エンデュミオンのカスの方の英雄   作:パパパパンパース

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結局ね、Ⅴの最適解は主人公、ピエール、ゴレムス、スラリンなんですよ。
真の勇者(笑)である子供達なんか、枠圧迫するから邪魔までありましたよね。2人もいらんでしょ。方っぽは何か死んで武器とかに交換出来ねえのかなって皆思いましたよね。


第63話 レモン

 

「母さん……地球は本当に広大で、自然に満ちあふれています。僕の様な人間1人、そんなものの前では本当にちっぽけなわけで、悩みなんて全部瑣末事なわけで……」

 

食堂、ニコルはヌードルの入った容器を前に、立ち昇る湯気を見ながらナレーション風の独り言を嗜んでいた。目は死んでいた。

 

そんな様子を離れた所から、一人欠けてしまったヘリオポリスのブリッジクルー組の3人が心配そうに見つめている。

 

「おい、ニコルの奴どうしたんだよ?」

 

トールは声を潜めてミリアリア達に尋ねた。

 

「どうも、この前女装させられた時の写真が一部ネットに流出しちゃって……」

 

沈痛な面持ちでミリアリアは返す。本当に、酷い事件だったね。

 

「しちゃってっていうか、完全に故意だろあの人の場合」

 

コーヒーカップを傾けつつ、サイも苦々しげだ。

 

「それでさっき隊長が、()()()()のオファーがいくつか来たって言いに来たの……」

 

「隊長が機嫌良さそうに『好きなの選んでいいぞ』って言ってたのはそういう?」

 

夢も希望も無い話だった。救いなんてものは特に、ヘリオポリスを出てからこの方見たことがなかった。

 

 

「ルールルルー……」

 

 

豪雪地帯の幻覚を背景に、ニコルは遠くを見ながらキツネを呼び始めた。当然そんなものは居ないし、ちょうどその方向に居たチャンドラが居心地悪そうに身を縮めた。

 

「キラは?」

 

「今ブリーフィングで艦長たちと会議室よ」

 

「キラもカズイも居ないから、隊長の負荷が集中してんのか……」

 

 

「僕の汚れは石鹸で落ちるんでしょうか……」

 

 

その汚れを落としたいなら多分脱皮した方が早いまである、とは流石に言えなかった。

それは流石に人の心が無さ過ぎるとサイ達も思っていた。

 

「アラスカまで数日だろ? なんとかなればいいけど……」

 

「なるかなぁ」

 

「どうかなぁ」

 

可哀想なニコルはようやくヌードルに手を付け始めた。

デロンデロンに伸びたそれは、この場で唯一ニコルの胃には優しかった。相変わらず救いだけはどこにもなかった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

「兎にも角にも地面がいるよ。展開力と機動力が死んだMSなんざただの砲台以下だし」

 

カスの言葉にムウが頷く。

 

「水中からの攻撃が無くせるのはデカいな」

 

「でも、相手は航空戦力が多いですし、どのみち戦力差が大き過ぎるんじゃ……」

 

気になる事はガンガン発言しろと言われていたキラも、そこへ参加する。

カス達もそれを拾い、反証を行っていく。

今はこの先起こるであろう戦闘に備えたブリーフィングだ。出来る限りの想定と、疑問点の解消をしていかなければならない。

 

「空の敵は俺等やアークエンジェルでも手が届くからな」

 

「むしろそっちに手を取られて水中から奇襲される方がやべえ。その場で対処出来なきゃリーサルになる」

 

それまで聞きに徹していたマリューが徐ろに口を開く。

 

「そうすると、アークエンジェルは低空で空中砲台代わりですか?」

 

「まあ、そうだなぁ。勿論、ある程度動いては貰うが、相手の数を減らさねえことには突破口も見えねえし」

 

「ちなみに……オランチョ中尉が相手の指揮官なら、どう攻めます?」

 

念の為聞いておく。

最悪のケースを想定するならそれが一番だと、ハルバートンもやっていた事だ。

 

「爆薬積んだSFSをぶつけるよ。全機でやれば1、2発は通るでしょ。あとは潜水艦からひたすら援護射撃させて、動きが止まったらバスターの砲撃。一撃で片がつくだろ」

 

身も蓋も無いし、やられたら嫌だな、いや、かなりヤバいなと思う意見が出て来た。

 

「あの、それだと空中砲台役は危険なんじゃ?」

 

キラも想像したのか、そう尋ねる。

 

「動き回ったって一緒だよ。この図体と小回りで、音速域の飛翔体やMSをどう躱すんだって。まだ対空射の密度を上げて撃ち落とした方がいいでしょ」

 

「現状、バスターとイージスは厳重にマークすべきでしょうね。あれらは大火力の一撃があります」

 

カスの意見を最悪と定義して、ナタルはそこに至らない為のフローを考えていく。

 

「なら、イージスはキラがやれよ。多分スペック的に、万能型のストライクが一番向いてるだろ」

 

「わかりました……アスランは、僕が止めます」

 

「バスターは?」

 

「んー、俺かな。アイツは地上なら鈍さが際立つから、フッケバイン・プロトコルで食えそう。ナタルちゃん、頼むよ」

 

「……わかりました。では速やかにバスターを倒した後は、デュエルをお願いします。結局、ビームの一発でも艦橋に貰えばおしまいですから」

 

サクッと決まる対策に補強案も出て、取り敢えずの流れは出来た。

 

「戦場とするのは、この先にある無人島が良いでしょう。潜水艦の射程には入るでしょうが、感知からの迎撃が可能な程度には面積があります」

 

「うぇーい」

 

「俺はどうする?」

 

エンデュミオンのお兄ちゃんが手を上げた。

 

「フラガ大尉はそれ以外全ての敵航空戦力を担当ですね」

 

「死ぬて」

 

「あれだよ、ウルトラデンジャラスグレートファンタスティックマニューバ出せば一発だよ」

 

エンデュミオンの弟が、ふはんと鼻で笑った。

 

「何が一発? 俺が撃墜されるのが? あとそんな名前のマニューバは存在しねぇ」

 

兄より優れた弟は存在しないかもしれないが、北斗三兄弟にフクロにされたらそんなものは誤差だ。

カスは肩をすくめた。

 

「オーブで仕入れた三式弾でハエがどこまで減らせるかだな。砲塔はドックに運び入れてあんだろ?」

 

「それですが、ハッチから砲塔を出すのは危険すぎるとマードック軍曹から意見が上がっています。艦載機発艦後もハッチが解放したままになりますので」

 

カスは呆れた様に首を振った。

 

「コジコジは心配性なんだよ。大体、ハッチ閉じてて無事に終わるなら苦労しねえんだから」

 

「コジコジ……?」

 

そんな風に呼んでました? とキラは訝しんだ。

 

「オーブのセクキャバで膝に乗せた女の子からコジコジって呼ばれて喜んでボトル入れてるおじさんの写真見る? 過去イチの笑顔だぜ」

 

カスは取り出した端末にそんな写真を表示させた。

そこには酒に溺れ女に埋まる、中年男性の終わってる姿が映されていた。

 

「マードック軍曹……」

 

マリューは口元を抑える。

 

「バカなことを……」

 

ナタルも軍帽のツバを摘み、眉を顰めた。

 

「どうしてカスの目が届く場所で弱み晒すような事するんだよ」

 

ムウは天を仰いだ。それはまるで、意気揚々と地雷原でBBQする奴を見たかのようだった。お前も来いって? 絶対行かねえよ死ねよ。

 

「可哀想に……」

 

キラは明日は我が身と思いつつも、世話になっているマードックに追悼の意を示した。死んではないが、誤差の範疇だ。

 

「この写真はストライクのシールドにプリントする予定だ」

 

そのプリントの作業もマードックがするんですよ、カスさん。

 

「やめてくださいよ。なんでいつもいつも、より多くの人を不幸にする方へ舵を切るんですか」

 

「人の不幸は蜜の味さ。俺には身の回りを甘い物で満たしたいってファンシーな夢があるんだよ」

 

マイナス100点満点の回答をするカスに、ムウとマリューが止めに入る。

 

「やめたれよ……その蜜ゴキブリが集めた?」

 

「艦長命令です中尉、やめてください」

 

言われたカスは珍しく抵抗せず、

 

「ちぇー……ほならこっちのコジコジの横で将来フレイに貢ぐ為の練習で同席したのに、性欲に負けて女の子の谷間ガン見してるサイの写真はご両親に送っとくか」

 

次弾を装填した。

 

「サイ……あの夜見ないと思ったら……!」

 

「そもそも未成年は駄目でしょう」

 

「ドンペリとかアルマンドって幾らするんですかねって、聞かれたわ俺」

 

「あの子がCICで発射してるミサイル1発で、それ何百本も買えるんですけどねぇ」

 

「軍にいるとその辺の感覚鈍りがちだよなぁ」

 

「何気にオーブ滞在中もしっかり服とかアクセ買わされてたからな。あの女ハニトラの素養あるわ」

 

 

回想〜

 

――買い物に付き合ってくれてありがとね。

 

――良いんだよフレイ。俺も誘ってくれて嬉しいよ。

 

――あ、この服可愛い……似合う? けど、ちょっと高いかな。

 

――フレイ、今日は俺が全部出すよ。元でも婚約者だったんだ、それくらいさせてくれ。

 

――ありがとう! 大好きよ!

 

――(恍惚の笑み)

 

――あのね、私相談があるの……

 

――何でも言ってくれよ!

 

――あのね、隊長が中々私に手を出してくれないの。

 

――ッヴェ

 

――だからね、この際服とかメイクとかに力入れて、ギャップで攻めようと思うのよ!

 

――あっ、あっ……

 

――この服も、隊長気に入ってくれるかしら?

 

――あっ、あっ……

 

――本当にありがとう。こんな事が相談出来るの、貴方だけよ。

 

――オレ、ダケ……

 

――うん、これからも、たまに、内緒でこういうの付き合ってくれる?

 

――モ……勿論だよフレイ!

 

〜回想終了

 

 

「コホン……マードック軍曹は未成年に飲酒させたとして懲罰ですかね」

 

気を取り直してナタルが切り出した。いくら軍人でも未成年飲酒は駄目なのである。

 

「うーん、懲罰……この写真を証拠に出されるのよねぇ……」

 

しかしマリューは否定的だ。それは流石に、と思う位には情の深い女であった。

 

「この場はキサカが奢った事になってる。この場合、引率責任を問われるのはこの場にいなかったあいつだ。何せ、金出して接待する側の癖に現場の確認を怠ったんだからな」

 

なおキサカは何も知らない。

ただ、一晩でバカみたいな口座引き落としが発生し、銀行から詐欺の関与を疑われた位だ。

 

「他所様の軍人に罪を……!?」

 

「ちなみにこういう写真が俺に回って来る事からわかるように、この店は俺がオーナーやってる。勿論未認可で」

 

「偶然とは言え、違法風俗店をオーブ軍人のツケで地球連合の軍人と未成年に使わせたんですか?」

 

「舐めんな、ちゃんと仕込みのキャッチで誘導したに決まってんだろうが。俺がいくつこういうツテや集金先持ってると思ってんだ。オーブの一部区画は俺と、あと何人かのビジネスパートナー達の庭だよ」

 

いるだけで土地を汚す公害みたいな男だった。

 

「なんで軍人やってるんです? いや、軍人やっててくれてまだマシだったのかしら……?」

 

「片手間に出来る些細なサイドビジネスだろ? ナタルちゃんを養う為にはお金が必要なんだよ」

 

その言葉は流石に見過ごせなかったのか、ナタルは厳し目に突っ込んできた。

 

「誰が、いつ、何を、貴方に養って貰いましたか? 最高裁まで争ってもいいんですよ?」

 

「服とか超送ってんじゃん。あと、誕生日に再不斬の首切り包丁あげたべ。6フィートのやつ」

 

割とちゃんと貢がれていたようだった。

 

「あの切れ味まで原作再現されたフル超硬合金製の危険物ですか? 床を突き破って下にいたお祖父様を殺しかけたせいで、私がどれだけ怒られたと」

 

無自覚な貢がれ姫は恨み節でそれをスルーした。

 

「それでも欲しいって言うから、夜中にこっそり重機使って運び込んだんじゃん。ちゃんと飾り棚まで用意したのに、なんで振り回そうとしてんのよ。そら無理でしょ。60キロはあんだから。むしろよく持ち上げたよ」

 

いや本当に何やってんですか、とその場の誰もが思った。無論、カスと姫君の両方に対してだ。

 

「まさか16にもなって……あんな屈辱を受けるとは……」

 

トラウマを呼び起こされたかのように呻く姫君。

 

「お尻引っ叩かれたんだっけか」

 

当然のように食いつくのは下世話・柱である。

 

「オランチョ中尉、その時の写真か映像は?」

 

「あるよ。おばちゃん……ナタルママからエアドロップで貰ったやつ」

 

「シェアお願いします。ブリッジのスクリーンセーバーにするので」

 

「お母様……!」

 

色々言いたいことはあったが、取り敢えず何故か母親へ怒りを向けるナタル。

そこへパンパン、と手を打つ音が響いた。

 

「はいはい、君達、話題がすげえ勢いで地平線の向こうだぜ。そろそろ戻ろう」

 

ムウである。

歴戦のエースによる場を戒める一言は、その場の全員をハッとさせた。

 

「……大変失礼致しました。取り乱しました」

 

まずはナタルが頭を下げる。

 

「いいのよナタル、もっと乱れて、赤裸々に全てを曝け出していきましょう」

 

柱は酒が入っているかラリっているに違いなかった。

 

「艦長、私が怒らないとお思いですか?」

 

流石に、流石にこれはね。ナタルは切れ長の瞳を艦長へと向けた。

もはや諦めたのだろう、ムウがそれを見てカスへ言う。

 

「おっぱいでは艦長の勝ちだわ。悪いなカス、後で中尉を慰めてやってくれよ」

 

カスはカスで、リアリー? 的なジェスチャーで打ち返した。

 

「バカだなタカちん。結局勝負を決めるのは腰と尻なんだよ。なんて浅はかさなんだ。短小なのかな?」

 

「あ?」

 

「は?」

 

ビキビキビキビキ

 

「はいこことここ試合決定です」

 

カスとバカのやり取りを見て冷めたマリューが告げる。

 

「外でやってくださいね? 死ぬまで」

 

ナタルもまあまあ本気でそう吐き捨てた。

 

 

 

「あの……お願いですから一人くらい戻って来てくれませんかね」

 

大人達の喧騒に取り残されたキラが呟いた。

夢ならばどれほど……





サイは原作準拠の頼れるお兄さん。
酒と女が絡むと駄目になる典型的なダメンズ。
こいつはガールズバーとかでボトルを入れることがスマートだと思ってる印象がある。

今も連載中で一番好きな漫画は今のところワートリです。
SS書くにはランク戦が激ムズなので断念しました。

ネイバーとの関係がどうなっていくのかは、今後の物語的にも期待大ですよね。

僕には遠征の度に速度と容量に全振りしたトリオン兵にセシウム137を詰め込んで市街地で自爆させるとか、女攫って来て妊娠させて送り返す民族浄化作戦やって、中長期的にネイバーさんを絶滅させる位しか思い付きません。
読み返す度に天才ってのはいるんだなぁと思います。
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