

「な、何この人!」

 

3人娘の内、ボーイッシュで薄い本の業界では一部ネームドキャラ以上の人気が出そうな少女が慌てて銃を抜き始める。

 

「ちょっと、2人を離しなさい!」

 

残りのセリフはあるのに影が薄く、何をするにも中途半端な立ち位置で気が付いたら死んでいそうな少女も、隙あらば二人を助けようと身構えている。

 

カスはちょっと銃口をカガリの口から引き抜くと、アサギの必死の抵抗も意に介することなく、重ねた指を操作して引き金を引いた。

 

パン、と火薬の爆ぜる音と共に、カガリの顔のすぐ横に火花が散る。

 

「……」

 

カスは再度銃口をカガリの口に突き入れた。

何の手加減も無い仕草に、下手に口を閉じたら歯を折られるとカガリは確信した。発砲したばかりの銃口が当たり、舌が火傷をする。

 

しかし押さえつける力が強く逃げられない。

 

そしてそれを見て、周りの2人……マユラとジュリも動きを止めた。

だってコイツは撃つからだ。確実に、間違いなく撃つからだ。そう信じさせる圧が背中から発されていた。

 

「お姫様、なんて悪い子なんだ。パパの頭にゴミをぶつけるなんて……俺は悲しいよ。なんてったって、このまま撃ったらお前の脳漿で俺の袖が汚れちまうんだ」

 

ゴリ、と口内に深く重心が捩じ込まれる。

これでは喋ることもままならないが、当然、目の前の男がそんな事を気にする人間でないのは理解していた。

 

「お、おがっ、えう……え、えぃあは……」

 

「バカにしてんのかてめえ。俺に銃を向けた金髪の全殺しは確定として、その前にお前の目の前でわかりやすく痛めつけてやっても、構わないんだぜ?」

 

「はっ……はっ……」

 

激痛と満足に息も出来ない状況に、カスの声を聞いたアサギが僅かに抵抗の動きを見せる。

 

カスは膝の位置を胸元から腹部へ移し、アサギのパイロットスーツがギチギチと音を立てる程強く押し込んだ。

 

「いぎっ、あ、がああああっ!」

 

声にもならない悲鳴だったが、痛いことだけはわかった。

 

「ほうら、このまま内臓潰しちゃうぞぉ」

 

「う、ふぅ、ふううぅ……」

 

カガリの懇願するような目線を受けて、カスはため息を吐いた。

 

「わかったら、よぅく考えて、慎重に言葉を選び、神にでも祈れ」

 

銃が引き抜かれた。

 

「モ、モルゲンレーテは……オーブの要なんだ」

 

ようやく口が自由になったカガリは、ゆっくりと言葉を紡ぎ始める。

 

「外を見てきて、アンタやキラや、バルトフェルドと会って、わかったんだ。オーブが言う中立もまた、貫き通すには力が必要なんだって」

 

カガリの腕が弱々しく伸ばされて、カスの袖を掴んだ。

 

「技術こそが、これからのオーブの力の礎で……エリカ・シモンズは、その最重要人物なんだよ」

 

アークエンジェルでビンタを喰らいメソついていたカガリとは、一線を画する迫力が彼女の口調にはあった。

それは謂わば、現実を理解しているが故の、説得力だった。

カガリが持ち得ないモノとして、カスが何度も、何度も言ってきたモノだ。

 

「どうせこのままじゃ、オーブは、も、保たないんだろ!? なら、私が今生き延びることと……わ、私が犠牲になってでも、オーブの未来を守ることは……比べるべくも無いじゃないか」

 

「カガリ様……」

 

エリカがその名を呼んだ。まるで別人を見たかのような、驚きに包まれた声だった。

 

「エリカさんには手を出さないでくれ。そして出来るなら、彼女に力を貸してやって欲しい。何か見返りが必要なら、私がきっと用意してみせるから。頭を下げても、身体を売ったっていい。必要ならお父様や他の氏族に土下座でも何でもする。それがオーブを少しでも生き延びさせることに繋がるなら、私がきっと、果たしてみせるから……」

 

頼む、そう言ってカガリはカスを見た。

 

「カガリ」

 

カスは徐ろに、その名を呼んだ。

 

「カガリ・ユラ・アスハ」

 

アスハの名を。

 

「オーブの氏族としてなら、今の言葉には拙いながらも理があった。些か感情的で口約束が先行しがちなのは、そもそも駆け引きのやり方を知らねえからだ、と解釈してやろう」

 

アサギの手の上から、器用に操作してベレッタの弾倉を落とす。

そして、薬室に一発だけ装填されたそれをもぎ取ると、カガリに渡した。

 

「お前がさっき言ったような理由、条件に加えて、自分の命もベットして、()()()()()()発言するならば、早々お前を無碍に扱う輩も出ないだろう。お前は兵士や、パイロットである前に、統治する側の人間なんだという自覚を持て」

 

2人の拘束を解いてやる。

 

「そのベレッタは、お前がそっち側に立った記念だ。持っとけ。いつか、お前が自分の言葉に押し潰された時、責任を果たせなくなった時、それで終わらせるんだ……それが出来なかった末路が、お前の親父だ。もう死人だアレは。ああはなるな」

 

いつになく真剣な瞳のカスと向き合うカガリ。

 

「ケホッ、ケホッ……そ、そのベレッタ、私の……」

 

ようやく復活したアサギが恨みがまし気な声を上げる。

 

「死人に銃は要らねえだろ」

 

カス、一瞥すらなく吐き捨てた。

 

「あ、あれ? これまさか私だけ許されてない!? カガリ様!? ちょっと、助けて! ヘルプカガリ様!」

 

「統治者として……」

 

カガリはカガリでどことなく深良い話を聞いたとばかりに微笑んだ。

 

「私が仕えるお姫様のDV適性が高過ぎる!? 普通頭を地面に叩き付けられて銃口向けられたらその反応にはならないんですよ!」

 

今にも泣き出しそうなアサギを見かねたか、エリカが声を発した。

 

「いいかしら?」

 

「やあエリー、どうやらピロートークで君の家族の話を聞くのはお預けみたいだ。ごめんねぇ」

 

ネットリと笑うカスに、やや引き気味に手を振る。

 

「や、それはいいのよ」

 

「取り敢えず、このジャリの頼みだ。見返りもあるって言うし、君のお願いを聞かせて貰える?」

 

言いながら胸元からコンバットマスター(相棒)を抜き、流れるようにスライドを引いて弾を装填した。

 

「あ、あ、待って待って待って、凄い、私今、会話の影で殺されようとしてる、誰か、誰かー!」

 

溜まったものではないアサギは、ついに泣き出した。

 

「ええと、その子らは大切なウチのテストパイロットなの。見逃して貰えると嬉しいのだけど」

 

「……1つ目のお願いだ。わかったよエリー」

 

カスは銃をしまった。

アサギは人生で最も重いため息を吐いた。

 

「エラい目に遭った……カガリ様、恨みますからね……」

 

「わ、悪かったよ」

 

何となく弛緩した空気が漂う中、カスはカガリへと告げた。

 

「それじゃ、俺がエリーのお願いを聞くたびにお前には報酬を支払ってもらうから。早速だけどキラ達がこれから近場の繁華街周る予定だから道案内してやってよ。ついでにジェラート食いたいから帰りに買って来い。そんでキサカの奴にオーブ軍に配備されてる三式弾、対空砲弾を持ってこさせろ。30発ずつだ。俺の弾丸も欲しいから9ミリパラ、ホローポイントを12カートン用意させろ、言えばわかる。あ、後お前無人島で俺のドリンクバーとカキ氷機勝手に使ったろ、全部補充しとけ予備も忘れんなよ。そういやそろそろ予備の銃も持っておきてえから用意しろ、センスな。クソだったらビンタだから。てかお前キラと仲良かったよな。あいつそろそろ童貞卒業させときてえから今夜辺り襲って貰える? ゴムはあいつの部屋にある机の上に転がってるから。サイズ合わなかったら諦めて。つか俺しばらくここにいることになるんだから快適な環境はお前が責任持って用意しろよ。とりまマッサージチェアの一番高えやつとネット環境と冷暖房完備、冷蔵庫には常にビール満タン、冷凍庫には氷とラム用意しとけ。あ? 何見てんだてめえ、さっさと動けや!」

 

カスはカガリから視線を切るとエリカへ戻した。

 

「それで、2つ目のお願いは? エリー」

 

どうやら今のでお願い1つ分らしかった。

 

「え……これ、守れなかったら私……」

 

カガリは手元のベレッタを見た。

どうやら、これの出番は刻一刻と迫っている様だった。

 

「あの……もう少しこう、手心と言うか……」

 

エリカは可哀想なカガリの為に進言した。

 

「あ、それが2つ目のお願い?」

 

「……いえ、さ、行きましょう。見てもらいたいものがあるの」

 

エリカは歩き出した。どうやら座り込むカガリは、自分には救えない者らしかった。

 

「オーライ……あ、ガキてめえ、ビールはバドワイザーかオリオンだからな。ラムは熟成だ。水忘れんなよ。つまみはセンスでいいが、ジャーキーとナッツは最高級品を用意しろ。全部今日中だからな」

 

言い捨てると、エリカに着いて去っていく。

 

 

 

「アレとこれまで旅して来たんですね……なんで同じ艦に乗っちゃったんです?」

 

アサギがポツリと聞いた。

 

「あの、あいつの部下を、初対面で殴っちゃって……」

 

カガリから語られるカス・オリジン。

 

「うわ」

 

「よく生きてましたね」

 

マユラとジュリも引き気味に漏らす。

どうしよう、私達が仕えるお姫様の不運が留まるところを知らない件について。

 

「貴方達! テストパイロットは機体の所へ行きなさい! 起動するわよ!」

 

離れた所からエリカの声が聞こえた。

 

「ねえ、もしかしなくてもエリカさん、あの機体のことを()()()する気よね?」

 

アサギは殆ど死んだ目で言った。

 

「そうだねー、こっちのと違って、ヘリオポリスのMS隊は実戦経験済みだし」

 

マユラもこれからを想像して背筋が寒くなるのを感じた。

 

「せめてロウがいたら……この際サーペントテールでもいいから……」

 

ジュリの願いは虚空に響きそのまま消えた。

 

3人が呼ばれた方に歩いて行くしばらくして、カガリはヨロヨロと立ち上がった。

 

「取り敢えずキサカを巻き込んで、キラ達を案内がてら相談しよう。お……襲うのは、ええと……し、下着とか、フレイに相談出来るかな……」

 

オーブに悪魔が舞い降りて、まだほんの数時間の話だった。





カガリはキサカと同じ会議に出て、只事ではない空気を感じて途中で飛び出しました。
3人娘はカガリが急いだ様子なので面白そうだと思って着いてきました。

カスからカガリ達への暴行については、女を口説くのに夢中になり過ぎて後ろから迫る紙コップを捉え損ねたので、照れ隠しみたいなもんです。照れ隠しなら仕方ないですね。

完全無欠に見えるカスにも、うっかりお茶目な面があるんですよね(可愛さアピール抜群、好感度爆上がり不可避の大人気エピソードとして総集編にも収録確定)。

3人娘ではアサギが一番好きです。
理由は名前が対魔忍だからです。
一番好きで対魔忍ということは、たくさん酷い目に遭わせても大丈夫ということです。ウチではそうです。
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