エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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みんな死なせたくないなと思って書いています。
ほら、根が聖人なもので(照)
死んだら死んだでしゃあねえかなとも思っています。
ほら、根が正直者なもので(恥)


第58話 お前ら流れ弾で死にそうな顔してるよな(笑)

 

カス来訪より2日目の朝

 

モルゲンレーテにあるMSも動かせる訓練場の隅っこに、5人が集まっていた。カスと3人娘、徹夜明けのキラだ。

 

「これより訓練を始める。俺の事は教官かセイル様と呼ぶように。各員、自己紹介!」

 

「……アサギ・コードウェル」

 

「マユラ・ラバッツでーす」

 

「ジュリ・ウー・ニェンです」

 

カスは鼻を鳴らした。

 

「ふん、どいつもこいつも贅沢な名前だね! お前達は今日から対魔忍、ピンサロ、パパ活だよ!」

 

「残せやぁ! 名前の原型をぉ!……てか対魔忍て何!? 本当に何!?」

 

なお、素晴らしいことにコズミック・イラでも新作はリリースされていた。

 

「ピン……サロ……? 何それ?」

 

「ストレートに嫌過ぎます!」

 

仕方なく、優しいカスは3人へ説明してやった。

 

「アサギは……生誕200周年らしいし、対魔忍しかねえだろ? ピンサロはアレだ、ほら、お前が2年後位に働いてそうなとこだ。パパ活は社会に馴染めなくて何となくでズルズルやってそうだよな」

 

「その対魔忍が何かっつってんのよ!?」

 

キャンキャン。

 

「うるせえな。ならチワワ、トイプー、メガネで」

 

「人の! 名前!!」

 

「トイプーならまあ、ギリ?」

 

「メガネなんて犬種あった……? 私だけ特徴?」

 

最終的にそれぞれ、

 

アサギ → チワ子

マユラ → ブリ子

ジュリ → 青保留

 

となった。定着するかは定かではない。

 

「まずはお前らがケツを預ける便器に素晴らしいウォシュレット機能を付けてくれた、キラ・ヤマト・スーパー少尉グレート先輩に挨拶しろ」

 

カスがそう言って、横に立っていたキラを指す。

キラはシパシパした目をこすりながら、

 

「やめてください……OSのバグ取りと改修しただけです……半分くらいは作り直しでしたけど……あと、先輩でもないです」

 

そんな抗議の声を上げた。

一方、事前にOSをチェックしたエリカから、その完璧な仕事ぶりを聞いていた3人は各々に感謝の声をかけた。

 

「ありがとうごさいます、スーパー少尉先輩!」「ありがとーグレート君!」「すごいねキラ君!」

 

キラはその言葉を聞いて唖然としたあと、唐突に震え、泣きそうな顔になった。乾いた心を潤すものがここにあった。

 

「隊長……僕ここの子になりたいです」

 

挙句そんなことをほざき出す。

 

「離隊届が受理されたならいいよ別に」

 

「そんなのあるんですか!?」

 

驚愕。オランチョ小隊にそんなものが、となる。

 

「あるよ、フォーマットやろうか? 理由の記入は必要だが」

 

「隊長の名前書けば一発じゃないですか」

 

「いやいや」

 

カスは穏やかに笑った。

 

「ウチの隊の離隊届は離隊理由と俺への敬意、忠誠を1千万文字以上の手書きで記入した後、AIに読み込ませて誤字脱字ゼロ、内容重複ゼロで初めて『清書』する事が認められるんだよ。勿論清書も手書きだ。書類に気持ちが籠もらねえからな」

 

キラの目が爆速で曇っていく。

 

「原稿用紙2,500枚以上はバカの量でしょ……そしたら隊長が受理を……?」

 

「流石にそこまでやれば俺も諦めるさ……今まで3人が離隊届を取りに来て、2人が書いてる途中で発狂、1人はやり切ったからそいつの実家に3日ほど入り浸って朝から晩まで一緒に居てやったら、どうか復隊させて下さいと土下座してきたよ。結局復隊初日にそのままメンタルで病院送りになったな」

 

想像して、キラは吐きそうになった。

家に帰ってカスが両親と談話していたら、その場で銃を抜く自信があった。警察は駄目だ。こいつ普通に勝ちそうだし。

 

「僕、おぞましいって感情抱いたの生まれて初めてですよ。え、それネームレスの人達のことですよね? あんないい人達を相手に? 法は何やってたんですか……まあいいや、どのみち期待してませんでしたし。じゃあ眠いから戻りますね。なんかあったら呼んでください」

 

荒んだ心で武器に携わる少年キラは、そう言って立ち去って行った。

 

「おう、寝る前に歯ぁ磨いて風呂入って直近の戦闘データのシミュレーターへの打ち込みと動作チェックやって、キサカに用意させた三式弾撃てるようにバズーカの改造図面引いてここの奴に渡しとけよ。ついでにブリッツのワックス掛けもな。せっかくの休暇だ、有意義に過ごせよ」

 

その背に、カスからの労いがかけられる。

 

「はいはい、わかりましたよ。眠る時間が作れるなんて、休暇ってこんな素晴らしいものだったんだなぁ。やっぱり休暇はバッファだよね、新しいタスクがあんまり増えないから」

 

邪悪な独り言を漏らしながら、キラはアークエンジェルへ戻って行った。

そんな2人の、いつも通りのグッドコミュニケーションを見て、3人娘は戦慄していた。

 

「え、何今のやりとりは」「優しさとか存在しない国の会話?」「怖い怖い怖い……」

 

カスは仕切り直すように手を叩いた。

 

「さ、お前ら、早速搭乗して腕前を見せてもらおうか」

 

「み、見せてやろうじゃない!」「あ、スルーするんだね」「アサギは心が強いチワワなんだね」

 

 

 

……なお、この後就寝しようとしたキラにカガリが夜這いを仕掛けた。フレイがチョイスした童貞を殺すセーターを、『ちゅうりつなんだなぁ』というクソみたいな文字がプリントされたTシャツの上から、前後ろを逆にして着た挙句、更に肌寒いからと芋ジャージを羽織って下に至ってはステテコを履いていたので、キラは一切気付かずに普通に談笑して解散した。

ウズミにかなりガチ目に怒られたのは納得がいかなかった。

 

流石のカスも人選ミスだったと苦笑いして、アサギの処刑は取り止めたと言う。

 

 

 

閑話休題

 

 

「お前らすげえよ、才能の塊だぜ! マジで世界超えてるから。最高! よし、卒業式だ! ミスターアイアンアロー・マーシャルフィールド(テツヤ・ タ ケ ダ)の卒業ソングを忘れんなよ!」

 

3人娘は訓練開始から60分、基本操作を終えた3人は、シミュレーターモードで起動した機体で各種シチュエーション訓練を始めたところで中断。また集められた3人は、カスからの2度目の卒業判定を貰っていた。

 

「……本音は?」

 

チワ子がぶすっとした声で問うと、

 

「これなら数用意出来る分、戦車のがマシかな」

 

カスは事も無げに答えた。

自覚はあったのか、頬を膨らませつつチワ子は眉をしかめた。

 

「おら、いっちょ前にふてくされてんじゃねえよ」

 

その頬を押し潰すように挟むと、ぷしゅうという音がして、吹き出した空気がカスの手のひらに当たった。

 

「……にゃによ、離しにゃさいよ」

 

「えー、では総評からいきまーす」

 

無視をして続ける。

 

「まずフォーメーション。索敵能力に差のない同一装備の機体が横並びで前進する意味が分かんない。ピクニックに来たのかな? 索敵範囲が無駄に被ってるせいで相互フォローが雑になってんだよ。敵の初弾が青保留に直撃した時、何で動き止めて名前呼んでんの? 仲良しさんか? せめて片方はカバーリングで前に出るなり応射するなりしろや」

 

むにゅられたままのチワ子が呻く。言われてしまえば反論も出来ない落ち度なのは理解出来たからだ。

 

「お前らがやったのは、中隊相当の支援が前提の歩兵の動き方じゃねえか……オーブは作戦室に猿でも飼ってんのか? 戦後研究家に『バカなせいで滅んだ国』と言われたくなけりゃMSの小隊単位の連携は洗い直せ。今回みたいな入り組んだ場所ならツートップかワントップでリーダー機が中継に入るのが自然だ」

 

「……それだと、火力の集中に難が出るんでは?」

 

青保留が手を挙げておずおずと言った。

 

「味方機の射線管理も意識出来てねえゴミが、知った風な口を叩くんじゃねえよ。そもそも一列横隊でどうやって火線を集中させるつもりだ。自分の目の前の敵はどうすんだボケ」

 

「あー」

 

ブリ子が手を叩き感心した様な声を漏らす。

 

「あとお前ら、市街地防衛戦っつったよな? バカみてえに機体晒してズカズカ歩くんじゃねえよ、自分の家かよ。射撃の的のバイトでもしてんのか? 1機数億の的とは豪華じゃねえか、頼むから死んでくれ」

 

「……私達はテストパイロットよ……まず機体を動かせるようになるのが仕事で、戦術は次のステップじゃない!」

 

チワ子が吠えついてきたので、カスは特別に鼻で笑ってやった。

 

「機体は動く、何の問題もねえ。俺の舎弟が直々に手を加えたんだからな。それは絶対に確かだ。もう話は、どう動かすかじゃなく、動かしてどうするかに移行してるんだよ」

 

むにゅむにゅむにゅむにゅ

 

「いい、加減、離せ!」

 

首を振って脱出するチワ子。

 

「この際だから言っとくが、戦闘においてオーブが先手を取れることはない。専守防衛の中立国に、その手段は存在しねえ」

 

カスの言葉に、3人は耳を傾けた。

 

「だからお前らの戦闘は基本的に海岸線での上陸阻止か、攻め込まれての市街地防衛戦になる。わかるか? 平場と同じ様な動かし方してると、戦闘後には焼け野原しか残らねえって言ってんだ」

 

「はいはーい、前に戦術教練は受けたけど、横隊で広い範囲をカバーしながら戦闘区域を確保するって習ったよ?」

 

ブリ子からの質問に、カスは首を振った。

 

「おい、自分で言っててわからねえのか? お前らが『戦闘区域』と呼ぶ場所は全部自国の領土なんだぞ。避難状況は? 逃げ遅れは? 重要施設は? それ教えたバカに言っとけ。前線で管理する情報増やすんじゃねえよ無能が、とな」

 

「そっか……それ忘れてた」「繁華街で戦うのやだなぁ」「足元を人に走られたら動けなくなっちゃいそう」

 

「お前らが言ってるのは、戦車隊を後ろに置いた歩兵のロジックだ。そもそも、MSを使った軍事的行動は現状ザフトしか使ってねえ。あいつらは数が少ねえから小隊単位で突出して来る。お前らが数千機のMSを用意出来るなら今のやり方でもいいが、そうじゃねえならザフトを参考に詰めた方がいい」

 

「でも、同じ事したんじゃコーディネイターには勝てないんじゃないです?」

 

不安そうな青保留。

 

「そうでもねえ。まず、現行のナチュラル側の戦術は艦砲射撃から始まる砲打撃戦をベースにしてる」

 

言いながら、青保留のメガネのレンズに親指を押し付けてギューギューする。

 

「つまり腕の良い砲手と、間合いの差し合いに長けた指揮官が多い。だがこの戦い方を一方的にメタれる存在が出て来た。MSだ」

 

「うあー、目がー、なんでー」

 

「トレンドは猫も杓子もMSだが、別に砲手の腕が落ちた訳でも、ミサイルや砲撃の火力が下がった訳でもねえ。要は、戦術を有効に使う為の間合いを維持する手段が足りてねえのさ」

 

続いてブリ子の脇腹を摘む。

 

「ほわっ!?」

 

「痩せろデブ」

 

「酷いっ!」

 

「で、だ。そもそもお前らは別に、敵を落とす必要はねえんだよ。アストレイのスペックシートは見たが、ジンハイマニューバよりはマシレベルだぞ。フェイズシフトもねえし、この機体でエースになるのは無理だよ」

 

「じゃあどうしろってのよ」

 

チワ子が触れるもの全てに噛み付く狂犬の目でカスを見た。

 

「味方の援護だ。お前らが前に出て、索敵、弾道観測をして、時に突っ込んでくる奴を追い散らし、味方の砲戦を援護するんだよ。オーブ艦隊の名と練度は世界でも指折りだ。だから中立なんてわがままが許されてんだから。お前らが10秒時間を稼ぐ毎に、敵は減っていくんだよ」

 

カスは両手でチワ子の顔を挟み込むように包んだ。

昔飼っていた犬によくこうしていたな、と思い出す。

 

「うー……」

 

チワ子は……なんだか大人しくなった。

 

「MSとは多機能化した強化スーツを纏った歩兵の一形態だ。1機で多くの役割を担い、より遠くを見渡し、強力な武器を使う歩兵なんだよ。だから、それに見合った戦い方が必要なのさ」

 

手を離し、カスは離れた所に置いてあるホワイトボードを引いてきた。

 

「市街地防衛戦のメソッドは既に確立されている。だが言った通り、MSを使うなら新しい視点も取り入れなければならない。いくつかの例を挙げて説明していくが、面倒くせえから再講義はしねえ。メモでも取って覚えろ。終わったらまたシミュレーターだ」

 

「わかった……ちょっと、動画撮らせて」「あ、待って、椅子持ってくる!」「ノート用の端末も!」

 

そんなこんなでカス式ブートキャンプは続いていく。

3人娘の準備を待つ間にタバコを吸い始めたカスは、煙と共にため息を吐き出した。

 

「ナタルちゃん分が足りない……いいなぁ、今頃艦内で休暇かぁ」

 

訓練場の片隅で、益もない呟きは静かに溶けていった。

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

繁華街にあるレストランの個室に、エリカとカガリ、それに3人娘が集まっていた。

 

「3人とも、お疲れ様」

 

エリカからの労いに、アサギ達は一様に安堵の息を漏らす。

 

「身体がもう、動かなくて……」「3回吐きましたぁ」「フットペダル踏みすぎて足の感触が……」

 

満身創痍の様相を呈した3人の様子に、カガリはため息をついた。

 

「おいおい、情けない事言うなよな。お前達はオーブ初となるMSのパイロットなんたぞ」

 

「元祖チワワの癖に」「普通男の部屋にステテコ履いて行きます?」「ミジンコよりセックスアピール弱そうですよねカガリ様」

 

荒んだ心は刃となって3人の口から飛び出した、

 

「なんだとコラァ! 私だってなぁ………………私だってなぁ!」

 

「何もないんですか」「もう駄目です終わりです」「教官が言ってました。カガリ様はチワワと猿の間の子だって」

 

「もっと私を敬え!」

 

「カガリ様素敵ー」「カガリ様サイコー」「カガリ様マジカガリ様ー」

 

「キーッ!」

 

キャンキャンキャンキャン。

 

「ま、元気そうで何よりだわ。3人も、講義の撮影はナイス判断よ。MS戦闘経験者の戦術論は貴重だわ」

 

エリカはコーヒーに口をつけながら笑った。

本当に、オーブに足りていない情報が的確に説明されていた。

むしろ作為すら感じる内容である。

 

多分、これも『対価』の追加になるのだろうな、と思っていた。

 

「カガリ様は恋愛とかしたこと無さそうですもんね」

 

ジュリの揶揄に、カガリは顔を真っ赤にする。

 

「そ、そそそんな事あるかぁ! ただ、なんか、こんなんで事が進むのも、なんか違うなぁって……」

 

「押し倒しちゃえばいいのに」

 

マユラもニヤニヤしている。

 

「うるさいな! お前らだってそういう話は全然無いじゃないか!」

 

「あ」

 

その言葉に、ジュリが思い出したように漏らした。

 

「そう言えばさぁ、アサギは何、やけに教官に突っかかるけど……惚れたの?」

 

「おい、アークエンジェルでそれ言うと軍法裁判になる…………アサギ?……え、アサギ!?」

 

名誉毀損を窘めようとしたカガリは目をアサギに向け……テーブルに突っ伏した彼女を見た。

 

「……乱暴されたのは……まあ、こっちも悪かったから……」

 

ぽそぽそと、アサギが呟く。

 

冗談のつもりだったジュリが、冷や汗を流す。

どうすんだよこの空気、クソ青保留が、そんな視線がマユラから飛んでくる。

 

「顔が……顔が良いのよ……あと顔掴まれた時にいい匂いが……」

 

「わかった! 一旦止めようこの話! 何か食べて忘れよう!!」

 

カガリは盛大に焦り声を張り上げた。

 

「店員さーん!」

 

「ああごめん、ごめんねアサギ! アンタ、好きな人に突っかかるタイプの子なのね!」

 

「掘り返してんじゃあないぞジュリィ! 私は、忘れろと言ったんだぁ!!」

 

ヤバい。

何がヤバいってこの話がマリューやナタルに知られるのは絶対にマズい。だってカガリは知っているから。

 

バナディーヤから戻った時、ドレス姿のフレイに抱き着かれたカスを見たナタルを――口元をキュッと、不機嫌そうにすぼめた彼女を見ているから。

それを見てヨダレを垂らしながら人外の速度でシャッターを切っていたマリューも。

 

カガリは柄にもなく神に祈る。

 

――神様、お願いですから、何か良い感じにして下さい。

 

神も良い迷惑だった。





言うてジュリの期待度は青保留でしょ。


キラ「休暇はバッファ」

トール達「こらあかんわ」


M1アストレイはシグーよりはマシかトントン、ビームがあるからワンチャン上、位のイメージで書いてます。

■日頃の御礼
日頃から感想・ご評価頂きありがとうございます。
前にも書きましたが全部読んでますし、中には『兄者……? 兄者じゃないか! まさか、自力で脱出を!?』となるような感想もあり、いつもニヤニヤしながら見ております。

お返事は出来てないので、定期的に感謝はお伝えしていきたい所存です。
感想も評価も、本当に嬉しいです。
読んでいただいてありがとうございます。
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